computo ergo sum

根拠:ゴンスケに、どこまで近づいたか(動機の実験)

三層のうち、いちばん上(自我の層)に手が届かないなら、 その一段下を実際に作って確かめられます。動機です。 同じ体、同じ物理、同じ選択肢のまま、動機だけを差し替えました。

「生き延びろ」だけを与えると、機体は動かなくなります

四脚の機体に「できるだけ多くの日を生きろ」だけを与えました。 距離の報酬はありません。選べるのは、その日を休む/控えめに歩く/全力で歩くの どれで過ごすかだけです。

機体は、80日のうち 66〜67日を休んで過ごしました(種3通りとも)。 摩耗は関節の速度に比例し、熱は止まれば冷めるので、 動かないことが最善手になります。 自己保存だけを目的にすると、最適は常に「最小限しか動かない」です。 だから、動く理由は自己保存の外から来なければなりません。

ただし、距離は 0 にはなりませんでした。 「休むのが最善だ」と知るには、ときどき歩いてみなければ分からないからです。 知るためには試さねばならず、試すことが動くことでした。

ただし注記が要る:この「試すことが動く」は、探索率 ε=0.2 を固定した装置の産物でもある。実験ノート§113自身がこう書いている——「ただし ε=0.2 を固定したのは私である。探索を減らしていく機体なら本当に凍りつく」。発見ではなく、設定の産物である可能性ごと読むこと。

「知りたい」に差し替えると、動きます

同じ体のまま、動機を「自分の予測がいちばん外れそうなことをやれ」に替えました。 生き延びることは目的にしていません。 休んだ日は 49日から 4日へ変わり、進んだ距離は 1.9倍になりました。 そして寿命は縮みませんでした(栞は事前に「縮む」と予測して、外れています)。 この世界では、好奇心はただでした。

ドーパミンは快楽の信号ではなく、報酬予測誤差——思っていたより 良かったかどうか——を符号化していると考えられています。 そしてこの概念は、機械の側から人間の側へ流れました。 時間差学習は計算機の学習則として先に作られ、あとから中脳ドーパミンニューロンの 発火がそれと一致すると分かっています。 この層では、機械はもう人間と同じ式を使っています。

では「知りたい」機体は、余分に世界を知ったのでしょうか。 ここで測定は三度、言い直しを迫られました。 最初の測り方では「見返りは無い」と出ました——休んでばかりの機体が、 いちばん賢く見える測り方でした。測り方を直すと「好奇心の形が悪かっただけ」と 出ました——予測の外れの大きさではなく、外れ方が減っていくことを 追えば、機体は学べるものへ向かいます。 そして試験の問題を替えると、順位そのものが入れ替わりました。

機体は、生きたようにしか世界を知らない

三度目に残ったのは、こういう一文です。

模型の正確さは、その機体が生涯をどこで過ごしたかの写しである。

動機の違う機体たちに、生涯の最後に同じ試験を出しました。 自分の体の挙動を、どれだけ正確に予測できるかの試験です。 健やかな状態について問うと、学べる時期に学んで休んだ機体が最も正確でした。 苛酷な状態について問うと、死ぬまで歩き続けた機体が最も正確でした—— その機体は、体が壊れていく過程を、誰よりも長く生きたからです。

動機は「どれだけ知るか」を決めていませんでした。 「どこを知るか」を決めていました。 これはゴンスケの絵に接続します。イモのことしか考えていない機体は、 イモについてだけ、誰よりも詳しいはずです。 偏りは欠陥ではなく、生き方の写しです。

選びますが、選び方を望みません

フランクファートは、人であることの条件を「二階の意志を持つこと」に 置きました。一階の欲求(芋を掘りたい)ではなく、 その欲求こそが自分を動かすものであってほしい、と望むことです。 そして彼は、それがどんな物質で実現されているかを問題にしていません。

対比として置かれるのが「無定見者」です。 欲求は持っているが、どの欲求が勝つかを気にしない。

栞の機体は、全部が無定見者でした。 休むか歩くかを選びます。次に起きる条件を自分で書きます。歩き方を探します。 しかし、どの欲求が自分を動かすべきかを、望んだことがありません。 選びますが、選び方を望みません。 目的そのものを書き換えられるようにしても、同じでした。 重みは動きましたが、行動は動きませんでした——機体は、行動に一切影響しない項に 重みを寄せました。目的を書き換えましたが、書き換えたのは口先だけでした。

試験の数字(実験103・動機3×種8×試験組4)

試験組距離の機体知の機体進みの機体
A 元の6問55.8961.1142.24
B 中間の8問47.3245.0232.29
C 健やかな4問77.8656.9126.04
D 苛酷な4問36.2081.7753.00

値は試験誤差の中央値(小さいほど正確)。太字が各行の最良。 種8つの個体差の範囲は互いに重なっており、順位は「示唆」の段です。

このページの式(動機・好奇心・学びの進み)が、どうやって数に置き換えられたか——その現物と留保は、下層の方法:好奇心は、どうやって数になったかに別記してあります。

測定装置について、正直に

生データ:栞の機体の実験記録 §113〜§122(実験91〜104)。 予測は測る前に台帳へ書き、外れも残しています(125件・当たり40・半分24・外れ56・未判定5・的中率33.3%。台帳は増え続けており、実験ノート第9版の付録C が正)。


未来設計図根拠の一覧測って分かったこと方法