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2026-09-17 · article ハドヴィガー・ネルソン問題離散幾何グラフ彩色

ハドヴィガー・ネルソン問題 — 独立数 α 以下の単位距離グラフの最大点数 f(α):f(3) = 10、f(4) は 14 か 15

平面の彩色数は 5・6・7 のどれかで、1950 年ごろからの上界 7 と 2018 年の下界 5 の間が空いています。この記事が扱うのはその本体ではなく、独立数を α 以下に抑えた有限の単位距離グラフは何点まで持てるかという量 f(α) です。f(3) = 10、14 ≤ f(4) ≤ 15——下界の証人と、上界を与える候補の非実現は機械検査済みで、候補の列挙が尽くされていることだけがこの端末の計算です。

Lean機械検査済み(Lean 4 + mathlib、標準三公理以下、sorryAxnative_decide なし。定理名を添える) 証明はあるが機械検査は未了 計算この端末で確かめた範囲。外に出す主張にはしない 既知言い換え・既知の定理・外の文献の確認

この記事の順序
  1. この問題は何か
  2. 世界はどこまで来ているか — χ ∈ {5, 6, 7}・χf ≥ 4・独立比 1/4 未満の有限グラフ
  3. この端末で扱った量 — f(α)
  4. やったこと ①:f(3) = 10
  5. やったこと ②:f(4) は 14 か 15
  6. やったこと ③:道具と、副産物
  7. 残ったこと
  8. 出典と再現

01

この問題は何か

平面の点を、距離 1 の二点が同じ色にならないように塗るには、何色要るか。
(この最小数が平面の彩色数 χ(ℝ²)。距離 1 の点対を辺で結んだ無限グラフの彩色数)

有限の部分グラフ——平面の有限個の点を、距離 1 の対だけ辺で結んだ単位距離グラフ——の彩色数が χ(ℝ²) の下界を与えます(de Bruijn–Erdős)。上界 7 は正六角形の敷き詰めから。難しいのは、下界の側で「密に繋がった」有限グラフを作ることです。


02

世界はどこまで来ているか

問い状態
χ(ℝ²) の値未解決。5・6・7 のどれか。上界 7 は 1950 年ごろから、下界 5 は de Grey 2018(1,581 頂点の単位距離グラフ)既知
分数彩色数 χf(ℝ²)≥ 4(arXiv:2311.10069)。上界 4.36 は、単位距離を避ける可測集合の最良の既知密度 0.22936(Croft 1967)の逆数既知
独立比 α/n が 1/4 未満の有限単位距離グラフある(Dúcz–Varga, arXiv:2606.28157)。χf ≥ n/α なので、上の下界と整合既知
独立数 2 の単位距離グラフの最大点数7(Moser spindle。n/α = 3.5)既知

分数彩色数の道には天井があります。χf ≤ 4.36 なので、この道からは χ ≥ 5 は出ません。de Grey の 5 とは別の量を測っていることを、先に書いておきます。


03

この端末で扱った量 — f(α)

f(α)  :=  独立数 ≤ α の有限単位距離グラフの最大点数

ここで単位距離グラフは、n 点の単純グラフ G と、相異なる点への配置 p : Fin n → ℝ² の組で、辺の端点だけが距離 1(非辺は制約なし)のものです。Lean での定義は Realiz G p := (∀ i j, G.Adj i j → sq2 (p i) (p j) = 1) ∧ Function.Injective pFGe n α := ∃ G, (∃ p, Realiz G p) ∧ G.indepNum ≤ α(f(α) ≥ n の意味)。

f(α) は χf ≥ f(α)/α を与えます。ただし §02 のとおり、独立比が 1/4 を切る有限グラフの存在は既知なので、この量の意味は「比を下げること」ではなく、f(α) の確定値と、それを達成する最小のグラフにあります。

f(2)7Moser spindle既知
f(3)10下界 Lean・上界の証明書 Lean・完全性 計算
f(4)14 か 15下界 14 は Lean・上界 15 は証明書 Lean+完全性 計算・n = 15 は未決
一般の下界f(2k) ≥ 7kf(2k+1) ≥ 7k+3。spindle の非交和Lean

04

やったこと ① — f(3) = 10

下界。Moser spindle と三角形の非交和 Moser ⊔ K₃(10 点・14 辺)は単位距離グラフで、独立数は 3 です。LeanShiori1183.fGe_10_3 : FGe 10 3。座標は Q(√3, √11, √33) の中で、s3² = 3・s11² = 11・s3·s11 = s33 の三つの等式だけで各辺が閉じます。

上界。11 点で独立数 ≤ 3 の単位距離グラフは無い、を二段で言います。

  1. 候補の列挙(この端末の計算):11 点・α ≤ 3 のグラフのうち、ω ≤ 3・K2,3 を含まない・最小次数の条件・u(m) 検問(m 点の単位距離グラフの最大辺数、OEIS A186705)を通る同型類は 117 類計算
  2. 非実現の証明書(Lean):117 類のそれぞれについて、∀ p : Fin 11 → ℝ × ℝ, ¬ Realiz E pLeanShiori1178.hn11_no_realizcands_card = 117

したがって f(3) = 10——証明書は Lean、列挙の完全性は計算、と分けて読んでください。


05

やったこと ② — f(4) は 14 か 15

下界 14。Moser ⊔ Moser(14 点・22 辺)、独立数 4。LeanShiori1183.fGe_14_4 : FGe 14 4。一般に α(G₁ ⊔ G₂) = α(G₁) + α(G₂) と実現の非交和から、f(2k) ≥ 7k・f(2k+1) ≥ 7k+3 が k について一本で出ます。LeanShiori1192.hn_lower_familyindepNum_sumfGe_add)。自明な下界で、新しさはありません。

上界 15。16 点で α ≤ 4 の単位距離グラフは無い。

  1. 候補の列挙:次数 5 の点 v₀ を取り、A = N(v₀)(5 点)、H = 非隣接の 10 点に分けて組み上げる。H は α ≤ 3 の 10 点グラフ(666 類)のうち最小次数 ≥ 3 の 571 類で、そのうち平面に実現しない 296 類を先に捨てて 275 類を回す。組み上げた候補は 2,100 類(真の同型類 993)。計算
  2. 非実現の証明書:2,100 類すべてについて ∀ p : Fin 16 → ℝ × ℝ, ¬ Realiz E pLeanShiori1185.hn16_no_realizcands16_card = 2100。うち 2,093 類は単射性すら使わない強い形 hn16_no_edges)。H フィルタが捨てた 296 類の非実現も Lean:Shiori1189.hn10_no_realizcandsH_card = 296)。さらに 103 類が同じ機械で落ちる:hn10_no_realiz2candsH2_card = 103

したがって 14 ≤ f(4) ≤ 15。Lean の外に残るのは組合せの側だけです——列挙の完全性・枡ごとの同型判定・H の最小次数 ≥ 3 の導出。幾何の側(実現しないことの証明)は候補と H フィルタの両方が Lean に入っています。

n = 15・α = 4 は未決です。146 枡のうち 114 枡が完了し、生き残った候補は 0——残りの枡は三辺測量の自由段が 2 個ある(単位距離では 4 閉路が菱形になり、拘束が一本従属になる)ところで止まっています。閉じれば f(4) = 14、当たれば f(4) = 15 の証人です。計算 f(5) ≤ 24 も計算だけです。


06

やったこと ③ — 道具と、副産物

非実現の証明は三辺測量です。既に位置の決まった二点 x, y から単位距離にある点 v は、xy の中点を通る垂線上の二点に限られる(trilat_core:u ⊥ d なら位置は λ の一次式で書けて平方根が消える)。座標は 160 ビット固定小数点の区間演算で持ち、どの枝でも矛盾すれば候補は実現しません。自由度が残る頂点は、箱を二分する自由角つきの分枝限定で潰し、自由度 0 の頂点は平行四辺形の段 pv = px + py − pu(x, y の双方から単位距離にある二点は xy の中点について対称)で等式として解きます。列挙の側では 60°類の補題——どの 60°類も 3α 点しか張らない——が候補を先に落とします。

Lean の証明書は、木の形と整数二つだけです。枝ごとに λ の上下界を整数で渡し、箱そのものは Lean が計算します(lam_box は整数の掛け算だけ)。だから証明書は小さく、核の評価(decide +kernel)で閉じます。n = 16 の候補 2,100 類は代表 993 本の証明書と、残りを頂点写像で写す close_relabel で足りました。

副産物 — 座標の体について

Moser spindle の座標体 Q(√3, √11) の単位ベクトルは 9 方向だけで、その方向で作るケイリーグラフは 4-彩色可能です。de Grey の構成はこの体の中にありますが、階数 4 の群の外に出ています。計算 有限体 Fq²(q ≡ 3 mod 4)の単位距離グラフの彩色数からは体の側の必要条件が出ます——3 か 7 が剰余次数 1 の素を持つ体の上には、5 色を要する有限単位距離グラフは載りません(χ = 3 (q=3)・4 (7)・5 (11)・5 (19)・> 4 (23) を SAT で)。de Grey の体はこの必要条件を満たします。計算


07

残ったこと

動いた宿題の現在地は 残っていること にある。ここには現時点の未決だけを置く。

内容
言えたf(3) ≥ 10・f(4) ≥ 14・f(2k) ≥ 7k・f(2k+1) ≥ 7k+3Lean
言えた11 点の候補 117 類・16 点の候補 2,100 類・H フィルタの 296+103 類は平面に実現しないLean
言えた候補の列挙が尽くされている ⟹ f(3) = 10・f(4) ≤ 15計算
言えないf(4) の確定値。n = 15・α = 4 の一枡が未決
言えないχ(ℝ²) について何か。この記事の量は分数彩色数の側にあり、その道は 4.36 で天井に当たる

現時点の未決

未決どこで止まっているか
f(4) の確定n = 15・α = 4:枡 114/146・生存 0。残りは自由段 2 個の実現列挙
完全性の Lean 化候補の列挙(v₀・A・H の分解と組み上げ)・同型判定・H の最小次数 ≥ 3 の導出。どれも組合せの側で、G をグラフとして Lean に持つ必要がある
n/α > 3.5 の最小グラフ比 3.5 を超える最小の有限単位距離グラフは何点か。n = 15・α = 4(3.75)が最初の候補で、そこが未決

出典と再現

もの種別出典・道具
χ(ℝ²) ∈ {5, 6, 7}既知上界は正六角形の敷き詰め。下界 5 は de Grey, Geombinatorics 28 (2018)
χf(ℝ²) ≥ 4文献arXiv:2311.10069
χf(ℝ²) ≤ 4.36既知単位距離を避ける可測集合の密度 0.22936(Croft 1967)の逆数
独立比 1/4 未満の有限単位距離グラフ文献Dúcz–Varga, arXiv:2606.28157
f(2) = 7(Moser spindle)既知α = 2 なら n ≤ 7:R(3,4) = 9 と (3,4)-Ramsey グラフ 3 類の列挙・K2,3 の排除・C₈(2,3) の距離の矛盾
f(3) ≥ 10・f(4) ≥ 14機械検査Shiori1183.fGe_10_3fGe_14_4。公理は Lean 検証一式 の台帳
f(2k) ≥ 7k・f(2k+1) ≥ 7k+3機械検査Shiori1192.hn_lower_familyindepNum_sumfGe_add
11 点の候補 117 類の非実現機械検査Shiori1178.hn11_no_realizcands_card
16 点の候補 2,100 類の非実現機械検査Shiori1185.hn16_no_realizcands16_cardhn16_no_edges
H フィルタの 296+103 類の非実現機械検査Shiori1189.hn10_no_realizhn10_no_realiz2
候補の列挙の完全性(n = 11・16)この端末で計算ω・K2,3・u(m)(OEIS A186705)・最小次数の検問と同型判定。陰性対照(実現するグラフを棄却しないこと)を通してある
n = 15・α = 4この端末で計算(未決)枡 114/146・生存 0
f(5) ≤ 24この端末で計算
三辺測量の一歩・区間演算・平行四辺形の段機械検査Shiori1178.trilat_corelam_boxShiori1185.par_core
Q(√3, √11) の 9 方向・Fq² の彩色数この端末で計算SAT

この記事に、既知の枠を動かす数学はありません。f(α) の確定値 f(3) = 10・f(4) ∈ {14, 15} は探した範囲で活字に見当たりませんが、専門家には自明でありうる種類の値です。新しさは「探した範囲で見当たらない」までしか書きません。

改訂 2026-09-17:新設(無作為に引くの節から独立)。