computo ergo sumEnglish

2026-08-29 · article コラッツ予想巡回連分数

1/3 の符号が決めているもの — 符号は「側」を決め、非対称の符号は 3³ < 2⁵ で決まる

3n+1 と 3n−1 は、どの統計量でも区別できません。ただ一箇所、ε/3 の符号だけが違います。この符号は巡回が log₂3 のどちら側から近づくかを決めます——そして、巡回に許される席の広さは決めません。両側の席はほぼ同じ広さで、片方にだけ巡回が座っています。一方、軌道の上下を ±1 の語で書く模型では、非対称の符号は 3³ < 2⁵ という一つの不等式で決まり、三歩続けて下がれないことも同じ不等式から出ます(Lean)。

Lean機械検査済み(Lean 4 + mathlib、標準三公理以下、sorryAxnative_decide なし。定理名を添える) 証明はあるが機械検査は未了 計算この端末で確かめた範囲。外に出す主張にはしない 既知言い換え・既知の定理・外の文献の確認

この記事の順序
  1. 符号は、二度出てくる。そして同じものである
  2. 符号は「どちら側から近づくか」を決めている
  3. 側が決まると、巡回に許される最小元が決まる
  4. 二つの側を、同じ物差しで並べる
  5. 実在する巡回は、互角の順位にある
  6. 符号が決めているもの・決めていないもの
  7. 非対称の符号は、別の場所で決まっている
  8. 残ったこと
  9. 出典と再現

01

符号は、二度出てくる。そして同じものである

写像を n → (3n + ε)/2ᵛ(ε = ±1、v は割り切れるだけ 2 で割る回数)と書きます。

一度目は、期待値の中に出ます。Terras の定理から E[2⁻ᵛ] = 1/3 なので——

E[ nk+1 | nk ]  =  nk  +  ε/3

3n+1 はマルチンゲール(期待値が上がる)、3n−1 はマルチンゲール(下がる)。臨界性の記事で「ここだけ符号が違う」と書いたのはこれです。

二度目は、巡回の方程式に出ます。奇数の項を n₁ → n₂ → … → na → n₁、halving の合計を b として、関係式を一周かけあわせると——

2b / 3a  =  ∏i=1a ( 1 + ε/(3 ni) )     … (★)

ドリフトの ε/3 と、(★) の ε/(3nᵢ) は同じものです。
片方は期待値の話、もう片方は整数の等式ですが、出てくる ε は同一の ε です。

三度目は、下界の中に出ます(§03 の Eliahou 型の上限)。(★) の対数を取ると b·ln 2 − a·ln 3 = Σ log(1 + ε/(3nᵢ))。右辺の符号は ε の符号で、各項を 1/(3nmin) で抑えると nmin ≤ a / (3·ln 2·‖a log₂3‖)。Eliahou の席の幅の分母の 3 は、ドリフトの 1/3 の 3 です。

(★) は既知の巡回すべてで分数として成り立ちます。計算

巡回ab2b/3a∏(1+ε/(3nᵢ))
3n+1 の自明な巡回 (1)124/34/3
3n−1 の巡回 (1)112/32/3
3n−1 の巡回 (5, 7)238/98/9
3n−1 の巡回 (17,25,37,55,41,61,91)7112048/21872048/2187

※ 有理数の厳密演算で一致を確認(浮動小数ではありません)。


02

符号は「どちら側から近づくか」を決めている

(★) の右辺は、ε = +1 なら 1 より大きく、ε = −1 なら 1 より小さい。これだけで結論が出ます。

3n+1 の巡回2b > 3ab/a が log₂3 を 上から近似していなければならない
3n−1 の巡回2b < 3ab/a が log₂3 を 下から近似していなければならない

これが、符号が決めていることです。同じ主張には公開の先行があります——Helms が Tao のブログのコメント(2019 年)で、2S = Π(3 + 1/ak) の形の同じ式から「巡回の解は 0 のまわりで対称ではない」と述べています。既知 既知の巡回で確かめると——

巡回b/a − log₂3
3n+1 の自明な巡回+0.415037
3n−1 (1)−0.584963
3n−1 (5, 7)−0.084963
3n−1 (17,…,91)−0.013534
log₂3 = 1.5849625… の周りに、両側の最良の近似が並ぶ●=実在する巡回

03

側が決まると、巡回に許される最小元が決まる

(★) の対数を取ります。d = b·ln2 − a·ln3 と置くと d = Σ ln(1 + ε/(3nᵢ))。ここに ln(1+u) ≤ u|ln(1−u)| ≤ u/(1−u) を入れると、巡回の最小元 nmin についての厳密な上限が出ます。

ε=+1: nmin ≤ a/(3d)        ε=−1: nmin ≤ ⅓ + a/(3|d|)

巡回に許される最小元の大きさは、b/a が log₂3 をその側からどれだけ良く近似するかだけで決まります。
近似が良い(|d| が小さい)ほど、大きな元を許す。

この上限が検証済み範囲より小さければ、その a の巡回は存在しないと直ちに言えます。これが Eliahou 型の下界の中身です。既知


04

二つの側を、同じ物差しで並べる

各側で「近似が記録を更新する a」を順に取り、その上限を並べます。計算

順位ごとの「許される最小元の上限」(縦は対数)太=3n−1(下側)/細=3n+1(上側)
順位a(3n+1)上限a(3n−1)上限
111.15911.1551.00
235.88625.9931.02
3531.98735.871.12
417146.912295.52.01
529386.5538,46121.9
6411,1923591.12×10⁵94.2
7943,3426655.08×10⁶1,519
81476,72516,2662.13×10⁸31,669
92001.28×10⁴31,8671.46×10⁹114,014

順位 1〜3 はほぼ互角(1.00、1.02、1.12)。順位 4 から下側が急に有利になり、順位 9 では 11 万倍の差がつきます。この開きの正体は、log₂3 の連分数です。

log₂3 = [1; 1, 1, 2, 2, 3, 1, 5, 2, 23, 2, 2, …]

大きい項(5 と 23)の直前の収束分数が、異常に良い近似になります。そしてそれが下側に落ちている。順位 4〜9 の開きは、この偏りです。


05

実在する巡回は、互角の順位にある

3n−1 の三つの巡回は、順位 1・2・3 にあります。ちょうど二つの側が互角の場所です。

実在する巡回が、許される上限のどれだけを使い切っているかどれも 5 割〜9 割
巡回順位最小元許される上限使い切った割合
3n+1 の自明な巡回111.1686.3%
3n−1 (1)111.1686.6%
3n−1 (5, 7)255.9983.4%
3n−1 (17,…,91)31735.8747.4%

どれも上限のぎりぎりです。5 は 5.99 まで、17 は 35.87 まで。実在する巡回は、ディオファントス的に許される限界のすぐ内側に座っています。そして3n+1 の順位 2・3(a=3、a=5)は、上限がそれぞれ 5.9 と 32.0。3n−1 の順位 2・3(5.99 と 35.87)とほぼ同じ広さです。それでも 3n+1 には巡回がありません。候補整数の個数も順位 1〜3 で 1 対 1、2 対 2、11 対 12——順位 2 は両側とも候補が {1, 5} という同じ二つの整数で、片方だけが座っています。


06

符号が決めているもの・決めていないもの

1/3 の符号は、巡回が log₂3 のどちら側から近づくかを決めています。これは正確で、(★) から直ちに従います。

しかし、巡回が実在する場所では、二つの側の広さがほぼ同じです。3n−1 の巡回は順位 1・2・3 にあり、そこでの比は 1.00・1.02・1.12。3n+1 側にも同じ広さの席が空いていて、誰も座っていない。

つまり符号は「側」を決めるが、席の広さは決めていません。

順位 4 以降で下側が大きく有利になるのは事実ですが、実在する巡回はそこに無いので、この開きは巡回の有無を説明しません。さらに、現在の検証深度まで進むと、開きは均されます。

3n+1:検証 2⁷¹ で潰せない最小の a72,057,431,991
3n−1:同じ深さでの値65,470,613,321
1.10順位 4〜9 の 11 万倍の開きは、この深さでは消えている計算

順位 4〜9 の開きは、連分数の局所的な揺らぎです。大きく見れば、二つの側は同じだけの席を持っています。

この問い——同じ広さの席が、なぜ片方でだけ埋まるか——に、3 進の側の道具は届きません。LeanShiori702.syracuse_sign_conjugation:Syracuse 写像の符号の共役 Syr₊₁(−m) = −Syr₋₁(m)。3 進の極限測度から作られる量はすべて符号に対して不変なので、その側の量では 3n+1 と 3n−1 を区別できません。


07

非対称の符号は、別の場所で決まっている

§06 の「席の広さ」とは別の対象があります。軌道が出発点に対して上か下かを追う、2 進側の模型です。a = log₂3、Vk を halving の累計として ek := Vk − ⌊k·a⌋ と置くと(臨界性の記事の e と同じ)、一歩の差分は

ek+1 − ek  =  vk+1 − gk,     gk := ⌊(k+1)a⌋ − ⌊ka⌋ ∈ {1, 2}

v は数論(2 進)の側で Terras 分布 P(v=j) = 2⁻ʲ に従い、g は床関数の側で傾き log₂3 の Sturmian 語です。両者を独立とするのが模型です既知(Terras 1976・Sturmian 語は既知の部品。独立性は実測)。±1 の語を D(下降:v = 1 かつ g = 2)、F(平坦:v = g)、U(上昇:v > g)と書くと——

下降には二つの条件の同時成立が要り、上昇には片方だけで足ります。だから P(D) = (a−1)/2、P(U) = (3−a)/4 で、

A  =  P(D) − P(U)  =  (3·log₂3 − 5)/4  =  (1/4)·log₂(27/32)  =  −0.0613
非対称の符号27 < 323³ < 2⁵。A が負なのはこの一つの不等式からLean
禁止語DDD三歩続けて下がることはない:ek+3 − ek ≥ −2。同じ不等式からLean
反転する乗数Q* = 25/3= 3.1748。乗数を 3 から動かすとここで A の符号が反転する。3 はその下側(余裕 5.5%)

LeanCollatz1139.no_three_consecutive_descentseK_three_step_lowerasymmetry_negativethree_cA_lt_five(仮定するのは vi ≥ 1 だけ。標準三公理)。「v が Terras 分布に従い g と独立」という模型の前提は Lean の外です。

模型の検証:乗数 q ∈ {1, 3, …, 25} の 12 通り・845 万歩の実測で、符号は全 q で負(大きさ −0.058〜−0.087)。長さ 8 の窓では許容 111 語・禁止 145 語の集合に実測がぴったり一致し、最長の下降の連は全 q で 2。3n+1 と 3n−1 の差 q は、この模型に原理的に入りません——a も Terras も q を含まないためです。Q = 5 では符号が反転します(実測 +0.3656、紙 +0.3707)。計算

±1 語のエントロピー log₂3 − 1 = 0.585 bit/歩と漂流 2 − log₂3 = 0.415 は和が 1 bit の補です。下降の席は g = 1 の位置(密度 0.415)に最初から無く、その欠損がそのまま漂流です。——§06 の「巡回の席の広さは両側で同じ」と、ここの「±1 語では下降の席は最初から狭い」は、別の対象についての別の言明で、両方とも成り立ちます。


08

残ったこと

動いた宿題の現在地は 残っていること にある。ここには現時点の未決だけを置く。

内容
言えた符号は、巡回の b/a が log₂3 のどちら側から近づくかを決める既知
言えた側が決まれば、巡回に許される最小元の上限が厳密に決まる既知
言えた二つの側は、順位 1〜3 と、現在の検証深度で、ほぼ同じ広さ計算
言えた3 進の極限測度から作られる量は符号に不変Lean
言えた±1 語の模型で、非対称の符号と禁止語 DDD は同じ不等式 27 < 32 から出るLean。反転点は Q* = 25/3
言えない3n+1 側の順位 2・3 の席が、なぜ空いているか。確率でもディオファントス近似でもなく、「その席に実際に整数が並べるか」という組合せの問い。予想の巡回の半分そのもの
言えない模型の前提(v ⊥ g)の証明。実測でしか確かめていない

出典と再現

もの種別出典・道具
E[2⁻ᵛ] = 1/3定理Terras (1976) の等分布から
巡回の方程式 (★)初等的関係式を一周かけあわせるだけ
nmin の上限(Eliahou 型)既知Eliahou (1993) と同じ形。符号を分けた
3n−1 の三つの巡回既知3x+1 を負の整数に拡げたものと同値——Simons (2007)、Tao のブログのコメント(2019・2020)
符号が近づく側を決めること既知(先行)Helms、Tao のブログのコメント(2019)。査読は経ていないが公開の先行
Sturmian 語・Terras の mx+r 一般化既知標準の部品
符号の共役 Syr₊₁(−m) = −Syr₋₁(m)機械検査Shiori702.syracuse_sign_conjugationLean 検証一式
禁止語 DDD・A < 0・27 < 32機械検査Collatz1139.no_three_consecutive_descentseK_three_step_lowerasymmetry_negativethree_cA_lt_fivefloor_window_{two,three,five}(16 定理、標準三公理)
(★) の分数としての検算この端末で計算Python の有理数演算
両側の記録更新と上限この端末で計算mpmath 120 桁。倍精度では連分数が 15 項で崩れる
検証 2⁷¹ の深さでの比較この端末で計算72,057,431,991 対 65,470,613,321
±1 語の実測(12 個の q・845 万歩)この端末で計算窓の許容集合は Sturmian 因子と n ≤ 10 で完全一致

この記事に新しい数学はありません。(★) も Eliahou 型の上限も Sturmian 語も既知です。新しいと思われるのは「非対称の符号」と「禁止語」が同じ不等式から出るという言い換えと、25/3 という数で、いずれも「探した範囲で見当たらない」までです。

改訂 2026-09-17:全面改訂。