1/3 の符号が決めているもの — 符号は「側」を決め、非対称の符号は 3³ < 2⁵ で決まる
3n+1 と 3n−1 は、どの統計量でも区別できません。ただ一箇所、ε/3 の符号だけが違います。この符号は巡回が log₂3 のどちら側から近づくかを決めます——そして、巡回に許される席の広さは決めません。両側の席はほぼ同じ広さで、片方にだけ巡回が座っています。一方、軌道の上下を ±1 の語で書く模型では、非対称の符号は 3³ < 2⁵ という一つの不等式で決まり、三歩続けて下がれないことも同じ不等式から出ます(Lean)。
Lean機械検査済み(Lean 4 + mathlib、標準三公理以下、sorryAx・native_decide なし。定理名を添える)
紙証明はあるが機械検査は未了
計算この端末で確かめた範囲。外に出す主張にはしない
既知言い換え・既知の定理・外の文献の確認
符号は、二度出てくる。そして同じものである
写像を n → (3n + ε)/2ᵛ(ε = ±1、v は割り切れるだけ 2 で割る回数)と書きます。
一度目は、期待値の中に出ます。Terras の定理から E[2⁻ᵛ] = 1/3 なので——
3n+1 は劣マルチンゲール(期待値が上がる)、3n−1 は優マルチンゲール(下がる)。臨界性の記事で「ここだけ符号が違う」と書いたのはこれです。
二度目は、巡回の方程式に出ます。奇数の項を n₁ → n₂ → … → na → n₁、halving の合計を b として、関係式を一周かけあわせると——
ドリフトの ε/3 と、(★) の ε/(3nᵢ) は同じものです。
片方は期待値の話、もう片方は整数の等式ですが、出てくる ε は同一の ε です。
三度目は、下界の中に出ます(§03 の Eliahou 型の上限)。(★) の対数を取ると b·ln 2 − a·ln 3 = Σ log(1 + ε/(3nᵢ))。右辺の符号は ε の符号で、各項を 1/(3nmin) で抑えると nmin ≤ a / (3·ln 2·‖a log₂3‖)。Eliahou の席の幅の分母の 3 は、ドリフトの 1/3 の 3 です。
(★) は既知の巡回すべてで分数として成り立ちます。計算
| 巡回 | a | b | 2b/3a | ∏(1+ε/(3nᵢ)) |
|---|---|---|---|---|
| 3n+1 の自明な巡回 (1) | 1 | 2 | 4/3 | 4/3 |
| 3n−1 の巡回 (1) | 1 | 1 | 2/3 | 2/3 |
| 3n−1 の巡回 (5, 7) | 2 | 3 | 8/9 | 8/9 |
| 3n−1 の巡回 (17,25,37,55,41,61,91) | 7 | 11 | 2048/2187 | 2048/2187 |
※ 有理数の厳密演算で一致を確認(浮動小数ではありません)。
符号は「どちら側から近づくか」を決めている
(★) の右辺は、ε = +1 なら 1 より大きく、ε = −1 なら 1 より小さい。これだけで結論が出ます。
これが、符号が決めていることです。同じ主張には公開の先行があります——Helms が Tao のブログのコメント(2019 年)で、2S = Π(3 + 1/ak) の形の同じ式から「巡回の解は 0 のまわりで対称ではない」と述べています。既知 既知の巡回で確かめると——
| 巡回 | b/a − log₂3 | 側 |
|---|---|---|
| 3n+1 の自明な巡回 | +0.415037 | 上 |
| 3n−1 (1) | −0.584963 | 下 |
| 3n−1 (5, 7) | −0.084963 | 下 |
| 3n−1 (17,…,91) | −0.013534 | 下 |
側が決まると、巡回に許される最小元が決まる
(★) の対数を取ります。d = b·ln2 − a·ln3 と置くと d = Σ ln(1 + ε/(3nᵢ))。ここに ln(1+u) ≤ u と |ln(1−u)| ≤ u/(1−u) を入れると、巡回の最小元 nmin についての厳密な上限が出ます。
巡回に許される最小元の大きさは、b/a が log₂3 をその側からどれだけ良く近似するかだけで決まります。
近似が良い(|d| が小さい)ほど、大きな元を許す。
この上限が検証済み範囲より小さければ、その a の巡回は存在しないと直ちに言えます。これが Eliahou 型の下界の中身です。既知
二つの側を、同じ物差しで並べる
各側で「近似が記録を更新する a」を順に取り、その上限を並べます。計算
| 順位 | a(3n+1) | 上限 | a(3n−1) | 上限 | 比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 1 | 1.159 | 1 | 1.155 | 1.00 |
| 2 | 3 | 5.886 | 2 | 5.993 | 1.02 |
| 3 | 5 | 31.98 | 7 | 35.87 | 1.12 |
| 4 | 17 | 146.9 | 12 | 295.5 | 2.01 |
| 5 | 29 | 386.5 | 53 | 8,461 | 21.9 |
| 6 | 41 | 1,192 | 359 | 1.12×10⁵ | 94.2 |
| 7 | 94 | 3,342 | 665 | 5.08×10⁶ | 1,519 |
| 8 | 147 | 6,725 | 16,266 | 2.13×10⁸ | 31,669 |
| 9 | 200 | 1.28×10⁴ | 31,867 | 1.46×10⁹ | 114,014 |
順位 1〜3 はほぼ互角(1.00、1.02、1.12)。順位 4 から下側が急に有利になり、順位 9 では 11 万倍の差がつきます。この開きの正体は、log₂3 の連分数です。
大きい項(5 と 23)の直前の収束分数が、異常に良い近似になります。そしてそれが下側に落ちている。順位 4〜9 の開きは、この偏りです。
実在する巡回は、互角の順位にある
3n−1 の三つの巡回は、順位 1・2・3 にあります。ちょうど二つの側が互角の場所です。
| 巡回 | 順位 | 最小元 | 許される上限 | 使い切った割合 |
|---|---|---|---|---|
| 3n+1 の自明な巡回 | 1 | 1 | 1.16 | 86.3% |
| 3n−1 (1) | 1 | 1 | 1.16 | 86.6% |
| 3n−1 (5, 7) | 2 | 5 | 5.99 | 83.4% |
| 3n−1 (17,…,91) | 3 | 17 | 35.87 | 47.4% |
どれも上限のぎりぎりです。5 は 5.99 まで、17 は 35.87 まで。実在する巡回は、ディオファントス的に許される限界のすぐ内側に座っています。そして3n+1 の順位 2・3(a=3、a=5)は、上限がそれぞれ 5.9 と 32.0。3n−1 の順位 2・3(5.99 と 35.87)とほぼ同じ広さです。それでも 3n+1 には巡回がありません。候補整数の個数も順位 1〜3 で 1 対 1、2 対 2、11 対 12——順位 2 は両側とも候補が {1, 5} という同じ二つの整数で、片方だけが座っています。
符号が決めているもの・決めていないもの
1/3 の符号は、巡回が log₂3 のどちら側から近づくかを決めています。これは正確で、(★) から直ちに従います。
しかし、巡回が実在する場所では、二つの側の広さがほぼ同じです。3n−1 の巡回は順位 1・2・3 にあり、そこでの比は 1.00・1.02・1.12。3n+1 側にも同じ広さの席が空いていて、誰も座っていない。
つまり符号は「側」を決めるが、席の広さは決めていません。
順位 4 以降で下側が大きく有利になるのは事実ですが、実在する巡回はそこに無いので、この開きは巡回の有無を説明しません。さらに、現在の検証深度まで進むと、開きは均されます。
順位 4〜9 の開きは、連分数の局所的な揺らぎです。大きく見れば、二つの側は同じだけの席を持っています。
この問い——同じ広さの席が、なぜ片方でだけ埋まるか——に、3 進の側の道具は届きません。LeanShiori702.syracuse_sign_conjugation:Syracuse 写像の符号の共役 Syr₊₁(−m) = −Syr₋₁(m)。3 進の極限測度から作られる量はすべて符号に対して不変なので、その側の量では 3n+1 と 3n−1 を区別できません。
非対称の符号は、別の場所で決まっている
§06 の「席の広さ」とは別の対象があります。軌道が出発点に対して上か下かを追う、2 進側の模型です。a = log₂3、Vk を halving の累計として ek := Vk − ⌊k·a⌋ と置くと(臨界性の記事の e と同じ)、一歩の差分は
v は数論(2 進)の側で Terras 分布 P(v=j) = 2⁻ʲ に従い、g は床関数の側で傾き log₂3 の Sturmian 語です。両者を独立とするのが模型です既知(Terras 1976・Sturmian 語は既知の部品。独立性は実測)。±1 の語を D(下降:v = 1 かつ g = 2)、F(平坦:v = g)、U(上昇:v > g)と書くと——
下降には二つの条件の同時成立が要り、上昇には片方だけで足ります。だから P(D) = (a−1)/2、P(U) = (3−a)/4 で、
LeanCollatz1139.no_three_consecutive_descents・eK_three_step_lower・asymmetry_negative・three_cA_lt_five(仮定するのは vi ≥ 1 だけ。標準三公理)。「v が Terras 分布に従い g と独立」という模型の前提は Lean の外です。
模型の検証:乗数 q ∈ {1, 3, …, 25} の 12 通り・845 万歩の実測で、符号は全 q で負(大きさ −0.058〜−0.087)。長さ 8 の窓では許容 111 語・禁止 145 語の集合に実測がぴったり一致し、最長の下降の連は全 q で 2。3n+1 と 3n−1 の差 q は、この模型に原理的に入りません——a も Terras も q を含まないためです。Q = 5 では符号が反転します(実測 +0.3656、紙 +0.3707)。計算
±1 語のエントロピー log₂3 − 1 = 0.585 bit/歩と漂流 2 − log₂3 = 0.415 は和が 1 bit の補です。下降の席は g = 1 の位置(密度 0.415)に最初から無く、その欠損がそのまま漂流です。——§06 の「巡回の席の広さは両側で同じ」と、ここの「±1 語では下降の席は最初から狭い」は、別の対象についての別の言明で、両方とも成り立ちます。
残ったこと
動いた宿題の現在地は 残っていること にある。ここには現時点の未決だけを置く。
| 内容 | |
|---|---|
| 言えた | 符号は、巡回の b/a が log₂3 のどちら側から近づくかを決める既知 |
| 言えた | 側が決まれば、巡回に許される最小元の上限が厳密に決まる既知 |
| 言えた | 二つの側は、順位 1〜3 と、現在の検証深度で、ほぼ同じ広さ計算 |
| 言えた | 3 進の極限測度から作られる量は符号に不変Lean |
| 言えた | ±1 語の模型で、非対称の符号と禁止語 DDD は同じ不等式 27 < 32 から出るLean。反転点は Q* = 25/3 |
| 言えない | 3n+1 側の順位 2・3 の席が、なぜ空いているか。確率でもディオファントス近似でもなく、「その席に実際に整数が並べるか」という組合せの問い。予想の巡回の半分そのもの |
| 言えない | 模型の前提(v ⊥ g)の証明。実測でしか確かめていない |
出典と再現
| もの | 種別 | 出典・道具 |
|---|---|---|
| E[2⁻ᵛ] = 1/3 | 定理 | Terras (1976) の等分布から |
| 巡回の方程式 (★) | 初等的 | 関係式を一周かけあわせるだけ |
| nmin の上限(Eliahou 型) | 既知 | Eliahou (1993) と同じ形。符号を分けた |
| 3n−1 の三つの巡回 | 既知 | 3x+1 を負の整数に拡げたものと同値——Simons (2007)、Tao のブログのコメント(2019・2020) |
| 符号が近づく側を決めること | 既知(先行) | Helms、Tao のブログのコメント(2019)。査読は経ていないが公開の先行 |
| Sturmian 語・Terras の mx+r 一般化 | 既知 | 標準の部品 |
| 符号の共役 Syr₊₁(−m) = −Syr₋₁(m) | 機械検査 | Shiori702.syracuse_sign_conjugation。Lean 検証一式 |
| 禁止語 DDD・A < 0・27 < 32 | 機械検査 | Collatz1139.no_three_consecutive_descents・eK_three_step_lower・asymmetry_negative・three_cA_lt_five・floor_window_{two,three,five}(16 定理、標準三公理) |
| (★) の分数としての検算 | この端末で計算 | Python の有理数演算 |
| 両側の記録更新と上限 | この端末で計算 | mpmath 120 桁。倍精度では連分数が 15 項で崩れる |
| 検証 2⁷¹ の深さでの比較 | この端末で計算 | 72,057,431,991 対 65,470,613,321 |
| ±1 語の実測(12 個の q・845 万歩) | この端末で計算 | 窓の許容集合は Sturmian 因子と n ≤ 10 で完全一致 |
この記事に新しい数学はありません。(★) も Eliahou 型の上限も Sturmian 語も既知です。新しいと思われるのは「非対称の符号」と「禁止語」が同じ不等式から出るという言い換えと、25/3 という数で、いずれも「探した範囲で見当たらない」までです。