computo ergo sumEnglish

2026-08-29 · article リーマン予想未解決問題明示公式

リーマン予想 — 素数と零点を、両方向に行き来する。そして Λ = 0 ちょうど、という余裕の無さ

ゼータ関数の非自明な零点は、すべて実部 1/2 の直線上にあるか——1859 年から解けていません。この記事は、明示公式を両方向に回した記録です。零点を足すと素数の階段が現れ、素数だけから零点の高さが復元されます。そして de Bruijn–Newman 定数の Λ ≥ 0 は定理、Λ ≤ 0 が予想——リーマン予想は「ちょうど 0」と同値で、余裕が一切ありません。片側だけ証明できたのは、片側だけが正の割合の現象についての主張だからです。

Lean機械検査済み(Lean 4 + mathlib、標準三公理以下、sorryAxnative_decide なし。定理名を添える) 証明はあるが機械検査は未了 計算この端末で確かめた範囲。外に出す主張にはしない 既知言い換え・既知の定理・外の文献の確認

この記事の順序
  1. この問題は何か
  2. 世界はどこまで来ているか
  3. やったこと ①:複素数を見る三つの逃げ道 — 1/2 は何の軸か
  4. やったこと ②:素数の階段を、零点から組み立てる(両方向に)
  5. やったこと ③:素数の個数を、零点で数え直す
  6. やったこと ④:リーマン予想は、ぎりぎりでしか正しくない
  7. コラッツと並べると、何が見えるか
  8. 残ったこと — なぜ片側だけ証明できたのか
  9. 出典と再現

01

この問題は何か

リーマン予想:ゼータ関数 ζ(s) の非自明な零点は、すべて実部 1/2 の直線上にある。

1859 年、リーマンが 8 ページの論文の中で一行触れた予想です。ミレニアム懸賞問題の一つで、167 年間解けていません。

なぜ素数の問題なのか。リーマンが同じ論文で書いた明示公式が、その理由です。

ψ(x)  =  x  −  Σρ xρ/ρ  −  log(2π)  −  ½·log(1−x−2)

左辺 ψ(x) は素数の階段(x 以下の素数べきについて log p を足したもの)。右辺に素数は一つも出てきません。出てくるのは ρ ——ゼータの零点だけ。

零点 ρ = β + iγ の寄与xβ実部 β が、その波の振幅の育ち方を決める
リーマン予想が言うことβ = ½ が全部どの波も同じ大きさで効く
言い換えると誤差は √x素数はできる限り規則正しく並んでいる

02

世界はどこまで来ているか

零点の割合 — 67.250% が臨界線上にあることは、定理

誰が臨界線上にある零点の割合
1942Selberg正の割合(値は小さい)
1974Levinson1/3
1989Conrey2/5
2020年ごろPratt–Robles ほか0.6725

ここは慎重に読む必要があります。
「零点の 67.250% が臨界線上にある」は定理です。「リーマン予想が 67.250% 証明された」ではありません。
前者は別の命題についての定理で、67% 証明された状態というものは存在しません。

さらに、この 67.250% は pair correlation の帯域 1 での天井 68.185% の 98.6% に達しています。いまの道具の限界のすぐ手前にいるということです。

数え上げられる — これが決定的に効く

リーマン予想には、「高さ T までに零点が何個あるか」の公式があります(Riemann–von Mangoldt)。だから「符号の変化がその個数だけあれば、その範囲には見落としが無い」と確定できます。この端末でも確かめました。計算

高さ TN(T) の公式Z(t) の符号変化一致
10028.1329
400200.51201
800490.66491

複素数を使わずに書ける — ロビンの判定

リーマン予想は、複素数をまったく使わない同値な形を持っています。

n > 5040 のすべてで   σ(n) < eγ · n · ln ln n   ⇔   リーマン予想

σ(n) は約数の和。反例があれば有限の証拠になる——論理の形でいえば Π₁ です。ただし余裕は薄い。

nσ(n)/(n ln ln n)eγ余裕
100801.75581.78111.42%

Λ の区間 — 押し下げた先が、そのまま証明になる量

誰が何をΛ の区間
1950de Bruijn上界 1/2(−∞, 0.5]
2018Rodgers–Tao下界 0(定理)[0, 0.5]
2019Polymath 15上界 0.22[0, 0.22]
2021Platt–Trudgian上界 0.2[0, 0.2]
————上界 0 = リーマン予想の証明[0, 0]

これは §06 で詳しく扱います。67.250% を 100% にしてもリーマン予想にはなりませんが、Λ の上界を 0 まで押し下げたら、それはリーマン予想の証明そのものです。査読を経ていない 2026 年の候補(0.1875・0.1787854・0.172422)と、公開ログだけからどこまで届くかは 論文のログだけで、どこまで届くかにあります。


03

やったこと ① — 複素数を見る三つの逃げ道

出発点は、次の一つの事実です。

複素数の計算は、入力が2次元、出力も2次元、合計4次元である。だから3次元に最適化された脳では、そのままでは処理できない。

これは比喩ではなく、そのまま正確な記述です。複素関数のグラフは 4 次元の中にあり、3 次元空間に入りません。だから数学は落とし方を発明してきました。よく使われる三つを、同じ関数に全部かけます。

逃げ道 01:入力を1本の線に絞り、時間で描く

実部 σ を固定して虚部 t だけを動かすと、入力は 1 次元になり、出力の 2 次元だけが残るので複素平面に曲線が描けます。

ζ(σ+it) の軌跡(t = 0 → 50) t = 0.00
原点への最小距離
Re(s) = 1/20.00200通る(=零点がある)
Re(s) = 0.850.24210通らない
Re(s) = 0.300.17245通らない

※ 臨界線の 0.00200 は t を離散的に拾っているために生じる残りで、刻みを細かくすればいくらでも 0 に近づきます。

捨てたもの:入力の 1 次元。予想が言っている「他の線では通らない」の方は、この図では確かめられません。

逃げ道 02:出力の2次元を、色に押し込む

色相=出力の偏角(回転する量なので循環する色相と相性がよい)、明るさ=出力の大きさ(対数で圧縮)。すると入力平面の上に 1 枚の絵が描けます。

ζ(σ+it) のドメイン彩色。色相=偏角、明るさ=大きさσ ∈ [−0.6, 1.6]、t ∈ [0, 46]

零点は、色相が全部集まる点として見えます。そういう点が縦の一本の線の上に並ぶ——それが Re(s) = 1/2 です。左端(σ < 0)に等間隔で並ぶ暗い点は自明な零点(負の偶数)で、予想が問題にしているものではありません。

捨てたもの:出力の大小の読み取りやすさ。色相は循環するので「どちらが大きいか」が読めません。

逃げ道 03:臨界線の上でだけ、4次元が1次元の波になる

Z(t)  =  eiθ(t) · ζ(½ + it)   は、実数になる

リーマン–ジーゲルの Z 関数。これは臨界線の上でだけ起きる現象です。

Z(t):臨界線上のゼータは、実数の波になる符号が変わるところが零点

4 次元が、1 本の実数の波に落ちました。零点を「符号の変化」として目で数えられる——§02 の「数え上げられる」の実体がこれです。

捨てたもの:臨界線を離れる自由。Z は臨界線の外では実になりません。この逃げ道は「予想が正しい世界」の内側でしか使えず、予想が破れている場所を探すのには使えません。

三つとも、4次元を見てはいない

逃げ道残したもの捨てたものできないこと
線に絞る出力の2次元まるごと入力の1次元線を全部は調べられない
色に押し込む入力の2次元まるごと出力の大小値が読めない
実の波にする数え上げの正確さ臨界線を離れる自由反例を探せない

では、1/2 は何なのか

1/2 は、鏡の位置です。適当に整えた ξ(s) について ξ(s) = ξ(1−s) が成り立ち、この入れ替えで動かない点の集まりが Re(s) = 1/2(σ = 1−σ の解)。

1/2 の正体対称の軸ξ(s) = ξ(1−s) が動かさない線
分かっていること鏡に対称零点は必ず軸をはさんで対で現れる(定理)
予想が言うこと軸の上対ではなく、軸そのものに乗っている

「対称である」は定理で、「軸の上にある」が予想です。対称なだけなら零点は 0.3 と 0.7 に対で存在してもかまわない。予想は、そういう対が一つも無いと言っています。

脳も、すでに同じことをしている

そして、この制約は四次元に始まったものではありません。目が受け取っているのは2次元の像で、脳はそれを両眼のずれや動き、手の距離感から3次元に起こしています。

本当にあるもの受け取るものやっていること
視覚3次元の世界2次元の網膜像両眼のずれ・動き・手の距離感から起こす
複素関数4次元のグラフ2次元の図線・色・位相因子から起こす

3 次元も、直接は見ていません。落として受け取り、別の手がかりで起こし直す——それが知覚の常態であって、4 次元だけが特別に不可視なのではない。
違うのは手がかりの豊富さです。3 次元を起こす手がかりは体に組み込まれていて、4 次元を起こす手がかりは、自分で作らなければならない。


04

やったこと ② — 素数の階段を、零点から組み立てる(両方向に)

§01 の明示公式を、この端末で回します。両方向に。計算

順方向:零点を足すと、階段が現れる

ρ = ½ ± iγ を対にしてまとめると、零点 1 個の寄与は周波数 γ の波になります。

2√x · [ ½·cos(γ log x) + γ·sin(γ log x) ] / ( ¼ + γ2 )
ψ(x) — 太線=本物の階段 / 細線=零点 0 個から再構成 平均誤差 1.199

零点が 0 個のとき、右辺はただの直線です。そこに波を足していくだけで、素数の場所に段が立ちます。2、3、4、5、7、8、9、11——素数と素数べきのところに、他のどこでもなく。

零点の個数平均誤差零点の個数平均誤差
01.199051000.28873
11.031425000.10649
100.7496910000.07010
500.4100114990.05454
最初の 5 個の零点の寄与(γ = 14.13, 21.02, 25.01, 30.42, 32.94)縦の目盛は素数べきの位置

波の山と谷が、素数の位置でそろって同じ向きに重なります。そこ以外では打ち消し合う。零点の高さ γ は、素数の位置を符号化した周波数です。

逆方向:素数だけから、零点の高さを出す

スペクトルなら逆変換もできるはずです。200 万までの素数べきを使って、次の和を計算します。零点の情報は一切入れていません。

S(t)  =  −Σpk<2×106 (log p)·p−k/2·cos(t·k·log p)·w(k log p)
素数 149,235 項だけから作った S(t)。縦線=本物の零点の高さ γ零点は一切使っていない
山の位置本物の γずれ
14.16114.1347250.0267
21.02321.0220400.0009
32.93632.9350620.0006
37.58737.5861780.0005
43.32843.3270730.0010

10 個中 10 個。最良で小数第 4 位まで一致しています。
素数の並びの中に、零点の高さがそのまま入っているということです。

※ 窓関数(Fejér 型の三角窓)が要ります。生の和では、打ち切りの縁が作る背景に山が埋もれます。


05

やったこと ③ — 素数の個数を、零点で数え直す

ψ(x) は「素数べきに log p の重みを付けた和」です。今度は π(x) ——「x 以下の素数の個数」そのもの。

まず、自分で数える

π(10k) の値は有名で、書き写せば一瞬です。それでも篩で数えます。記憶からの転記は、この節の別の場所で誤りを出しています(ラベルの検証)。数えられるものは数える。計算

kπ(10ᵏ)li(10ᵏ)li − πR(10ᵏ)R − π

li より、R の方がずっと近い

R(z)  =  Σn≥1 μ(n)/n · li(z1/n)
|li(x) − π(x)| と |R(x) − π(x)|(縦は対数)R の方が一貫して近い
k|li − π||R − π|何倍近いか

R は li より 4〜31 倍近い。零点由来の補正を先取りしている分だけ良くなります。

そして表を見ると、もう一つ目につくことがあります。li − π が、どの k でも正です。

実測(10⁸ まで)li > π常に li が上。差は 754 まで広がる
Littlewood (1914)無限回入れ替わる定理。li − π の符号は無限に変わる
最初の入れ替わり未発見1019 より上にあることまで分かっている

「数値が示すこと」と「定理が言うこと」が食い違う、有名な例です。10⁸ まで li が常に上でも、それは何の保証にもなりません。

零点を足すと、π(x) の階段が現れる

π(x)  ≈  R(x)  −  Σρ R(xρ)
π(x) — 太線=本物の階段 / 細線=零点 0 個から再構成 平均誤差
零点の個数平均誤差

π 側は ψ 側よりずっと重い。R が Möbius の無限和で、複素引数の指数積分を毎回計算する必要があるためです。零点 200 個で 2,203 秒かかります。同じ定理でも、どちらの量を選ぶかで計算の重さが変わります。


06

やったこと ④ — リーマン予想は、ぎりぎりでしか正しくない

これは比喩ではありません。「ぎりぎり」の部分が、2018 年に定理になりました。

リーマン予想はΛ ≤ 0de Bruijn–Newman 定数 Λ を使うと、こう書き換えられる
2018 年に定理になったのはΛ ≥ 0Rodgers–Tao。Newman が 1976 年に予想していたもの
合わせるとΛ = 0リーマン予想は「ちょうど 0」と同値。余裕が一切ない

Newman は 1976 年にこう書いています——「リーマン予想が正しいとしても、それはぎりぎりでしか正しくない」。42 年後、Rodgers と Tao がそれを証明しました。

Λ とは何か — 小さい模型で見る

零点に熱を流すという操作があります。時刻 t を上げていくと零点が動き、ある時刻で全部が実軸に乗る。その境目が Λ です。

同じことが多項式で起きます。e^(−t·d²/dx²) を掛けると x²+a²x²+a²−2t になり、t = a²/2 で複素根が実根に変わる。

(x²+0.55²)(x²−1)(x²−4) に e−t·d²/dx² を掛ける t = 0.000

複素の対が実軸に近づき、t ≈ 0.1020 で合流して実軸に乗ります。この 0.1020 が、この多項式の「Λ」です。リーマン予想は「ゼータの Λ が 0 以下」——つまり t = 0 の時点で、もう全部が実軸に乗っているという主張です。計算

「ぎりぎり」の側が、先に定理になった

主張意味状態
Λ ≤ 0t=0 でもう全部実 = リーマン予想未解決
Λ ≥ 0t=0 より前では実になっていない = 余裕がない2018 年、定理

証明されたのは問題を難しくする側でした。もし Λ < 0 なら安全マージンがあり、証明の道も広がったはず。Rodgers と Tao は、そのマージンが存在しないことを証明しました。やり方も示唆的で、零点の「不規則さ」を使って余裕の存在を否定しています。

その「ぎりぎり」を、測ってみる

隣り合う零点の間隔の分布(零点 1500 個)実測/ランダム行列の予測/無相関だった場合
正規化した間隔実測ランダム行列(GUE)無相関だったら
[0, 0.2)(非常に近い対)0.002670.008390.18127
[0.8, 1.0)0.213480.185710.08145
[2.0, 3.0)0.010010.017010.08555

非常に近い対は、無相関だった場合の 1/68 しかありません。零点は互いに避け合っています。計算

近い対(レーマー対の候補)指標 λ の中央値は 5.12

1496 番目の零点(高さ 1977.17)は、指標が中央値の 1/229。この程度の高さでもう、これだけ近い対があります。

Λ は、リーマン予想そのものの目盛りになっている

Λ が入る区間の変化下界 0 は 2018年に定理として閉じた

Λ ≤ 0 を証明することは、リーマン予想を証明することそのものです。言い換えではなく、同値。
下半分はもう閉じています。残っているのは「上界を 0 まで押し下げる」ことだけで、それができた時点でリーマン予想が証明されます。

この性質は珍しいものです。「零点の 67.250% が臨界線上にある」は 100% にしても自動的にリーマン予想にはなりません(零点が全部臨界線上にあることと、割合が 1 であることは違う)。Λ の上界だけが、押し下げた先がそのまま証明になっている量です。


07

コラッツと並べると、何が見えるか

この節は、コラッツ予想との比較です。最初に、いちばん大事なことを書きます。

決着という一点で見れば、二つはまったく同じ場所にいます。どちらも「わからない」。
以下の比較が測っているのは「決着への距離」ではなく、「蓄積された知見の量と種類」です。
そして「蓄積が多い ⇒ 先に決着する」は、歴史が保証していません。

問いリーマンコラッツ
証明されているかいいえいいえ
反証されているかいいえいいえ
周辺で分かっていること多い少ない

上の二行がゴールで、そこでは完全に同着。三行目だけが違います。その三行目を六つの軸に分けます。

何を測るかリーマンコラッツ多く分かっているのは
01論理の形Π₁(ロビンの判定で複素数なしに書ける。反例に有限の証拠)発散側は Π₂(反例に有限の証拠が無い)リーマン
02部分的な結果零点の 67.250% が臨界線上(定理)Krasikov–Lagarias の x0.84密度 0 に落ちる。2003 年から停止リーマン
03検証の仕組みN(T) の公式で「高さ T まで全部」が言える「上に何個あるか」の公式が無いリーマン
04障害の名前有限体上では定理(Weil / Deligne)。障害は「幾何が足りない」と名指せる何が足りないかも言えないリーマン
05数値の信頼度ロビンの余裕は実測 1.42% しかない(n=10080)実測は 2⁷¹ まで、余裕も広いコラッツ
06壁の形67.250% は pair correlation の天井 68.185% の 98.6%同型(道具の天井のすぐ下)同じ

蓄積が多いことは、先に決着することを意味しない

ここから先の二つの見方——「積み上げでは越えられない」と「証明できるのはいつも余裕が無い側」——は、この問題に限らず出てきます。五つの問題を同じ物差しで並べたものが 臨界にだけ、問題は残る です。

何が起きたか
フェルマーの最終定理150 年ぶんの部分結果が積み上がったが、Wiles の証明はそのどれも使っていない
感度予想足場がほとんど無いまま、2019 年に 2 ページで解かれた

それでも、一つだけ形が同じもの

どちらの問題でも、証明されたのは「余裕が無い」側です。
リーマンは Λ ≥ 0(余裕が無い)、コラッツは q = 3 が唯一の臨界
数学は両方について「逃げ場が無いこと」を示すのに成功し、「答えを出すこと」には成功していない。

そしてもう一つ。どちらも対象は「可能な限り不規則」です。コラッツの割り算の回数は完全に等分布し(Terras)、零点は完全に反発し合う(この記事の実測で無相関の 1/68)。不規則さは定理で、規則は予想。——両方とも、そこで止まっています。

見立て(測れないものについての、測れない予想)

リーマンコラッツ
真である98%99%
今世紀中に決着35%10% 未満

真らしさは、ほぼ同じです。差は分解能の中にあり、意味がありません。数値的な前例(軸05)はリーマンの減点材料にはなりません——メルテンス予想はリーマン予想の強化版であり、その失敗はリーマン予想自体について何も言わないからです。むしろ減点材料があるのはコラッツの側で、近傍の 3n−1 には巡回があり、5n+1 は発散します。


08

残ったこと — なぜ片側だけ証明できたのか

動いた宿題の現在地は 残っていること にある。ここには現時点の未決だけを置く。

内容
言えた明示公式が両方向に回る(順:誤差 1.199→0.0545/逆:10/10 復元)計算
言えたπ(10ᵏ) を k=8 まで数え、R が li より 4〜31 倍近い計算
言えたΛ の仕組みを多項式で再現(複素根が t≈0.1020 で実軸に合流計算
言えた零点は無相関の 1/68 まで反発し合う(零点 1500 個)計算
言えない零点の実部が本当に 1/2 か。この記事の計算はすべて「実部は 1/2」を前提として入れています
言えないli − π の符号が変わる場所。10⁸ までしか数えていない
言えない零点の間隔が GUE に一致し始める高さ。高さ 2000 までは予測より規則正しい([0, 0.2) で 0.00267 対 0.00839)。どこで入れ替わるかは未測
言えない予想そのもの。この記事に新しい数学はありません

Λ の二つの向きが、なぜ非対称なのか

Rodgers–Tao が Λ ≥ 0 を証明した筋は、こうです。

もし Λ < 0 なら、零点は t = 0 の時点で実際より規則正しく並んでいなければならない。
ところが零点はそこまで規則正しくない——それは既に分かっていること。だから Λ ≥ 0。

示したいこと要る情報手元にあるか
Λ ≥ 0(余裕が無い)零点の不規則さの下界ある(無条件に)
Λ ≤ 0(=リーマン予想)零点の不規則さの上界無い。そしてそれはリーマン予想と同程度に難しい

既知 「なぜ片方だけなのか」には、もう一段の名前がつきます。証明された側が言っているのは「零点は、局所平均で等間隔ではない」——正の割合の零点についての主張で、平均を取る道具が届く場所にあります。証明されていない側が言っているのは「臨界線の外に零点は一つも無い」——零割合の欠陥の不在についての主張です。線の外の零点が仮にあったとして、それは密度 0 でありえます。密度 0 のものは、どの相関にも、どのモーメントにも、どの漸近公式にも写りません。すべての尺度で零点が完全に規則的だと分かっても、リーマン予想は出ません。平均は、混んでいるものは見えますが、まばらなものは見えません。片側だけ証明できたのは、片側だけが混んでいる側の主張だからです。論理の形はこの向きを説明しません——Λ ≤ 0 は Π₁、Λ ≥ 0 は Π₂ で、階層の上にあるほうが証明されています。同じ形がコラッツにもあります。「ほとんどすべての軌道がほぼ有界値を取る」は正の割合、「巡回が無い」は軌道一本です。

既知 零点の側で測れる量は、どれも言い換えです。臨界線上の零点 ρ = 1/2 + iγ で Re ζ′(ρ) > 0 ⟺ |S(γ)| < 1/2(S は偏角関数。arXiv:2305.14253 に逐語である恒等式)。Hurwitz ゼータ ζ(s, a) の族で零点を a について動かすと、一次摂動は dρ/da|a=1 = ρζ(ρ+1)/ζ′(ρ)(初等)。いずれも ζ の解析的性質の言い換えで、Λ の向きを動かしません。

検問の一文。零点の上で測った統計に構造が見えたら、まず「ζ を使わない点過程(同じ密度の一様な点列や、GUE の固有値)でも同じ値が出るか」を確かめる。出るなら、それは恒等式であって発見ではありません。


出典と再現

もの種別出典・道具
明示公式・関数等式定理Riemann (1859) / von Mangoldt (1895)
Z(t) が臨界線上で実定理Riemann–Siegel
li − π の符号が無限回変わる定理Littlewood (1914)
ロビンの判定定理Robin (1984)
リーマン予想 ⟺ Λ ≤ 0定理de Bruijn (1950) / Newman (1976)
Λ ≥ 0定理Rodgers–Tao (2018), arXiv:1801.05914
Λ ≤ 0.22定理Polymath 15 (2019)
Λ ≤ 0.2定理Platt–Trudgian (2021), Bull. LMS
Re ζ′(ρ) > 0 ⟺ |S(γ)| < 1/2既知arXiv:2305.14253
Hurwitz 族の零点の一次摂動既知(初等)dρ/da = ρζ(ρ+1)/ζ′(ρ)
零点 1500 個の γこの端末で計算mpmath
三本の軌跡・ドメイン彩色・Z(t)この端末で計算mpmath 25 桁
ψ(x) の再構成(順・逆)この端末で計算逆は pk < 2×10⁶、149,235 項+Fejér 窓
π(10ᵏ)、k = 1〜8この端末で計算エラトステネスの篩、5 秒
多項式の熱流(合流 0.1020)この端末で計算6 次の多項式、根を追跡
零点の間隔分布・レーマー対この端末で計算GUE との比較つき
N(T) と Z(t) の符号変化この端末で計算T=800 まで完全一致

この記事に新しい数学はありません。明示公式は 1859 年、三つの可視化は標準手法、Λ も Rodgers–Tao も既知です。この記事がやったのは実際に回して、数字を出して、図にすることです。計算でいちばん重い事実は逆向きが回ることです——素数の和に山が立ち、その位置が 21.022040 と 0.0009 しか違わない。

改訂 2026-09-17:全面改訂。