computo ergo sum

2026-10-01 · chapter ヤン–ミルズと質量ギャップ第 1 部 数学の準備無限次元の確率

この本の全体 目次と読む順
  1. 第 0 部 入口 — この本の読み方
  2. 0-01 この本の読み方
  3. 0-02 一枚の絵
  4. 0-03 問題文を一語ずつ読む
  5. 0-04 数学の四次元と物理の四次元
  6. 第 1 部 数学の準備
  7. 1-01 ベクトル空間と線形写像
  8. 1-02 群とは何か
  9. 1-03 リー群とリー環
  10. 1-04 SU(2) と SU(3)
  11. 1-05 多様体と接空間
  12. 1-06 微分形式と外微分
  13. 1-07 ベクトル束と接続
  14. 1-08 確率と測度
  15. 1-09 無限次元の確率
  16. 1-10 ヒルベルト空間と自己共役作用素
  17. 1-11 フーリエ解析と分布
  18. 1-12 寄り道
  19. 第 2 部 物理の準備
  20. 2-01 ラグランジアンと作用
  21. 2-02 場という考え
  22. 2-03 電磁気学はゲージ理論である
  23. 2-04 特殊相対論と時空
  24. 2-05 量子力学の骨
  25. 2-06 調和振動子と生成消滅
  26. 2-07 経路積分の考え方
  27. 2-08 統計力学と相転移
  28. 2-09 寄り道
  29. 2-10 緩和の時間と動的指数 z
  30. 第 3 部 ヤン–ミルズ理論(古典)
  31. 3-01 ゲージ原理
  32. 3-02 非可換ゲージ場
  33. 3-03 作用と方程式
  34. 3-04 幾何としてのゲージ理論
  35. 3-05 インスタントンと位相
  36. 3-06 寄り道
  37. 3-07 標準模型の中のヤン–ミルズ
  38. 第 4 部 量子化
  39. 4-01 正準量子化とハミルトニアン
  40. 4-02 経路積分とユークリッド化
  41. 4-03 摂動論と Feynman ダイアグラム
  42. 4-04 発散と繰り込み
  43. 4-05 発散の代数
  44. 4-06 漸近自由
  45. 4-07 次元転移と Λ
  46. 4-08 ゲージ固定と Faddeev–Popov
  47. 4-09 場の量子論の公理
  48. 4-10 Osterwalder–Schrader の公理と再構成
  49. 4-11 質量ギャップの定義
  50. 4-12 寄り道
  51. 第 5 部 格子ゲージ理論
  52. 5-01 Wilson の格子
  53. 5-02 強結合展開
  54. 5-03 反射正値性と転送行列
  55. 5-04 無限体積極限とクラスター展開
  56. 5-05 弱結合と連続極限
  57. 5-06 U(1) と非可換の違い
  58. 5-07 モンテカルロ法
  59. 5-08 グルーボールと弦張力の測定
  60. 5-09 何を固定して極限を取るか
  61. 5-10 有限群の格子ゲージ理論
  62. 5-11 寄り道
  63. 第 6 部 構成的場の理論
  64. 6-01 構成的場の理論とは
  65. 6-02 二次元の可解性とヤン–ミルズ測度
  66. 6-03 スカラー場の構成
  67. 6-04 クラスター展開
  68. 6-05 繰り込み群の段の列
  69. 6-06 三次元ヤン–ミルズの紫外安定性
  70. 6-07 四次元
  71. 6-08 四次元の φ⁴ の自明性
  72. 6-09 確率量子化と正則性構造
  73. 6-10 四次元で止まる場所
  74. 6-11 発散以外の障害
  75. 6-12 寄り道
  76. 第 7 部 物理の側から
  77. 7-01 物理はどう見ているか
  78. 7-02 閉じ込めの機構
  79. 7-03 弦の絵
  80. 7-04 大 N
  81. 7-05 ひも理論と余剰次元
  82. 7-06 余剰次元が見えなくなる仕組み
  83. 7-07 ゲージ場はどこから来るか
  84. 7-08 ホログラフィー
  85. 7-09 質量ギャップが幾何になる
  86. 7-10 四次元に戻す
  87. 7-11 超対称と Seiberg–Witten
  88. 7-12 等価原理に当たる一文
  89. 7-13 物理の掘り方が数学と離れる場所
  90. 第 8 部 二つの言葉の辞書 — 物理の視点と数学の視点
  91. 8-01 辞書の読み方
  92. 8-02 辞書 A
  93. 8-03 辞書 B
  94. 8-04 辞書 C
  95. 8-05 私たちの仮定の物理側の対応
  96. 第 9 部 現在地と課題
  97. 9-01 世界はどこまで来ているか
  98. 9-02 二つの掘り方の切れ目
  99. 9-03 新しい概念の候補
  100. 9-04 課題の一覧
  101. 9-05 よくある誤解
  102. 第 10 部 質量ギャップの厳密な証明へ — この端末の検討
  103. 10-00 第 10 部の入口 — 酔歩と定規と時計
  104. 10-01 理論の構成の筋
  105. 10-02 一段の記帳
  106. 10-03 仮定 H と三つの鎖
  107. 10-04 方向の地図
  108. 10-05 方向 12〜14
  109. 10-06 方向 15・15′
  110. 10-07 Lean で閉じた言明と既存の結果の対応表
  111. 10-08 壁の一覧
  112. 10-09 ひらめき帳から
  113. 10-10 主張しないこと
  114. 10-12 つじつま合わせ
  115. 10-11 定理までの距離
  116. 10-13 小さな問い — 卒業研究の大きさで決着のつく十〜二十問
  117. 付録
  118. A-01 記号表
  119. A-02 用語集
  120. A-03 文献案内
  121. A-04 Lean と機械検査
  122. A-05 この本の作り方
  123. A-06 仮定の索引

無限次元の確率 — 一様な重さは無く、ガウス測度から始める

この章で分かること — 無限次元には平行移動で変わらない重さ(ルベーグ測度)が無く、出発点はガウス測度になること。ずらしてよい方向の全体(Cameron–Martin 空間)には、見本が確率 1 で入らないこと。ブラウン運動・白色雑音・自由場が、次元とともに関数ですらなくなること。

前提となる章 — 1-08。ℓ2\ell^2・トーラスの上のフーリエ係数・超関数は、要る分だけその場で定義します(本格的には 1-10・1-11)。

先に言うこと — 測度論の大きな定理は引用で済ませます。この章で作る測度はすべてガウスで、相互作用のある測度には §10 で引用として触れるだけです。四次元のヤン–ミルズ理論を測度として作ることは未解決で、このサイトもそれを示していません。

この章の順序
  1. なぜ無限次元か — 場の変数は無限個
  2. ルベーグ測度は無い — 直交する方向に球を詰める
  3. 高次元のガウスは殻に住む — 分散を減らす
  4. 無限次元のガウス測度 — 影がすべてガウス
  5. Cameron–Martin の定理 — ずらせる方向(図1)
  6. ブラウン運動 — 経路は落ち着き、エネルギーは発散(図2)
  7. 白色雑音 — 点では値を持たない
  8. 自由場と次元 — 一点の分散が発散する(図3)
  9. 場の積 — 超関数どうしは掛けられない
  10. 寄り道:互いに特異な測度 — 尺度・質量・相互作用

01

なぜ無限次元か — 場の変数は無限個

1-08 の格子の確率は、変数が有限個なので「密度 × 体積要素」で書けました。格子を細かくし箱を大きくすると、変数は無限個になります。物理の本は、質量 mm の自由なスカラー場(ユークリッド化したもの、4-02)の確率をこう書きます。

dμ(φ) =形式的 1Zexp⁡(−12∫Rd(∣∇φ∣2+m2φ2) dx)∏x∈Rddφ(x)(1)d\mu(\varphi)\ \stackrel{\text{形式的}}{=}\ \frac1Z\exp\Big(-\frac12\int_{\mathbb R^d}\big(|\nabla\varphi|^2+m^2\varphi^2\big)\,dx\Big)\prod_{x\in\mathbb R^d}d\varphi(x) \tag{1}

右辺の二つの因子は、どちらも単独では意味を持ちません。∏xdφ(x)\prod_xd\varphi(x) にあたる測度は存在せず(§02)、指数の中の積分は見本のほとんどすべてで +∞+\infty です(§05・§06)。それでも積としての μ\mu はガウス測度として作れます(§04)。問題文も、構成的場の理論が生んだ測度を 'non-Gaussian, Euclidean-invariant measures on spaces of generalized functionals' と書きます 既知。超関数(§07)の空間の上の、ガウスでなく、回転と平行移動で変わらない測度、という意味です。この章が扱うのは、その出発点になるガウスの場合です。例:d=1d=1 で区間を NN 等分すると、(1) は 1-08 §07 の NN 変数のガウス分布で、N→∞N\to\infty の行き先がこの章の主題です。

02

ルベーグ測度は無い — 直交する方向に球を詰める

長さ・面積(ルベーグ測度)は、平行移動で変わらず、有界な集合に有限の重さを配ります。無限次元ではこの二つが両立しません。二乗和が有限な数列の空間 ℓ2={x=(x1,x2,… ):∑kxk2<∞}\ell^2=\{x=(x_1,x_2,\dots):\sum_kx_k^2\lt\infty\}、長さ ∥x∥=(∑kxk2)1/2\|x\|=(\sum_kx_k^2)^{1/2}、第 nn 成分だけが 1 の数列 ene_n で述べます。

定理 既知 ℓ2\ell^2 の上の測度が平行移動で変わらず、どの開球にも有限の重さを配るなら、それは 0 である。

証明。n≠mn\ne m なら ∥en−em∥=2>1\|e_n-e_m\|=\sqrt2\gt1 なので、球 B(en,12)B(e_n,\frac12) は互いに交わらず、どれも B(0,32)B(0,\frac32) に入ります。

∑n=1∞μ(B(en,12)) ≤ μ(B(0,32)) < ∞(2)\sum_{n=1}^{\infty}\mu\big(B(e_n,\tfrac12)\big)\ \le\ \mu\big(B(0,\tfrac32)\big)\ \lt\ \infty \tag{2}

左辺の各項は平行移動で同じ値 cc なので c=0c=0 です。ℓ2\ell^2 は、有理数を成分とし有限個を除いて 0 の数列を中心とする可算個の半径 12\frac12 の球で覆えるので、全体の重さも 0 です。∎ Rn\mathbb R^n なら球は 3n3^n 個(体積の比)までしか入らず、矛盾しません。

03

高次元のガウスは殻に住む — 分散は減らねばならない

Rn\mathbb R^n の標準ガウス N(0,In)N(0,I_n)(1-08 (8))の密度は原点で最大ですが、重さの大半は遠くの薄い殻にあります。∣x∣2=∑k≤nxk2|x|^2=\sum_{k\le n}x_k^2 は独立な nn 個の和なので、大数の法則(1-08 (12))から ∣x∣2/n→1|x|^2/n\to1 です。

E∣x∣2=n,Var⁡∣x∣2=2n,∣x∣=n+O(1)(3)E|x|^2=n,\qquad \operatorname{Var}|x|^2=2n,\qquad |x|=\sqrt n+O(1) \tag{3}

n=10, 100, 1000n=10,\ 100,\ 1000 で E∣x∣/n=0.975, 0.9975, 0.99975E|x|/\sqrt n=0.975,\ 0.9975,\ 0.99975、∣x∣|x| の標準偏差は 0.698, 0.706, 0.7070.698,\ 0.706,\ 0.707 で、殻の厚さは nn によらず 1/21/\sqrt2 に落ち着きます 計算。分散 1 のまま n→∞n\to\infty とすると ∣x∣→∞|x|\to\infty で、極限は ℓ2\ell^2 にありません。そこで分散 σk2\sigma_k^2 を減らします。独立な N(0,1)N(0,1) の列 ξ1,ξ2,…\xi_1,\xi_2,\dots で

x=∑k=1∞σk ξk ek,E∥x∥2=∑k=1∞σk2(4)x=\sum_{k=1}^{\infty}\sigma_k\,\xi_k\,e_k,\qquad E\|x\|^2=\sum_{k=1}^{\infty}\sigma_k^2 \tag{4}

とすると、右辺の和が有限なことが、xx が ℓ2\ell^2 に値を取るガウスの確率変数になる必要十分条件です(Hairer 演習 4.7)既知。例:σk=1/k\sigma_k=1/k なら E∥x∥2=π2/6E\|x\|^2=\pi^2/6。分散 1 の列も、すべての数列の空間 R∞\mathbb R^\infty の上になら作れます。使うのは Kolmogorov の拡張定理(有限個ずつの分布が矛盾なく与えられていれば、無限個の列の分布が一つに決まる、という定理。Durrett 定理 2.1.21)既知で、これが §07 の白色雑音の芽です。

04

無限次元のガウス測度 — 一次元の影がすべてガウス

密度が使えないので、ガウス測度は「影」で定義します。空間 EE(ℓ2\ell^2 や連続関数の空間)の上の確率測度 μ\mu がガウス測度であるとは、連続な線形写像 ℓ:E→R\ell:E\to\mathbb R のどれについても ℓ(x)\ell(x) が一次元のガウス分布に従うことです(Hairer 定義 4.4)既知。平均 0 なら、共分散 C(ℓ,ℓ′)=E[ℓ(x)ℓ′(x)]C(\ell,\ell')=E[\ell(x)\ell'(x)] が μ\mu を決めます(1-08 (8) の形)。

∫Ee iℓ(x) dμ(x)=exp⁡(−12 C(ℓ,ℓ))(5)\int_E e^{\,i\ell(x)}\,d\mu(x)=\exp\Big(-\frac12\,C(\ell,\ell)\Big) \tag{5}

ℓ2\ell^2 の上では C(ℓ,ℓ′)=⟨ℓ,Cℓ′⟩C(\ell,\ell')=\langle\ell,C\ell'\rangle と共分散作用素 CC で書け、(4) なら Cek=σk2ekCe_k=\sigma_k^2e_k です。対称で正の CC のトレース(固有値の和)が有限なら、それを共分散とするガウス測度があります(Hairer 命題 4.17)既知。例:ℓ(x)=∑kakxk\ell(x)=\sum_ka_kx_k は分散 ∑kak2σk2\sum_ka_k^2\sigma_k^2 のガウスです。問題文は自由場を、超関数の空間 S′(Rd)\mathcal S'(\mathbb R^d) の上の、平均 0・共分散 (−Δ+m02)−1(-\Delta+m_0^2)^{-1} のガウス測度として与えます 既知。(1) の二つの因子は、共分散という一つの情報に置き換わりました。

05

Cameron–Martin の定理 — ずらせる方向の全体は確率 0

二つの確率測度が同値であるとは、零集合(重さ 0 の集合)が同じことです。反対に、一方で確率 1 の集合が他方で確率 0 になるとき、二つは互いに特異であるといいます。有限次元のガウス測度は、ずらすと密度が掛かります(一次元なら N(h,1)N(h,1) は N(0,1)N(0,1) の ehx−h2/2e^{hx-h^2/2} 倍)。一般に、すべての集合 AA で μh(A)=∫AD(x) dμ(x)\mu_h(A)=\int_AD(x)\,d\mu(x) となる関数 DD を相対密度と呼び、dμh/dμd\mu_h/d\mu と書きます。(4) の最初の nn 座標で μ\mu を hh だけずらした μh\mu_h では次です。

dμhdμ(x)=exp⁡(∑k≤nhkxkσk2−12∥h∥H2),∥h∥H2=∑k≤nhk2σk2(6)\frac{d\mu_h}{d\mu}(x)=\exp\Big(\sum_{k\le n}\frac{h_kx_k}{\sigma_k^2}-\frac12\|h\|_H^2\Big),\qquad \|h\|_H^2=\sum_{k\le n}\frac{h_k^2}{\sigma_k^2} \tag{6}

∥h∥H\|h\|_H は「ずれを、その方向の揺れで測った長さ」です。二つを見分けられる度合い(全変動距離)は C−1hC^{-1}h の方向の一次元の問題に帰着し、厳密に次の式になります(Φ\Phi は 1-08 (13))。

dTV(μ,μh)=sup⁡A∣μ(A)−μh(A)∣=2 Φ(12∥h∥H)−1(7)d_{\mathrm{TV}}(\mu,\mu_h)=\sup_A\big|\mu(A)-\mu_h(A)\big|=2\,\Phi\big(\tfrac12\|h\|_H\big)-1 \tag{7}

(7) は数値積分と 40 次元の標本で確かめました 計算。n→∞n\to\infty で ∥h∥H\|h\|_H が有界なら dTV<1d_{\mathrm{TV}}\lt1、発散すれば dTV→1d_{\mathrm{TV}}\to1 で、後者では二つの測度は互いに特異になります。

Cameron–Martin の定理 既知 μh\mu_h が μ\mu と同値なのは ∥h∥H<∞\|h\|_H\lt\infty のときに限り、そうでなければ互いに特異である(Hairer 定理 4.44 とその証明。原論文は Cameron–Martin 1944)。この hh の全体 HH が Cameron–Martin 空間です。ところが (4) の見本では ∥x∥H2=∑kξk2=+∞\|x\|_H^2=\sum_k\xi_k^2=+\infty(大数の法則)で、無限次元なら μ(H)=0\mu(H)=0 です(Hairer 命題 4.45)既知。ずらしてよい方向の全体 HH には、見本が確率 1 で入りません。

図1 σk=1/k\sigma_k=1/k の測度を hk=k−ah_k=k^{-a} だけずらす。aa を動かすと、上の比 hk/σk=k1−ah_k/\sigma_k=k^{1-a}(両対数)が破線 k−1/2k^{-1/2} より速く減るかが変わり、下の dTVd_{\mathrm{TV}}(最初の nn 座標での (7))が 1 に張り付くか、破線の極限に留まるかが変わる
数値は表1
表1 σk=1/k\sigma_k=1/k、hk=k−ah_k=k^{-a} での ∥h∥H2=∑k≤nk2−2a\|h\|_H^2=\sum_{k\le n}k^{2-2a} と (7) 計算
aa∥h∥H2\|h\|_H^2(n=105n=10^5)極限dTVd_{\mathrm{TV}}(n=105n=10^5)極限
110510^5∞\infty1.00001
1.25631∞\infty1.00001
1.512.09∞\infty0.91791
1.752.6062.6120.58040.5810
21.645π2/6\pi^2/60.47870.4787

計算図1 と表1 の数値はこの端末で計算した(図は (7) と部分和からその場で描き、表と 4 桁で一致)。JavaScript が無効なら表1 で読める。

境目の a=3/2a=3/2 では ∥h∥H2≈ln⁡n+0.577\|h\|_H^2\approx\ln n+0.577 と対数でしか伸びず、n=1020n=10^{20} でも dTV=0.9994d_{\mathrm{TV}}=0.9994 です 計算。

06

ブラウン運動 — 経路は落ち着き、エネルギーは発散する

[0,1][0,1] の上の連続関数に値を取り、平均 0・共分散 E[B(s)B(t)]=min⁡(s,t)E[B(s)B(t)]=\min(s,t) のガウス測度がウィーナー測度、その見本 BB がブラウン運動です(Wiener 1923 に始まるとされる)既知。経路は指数 1/21/2 未満のヘルダー連続性を持ち(γ<1/2\gamma\lt1/2 なら、経路ごとの定数 CC で、すべての s,ts,t について ∣B(t)−B(s)∣≤C∣t−s∣γ|B(t)-B(s)|\le C|t-s|^\gamma)、確率 1 でどの点でも微分できません(Durrett 定理 7.1.5・7.1.6)既知。Durrett は前者を Wiener 1923 の結果として、後者を Paley–Wiener–Zygmund 1933 の発見として挙げています。

(4) の形にするには、共分散作用素 (Cf)(s)=∫01min⁡(s,t)f(t) dt(Cf)(s)=\int_0^1\min(s,t)f(t)\,dt の固有関数を探します。g=Cfg=Cf は g′′=−fg''=-f、g(0)=0g(0)=0、g′(1)=0g'(1)=0 を満たすので、固有値の問題は常微分方程式 −g′′=λ−1g-g''=\lambda^{-1}g になり、cos⁡ω=0\cos\omega=0 から次が出ます。

B(t)=∑k=1∞ξk 2 sin⁡(ωkt)ωk,ωk=(k−12)π(8)B(t)=\sum_{k=1}^{\infty}\xi_k\,\frac{\sqrt2\,\sin(\omega_kt)}{\omega_k},\qquad \omega_k=\Big(k-\frac12\Big)\pi \tag{8}

σk=1/ωk≈1/(πk)\sigma_k=1/\omega_k\approx1/(\pi k) は §05 の例と同じ減り方で、4000 項の共分散は min⁡(s,t)\min(s,t) と 5.1×10−55.1\times10^{-5} 以内で合います 計算。Cameron–Martin 空間は h(0)=0h(0)=0、∥h∥H2=∫01h˙2 dt<∞\|h\|_H^2=\int_0^1\dot h^2\,dt\lt\infty の関数の全体で(Hairer 演習 4.29)既知、この ∥h∥H2\|h\|_H^2 が (1) の d=1d=1、m=0m=0 の指数の中身です。KK 項の部分和 SKS_K では ∫01S˙K2 dt=∑k≤Kξk2≈K\int_0^1\dot S_K^2\,dt=\sum_{k\le K}\xi_k^2\approx K で、図2 の経路は落ち着くのに、この「エネルギー」は伸び続けます。

図2 (8) の部分和。KK(項の数)を動かすと、上の SKS_K(薄い線は K=128K=128)は落ち着き、下の S˙K\dot S_K(白色雑音の近似、§07)は振れ幅がおよそ K\sqrt K で増える
数値は下の文と表2

計算図2 の数値はこの端末で計算した(固定した 128 個の乱数 ξk\xi_k の部分和)。K=1,16,64,128K=1,16,64,128 で ∑ξk2=2.13, 13.4, 56.5, 132.8\sum\xi_k^2=2.13,\ 13.4,\ 56.5,\ 132.8、max⁡t∣SK−S128∣=0.589, 0.202, 0.090, 0\max_t|S_K-S_{128}|=0.589,\ 0.202,\ 0.090,\ 0。JavaScript が無効ならこの数値と表2 で読める。

格子で見る — 二次変分

格子に切っても同じことが見えます。NN 等分した増分の二乗和(二次変分)は 1 に近づき(Durrett 演習 7.1.6)既知、滑らかな関数では 0 に近づくので、離散化したエネルギー ∑(ΔB)2/Δt\sum(\Delta B)^2/\Delta t は NN に比例して発散します(表2)。経路積分(2-07)の e−12∫x˙2dt∏tdx(t)e^{-\frac12\int\dot x^2dt}\prod_tdx(t) は、この測度を形式的に書いたものです。正確には、指数も ∏tdx(t)\prod_tdx(t) も単独では意味を持たず(§01)、組としてウィーナー測度を指します。

表2 2202^{20} 点で作った一本の経路を NN 等分して見る 計算
NN∑(ΔB)2\sum(\Delta B)^2(揺れ 2/N\sqrt{2/N})∑(ΔB)2/Δt\sum(\Delta B)^2/\Delta th=t2h=t^2 の ∑(Δh)2\sum(\Delta h)^2
160.689(0.35)11.00.083
40960.979(0.02)40103.3×10−43.3\times10^{-4}
10485760.9999(0.001)1.05×1061.05\times10^61.3×10−61.3\times10^{-6}
07

白色雑音 — 点では値を持たない

形式的な微分 ξ=B˙\xi=\dot B が白色雑音です。点ごとの値が無い(図2 の下段)ので、関数と組にして定義します。白色雑音とは、二乗積分が有限な関数 f∈L2[0,1]f\in L^2[0,1] ごとのガウスの確率変数 ξ(f)\xi(f) で、ff について線形で次を満たすものです(Hairer 例 4.63)既知。

E[ξ(f) ξ(g)]=∫01f(t) g(t) dt(形式的には E[ξ(s)ξ(t)]=δ(s−t))(9)E\big[\xi(f)\,\xi(g)\big]=\int_0^1f(t)\,g(t)\,dt\qquad\big(\text{形式的には }E[\xi(s)\xi(t)]=\delta(s-t)\big) \tag{9}

例:1[0,t]\mathbf 1_{[0,t]} を [0,t][0,t] の上で 1、外で 0 の関数とすると、ξ(1[0,s])\xi(\mathbf 1_{[0,s]}) と ξ(1[0,t])\xi(\mathbf 1_{[0,t]}) の共分散は ∫011[0,s](u) 1[0,t](u) du=min⁡(s,t)\int_0^1\mathbf 1_{[0,s]}(u)\,\mathbf 1_{[0,t]}(u)\,du=\min(s,t) で、これはブラウン運動です(Hairer 演習 4.64)。幅 ε\varepsilon の区間の平均 ξ(1[t,t+ε])/ε\xi(\mathbf 1_{[t,t+\varepsilon]})/\varepsilon の分散は 1/ε1/\varepsilon、dd 次元の一辺 ε\varepsilon の箱なら ε−d\varepsilon^{-d} で、点に縮めると発散します。

白色雑音は共分散が恒等写像(すべての σk=1\sigma_k=1)のガウスで、§03 の通り L2L^2 に入りません。どれだけ入り損ねるかを次元ごとに測るため、ここから舞台を [0,1][0,1] から dd 次元のトーラス Td=[0,2π)d\mathbb T^d=[0,2\pi)^d(向かい合う端をつないだ箱)に移します((9) の積分は Td\mathbb T^d の上の積分に替える)。Td\mathbb T^d の上の関数を f(x)=∑k∈Zdck eik⋅xf(x)=\sum_{k\in\mathbb Z^d}c_k\,e^{ik\cdot x} と書き、ckc_k をフーリエ係数と呼びます。−Δ=−∑i∂i2-\Delta=-\sum_i\partial_i^2 は eik⋅xe^{ik\cdot x} に ∣k∣2|k|^2 を掛けるので、係数では ckc_k を ∣k∣2ck|k|^2c_k にする操作です。白色雑音のフーリエ係数は、c−k=ck‾c_{-k}=\overline{c_k} で結ばれる組を除いて独立で、E∣ck∣2E|c_k|^2 はどれも同じ定数です。

形式的な級数 ∑kckeik⋅x\sum_kc_ke^{ik\cdot x} に長さ (∑k(1+∣k∣2)−s∣ck∣2)1/2\big(\sum_k(1+|k|^2)^{-s}|c_k|^2\big)^{1/2} を与えた空間を H−sH^{-s} とします(ss が大きいほど高い周波数を軽く数える)。白色雑音ではこの長さの二乗の平均が ∑k(1+∣k∣2)−s\sum_k(1+|k|^2)^{-s} の定数倍で、半径 RR の殻に Rd−1R^{d-1} 程度の kk があるので、有限なのは s>d/2s\gt d/2 のときです。実際、そのときに限り白色雑音は H−sH^{-s} に実現できます(Hairer 演習 4.65)既知。関数と組にして初めて値が出るものが超関数で、一般論は 1-11、白色雑音で場を揺らす確率量子化は 6-09 です。

08

自由場と次元 — 一点の分散が発散する

トーラスの上で考えた (1) の自由場は、白色雑音のフーリエ係数 ckc_k を (∣k∣2+m2)−1/2(|k|^2+m^2)^{-1/2} 倍してならしたものです。この操作を (−Δ+m2)−1/2(-\Delta+m^2)^{-1/2} と書くと、共分散は (−Δ+m2)−1(-\Delta+m^2)^{-1}(§04 の問題文の形)で、係数の分散は 1/(∣k∣2+m2)1/(|k|^2+m^2) に比例します。§07 の勘定で H−sH^{-s} に入る条件は s>d/2−1s\gt d/2-1 になり、白色雑音より一階分なめらかですが、d≥2d\ge2 では関数になりません。有界な領域の自由場は、d=1d=1 なら L2L^2 の見本として作れ、d=2d=2 では作れません(Sheffield 命題 2.7 の後の注意)既知。

格子間隔 aa の格子 aZda\mathbb Z^d では、−Δ-\Delta を差分に替えます。1-08 (10) の (Δx)j=xj+1−2xj+xj−1(\Delta x)_j=x_{j+1}-2x_j+x_{j-1} を座標の向きごとに足し、a2a^2 で割ったものです。eik⋅xe^{ik\cdot x} はこの差分ラプラシアンの固有関数で、eikia−2+e−ikia=−4sin⁡2kia2e^{ik_ia}-2+e^{-ik_ia}=-4\sin^2\frac{k_ia}2 から、固有値は −∑i4a2sin⁡2kia2-\sum_i\frac4{a^2}\sin^2\frac{k_ia}2 です。したがって一点の分散は次の積分です(kk は格子で区別できる範囲の箱を動く)。

Ga(0)=∫[−π/a, π/a]dddk(2π)d  1m2+∑i=1d4a2sin⁡2kia2(10)G_a(0)=\int_{[-\pi/a,\,\pi/a]^d}\frac{d^dk}{(2\pi)^d}\;\frac{1}{m^2+\sum_{i=1}^{d}\frac{4}{a^2}\sin^2\frac{k_ia}{2}} \tag{10}

a→0a\to0 では大きい ∣k∣|k| の寄与がおよそ ∫1/akd−3 dk\int^{1/a}k^{d-3}\,dk で、d≥2d\ge2 で発散します。点の値の代わりに、標準偏差 ℓ\ell のガウス核 ρℓ(x)=(2πℓ2)−d/2e−∣x∣2/(2ℓ2)\rho_\ell(x)=(2\pi\ell^2)^{-d/2}e^{-|x|^2/(2\ell^2)} と組にした値 φ(ρℓ)\varphi(\rho_\ell)(形式的には ∫φ(x)ρℓ(x) dx\int\varphi(x)\rho_\ell(x)\,dx、ならした値)を見ると、その分散は

Var⁡φ(ρℓ)=∫Rdddk(2π)d  e−ℓ2∣k∣2∣k∣2+m2\operatorname{Var}\varphi(\rho_\ell)=\int_{\mathbb R^d}\frac{d^dk}{(2\pi)^d}\;\frac{e^{-\ell^2|k|^2}}{|k|^2+m^2}

です(格子では kk を (10) と同じ箱に制限し、分母を (10) のものに替える)。因子 e−ℓ2∣k∣2e^{-\ell^2|k|^2} が大きい ∣k∣|k| を抑えるので、どの dd でも有限です。

図3 格子を細かくする(つまみで aa を 1/21/2 から 1/641/64 へ)と、一点の分散 Ga(0)G_a(0)(実線)は d≥2d\ge2 で増え続け、ならした値の分散(破線)は右端の印の値に落ち着く。次元のボタンを押すと、その dd の二本が濃くなる(縦軸は対数、m=1m=1、ℓ=1/4\ell=1/4)
数値は表3
表3 格子の自由場(m=1m=1)の一点の分散 Ga(0)G_a(0) と、標準偏差 ℓ=1/4\ell=1/4 のガウス核でならした値 φ(ρℓ)\varphi(\rho_\ell) の分散 計算。一点の分散の dd 依存の表はこの本ではこれを正本にします(2-07 §09・2-02 はここを引く)
aad=1d=1d=2d=2d=3d=3d=4d=4
10.44720.25400.17050.1271
1/20.48510.37690.42230.5816
1/40.49610.49320.92892.431
1/80.49900.60571.9419.859
1/160.49980.71683.96339.60
1/320.49990.82738.007158.6
1/640.50000.937716.10634.5
増え方(a→0a\to0)→ 1/2≈12πlog⁡1a+0.276\approx\frac1{2\pi}\log\frac1a+0.276≈0.2527/a\approx0.2527/a≈0.1549/a2\approx0.1549/a^2
ならした値(a→0a\to0)0.38520.19120.11830.0861

(10) は d=1d=1 の厳密な値、d=2,3d=2,3 の格子の直接の和と照合済みです。d=1d=1 は 1/(2m)1/(2m) に収束し、d=2d=2 は 12πln⁡1a\frac1{2\pi}\ln\frac1a との差が 0.276 に落ち着き、d=3d=3 では a Ga(0)a\,G_a(0) が 0.253 前後に近づき(a=1/64a=1/64 で 0.2515)、d=4d=4 では a2Ga(0)a^2G_a(0) が 0.155 に近づきます 計算。この二つの行き先は Z3\mathbb Z^3・Z4\mathbb Z^4 の格子のグリーン関数の原点での値で、別の一次元積分から 0.2527・0.1549 と出ます(d=3d=3 は Watson の積分の半分)計算。ならした値の分散はどの dd でも有限に収束し、a=1/32a=1/32 で極限と小数第 3 位まで合います。場の値は「点では無限、ならせば有限」です。境目が 2 のこの量を、四で切り替わる量と並べた図は 1-12 §10 の次元のつまみです。

計算図3 と表3 の数値はこの端末で計算した(a=2−pa=2^{-p}、p=1,…,6p=1,\dots,6 の値を表として図に埋めてある。表3 はそれに a=1a=1 の行と増え方の行を足したもの)。JavaScript が無効なら表3 で読める。

09

場の積 — 点の値が無いと、掛け算が困る

§08 の通り、d≥2d\ge2 では φ(x)2\varphi(x)^2 の平均が無限大です。そのため φ4\varphi^4 のような項には引き算の手当て(繰り込み、4-04・6-03)が要り、超関数どうしの積は一般に定義できません(1-11)。四次元のヤン–ミルズ場 AA は、短い距離では四次元の自由場と同じ荒さを持つと期待されています(漸近自由、4-06)物理。正確には、短い距離での相関関数が、対数の補正を除いて自由場のものに近づく、という期待です。問題文は漸近自由を 'at short distances the field displays quantum behavior very similar to its classical behavior' と説明し(§1)、構成すべき理論の相関関数が 'should agree at short distances with the predictions of asymptotic freedom' ことを求めています(§4)既知。場の強さ F=dA+A∧AF=dA+A\wedge A(1-07)の A∧AA\wedge A は、そういう超関数どうしの積です(6-10)。

10

寄り道:互いに特異な測度 — 尺度・質量・相互作用

寄り道

飛ばしてよい節です。

二つのガウス測度は、同値(§05)か互いに特異かのどちらかで、その中間はありません(Feldman 1958、Hájek 1958。教科書では Bogachev 定理 2.7.2 などにあるとされる)既知。有限次元では、共分散が正定値のガウス測度どうしはいつも同値です。無限次元では、次の例のように、わずかな違いで互いに特異になります。

尺度。共分散を c2c^2 倍すると、1N∑k≤Nxk2/σk2\frac1N\sum_{k\le N}x_k^2/\sigma_k^2 は 1 でなく c2c^2 に収束します(大数の法則)。見本一つで cc が読めるので、c≠±1c\ne\pm1 なら互いに特異です(Hairer 命題 4.43)既知。

質量。トーラスの上で質量 m1,m2m_1,m_2(どちらも正)の自由場を比べると、フーリエ係数の分散の比は 1+εk1+\varepsilon_k、εk=(m12−m22)/(∣k∣2+m22)\varepsilon_k=(m_1^2-m_2^2)/(|k|^2+m_2^2) です。独立な座標を並べた二つの積の測度を比べるには Kakutani の判定を使います。kk 番目の座標の二つの密度を pk,qkp_k,q_k とします(ここではどちらも正のガウス密度)。一次元ごとの重なり ∫pk(x)qk(x) dx\int\sqrt{p_k(x)q_k(x)}\,dx の無限積が正なら二つは同値、0 なら互いに特異です(Kakutani 1948)既知。実数値の場ではフーリエ係数の実部と虚部が独立な座標になりますが、どちらの分散の比も 1+εk1+\varepsilon_k なので、下の条件は変わりません。分散の比が r2=1+εr^2=1+\varepsilon の二つのガウスの重なりは 2r/(1+r2)=1−ε2/16+O(ε3)\sqrt{2r/(1+r^2)}=1-\varepsilon^2/16+O(\varepsilon^3) で、εk→0\varepsilon_k\to0 なので、積が正であることは ∑kεk2<∞\sum_k\varepsilon_k^2\lt\infty と同値です。

∑k∈Zdεk2=(m12−m22)2∑k∈Zd1(∣k∣2+m22)2 < ∞⟺d≤3(11)\sum_{k\in\mathbb Z^d}\varepsilon_k^2=(m_1^2-m_2^2)^2\sum_{k\in\mathbb Z^d}\frac{1}{(|k|^2+m_2^2)^2}\ \lt\ \infty\quad\Longleftrightarrow\quad d\le3 \tag{11}

m2=1m_2=1 で ∣k∣≤R|k|\le R の部分和 ∑(∣k∣2+1)−2\sum(|k|^2+1)^{-2} を R=16,32,64,128R=16,32,64,128 で見ると、d=3d=3 では 9.21、9.61、9.80、9.90 と、RR を倍にするごとの増分が 0.39、0.20、0.10 と半分になり、10.0 付近に収束します(残りはおよそ 4π/R4\pi/R。別の積分で和全体は 9.998)。d=4d=4 では増分が半分にならず、RR を倍にするごとに 2π2ln⁡2≈13.72\pi^2\ln2\approx13.7 ずつ伸びます 計算。したがって、m1≠m2m_1\ne m_2 なら、質量の違う二つの自由場の測度は、トーラスの上で d≤3d\le3 なら同値、d≥4d\ge4 なら互いに特異です 既知(Schröfl–Floerchinger 2025 §4.1。有界な領域の上の Dirichlet・Neumann・周期境界の場合)。(11) は Feldman–Hájek の判定(CiC_i を質量 mim_i の共分散として、C1−1/2C2C1−1/2−IC_1^{-1/2}C_2C_1^{-1/2}-I が Hilbert–Schmidt 作用素、ここでは固有値 εk\varepsilon_k の二乗和が有限)と同じ条件です。

相互作用。ガウス測度に密度 e−Ve^{-V} を掛ける作り方は、VV が見本のほとんどすべてで定義できないと破れます。極限として作った測度は一般に密度を持たず(Sheffield §3.3)、三次元のトーラスの上の φ4\varphi^4 の測度は自由場と互いに特異です(Barashkov–Gubinelli 2020)既知。構成的場の理論は、測度を切断した測度の極限として作ります(6-01・6-05)。


この章が言えている範囲

言えている言えていない
既知§02 の定理(証明は本文)。ほかの定理は文献から引用。Kolmogorov・Cameron–Martin・Kakutani・Feldman–Hájek の定理の証明、超関数の空間の上に測度を作る一般論。
既知(11) による、トーラス上の質量の違う自由場(m1≠m2m_1\ne m_2)の判定(Schröfl–Floerchinger 2025 §4.1 と同じ結論)。機械検査なし。Rd\mathbb R^d 全体は扱っていない。
計算表1〜表3、図1〜図3、本文の数値と検算。極限値(0.253・0.155・10.0 など)は、有限の aa・RR からの読みと数値積分によるもので、誤差の厳密な評価はしていない。
物理四次元のヤン–ミルズ場の相関関数が、短い距離で(対数の補正を除いて)自由場のものに近づくという期待。定理ではない。四次元で相互作用のある測度(ヤン–ミルズを含む)の存在は未解決で、このサイトも示していない。

出典と再現

もの種別出典・道具
§03〜§10 の定義と定理(番号は本文)既知M. Hairer, "An Introduction to Stochastic PDEs", arXiv:0907.4178(v2, 2023)§4。本文を確認。
定理 2.1.21(Kolmogorov の拡張定理)、定理 7.1.5・7.1.6 と前後の帰属の記述(Wiener 1923、Paley–Wiener–Zygmund 1933)、演習 7.1.6既知R. Durrett, Probability: Theory and Examples, 5th ed., Cambridge Univ. Press (2019)。著者の公開版で本文を確認。
命題 2.7 とその後の注意、§3.3既知S. Sheffield, "Gaussian free fields for mathematicians", Probab. Theory Relat. Fields 139 (2007) 521–541, arXiv:math/0312099。本文を確認。
原論文(ウィーナー測度、微分できないこと、Cameron–Martin、Kakutani、ガウス測度の二分法)既知N. Wiener, J. Math. Phys. 2 (1923) 131–174。R. E. A. C. Paley, N. Wiener, A. Zygmund, Math. Z. 37 (1933) 647–668(書誌は Durrett の文献表による)。R. H. Cameron, W. T. Martin, Ann. of Math. 45 (1944) 386。S. Kakutani, Ann. of Math. 49 (1948) 214–224。J. Feldman, Pacific J. Math. 8 (1958) 699–708(本文を確認:ガウス過程の測度の同値か直交かの二択)。J. Hájek, Czechoslovak Math. J. 8 (1958) 610–618(ロシア語。書誌を DML-CZ で確認、本文は書誌のみ)。ほかは書誌のみ(Kakutani の主張は二次資料で確認)。
ガウス測度の二分法(教科書)既知V. I. Bogachev, Gaussian Measures, AMS (1998) 定理 2.7.2。G. Da Prato, J. Zabczyk, Stochastic Equations in Infinite Dimensions, Cambridge Univ. Press (2014) 定理 2.25。いずれも書誌のみ(二次資料で言及を確認)。
§10 の質量の違う自由場の判定(有界な領域・d<4d\lt4 で同値、d≥4d\ge4 で特異)既知M. Schröfl, S. Floerchinger, "Relative entropy and mutual information in Gaussian statistical field theory", Ann. Henri Poincaré 26 (2025) 3233–3319, arXiv:2307.15548。本文を確認(§4.1・定理 3。周期境界は同節の立方体の場合)。
Z3\mathbb Z^3 の格子のグリーン関数の原点での値(§08)既知・計算G. N. Watson, "Three triple integrals", Quart. J. Math. Oxford 10 (1939) 266–276。書誌のみ。値 0.2527 はこの端末で別の一次元積分から計算した。
三次元のトーラスの上の φ4\varphi^4 の特異性既知N. Barashkov, M. Gubinelli, "The Φ34\Phi^4_3 measure via Girsanov's theorem", arXiv:2004.01513 (2020)。要旨を確認。
§01・§04・§09 の問題文の引用既知A. Jaffe, E. Witten, "Quantum Yang–Mills Theory"(Clay 数学研究所の問題記述)の §1・§2・§4・§6。本文を確認。
表・図・本文の数値計算この端末の Python 3.12(NumPy 1.26・SciPy 1.11):dims.py、cameron_martin.py、brownian.py、gff.py、watson.py、fig3.py。図の関数は fig_check.js(node)で表と照合。

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改訂 2026-10-01:初版。