この本の全体 目次と読む順
- 第 0 部 入口 — この本の読み方
- 0-01 この本の読み方
- 0-02 一枚の絵
- 0-03 問題文を一語ずつ読む
- 0-04 数学の四次元と物理の四次元
- 第 1 部 数学の準備
- 1-01 ベクトル空間と線形写像
- 1-02 群とは何か
- 1-03 リー群とリー環
- 1-04 SU(2) と SU(3)
- 1-05 多様体と接空間
- 1-06 微分形式と外微分
- 1-07 ベクトル束と接続
- 1-08 確率と測度
- 1-09 無限次元の確率
- 1-10 ヒルベルト空間と自己共役作用素
- 1-11 フーリエ解析と分布
- 1-12 寄り道
- 第 2 部 物理の準備
- 2-01 ラグランジアンと作用
- 2-02 場という考え
- 2-03 電磁気学はゲージ理論である
- 2-04 特殊相対論と時空
- 2-05 量子力学の骨
- 2-06 調和振動子と生成消滅
- 2-07 経路積分の考え方
- 2-08 統計力学と相転移
- 2-09 寄り道
- 2-10 緩和の時間と動的指数 z
- 第 3 部 ヤン–ミルズ理論(古典)
- 3-01 ゲージ原理
- 3-02 非可換ゲージ場
- 3-03 作用と方程式
- 3-04 幾何としてのゲージ理論
- 3-05 インスタントンと位相
- 3-06 寄り道
- 3-07 標準模型の中のヤン–ミルズ
- 第 4 部 量子化
- 4-01 正準量子化とハミルトニアン
- 4-02 経路積分とユークリッド化
- 4-03 摂動論と Feynman ダイアグラム
- 4-04 発散と繰り込み
- 4-05 発散の代数
- 4-06 漸近自由
- 4-07 次元転移と Λ
- 4-08 ゲージ固定と Faddeev–Popov
- 4-09 場の量子論の公理
- 4-10 Osterwalder–Schrader の公理と再構成
- 4-11 質量ギャップの定義
- 4-12 寄り道
- 第 5 部 格子ゲージ理論
- 5-01 Wilson の格子
- 5-02 強結合展開
- 5-03 反射正値性と転送行列
- 5-04 無限体積極限とクラスター展開
- 5-05 弱結合と連続極限
- 5-06 U(1) と非可換の違い
- 5-07 モンテカルロ法
- 5-08 グルーボールと弦張力の測定
- 5-09 何を固定して極限を取るか
- 5-10 有限群の格子ゲージ理論
- 5-11 寄り道
- 第 6 部 構成的場の理論
- 6-01 構成的場の理論とは
- 6-02 二次元の可解性とヤン–ミルズ測度
- 6-03 スカラー場の構成
- 6-04 クラスター展開
- 6-05 繰り込み群の段の列
- 6-06 三次元ヤン–ミルズの紫外安定性
- 6-07 四次元
- 6-08 四次元の φ⁴ の自明性
- 6-09 確率量子化と正則性構造
- 6-10 四次元で止まる場所
- 6-11 発散以外の障害
- 6-12 寄り道
- 第 7 部 物理の側から
- 7-01 物理はどう見ているか
- 7-02 閉じ込めの機構
- 7-03 弦の絵
- 7-04 大 N
- 7-05 ひも理論と余剰次元
- 7-06 余剰次元が見えなくなる仕組み
- 7-07 ゲージ場はどこから来るか
- 7-08 ホログラフィー
- 7-09 質量ギャップが幾何になる
- 7-10 四次元に戻す
- 7-11 超対称と Seiberg–Witten
- 7-12 等価原理に当たる一文
- 7-13 物理の掘り方が数学と離れる場所
- 第 8 部 二つの言葉の辞書 — 物理の視点と数学の視点
- 8-01 辞書の読み方
- 8-02 辞書 A
- 8-03 辞書 B
- 8-04 辞書 C
- 8-05 私たちの仮定の物理側の対応
- 第 9 部 現在地と課題
- 9-01 世界はどこまで来ているか
- 9-02 二つの掘り方の切れ目
- 9-03 新しい概念の候補
- 9-04 課題の一覧
- 9-05 よくある誤解
- 第 10 部 質量ギャップの厳密な証明へ — この端末の検討
- 10-00 第 10 部の入口 — 酔歩と定規と時計
- 10-01 理論の構成の筋
- 10-02 一段の記帳
- 10-03 仮定 H と三つの鎖
- 10-04 方向の地図
- 10-05 方向 12〜14
- 10-06 方向 15・15′
- 10-07 Lean で閉じた言明と既存の結果の対応表
- 10-08 壁の一覧
- 10-09 ひらめき帳から
- 10-10 主張しないこと
- 10-12 つじつま合わせ
- 10-11 定理までの距離
- 10-13 小さな問い — 卒業研究の大きさで決着のつく十〜二十問
- 付録
- A-01 記号表
- A-02 用語集
- A-03 文献案内
- A-04 Lean と機械検査
- A-05 この本の作り方
- A-06 仮定の索引
小さな問い — 卒業研究の大きさで決着のつく十四の問い
この章で分かること — 第 10 部の壁の前に残った問いのうち、python3・Lean・総当たり・文献調査で数か月の大きさで決着がつきそうな十四問と、その六つの欄(問い・前提・道具・決着の形・効く壁・先行の記録を探す段)。一問は例題として決着の形 まで進める。
前提となる章 — 10-08 壁の一覧(壁の記号 A1〜E4 と図 1 の列)、10-11 定理までの距離。各問の前提はその欄に書きます。
先に言うこと — どの問いが決着しても、質量ギャップの証明には届きません。H↑ の列に直接効く問いは一つも無く、効かない問いは「効かない」と書きました。問いそのものには札を付けません。
- この章の約束 — 六つの欄と「小さい」の意味(表 1)
- 例題:一問を決着の形まで — Hermite の族の (問 3・図 1・表 2)
- 組合せの問い — 完全な族(問 1・2・表 3)/寄り道:厳密被覆と Algorithm X
- 対称性で決まる問い — 一本のリンク・一枚のプラケット(問 4・5・6)
- 模型の係数の問い — 柱の模型と取りこぼし(問 7・8・9)
- 二つの時間の小模型 — 仮定 H を決着のつく場所で試す(問 10〜13・表 4)
- 文献の問いと、先行の記録を探す段(問 14)
- 決着したら何が動くか — 壁の列との対応
この章の約束 — 六つの欄と「小さい」の意味
「小さな問い」は三つを満たす問いです。答えの形(在る/無い、定数の値、不等式の成否)が先に決まっていること。道具が手元にあること(python3 と NumPy・SciPy、SAT ソルバー、Lean と Mathlib、文献の検索)。数学科か物理学科の三・四年生が卒業研究の期間で決着をつけられる見込みがあること。
各問の欄は六つです。問い、前提(読んでおく章)、道具、決着の形(何が出たら終わりか)、効く壁(10-08 の記号)、先行の記録(着手の前に何を探すか)。効く壁は 10-08 図 1 の列で読み、各問 に列の集合を一つ対応させます。
列の仮定を別の模型で試すだけの問いは「対照」と書きます。対照の問いでは列を括弧で示し、 には入れません。例。問 1(完全な族の ・)は です。在っても無くても、一リンク積分が一段きり(壁 B6)であることは変わりません。それでも載せるのは、答えの形がはっきりしていて、組合せの道具を一通り使う練習になるからです。
| 問 | 一行 | 道具 | 効く壁(列) |
|---|---|---|---|
| 1 | 胞体の完全な族は で在るか | SAT・Lean | — |
| 2 | 完全な族が在る最大の次元 | 総当たり・紙 | — |
| 3 | Hermite の族の の定数(§02) | 紙・python3 | —(A1 の例示) |
| 4 | Elitzur 型の評価の非可換版:森の上の関数 | 紙・Lean | B1 の周辺(H↓) |
| 5 | 二次元格子 YM のリンク変数での | 紙・python3 | D1 の対照(η・鎖) |
| 6 | 一リンク積分の後の曲率の最良の定数 | python3・区間演算 | — |
| 7 | 柱の模型の係数 を解析的に | 紙・python3 | E3(η・鎖) |
| 8 | 柱の模型で、有限の の の符号 | python3 | E3(η・鎖) |
| 9 | 取りこぼし のゲージの取り方による違い | python3 | E2・B4(Σδ) |
| 10 | 二重井戸の経路測度の Langevin の隙間と | python3 | D3 の対照(H↑) |
| 11 | 二次元 σ 模型の と | python3・文献 | D1・D3 の対照 |
| 12 | 三次元 ゲージ理論の と | python3 | D1 の対照(η・鎖) |
| 13 | の体積単調性と境界条件 | python3 | D3 の対照(H↑) |
| 14 | の局所的な力学の動的指数の一次資料 | 文献 | E4((S4)) |
例題:一問を決着の形まで — Hermite の族の
問いの大きさを見るため、一問を最後まで進めます。標準正規分布 の Poincaré 定数は で、等号は です(1-10 §08)。 を含まない族 での比 の最大を とすると、10-08 §03 では という数値の傾向までを書きました。
問 3 — の主要項の定数と次の項
Hermite 多項式(2-06)を に正規化すると なので、奇関数 の分散と Dirichlet 形 は対角になります。
族 に入る条件は「単項式 の係数が 0」という一本の一次の拘束 で、 です(10-08 の寄り道)。拘束の下の の最小 を Lagrange の未定乗数で求めると ()となり、拘束に代入して一変数の方程式が残ります。
一次の拘束の下の二次形式の停留値を求める永年方程式で、数値線形代数で知られた形です 既知(Golub 1973)。 は で 、 で なので根は に一つです。 と置くと の項が で、残りと釣り合います。
は母関数で閉じます。 の係数に を掛けると
右の評価は二つの事実から出ます。一つ目。 なので、 の各項は ( の係数)と の和に分かれます。前者の部分和には恒等式 ( についての帰納法)があり、Stirling の公式で です。二つ目。後者は の係数で、どれも正で と減るので総和は収束し、 での値 に等しく、部分和は です。二つを足して の 1 を引くと (5) の右になります。(4) の は 程度で、この和は の速さの項の和なので有限です 紙。(4) に入れて と展開すると二つの項と の剰余が決まります。
例。 で 。(6) を引いた残りに を掛けた値は 〜 で 〜 に収まります 計算。
計算この図の数値はこの端末で計算した( で作り、根は二分法でその場で求める。表 2 と一致する)。JavaScript が無効なときは表 2 で読めます。
| 1 | 0.555556 | 0.4444 | −0.4418 |
| 10 | 0.774921 | 0.7118 | −0.5517 |
| 1000 | 0.972524 | 0.8689 | −0.5489 |
| 0.991192 | 0.8808 | −0.5459 | |
| 0.999114 | 0.8857 | −0.5446 | |
| (6) | → 1 | 0.8862 | −0.5444 |
欄をまとめます。前提は 1-10 §08 と 10-08 §03、道具は紙と python3、決着の形は (6)。効く壁は無く、A1(試験関数は を下からしか押さえない)の例示です。族を大きくしても のまま の速さで近づくだけで、極限が 1 だと言えるのは族の外の入力( の凸性)からです。先行の記録は探していません。
組合せの問い — 完全な族
一リンク積分(5-11 §05・10-02 §02)が使う「辺の完全な族」を一般の で言い直します。周期 の 次元立方格子の 胞体の集まり で、どの 胞体もその 枚の面のうちちょうど一枚を に持つものです。各 胞体は 個の 胞体の面なので、密度は数え上げで決まります。
記録には で「存在 ⟺ かつ周期が偶数」、一般の で という Lean の定理があり、 では が整数版の数え上げ(Schönheim の上界)で不可能とされ 紙、 が未決です(10-04 §06)。族をどの単位箱 に制限しても、箱の中の 胞体はちょうど一枚の面を持ちます。箱の条件が満たせなければどの周期でも族は無く、低い次元の箱は高い次元の箱の面に入るので、無いことは次元を上げても続きます。10-04 の表 3()に続けて を調べたのが表 3 です。
| 1 | 在る | 在る | 在る(32/24) | 無い(80/80) | 無い | — |
| 2 | 在る | 在る(24/8) | 無い(80/40) | 無い | 無い | 無い |
| 3 | 在る | 在る | 在る | 在る | 在る(1792/1120) | 240 秒で未決(5376/4032) |
では箱の条件がすでに で破れ、記録の「」と合います。 では まで箱の条件が満たされ、 はこの端末の簡単な探索では決まりませんでした(記録でも SAT ソルバー(論理式を満たす真偽の割り当てを探す道具)で 1,200 秒では未決)。 の「在る」は箱の必要条件だけで、周期の箱での存在ではありません。
問 1 — 胞体の完全な族は で在るか
前提:10-04 §06、5-11 §05。道具:箱の条件を CNF(変数とその否定の論理和を、論理積でつないだ式)に書いて SAT ソルバーへ。超立方体の対称群(位数 )で解を一つ固定して枝を割る。決着の形:在るなら周期の箱での族を構成し、python3 か Lean の decide で検査。無いなら の箱の非充足を DRAT 証明(独立に検査できる反駁の記録)で示す。 で無ければ も無い。効く壁:効かない。記録で決まっている部分: の箱に巡回対称な解は無い 計算(記録)。周期 2 の格子では に無い(記録の SAT、三つのソルバーで一致)計算。残るのは一般の周期です。先行の記録:完全符号・完全な支配集合との関係を組合せ論の文献で探す(未着手)。
問 2 — 完全な族が在る最大の次元
前提:問 1。道具:表 3 を に延ばす探索と、周期の箱での構成。記録で決まっている部分:周期 2 の格子では族の大きさが整数であるための割り算の検問 が要り、そこから と は周期 2 で無い Lean(no_perfect_k4_d9・no_perfect_k5_d8。仮定:周期 2)。したがって「 なら在る」は周期 2 では成り立ちません。一般の周期では、この二つは周期が 10・6 で割り切れることを要するだけで未決です(10-04 §06)。決着の形: に続く表。 の箱の条件は まで満たされますが、これは の下界ではありません(下界には周期の箱での構成が要る)。あわせて、上界 が で鋭くない理由の不等式。効く壁:効かない。先行の記録:問 1 と同じ。
寄り道:厳密被覆と Algorithm X
対称性で決まる問い — 一本のリンク・一枚のプラケット
ゲージ対称性(3-01)があると、ある種の関数の分布は によらず Haar 測度(群の上の一様な確率)に決まります。一本のリンク の端点でゲージ変換 を掛けると で(同じ頂点に付く他のリンクも動きますが、 だけの分布を見るので効きません)、Wilson 作用の測度(5-01)は変わらないので、 の分布は Haar 測度です。ここでの Dirichlet 形はリンク角 (記録の )で測ったもの で、 を半径 1 の三次元球面と見る計量の勾配です。分散も も の分布だけで決まるので、この正規化では比は によりません 紙。
は群の上のラプラシアンの最初の正の固有値です。例。 で なら比はちょうど 1 で、10-05 §02 の「素のリンク角の商は厳密に 1」がこれです。 を半径 1 の三次元球面と見る計量では ( の )で、 が等号です(S³ の上のラプラシアンの固有値は 次の調和多項式で )。正規化を替えると数が変わります。本書の座標 ()では計量が 4 倍になって 、上界は です。場の正規化 では比は となり、 によらないとは言えません(10-03 の八つの読み・10-12 表 3)。機構は Elitzur の定理(局所的な対称性は自発的に破れない、Elitzur 1975)と同じですが、定理そのものではありません。
問 4 — 森の上の関数の商は で頭打ちか
問い:閉路を含まないリンクの集まり(森)の上の関数で、比が と体積によらず 以下であることを で示し、Lean で書く。森ではゲージ変換で各リンクを独立に動かせるので同時分布は Haar の積で、積の測度の Poincaré 定数は因子の最大です(1-10 §09)。紙の議論はこの二文で足ります。前提:10-05 §02、1-04、1-10 §09。道具:紙と Lean(Haar 測度の不変性、積の測度の分散)。決着の形:「森の上の試験関数は H↓ に届かない」という Lean の言明(仮定:ゲージ不変な確率測度・森・ の型の Dirichlet 形)と、計量(例えば 。 では半径 1 の S³ と同じ)を固定したときの の値。効く壁:B1 の周辺。H↓ の試験関数の族を一つ閉じるだけで、H↑ には効かない。先行の記録:木のゲージで分布が Haar の積になることは教科書の事実(6-02 §02)。Poincaré 定数の言葉で書いた記録を、格子ゲージ理論の Langevin・Glauber 力学の確率論の文献で探す。
問 5 — 二次元格子 YM のリンク変数での
問い:二次元の格子 YM(自由境界)では木のゲージでプラケット変数が独立になり、面積則が全ての で厳密です(6-02 §03)。リンク変数の Dirichlet 形では、一本のリンクが二枚のプラケットに入ります。その を の関数として求め、 と比べる。前提:6-02、10-03 §01。道具:紙(二つの Dirichlet 形の比較)と python3(小さな格子での変分)。決着の形: の上下の評価と の冪。結果は H の証拠でなく対照です。効く壁:D1 の対照。先行の記録:Shen–Zhu–Zhu 以降の格子 YM の力学の論文群で、二次元の隙間の結果を探す。
問 6 — 一リンク積分の後の曲率の最良の定数
問い:5-11 §09 の の下界は (Lean)、陽な配位では 。真の定数 はいくつか。道具:python3 の大域最適化と区間演算(丸め誤差を含めて真の値を挟む区間で計算する方法)。決着の形: と配位、区間演算で閉じた下界。効く壁:効かない。曲率の方法は定数を動かせても強結合の側から出られない(C1 の手前)。先行の記録:Bakry–Émery 型の判定法(5-11)を格子 YM に使った論文で、同じ周辺の重みの曲率を探す。
模型の係数の問い — 柱の模型と取りこぼし
10-06 §04〜§05 の柱の模型は、三次元 Ising 模型の低温展開から一本の柱を取り出したもので、時刻ごとの断面がポリオミノ(正方形を辺でつないだ図形)、重みは周の長さと隣の時刻との食い違いで決まります。閉じた管から Wulff の主項を引いた残りは、 点の XX 鎖(自由フェルミオンに直せて厳密に解ける量子スピン鎖、Lieb–Schultz–Mattis 1961)の輪の形でした。
紙+計算(10-06 §05。輪の固有値は Lean)。 の項は輪の長さの剰余で符号が分かれる有限サイズの項、 は数値の当てはめです 計算。
問 7 — 柱の模型の の係数 を解析的に
前提:10-06 §04〜§05、7-03(Casimir エネルギー)。道具:紙(菱形の四つの弧を揃えたまま動かす形の零モードの有効模型で、自由フェルミオンの有限サイズ展開を三次まで)と python3( との比較)。決着の形: の閉じた式と数値の 4 桁以上の一致。効く壁:E3。記録の次の一歩の一つで、一次の の係数が証明の射程に入るが、矢印の論理は変わらない。先行の記録:ねじれた境界条件の XX 鎖の基底エネルギーの の項を、物性の文献で探す。
問 8 — 有限の での の符号
前提:問 7、10-06 §05(周長 18 以下で符号が決まらなかったのは、形の零モードの が まで Casimir 項を上回るため)。道具:python3 で断面を状態とする転送行列を周長 程度まで作り、最大固有値を求める(または問 7 の を引いてから当てはめる)。決着の形: での の係数の符号の表。効く壁:E3(10-08 表 1)。先行の記録:三次元 Ising の界面・管の自由エネルギーの数値の文献で、柱に制限した模型を探す。
問 9 — 取りこぼし はゲージの取り方でどれだけ変わるか
問い:10-02 §08 の は一ループ核の模型の数です。ブロック変換のゲージの取り方を替えると はどれだけ動くか。前提:10-02 §08、4-08。道具:python3。決着の形:ゲージごとの の表と、正値な核で が保たれるかの判定。効く壁:E2、結果によって B4 の範囲。 である限り Σδ の矢印は動かない(10-08 (6))。先行の記録:Monte Carlo 繰り込み群の (8-04)のブロック変換への依存を扱った格子の文献を探す。
二つの時間の小模型 — 仮定 H を決着のつく場所で試す
仮定 H(10-03 §02)は、Langevin 力学の遅さ が相関長 (転送行列の隙間の逆数)の二乗の冪で伸びる、という文です。四次元 では証明できませんが、 が分かっている小さな模型では と の関係に決着がつきます。結果は四次元 YM の証拠ではなく、H の形の文がどんな機構で成り立ち、どんな機構で壊れるかの対照です。
形は 10-03 §02 の (H) と同じです。小模型では極限の傾きを測り、2 からのずれを と書きます。
問 10 — 二重井戸の経路測度の Langevin の隙間と
問い: の虚時間の経路測度(2-07)で、時間方向の相関長は です。調和振動子では でした(時間を連続に取ったとき。格子では が掛かる。10-03 §01)。二重井戸では相関長を作るのは経路の上のキンク(井戸を移る短い区間)で、キンクを作るには障壁を越える必要があります。 は有界か。前提:2-07、3-05、10-03 §01。道具:python3( 点の経路、平均位置などの試験関数で下界、二つの井戸への射影で上界の候補)。決着の形:表 4 の範囲で有界か発散か、発散なら の何乗か。効く壁:D3 の対照(H↑)。周期境界で位相電荷が凍ると H↑ が破れうる、という読み(10-06 §08)の最小模型です。先行の記録:二重井戸のメタ安定性(Eyring–Kramers の式:高さ の障壁を越える時間が雑音の強さ に対し 。6-09 §01)と経路空間の Langevin 力学の確率論の文献。
| 障壁 | |||
|---|---|---|---|
| 1.00 | 1.00 | 0.79185 | 1.26 |
| 1.25 | 2.44 | 0.30806 | 3.25 |
| 1.50 | 5.06 | 23.9 | |
| 1.75 | 9.38 | 629 | |
| 2.00 | 16.0 |
例。 を 1.25 から 1.75 に動かすだけで は約 200 倍です。python3 で扱えるのは あたりまでで、そこで傾向を読み紙の評価で挟むのが卒業研究の大きさです。
問 11 — 二次元 σ 模型の と
問い:二次元 σ 模型は四次元 YM と同じく漸近的に自由で、質量ギャップの値まで知られている模型です(Hasenfratz–Maggiore–Niedermayer 1990 物理)。値は Bethe 仮説と S 行列に基づく物理の結果で、ギャップが正であることも数学の定理にはなっていません。格子の Langevin 力学か熱浴法で を 程度まで測り、 が有界か、対数で動くかを調べる。前提:2-08、4-07、10-03 の H の八つの読み。道具:python3(市松模様の更新:格子を市松の白と黒に分け、互いに隣り合わない同じ色の点をまとめて更新する)、 はクラスター法(Wolff 1989)で別に測る。決着の形:(10) の傾きと の推定と、Dirichlet 形の正規化(スピンの角度か場の大きさか)を替えたときの対数の有無(8-05 §03 の自由近似と同じ形か)。効く壁:D1・D3 の対照。先行の記録:自己相関は詳しく調べられています(Mendes–Pelissetto–Sokal 1996 “Multi-Grid Monte Carlo via XY Embedding I” の要旨:多重格子法で ( まで)、「臨界減速は局所的な算法に比べて大きく減るが、完全には消えない」)。局所的な算法の の一次資料と、 を隙間で述べた記録を探す。
問 12 — 三次元 ゲージ理論の と
問い:三次元 ゲージ理論は可換ですが、閉じ込めの相で一尺度を満たす例として 7-12 §09 に出ました。三次元 Ising 模型と双対で相関長が分かります。リンクを一本ずつ反転する力学で を測る。前提:5-10、7-12 §09。道具:python3( の熱浴法)。決着の形: の表と、双対の Ising 側の Glauber 力学の動的指数との対応の有無。効く壁:D1 の対照(非可換性の要らない場所)。先行の記録:ゲージ側の局所的な力学の自己相関の記録と、双対で力学がどう写るか。
問 13 — の体積単調性と境界条件
問い:記録の次の一歩の一つが「 は体積について単調か」(方向 11、10-04 §06)で、注意は「H は無限体積か開いた境界で述べる」でした。一次元・二次元の Ising 模型や、 模型を 状態の時計模型に離散化したものの小さな格子で、Glauber 力学の生成作用素を厳密に対角化し(状態数 程度まで)、周期境界と自由境界で を比べる。前提:2-08、2-09、1-10 §07。道具:python3(疎行列の固有値)。決着の形:単調性の反例か証明。効く壁:D3 の対照(H↑)。一・二次元の模型なので、四次元の箱の大きさの壁 E1 は動かさない。先行の記録:Glauber 力学の隙間の体積依存を扱う確率論の総説。
文献の問いと、先行の記録を探す段
問 14 — の局所的な力学の動的指数の一次資料
問い:10-08 の E4 は「取得できた動的指数の資料が ・HMC 型だけ」でした。四次元 の熱浴法・過緩和法・Langevin 法で、自己相関時間を相関長の冪として測った一次資料を集める。前提:5-07、8-03。道具:arXiv の hep-lat、INSPIRE、参考文献をたどる。決着の形:十本前後の一次資料の表(指数・観測量・箱・境界条件、本文を読んだか書誌のみか)。効く壁:E4。D3 の「HMC ≈ Langevin」の予想の確かさにも関わる。先行の記録:この問い自体が探す段です。
どの問いでも、着手の前に同じ問いの答えがあるかを探します。
語の組は数学と物理の両方の言葉で作ります(第 8 部の辞書)。問 11 なら「Poincaré constant」「spectral gap」と「dynamic critical exponent」「autocorrelation time」の両方です。判定は三つです。同じ答えがあれば既知として第 3〜7 部の該当する章に送り、問いを取り下げる。近いが違う結果があれば違いを一行で書いて残す。見当たらなければ「探した範囲で見当たらない」と書き、探した語と資料を出典表に残す。例。問 3 の (3) は探すまでもなく既知の道具です。既知の道具で定数を一つ出すのは、問いを小さくする普通の方法です。
決着したら何が動くか — 壁の列との対応
表 1 の最後の列を、10-08 図 1 の列ごとに数え直します。
直接効くのは Σδ(問 9)・H↓(問 4)・η・鎖(問 7・8)・(S4)(問 14)の各列で、一段と極限の列に届く問いはありません。H↑ に直接効く問いが無いのは、10-08 の「H↑ の手前には測れば動く壁が無い」ことの写しです。H↑ は「すべての試験関数」についての上界なので、有限の計算と有限の模型からは、その形の文が成り立つ模型・壊れる模型という対照までしか作れません。10-11 の定理までの距離は、どの問いが決着しても縮みません。
それでも並べる理由は二つあります。問 10・13 は、D3 の「境界条件と位相電荷で H↑ が壊れうる」という読みが最小の模型で起きるかを見ます。起きなければ、その読みが位相電荷のある模型に特有かどうかの対照になります。D3 は四次元 での「HMC ≈ Langevin」の予想に依る壁なので、小模型の結果はそれを確かめも反証もしません。また、道具(SAT と証明の記録、永年方程式、厳密対角化、区間演算、文献の表)は大きな問いにそのまま使えます。例。問 3 は (6) まで進みましたが「効かない」の列にあり、A1 の形をもう一つの数で書いただけです。小さな問いの決着は多くの場合こういう形になります。
この章が言えている範囲
| 札 | 言えている | 言えていない |
|---|---|---|
| — | 十四の問いと六つの欄、壁の列との対応(この本の整理)。H↑ と極限の列に直接効く問いが無いこと。 | どの問いも、決着しても質量ギャップ・連続極限・仮定 H について何も示さない。「卒業研究の大きさ」は見込み。 |
| 紙 | (5)・(6) の導出、(8)(一本のリンクの比が で によらない)。 | (6) の の係数の値(〜 は計算のみ)。 での比。(8) の Lean の言明(問 4)。森でない集まりでの比。 |
| 計算 | 表 2・図 1・(6) の検算、表 3(単位箱の存否)、表 4。 | ・ の箱。表 3 の「在る」は周期の箱での存在を示さない。 |
| 既知 | 永年方程式、木のゲージで分布が Haar の積になること、XX 鎖の可解性、Algorithm X。 | これらをこの端末の成果として数えること。 |
| 物理 | 二次元 の質量ギャップの値、多重格子法の動的指数。 | これらが数学の定理であること。 |
| Lean | この章に新しい Lean の定理は無い。引いた定理は 10-04・5-11・10-08 の行と問 2 の周期 2 の非存在(仮定もそこに)。 | 問 1・4 の Lean の言明。 |
出典と再現
| もの | 種別 | 出典・道具 |
|---|---|---|
| 完全な族の Lean の定理と未決・(9)・・方向 11・壁の記号 | 記録 | この端末の記録(一次資料と突き合わせて条件と既知の部分を直した整理)。10-02・10-04・10-06・10-08 を経由。 |
| 表 2・図 1・(6) の検算 | 計算 | Python 3(NumPy・SciPy):hermite_secular.py、hermite_asym.py。 |
| 表 3 | 計算 | Python 3:unitbox.py(Algorithm X、各 25 秒まで)、unitbox_d9.py(240 秒)。 |
| 表 4 | 計算 | Python 3(三重対角の固有値):doublewell.py。 |
| 永年方程式 | 書誌のみ | G. H. Golub, Some modified matrix eigenvalue problems, SIAM Review 15 (1973) 318–334。 |
| Algorithm X・dancing links | 書誌のみ | D. E. Knuth, Dancing links, arXiv:cs/0011047 (2000)。 |
| Elitzur の定理 | 書誌のみ | S. Elitzur, Phys. Rev. D 12 (1975) 3978–3982(10-05 の照合による)。 |
| XX 鎖 | 書誌のみ | E. Lieb, T. Schultz, D. Mattis, Ann. Phys. 16 (1961) 407–466。 |
| 二次元 の質量ギャップ | 書誌のみ | P. Hasenfratz, M. Maggiore, F. Niedermayer, Phys. Lett. B 245 (1990) 522–528。 |
| クラスター法 | 書誌のみ | U. Wolff, Phys. Rev. Lett. 62 (1989) 361–364。 |
| 多重格子法の動的指数 | 要旨 | T. Mendes, A. Pelissetto, A. D. Sokal, Multi-Grid Monte Carlo via XY Embedding I, Nucl. Phys. B 477 (1996) 203–272, arXiv:hep-lat/9604015。 |
| 二次元格子 YM の力学(問 5) | 既知 | H. Shen, R. Zhu, X. Zhu, arXiv:2204.12737(10-03 の出典表の照合による)。 |
| Bakry–Émery の判定法(問 6) | 書誌のみ | 5-11 の出典表。 |
| Eyring–Kramers の式(問 10) | 標準の結果(原論文は未確認) | 6-09 の出典表。 |
| 完全な族の割り算の検問・周期 2 の非存在・巡回対称な解の非存在(問 1・2) | 記録 | この端末の記録(Lean の定理名は本文)。 |
| 先行の記録の検索 | — | 各問の「先行の記録」の欄は探す計画で、問 11 の要旨と Golub の書誌のほかは探していない。 |
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