computo ergo sum

2026-10-01 · chapter ヤン–ミルズと質量ギャップ第 1 部 数学の準備フーリエ解析と超関数

この本の全体 目次と読む順
  1. 第 0 部 入口 — この本の読み方
  2. 0-01 この本の読み方
  3. 0-02 一枚の絵
  4. 0-03 問題文を一語ずつ読む
  5. 0-04 数学の四次元と物理の四次元
  6. 第 1 部 数学の準備
  7. 1-01 ベクトル空間と線形写像
  8. 1-02 群とは何か
  9. 1-03 リー群とリー環
  10. 1-04 SU(2) と SU(3)
  11. 1-05 多様体と接空間
  12. 1-06 微分形式と外微分
  13. 1-07 ベクトル束と接続
  14. 1-08 確率と測度
  15. 1-09 無限次元の確率
  16. 1-10 ヒルベルト空間と自己共役作用素
  17. 1-11 フーリエ解析と分布
  18. 1-12 寄り道
  19. 第 2 部 物理の準備
  20. 2-01 ラグランジアンと作用
  21. 2-02 場という考え
  22. 2-03 電磁気学はゲージ理論である
  23. 2-04 特殊相対論と時空
  24. 2-05 量子力学の骨
  25. 2-06 調和振動子と生成消滅
  26. 2-07 経路積分の考え方
  27. 2-08 統計力学と相転移
  28. 2-09 寄り道
  29. 2-10 緩和の時間と動的指数 z
  30. 第 3 部 ヤン–ミルズ理論(古典)
  31. 3-01 ゲージ原理
  32. 3-02 非可換ゲージ場
  33. 3-03 作用と方程式
  34. 3-04 幾何としてのゲージ理論
  35. 3-05 インスタントンと位相
  36. 3-06 寄り道
  37. 3-07 標準模型の中のヤン–ミルズ
  38. 第 4 部 量子化
  39. 4-01 正準量子化とハミルトニアン
  40. 4-02 経路積分とユークリッド化
  41. 4-03 摂動論と Feynman ダイアグラム
  42. 4-04 発散と繰り込み
  43. 4-05 発散の代数
  44. 4-06 漸近自由
  45. 4-07 次元転移と Λ
  46. 4-08 ゲージ固定と Faddeev–Popov
  47. 4-09 場の量子論の公理
  48. 4-10 Osterwalder–Schrader の公理と再構成
  49. 4-11 質量ギャップの定義
  50. 4-12 寄り道
  51. 第 5 部 格子ゲージ理論
  52. 5-01 Wilson の格子
  53. 5-02 強結合展開
  54. 5-03 反射正値性と転送行列
  55. 5-04 無限体積極限とクラスター展開
  56. 5-05 弱結合と連続極限
  57. 5-06 U(1) と非可換の違い
  58. 5-07 モンテカルロ法
  59. 5-08 グルーボールと弦張力の測定
  60. 5-09 何を固定して極限を取るか
  61. 5-10 有限群の格子ゲージ理論
  62. 5-11 寄り道
  63. 第 6 部 構成的場の理論
  64. 6-01 構成的場の理論とは
  65. 6-02 二次元の可解性とヤン–ミルズ測度
  66. 6-03 スカラー場の構成
  67. 6-04 クラスター展開
  68. 6-05 繰り込み群の段の列
  69. 6-06 三次元ヤン–ミルズの紫外安定性
  70. 6-07 四次元
  71. 6-08 四次元の φ⁴ の自明性
  72. 6-09 確率量子化と正則性構造
  73. 6-10 四次元で止まる場所
  74. 6-11 発散以外の障害
  75. 6-12 寄り道
  76. 第 7 部 物理の側から
  77. 7-01 物理はどう見ているか
  78. 7-02 閉じ込めの機構
  79. 7-03 弦の絵
  80. 7-04 大 N
  81. 7-05 ひも理論と余剰次元
  82. 7-06 余剰次元が見えなくなる仕組み
  83. 7-07 ゲージ場はどこから来るか
  84. 7-08 ホログラフィー
  85. 7-09 質量ギャップが幾何になる
  86. 7-10 四次元に戻す
  87. 7-11 超対称と Seiberg–Witten
  88. 7-12 等価原理に当たる一文
  89. 7-13 物理の掘り方が数学と離れる場所
  90. 第 8 部 二つの言葉の辞書 — 物理の視点と数学の視点
  91. 8-01 辞書の読み方
  92. 8-02 辞書 A
  93. 8-03 辞書 B
  94. 8-04 辞書 C
  95. 8-05 私たちの仮定の物理側の対応
  96. 第 9 部 現在地と課題
  97. 9-01 世界はどこまで来ているか
  98. 9-02 二つの掘り方の切れ目
  99. 9-03 新しい概念の候補
  100. 9-04 課題の一覧
  101. 9-05 よくある誤解
  102. 第 10 部 質量ギャップの厳密な証明へ — この端末の検討
  103. 10-00 第 10 部の入口 — 酔歩と定規と時計
  104. 10-01 理論の構成の筋
  105. 10-02 一段の記帳
  106. 10-03 仮定 H と三つの鎖
  107. 10-04 方向の地図
  108. 10-05 方向 12〜14
  109. 10-06 方向 15・15′
  110. 10-07 Lean で閉じた言明と既存の結果の対応表
  111. 10-08 壁の一覧
  112. 10-09 ひらめき帳から
  113. 10-10 主張しないこと
  114. 10-12 つじつま合わせ
  115. 10-11 定理までの距離
  116. 10-13 小さな問い — 卒業研究の大きさで決着のつく十〜二十問
  117. 付録
  118. A-01 記号表
  119. A-02 用語集
  120. A-03 文献案内
  121. A-04 Lean と機械検査
  122. A-05 この本の作り方
  123. A-06 仮定の索引

フーリエ解析と分布 — 点で値を持たないものを、波と平均で扱う

この章で分かること — 周波数に分けると微分が掛け算になること。点で値を持たない対象(超関数)を、なめらかな関数と組にした値で定義すること。伝播関数が近くで発散し遠くで e−mre^{-mr} と減ること、その二乗が四次元でちょうど積分できなくなること、超関数どうしの積が一般には定まらず、荒さの合計が正なら定まること。

前提となる章 — 1-10(ヒルベルト空間・正規直交基底)。§01・§06・§08 で 1-09 の白色雑音・自由場と 1-08 §06 の対の数え上げを使います(式は再掲)。

先に言うこと — 定理は証明を省いて引用します。相互作用のある場の積は入口だけです(6-09・6-10)。この章はヤン–ミルズの質量ギャップについて何も示していません。

この章の順序
  1. なぜこの章か — 点の値の代わりに平均を測る
  2. フーリエ級数 — なめらかさは係数の減り方に出る(図 1)
  3. フーリエ変換 — 微分が掛け算に、方程式が割り算になる
  4. テスト関数と超関数 — 試して測る
  5. 超関数のフーリエ変換 — δ はすべての周波数を等しく含む
  6. 荒さの物差し — Sobolev 空間と尺度の指数((9a)(9b))
  7. 伝播関数 — 近くで発散し、遠くで e−mre^{-mr}(図 2・表 1)
  8. 特異性を数える — 四次元が境目(表 2・図 3)
  9. 積の困難 — ならし方が答えに残る(図 4)
  10. 作れる場合 — 荒さの合計が正なら

01

なぜこの章か — 点の値の代わりに平均を

二次元以上の自由場は一点での値を持ちません。一点の分散が無限大だからです(1-09 §08)。意味を持つのは、なめらかな重み ff で平均した値で、その分散は二点の相関 GG を二重に平均して書けます。

φ(f)=∫Rdφ(x) f(x) ddx,E[φ(f)2]=∬f(x) G(x−y) f(y) ddx ddy(1)\varphi(f)=\int_{\mathbb R^d}\varphi(x)\,f(x)\,d^dx,\qquad E\big[\varphi(f)^2\big]=\iint f(x)\,G(x-y)\,f(y)\,d^dx\,d^dy \tag{1}

GG を伝播関数と呼び、形式的には E[φ(x)φ(y)]=G(x−y)E[\varphi(x)\varphi(y)]=G(x-y) です。GG は x=yx=y で無限大ですが、(1) の右辺は有限です。例:一辺 ε\varepsilon の箱で平均した値の分散は、d≥3d\ge3 なら G≈c r2−dG\approx c\,r^{2-d}(§07)により ε2−d\varepsilon^{2-d} に比例し、四次元では箱を半分にするごとに 4 倍です。点では無限、平均すれば有限です。

02

フーリエ級数 — 周期関数を波に分ける

周期 2π2\pi の関数を波 eikxe^{ikx} の重ね合わせに分けます。eikx/2π (k∈Z)e^{ikx}/\sqrt{2\pi}\ (k\in\mathbb Z) は L2(−π,π)L^2(-\pi,\pi) の正規直交基底で(1-10 §02 の複素版)、係数は内積で取り出せます 既知。

ck=12π∫−ππf(x) e−ikx dx,f=∑k∈Zck eikx,12π∫−ππ∣f∣2 dx=∑k∈Z∣ck∣2(2)c_k=\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}f(x)\,e^{-ikx}\,dx,\qquad f=\sum_{k\in\mathbb Z}c_k\,e^{ikx},\qquad \frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}|f|^2\,dx=\sum_{k\in\mathbb Z}|c_k|^2 \tag{2}

最後が Parseval の等式です。部分積分をすると、微分は係数に ikik を掛けることに替わります。

ck[f′]=ik  ck[f](f が周期的でなめらかなとき)(3)c_k[f']=ik\;c_k[f]\qquad(f\ \text{が周期的でなめらかなとき}) \tag{3}

だからなめらかさは係数の減り方に出ます。nn 回微分しても二乗積分が有限なら ∑kk2n∣ck∣2<∞\sum_kk^{2n}|c_k|^2\lt\infty。跳びがあると係数は 1/k1/k でしか減りません。

例:矩形波 f(x)=sign⁡xf(x)=\operatorname{sign}x の部分和は SN(x)=4π∑k 奇数≤Nsin⁡kxkS_N(x)=\frac4\pi\sum_{k\ \text{奇数}\le N}\frac{\sin kx}{k} です。二乗平均の誤差は Parseval により 8π2∑k 奇数>Nk−2≈4π2N\frac8{\pi^2}\sum_{k\ \text{奇数}\gt N}k^{-2}\approx\frac4{\pi^2N} で 0 に行くのに、最大値は跳びの脇で約 1.179 まで行き過ぎ、跳びの幅 2 に対する比 1π∫0πsin⁡ttdt−12=0.08949⋯\frac1\pi\int_0^\pi\frac{\sin t}{t}dt-\frac12=0.08949\cdots は NN によらず残ります。これが Gibbs 現象で、Wilbraham(1848)が最初に調べ、Gibbs の 1899 年の手紙で広く知られ、Bôcher(1906)が名を付けたとされます 既知。

計算SNS_N の最大(x=π/(N+1)x=\pi/(N+1) の値)は N=1,9,999N=1,9,999 で 1.27324・1.18233・1.17898(極限 2πSi⁡(π)\frac2\pi\operatorname{Si}(\pi))、二乗平均の誤差は 0.18943・0.04040・0.000405 です(Parseval の式と数値積分で一致。N=999N=999 の 0.0004052846 は 10 桁まで一致)。二乗平均では収束し、一様には収束しない。「収束」には強さの違う意味があります。部分和を平均した Fejér 平均 σN=1N+1(S0+S1+⋯+SN)\sigma_N=\frac1{N+1}(S_0+S_1+\cdots+S_N) は正の核でならしたものなので行き過ぎが起きません(∣σN∣≤1|\sigma_N|\le1)既知。「ならしてから極限を取る」は §04 の近似の基本の手です。

図 1 矩形波(細線)の部分和 SNS_N(実線)と Fejér 平均 σN\sigma_N(破線)。上は一周期、下は跳びの脇 0<x<8π/(N+1)0\lt x\lt 8\pi/(N+1)(N<7N\lt7 では 0<x<π0\lt x\lt\pi)を横に拡げたもの。NN を増やすと上では SNS_N が矩形波に寄るのに、下の山の高さは約 1.179(点線)のまま残り、σN\sigma_N は 1 を越えない。「動かす」で NN を増やす
N = 9 部分和の最大 1.18233(x = π/(N+1)、極限 1.17898) 行き過ぎ/跳び 0.09116 Fejér 平均の最大 0.93573 二乗平均の誤差 0.040395(Parseval)

計算この図の数値はこの端末で計算しました(級数の部分和をその場で足す。読み出しは N=1,3,5,9,19,49,99,199N=1,3,5,9,19,49,99,199 で上の計算と 5 桁一致)。

03

フーリエ変換 — 微分が掛け算になる

周期の無い関数では周波数が連続に並び、和が積分に替わります。この本の約束は次の通りです。測度を ddk/(2π)dd^dk/(2\pi)^d とする点は 1-09 の (10) と揃えてあります。

f^(k)=∫Rdf(x) e−ik⋅x ddx,f(x)=∫Rdf^(k) eik⋅x ddk(2π)d(4)\hat f(k)=\int_{\mathbb R^d}f(x)\,e^{-ik\cdot x}\,d^dx,\qquad f(x)=\int_{\mathbb R^d}\hat f(k)\,e^{ik\cdot x}\,\frac{d^dk}{(2\pi)^d} \tag{4}

級数と同じ規則が成り立ちます 既知。長さが保たれ(Plancherel)、微分が掛け算に、畳み込み (f∗g)(x)=∫f(y)g(x−y) ddy(f*g)(x)=\int f(y)g(x-y)\,d^dy が積になります。

∫∣f∣2 ddx=∫∣f^∣2 ddk(2π)d,∂jf^=ikj f^,f∗g^=f^ g^(5)\int|f|^2\,d^dx=\int|\hat f|^2\,\frac{d^dk}{(2\pi)^d},\qquad \widehat{\partial_jf}=ik_j\,\hat f,\qquad \widehat{f*g}=\hat f\,\hat g \tag{5}

すると −Δf^=∣k∣2f^\widehat{-\Delta f}=|k|^2\hat f で、定数係数の微分方程式は周波数ごとの割り算になります。m>0m\gt0 なら分母は 0 にならず、解が一つ決まります。

(−Δ+m2) u=f⟺u^(k)=f^(k)∣k∣2+m2(6)(-\Delta+m^2)\,u=f\quad\Longleftrightarrow\quad \hat u(k)=\frac{\hat f(k)}{|k|^2+m^2} \tag{6}

例:幅 σ\sigma のガウスの変換は幅 1/σ1/\sigma のガウスです(2-05 の不確定性関係)。e−m∣x∣e^{-m|x|} の変換は 2mk2+m2\frac{2m}{k^2+m^2} で、x=0x=0 の角が 1/k21/k^2 の遅い減り方に出ます(§07 の一次元の伝播関数)。

04

テスト関数と超関数 — 試して測る

点の値を持たない対象を、なめらかな関数と組にした値で定義します。組む相手をテスト関数と呼び、何回でも微分できて有界な集合の外で 0 になる関数とします(全体を D\mathcal D。例:∣x∣<1|x|\lt1 で e−1/(1−∣x∣2)e^{-1/(1-|x|^2)}、外で 0)。

超関数とは、テスト関数 ϕ\phi に数 ⟨T,ϕ⟩\langle T,\phi\rangle を対応させる線形で連続な規則です(連続とは、台(関数が 0 でない点の集まりの閉包)が一つの有界集合に収まり、すべての導関数が一様に 0 に近づく列 ϕn\phi_n で ⟨T,ϕn⟩→0\langle T,\phi_n\rangle\to0 となること)既知。題の「試して測る」は比喩で、正確には、点の値の代わりにこの規則 ϕ↦⟨T,ϕ⟩\phi\mapsto\langle T,\phi\rangle そのものを対象とみなす、という意味です。英語は distribution で、章の題の「分布」はその直訳です(確率の「分布」とは別の言葉)。超関数の考えは Sobolev(1936)に始まり、Schwartz が体系にしたとされます 既知。

例:(a) 有界な集合の上で積分できる関数 ff は ⟨f,ϕ⟩=∫fϕ ddx\langle f,\phi\rangle=\int f\phi\,d^dx で超関数になります。(b) ⟨δ,ϕ⟩=ϕ(0)\langle\delta,\phi\rangle=\phi(0) の δ\delta は、どの関数の積分でも書けません。微分は部分積分を定義に格上げして決めます。

⟨∂jT,ϕ⟩=−⟨T,∂jϕ⟩(7)\langle\partial_jT,\phi\rangle=-\langle T,\partial_j\phi\rangle \tag{7}

右辺はいつでも意味を持つので、どの超関数も何回でも微分できます。階段関数 HH(x>0x\gt0 で 1、x<0x\lt0 で 0)なら ⟨H′,ϕ⟩=−∫0∞ϕ′ dx=ϕ(0)\langle H',\phi\rangle=-\int_0^\infty\phi'\,dx=\phi(0)、つまり H′=δH'=\delta です。

近似:ρ≥0\rho\ge0 をなめらかで ∫ρ=1\int\rho=1 の関数、ρε(x)=ε−dρ(x/ε)\rho_\varepsilon(x)=\varepsilon^{-d}\rho(x/\varepsilon) とすると ⟨ρε,ϕ⟩→ϕ(0)\langle\rho_\varepsilon,\phi\rangle\to\phi(0)、つまり ρε→δ\rho_\varepsilon\to\delta です。sin⁡nx\sin nx は点ごとには収束しませんが、部分積分で 1n\frac1n が出るので超関数としては 0 に収束します。

05

超関数のフーリエ変換 — δ はすべての周波数を等しく含む

変換には D\mathcal D より広い相手を使います。何回でも微分でき、関数も導関数も ∣x∣|x| のどの冪より速く減る関数の全体 S\mathcal S(Schwartz 空間)で、変換は S\mathcal S を S\mathcal S の上へ一対一に写します 既知。S\mathcal S の上の連続な線形の規則(緩増加超関数)の変換は、∫f^ϕ=∫fϕ^\int\hat f\phi=\int f\hat\phi に合わせて定めます。

⟨T^,ϕ⟩=⟨T,ϕ^⟩(ϕ∈S)(8)\langle\hat T,\phi\rangle=\langle T,\hat\phi\rangle\qquad(\phi\in\mathcal S) \tag{8}

例:⟨δ^,ϕ⟩=ϕ^(0)=∫ϕ ddx\langle\hat\delta,\phi\rangle=\hat\phi(0)=\int\phi\,d^dx なので δ^=1\hat\delta=1。一点に集中したものは、すべての周波数を同じ重みで含みます(白色雑音の「白色」の由来)。

逆に定数 1 の変換は (2π)dδ(2\pi)^d\delta で、どこでも同じ大きさのものは周波数 0 だけを含みます。(5) の規則もそのまま延びて ∂jT^=ikjT^\widehat{\partial_jT}=ik_j\hat T となります 既知。§07 で伝播関数を G^=1/(∣k∣2+m2)\hat G=1/(|k|^2+m^2) と書けるのはこのためです。

06

荒さの物差し — Sobolev 空間と尺度の指数

なめらかさは係数や f^\hat f の減り方に出ます((3)(5))。これを数で測る物差しを二つ置きます。一つ目は周波数に重みを付けた長さで、これが有限な対象の全体を Sobolev 空間 HsH^s と呼びます。ss が大きいほどなめらかなものしか入らず、ss が負ほど荒いものまで入ります。

∥f∥Hs2=∫(1+∣k∣2)s ∣f^(k)∣2 ddk(2π)d(9a)\|f\|_{H^s}^2=\int(1+|k|^2)^s\,|\hat f(k)|^2\,\frac{d^dk}{(2\pi)^d} \tag{9a}

二つ目は拡大縮小での振る舞いです。超関数の T(λ ⋅)T(\lambda\,\cdot) は、変数変換の式を定義に格上げして ⟨T(λ ⋅),ϕ⟩=λ−d⟨T,ϕ(⋅/λ)⟩\langle T(\lambda\,\cdot),\phi\rangle=\lambda^{-d}\langle T,\phi(\cdot/\lambda)\rangle で決めます。

T(λ ⋅)=λα T  (すべての λ>0)のとき、α を尺度の指数と呼ぶ(9b)T(\lambda\,\cdot)=\lambda^{\alpha}\,T\ \ (\text{すべての}\ \lambda\gt0)\quad\text{のとき、}\alpha\ \text{を尺度の指数と呼ぶ} \tag{9b}

「物差し」は比喩で、正確には (9a) の ss と (9b) の α\alpha という二つの数のことです。δ^=1\hat\delta=1 なので ∥δ∥Hs\|\delta\|_{H^s} が有限なのは s<−d/2s\lt-d/2 のときだけです。尺度の指数は δ\delta が −d-d、∣x∣−a|x|^{-a} が −a-a です。

確率的な対象 TT では、T(λ ⋅)T(\lambda\,\cdot) と λαT\lambda^\alpha T が同じ確率分布を持つとき、指数を α\alpha とします。白色雑音 ξ\xi(E[ξ(f)ξ(g)]=∫fg ddxE[\xi(f)\xi(g)]=\int fg\,d^dx、1-09 §07 の Rd\mathbb R^d 版)では、ξ(λ ⋅)\xi(\lambda\,\cdot) をテスト関数 ϕ,ψ\phi,\psi と組にした値の共分散が λ−2d∫ϕ(x/λ)ψ(x/λ) ddx=λ−d∫ϕψ ddx\lambda^{-2d}\int\phi(x/\lambda)\psi(x/\lambda)\,d^dx=\lambda^{-d}\int\phi\psi\,d^dx で、平均 0 のガウスは共分散で決まるので、ξ(λ ⋅)\xi(\lambda\,\cdot) は λ−d/2ξ\lambda^{-d/2}\xi と同じ確率分布を持ちます。指数は −d/2-d/2 です。質量の無い自由場(m=0m=0、d≥3d\ge3)は共分散が G(λx)=λ2−dG(x)G(\lambda x)=\lambda^{2-d}G(x)(§07 の近い側の式が m=0m=0 では厳密)なので、指数は 1−d/21-d/2 です。d=2d=2 では GG が対数なので、定数を除いて同じことが成り立ちます 既知。時間も含む時空の白色雑音を、時間を λ2\lambda^2 倍・空間を λ\lambda 倍する放物型の尺度で測ると、指数は −(d+2)/2-(d+2)/2 です(Hairer の講義の演習 2.3)既知。この指数が §10 で積の可否を決めます。

07

伝播関数 — δ に応える場

(6) の右辺を δ\delta にした方程式の解が伝播関数です。「δ に応える」は比喩で、正確には (10) の最初の式を超関数の等式として満たすことで、このような解を基本解と呼びます。1∣k∣2+m2=∫0∞e−t(∣k∣2+m2)dt\frac1{|k|^2+m^2}=\int_0^\infty e^{-t(|k|^2+m^2)}dt とガウスの変換から、熱方程式 ∂tu=Δu\partial_tu=\Delta u の基本解 (4πt)−d/2e−∣x∣2/4t(4\pi t)^{-d/2}e^{-|x|^2/4t}(熱核)を時間で積分した表示も出ます。

(−Δ+m2) G=δ,G^(k)=1∣k∣2+m2,G(x)=∫0∞e−∣x∣2/4t − m2t(4πt)d/2 dt(10)(-\Delta+m^2)\,G=\delta,\qquad \hat G(k)=\frac1{|k|^2+m^2},\qquad G(x)=\int_0^\infty\frac{e^{-|x|^2/4t\,-\,m^2t}}{(4\pi t)^{d/2}}\,dt \tag{10}

GG は自由場の共分散で、物理では質量 mm の粒子のユークリッドの伝播関数です(4-02・4-03)。r=∣x∣r=|x| として d=1d=1 では e−mr/2me^{-mr}/2m、d=3d=3 では e−mr/4πre^{-mr}/4\pi r、一般には変形ベッセル関数 Kν(s)=∫0∞e−scosh⁡tcosh⁡νt dtK_\nu(s)=\int_0^\infty e^{-s\cosh t}\cosh\nu t\,dt を使って (2π)−d/2(m/r)d/2−1Kd/2−1(mr)(2\pi)^{-d/2}(m/r)^{d/2-1}K_{d/2-1}(mr) です 既知。大事なのは二つの顔です。

G(r)≈{Γ(d/2−1)4πd/2 r2−d(r→0, d≥3)12πln⁡1r(r→0, d=2)G(r)≈12m(m2πr)d−12e−mr(r→∞)(11)G(r)\approx\begin{cases}\dfrac{\Gamma(d/2-1)}{4\pi^{d/2}}\,r^{2-d}&(r\to0,\ d\ge3)\\[6pt]\dfrac1{2\pi}\ln\dfrac1r&(r\to0,\ d=2)\end{cases}\qquad G(r)\approx\frac1{2m}\Big(\frac{m}{2\pi r}\Big)^{\frac{d-1}2}e^{-mr}\quad(r\to\infty) \tag{11}

近い顔では mm が消え、d≥2d\ge2 で発散します。遠い顔では e−mre^{-mr} で減ります。「顔」は比喩で、正確には r→0r\to0 で G(r)G(r) と (11) の左の式との比が 1 に近づき、r→∞r\to\infty で右の式との比が 1 に近づく、という意味です。相関が e−r/ξe^{-r/\xi} で減るときの ξ\xi を相関長と呼ぶと(2-08)ξ=1/m\xi=1/m で、「相関の減る速さ=質量」は質量ギャップの定義(4-11)の自由場の版です。

図 2 伝播関数 G(r)G(r) の両対数グラフ(実線)。dd と mm を動かすと、近い側は (11) の左の式(破線。d=2d=2 は定数 (ln⁡(2/m)−γ)/2π(\ln(2/m)-\gamma)/2\pi を足した形、d=1d=1 は原点の値 1/(2m)1/(2m))に、遠い側は右の式(点線)に沿い、折れ目は ξ=1/m\xi=1/m(縦線)に来る。「動かす」で mm を往復させる
d = 4 m = 1.00 G(0.01) = 2.532e+2(近い側の式との比 0.9997) G(10ξ) = 4.724e−8(遠い側の式との比 1.036)

計算この図の数値はこの端末で計算しました(KνK_\nu の積分表示を台形則で。表 1 と 7 桁一致)。

計算表 1 m=1m=1 の GG と (11) の式との比(d=2d=2 の近い側は定数 ln⁡2−γ\ln2-\gamma を足す)。ベッセル関数の式と (10) の数値積分が 15 桁一致。

drG(r)近い側との比遠い側との比
20.010.75141.00000.3805
40.01253.20.99978.057
410.015250.60191.306
4104.724×10−84.724\times10^{-8}0.00021.036

格子の伝播関数

間隔 aa の格子の伝播関数は、1-09 の (10) の被積分関数に eik⋅xe^{ik\cdot x} を掛けて積分したものです(1-09 の (10) はその x=0x=0 の値)。d=3d=3、m=1m=1 の距離 1 では、連続の GG との差が a=1/8a=1/8 で 0.9%、a=1/16a=1/16 で 0.2% と a2a^2 に比例して縮みます 計算(5-01)。

08

特異性を数える — 四次元が境目

原点で発散しても、近くで積分できれば §04 の (a) で超関数です。冪なら次元との比べっこです(∣Sd−1∣|S^{d-1}| は単位球面の面積)。

∫ε<∣x∣<1∣x∣−a ddx=∣Sd−1∣∫ε1rd−1−a dr → ε→0  {有限(a<d)ln⁡(1/ε) で発散(a=d)εd−a で発散(a>d)(12)\int_{\varepsilon\lt|x|\lt1}|x|^{-a}\,d^dx=|S^{d-1}|\int_\varepsilon^1r^{d-1-a}\,dr\ \xrightarrow[\ \varepsilon\to0\ ]{}\ \begin{cases}\text{有限}&(a\lt d)\\ \ln(1/\varepsilon)\ \text{で発散}&(a=d)\\ \varepsilon^{d-a}\ \text{で発散}&(a\gt d)\end{cases} \tag{12}

G∼r2−dG\sim r^{2-d} は a=d−2<da=d-2\lt d なので、どの次元でも超関数です。その nn 乗は a=n(d−2)a=n(d-2) で、積分できるのは n(d−2)<dn(d-2)\lt d、二乗なら d<4d\lt4、三乗なら d<3d\lt3 のときです。

伝播関数の冪は場の積から出ます。ガウスの四次の平均は対の組み方の和です(1-08 §06)。無限大の E[φ2]=G(0)E[\varphi^2]=G(0) を引いた :φ2:=φ2−E[φ2]{:}\varphi^2{:}=\varphi^2-E[\varphi^2](Wick 積)では、xx の φ\varphi と yy の φ\varphi を結ぶ組だけが残ります(xx どうし・yy どうしの組は引いた分で消える)既知。

E[:φ2:(x) :φ2:(y)]=2 G(x−y)2,E[:φ2:(f)2]=2∬f(x) G(x−y)2 f(y) ddx ddy(13)E\big[{:}\varphi^2{:}(x)\,{:}\varphi^2{:}(y)\big]=2\,G(x-y)^2,\qquad E\big[{:}\varphi^2{:}(f)^2\big]=2\iint f(x)\,G(x-y)^2\,f(y)\,d^dx\,d^dy \tag{13}

:φ2:(f){:}\varphi^2{:}(f) の分散が有限なのは G2G^2 が積分できる d<4d\lt4 のとき、三乗なら 6G36G^3 で d<3d\lt3 のときです。四で切り替わる他の計算と並べた図は 1-12 §10 の次元のつまみです。

計算表 2 In(ε)=∫ε<∣x∣<1G(x)n ddxI_n(\varepsilon)=\int_{\varepsilon\lt|x|\lt1}G(x)^n\,d^dx(m=1m=1、動径の数値積分)。行を押すと図 3 に描きます。

dnε = 0.10.0110⁻⁴10⁻⁶ε → 0
230.010790.014080.014260.01426有限
320.027190.033620.034400.03440有限
330.005650.018660.047630.07679対数で発散
410.18510.18760.18760.1876有限
420.022480.051430.10970.1681対数で発散
430.014041.598160411.604×1081.604\times10^{8}ε−2\varepsilon^{-2} で発散
図 3 表 2 の行を押す(キーボードでは Tab と Enter)と、その (d,n)(d,n) の In(ε)I_n(\varepsilon) を log⁡10(1/ε)\log_{10}(1/\varepsilon) に対して描く。有限なら横ばい、対数で発散すれば直線、冪で発散すれば急に立ち上がる(縦軸を対数にすると直線)。丸は表 2 の列の値
d = 4, n = 2(対数で発散) ε を 10⁻⁵ から 10⁻⁶ にしたときの増分 0.0292 比 1.21

計算この図の数値はこの端末で計算しました(表 2 と同じ動径の数値積分を log⁡10(1/ε)=1,1.25,…,6\log_{10}(1/\varepsilon)=1,1.25,\dots,6 で行い、4 桁で埋め込んだ表)。

d=4,n=2d=4,n=2 は ε\varepsilon を 1/10 にするごとに 0.02916 伸び、(11)(12) から出る ln⁡10/8π2\ln10/8\pi^2 に合います 計算。四次元は G2G^2 がちょうど積分できなくなる境目で、四次元で結合定数が次元を持たないこと(4-04)も同じ尺度の勘定です 既知(1-12)。

09

積の困難 — ならしてから掛けると、ならし方が残る

なめらかな gg と超関数 TT の積は ⟨gT,ϕ⟩=⟨T,gϕ⟩\langle gT,\phi\rangle=\langle T,g\phi\rangle で決まります。超関数どうしを「ならして掛け、ならしを外す」と三つのことが起きます。(i) 発散する:ρε2\rho_\varepsilon^2 の面積は ε−d∫ρ2\varepsilon^{-d}\int\rho^2 で無限大に行きます。(ii) ならし方が残る:HH を ρ\rho で、δ\delta を ψ\psi(どちらも確率密度)でならし、x=εXx=\varepsilon X と置き換えます。

∫(H∗ρε) ψε ϕ dx=E[1{Y≤X} ϕ(εX)] → ε→0  c ϕ(0),c=P(Y≤X)(Y∼ρ, X∼ψ 独立)(14)\int(H*\rho_\varepsilon)\,\psi_\varepsilon\,\phi\,dx=E\big[\mathbf 1\{Y\le X\}\,\phi(\varepsilon X)\big]\ \xrightarrow[\ \varepsilon\to0\ ]{}\ c\,\phi(0),\qquad c=P(Y\le X)\quad(Y\sim\rho,\ X\sim\psi\ \text{独立}) \tag{14}

極限は c δc\,\delta ですが、cc はならし方で決まります。ρ\rho を標準ガウス、ψ\psi を中心 ss のガウスにすると c=Φ(s/2)c=\Phi(s/\sqrt2)(Φ\Phi は標準正規分布の分布関数)で、0 と 1 の間のどの値にもなります。

図 4 ならした HH(実線)、ならした δ\delta の形(破線、高さは縮尺)、積(濃い塗り)。ss を動かすと積の面積が 0 と 1 の間で変わり、ε\varepsilon を縮めても変わらない。δ\delta どうしの積の面積は 1/ε1/\varepsilon で伸びる。「動かす」で ε\varepsilon を縮める
ε = 0.1000 s = 1.0 H と δ の積の面積 = 0.76025 δ どうしの積の面積 = 2.197

計算この図の数値はこの端末で計算しました(閉じた式。下の数値積分と照合)。

計算数値積分では、HH と δ\delta の積の面積は s=−2,0,1,2s=-2,0,1,2 で 0.078650・0.500000・0.760250・0.921350(ε=0.1\varepsilon=0.1 と 0.01 で同じ、Φ(s/2)\Phi(s/\sqrt2) と 6 桁一致)、δ\delta どうしは ε=0.1\varepsilon=0.1 で 1.038・2.821・2.197・1.038、ε=0.01\varepsilon=0.01 でその 10 倍です。

(iii) 結合法則が壊れる。主値 ⟨p.v.1x,ϕ⟩=lim⁡ε→0∫∣x∣>εϕ(x)xdx\langle\mathrm{p.v.}\tfrac1x,\phi\rangle=\lim_{\varepsilon\to0}\int_{|x|\gt\varepsilon}\frac{\phi(x)}{x}dx について、「なめらかな関数×超関数」の積として x⋅δ=0x\cdot\delta=0、x⋅p.v.1x=1x\cdot\mathrm{p.v.}\frac1x=1 です。

(δ⋅x)⋅p.v.1x=0,δ⋅(x⋅p.v.1x)=δ(15)(\delta\cdot x)\cdot\mathrm{p.v.}\tfrac1x=0,\qquad \delta\cdot\big(x\cdot\mathrm{p.v.}\tfrac1x\big)=\delta \tag{15}

関数の積の性質をすべて保つ積は、超関数全体には入れられません。正確には、超関数(少なくとも連続関数と δ\delta)を含む結合的な積で、連続関数どうしでは普通の積に一致し、微分がライプニッツ則 (fg)′=f′g+fg′(fg)'=f'g+fg' を満たすものは作れない、とされます(Schwartz 1954)既知。

10

作れる場合 — 荒さの合計が正なら

積が作れる条件は、§06 の尺度の指数で書けます。CαC^\alpha を次の空間とします。0<α<10\lt\alpha\lt1 なら α\alpha 次のヘルダー連続な関数(∣f(x)−f(y)∣≤C∣x−y∣α|f(x)-f(y)|\le C|x-y|^\alpha、∣x−y∣≤1|x-y|\le1)の全体、α>1\alpha\gt1 なら導関数に同じ形の条件を課したもの、α<0\alpha\lt0 なら §06 の尺度の指数が局所的に一様に α\alpha 以上の超関数の全体です。α\alpha が大きいほどなめらかです。荒さの合計が正なら積が作れます(Hairer 2014 の命題 4.14)既知。

f∈Cα,  g∈Cβ,  α+β>0⟹f⋅g∈Cmin⁡(α,β) が連続に定まる(16)f\in C^\alpha,\ \ g\in C^\beta,\ \ \alpha+\beta\gt0\quad\Longrightarrow\quad f\cdot g\in C^{\min(\alpha,\beta)}\ \text{が連続に定まる} \tag{16}

「連続に定まる」とは、なめらかな関数どうしの積を極限で延ばしたものが、近づけ方に依らず一つに決まることです。同じ命題は、α\alpha が自然数でなければ α+β>0\alpha+\beta\gt0 が必要でもあることを述べています。

例:階段関数 HH は有界ですが跳びがあり、荒さの指数は 0 です(H(λx)=H(x)H(\lambda x)=H(x)。α<0\alpha\lt0 のどの CαC^\alpha にも入る)。一次元の δ\delta は −1-1 です。合計は正にならないので (16) は使えず、§09 の (ii) の現象と矛盾しません。自由場は 1−d/21-d/2 より少し荒い(α<1−d/2\alpha\lt1-d/2 の CαC^\alpha に入る)ので、二乗が (16) の決まった積として作れるのは d<2d\lt2 だけです 既知。§08 で d=2,3d=2,3 の :φ2:(f){:}\varphi^2{:}(f) の分散が有限になったのは、§09 の (i) の発散を先に引いた(繰り込んだ)からで、ならし方に依らない形になることは確率の打ち消し(ガウスの対の数え上げ)に依っています。

ヤン–ミルズの接続 AA は短い距離で自由場と同じ荒さを持つと期待され 物理、場の強さ F=dA+A∧AF=dA+A\wedge A(1-07)の A∧AA\wedge A は二次元以上で (16) を満たさない積です。二・三次元ではこの種の積の解析が確率量子化で進められ(6-09)、四次元では連続の理論そのものがまだ構成されていません(6-10)。


この章が言えている範囲

内容状態
フーリエの規則 (2)〜(6)、Gibbs の行き過ぎ、Fejér 平均言えている 既知。数値と図 1 は 計算
超関数・微分 (7)・変換 (8)・物差し (9a)(9b)、白色雑音と自由場の尺度の指数定義と例 既知。二つの指数は §06 に一行の導出
伝播関数 (10)(11)・相関長 =1/m=1/m、GnG^n が積分できる条件、Wick 積の分散 (13)言えている 既知。表 1・表 2・図 2・図 3 は 計算
積の困難 (14)(15)、積が作れる条件 (16)(14) は計算を示した。図 4 と数値積分は 計算。Schwartz の定理は書誌のみ、(16) は言明を確認(証明は追っていない)
格子の誤差 a2a^2(d=3d=3 の一点)/ヤン–ミルズの接続の荒さ/相互作用のある場・質量ギャップ観察 計算/期待 物理/扱っていない。何も示していない

出典と再現

もの種別出典・道具
表・図・本文の数値計算この端末の python3(NumPy 1.26・SciPy 1.11)。図は素の JavaScript で、図 1 の部分和・図 2 の KνK_\nu の積分表示・図 4 の閉じた式はその場で計算し、図 3 は python で計算した表を埋め込んだもの。読み出しを node で表と照合
Gibbs 現象の経緯既知E. Hewitt, R. E. Hewitt, Arch. Hist. Exact Sci. 21 (1979) 129–160(本文を確認:第 II 部)/H. Wilbraham, Cambridge and Dublin Math. J. 3 (1848) 198–201・J. W. Gibbs, Nature 59 (1899) 606(書誌のみ)
超関数の始まりと積の不可能性既知S. Soboleff, Rec. Math. [Mat. Sbornik] N.S. 1(43) (1936) 39–72・L. Schwartz, Théorie des distributions(Hermann)・L. Schwartz, C. R. Acad. Sci. Paris 239 (1954) 847–848(いずれも書誌のみ)。超関数の考えの始まりの帰属と、Théorie des distributions の年(1950–51 とされる)は未確認(二次資料による)
(16)既知M. Hairer, Invent. Math. 198 (2014) 269–504, arXiv:1303.5113(本文を確認:§1 と命題 4.14。α∉N\alpha\notin\mathbb N なら α+β>0\alpha+\beta\gt0 は必要でもある、という後半を含む)
尺度の指数既知時空の白色雑音の放物型の尺度での指数 −(d+2)/2-(d+2)/2:M. Hairer, An Introduction to Stochastic PDEs, arXiv:0907.4178(本文を確認:演習 2.3)。空間の白色雑音の −d/2-d/2 と質量の無い自由場の 1−d/21-d/2 は §06 の一行の導出による
変換・S\mathcal S・緩増加超関数・Sobolev 空間・伝播関数の式既知M. Reed, B. Simon, Methods of Modern Mathematical Physics II(Academic Press, 1975)ほか標準的な教科書(書誌のみ)

次に読む章:1-12 寄り道:四次元でだけ起きること。伝播関数の使い道は 4-03、超関数に値を取る場の公理は 4-09。

← 1-10 ヒルベルト空間と自己共役作用素目次1-12 寄り道 →

改訂 2026-10-01:初版。