computo ergo sum

2026-10-01 · chapter ヤン–ミルズと質量ギャップ第 10 部 この端末の検討Lean の定理・仮定・既知との対応

この本の全体 目次と読む順
  1. 第 0 部 入口 — この本の読み方
  2. 0-01 この本の読み方
  3. 0-02 一枚の絵
  4. 0-03 問題文を一語ずつ読む
  5. 0-04 数学の四次元と物理の四次元
  6. 第 1 部 数学の準備
  7. 1-01 ベクトル空間と線形写像
  8. 1-02 群とは何か
  9. 1-03 リー群とリー環
  10. 1-04 SU(2) と SU(3)
  11. 1-05 多様体と接空間
  12. 1-06 微分形式と外微分
  13. 1-07 ベクトル束と接続
  14. 1-08 確率と測度
  15. 1-09 無限次元の確率
  16. 1-10 ヒルベルト空間と自己共役作用素
  17. 1-11 フーリエ解析と分布
  18. 1-12 寄り道
  19. 第 2 部 物理の準備
  20. 2-01 ラグランジアンと作用
  21. 2-02 場という考え
  22. 2-03 電磁気学はゲージ理論である
  23. 2-04 特殊相対論と時空
  24. 2-05 量子力学の骨
  25. 2-06 調和振動子と生成消滅
  26. 2-07 経路積分の考え方
  27. 2-08 統計力学と相転移
  28. 2-09 寄り道
  29. 2-10 緩和の時間と動的指数 z
  30. 第 3 部 ヤン–ミルズ理論(古典)
  31. 3-01 ゲージ原理
  32. 3-02 非可換ゲージ場
  33. 3-03 作用と方程式
  34. 3-04 幾何としてのゲージ理論
  35. 3-05 インスタントンと位相
  36. 3-06 寄り道
  37. 3-07 標準模型の中のヤン–ミルズ
  38. 第 4 部 量子化
  39. 4-01 正準量子化とハミルトニアン
  40. 4-02 経路積分とユークリッド化
  41. 4-03 摂動論と Feynman ダイアグラム
  42. 4-04 発散と繰り込み
  43. 4-05 発散の代数
  44. 4-06 漸近自由
  45. 4-07 次元転移と Λ
  46. 4-08 ゲージ固定と Faddeev–Popov
  47. 4-09 場の量子論の公理
  48. 4-10 Osterwalder–Schrader の公理と再構成
  49. 4-11 質量ギャップの定義
  50. 4-12 寄り道
  51. 第 5 部 格子ゲージ理論
  52. 5-01 Wilson の格子
  53. 5-02 強結合展開
  54. 5-03 反射正値性と転送行列
  55. 5-04 無限体積極限とクラスター展開
  56. 5-05 弱結合と連続極限
  57. 5-06 U(1) と非可換の違い
  58. 5-07 モンテカルロ法
  59. 5-08 グルーボールと弦張力の測定
  60. 5-09 何を固定して極限を取るか
  61. 5-10 有限群の格子ゲージ理論
  62. 5-11 寄り道
  63. 第 6 部 構成的場の理論
  64. 6-01 構成的場の理論とは
  65. 6-02 二次元の可解性とヤン–ミルズ測度
  66. 6-03 スカラー場の構成
  67. 6-04 クラスター展開
  68. 6-05 繰り込み群の段の列
  69. 6-06 三次元ヤン–ミルズの紫外安定性
  70. 6-07 四次元
  71. 6-08 四次元の φ⁴ の自明性
  72. 6-09 確率量子化と正則性構造
  73. 6-10 四次元で止まる場所
  74. 6-11 発散以外の障害
  75. 6-12 寄り道
  76. 第 7 部 物理の側から
  77. 7-01 物理はどう見ているか
  78. 7-02 閉じ込めの機構
  79. 7-03 弦の絵
  80. 7-04 大 N
  81. 7-05 ひも理論と余剰次元
  82. 7-06 余剰次元が見えなくなる仕組み
  83. 7-07 ゲージ場はどこから来るか
  84. 7-08 ホログラフィー
  85. 7-09 質量ギャップが幾何になる
  86. 7-10 四次元に戻す
  87. 7-11 超対称と Seiberg–Witten
  88. 7-12 等価原理に当たる一文
  89. 7-13 物理の掘り方が数学と離れる場所
  90. 第 8 部 二つの言葉の辞書 — 物理の視点と数学の視点
  91. 8-01 辞書の読み方
  92. 8-02 辞書 A
  93. 8-03 辞書 B
  94. 8-04 辞書 C
  95. 8-05 私たちの仮定の物理側の対応
  96. 第 9 部 現在地と課題
  97. 9-01 世界はどこまで来ているか
  98. 9-02 二つの掘り方の切れ目
  99. 9-03 新しい概念の候補
  100. 9-04 課題の一覧
  101. 9-05 よくある誤解
  102. 第 10 部 質量ギャップの厳密な証明へ — この端末の検討
  103. 10-00 第 10 部の入口 — 酔歩と定規と時計
  104. 10-01 理論の構成の筋
  105. 10-02 一段の記帳
  106. 10-03 仮定 H と三つの鎖
  107. 10-04 方向の地図
  108. 10-05 方向 12〜14
  109. 10-06 方向 15・15′
  110. 10-07 Lean で閉じた言明と既存の結果の対応表
  111. 10-08 壁の一覧
  112. 10-09 ひらめき帳から
  113. 10-10 主張しないこと
  114. 10-12 つじつま合わせ
  115. 10-11 定理までの距離
  116. 10-13 小さな問い — 卒業研究の大きさで決着のつく十〜二十問
  117. 付録
  118. A-01 記号表
  119. A-02 用語集
  120. A-03 文献案内
  121. A-04 Lean と機械検査
  122. A-05 この本の作り方
  123. A-06 仮定の索引

Lean で閉じた言明と既存の結果の対応表 — 四十六の定理は何を仮定し、どの既知に当たるか

この章で分かること — 第 10 部と 5-11 で Lean の札を付けた定理のうち、各章が結論として引く言明を取り出し、仮定・言明・規約・対応する既知の章・種別を一表にします(部品の補題は一行の一覧)。Lean の言明の大半は実数や数列についての不等式で、格子のゲージ場を型として持つ定理は三つ(一本のリンクの Haar 積分、完全な族のリンクの積分、有効作用の Hesse 形式の下界)、Wilson 測度そのものについての定理は無いこと、記号 β\beta・aa・η\eta・κ\kappa・CPC_P の読みが本書の記号表とどこで食い違うかが分かります。

前提となる章 — 10-04 方向の地図。各行の中身は 10-02・10-03・10-05・10-06・5-11 にあります。Lean そのものの読み方は Lean の案内。

先に言うこと — 機械検査で閉じているのは、仮定を明示した有限の不等式と代数です。仮定の側(仮定 H・鎖・T(c,1)T(c,1)・射影 (P)・測定した依り方)はどれも証明されていません。この章は質量ギャップも連続極限も示しません。

この章の順序
  1. この章の約束 — 表の六つの列、五つの種別、載せる基準
  2. Lean の言明は何について語っているか — 対象の型の層(表 1・図 1)・寄り道:三つの公理
  3. 一段の記帳の定理 — 十一行(表 2)
  4. 仮定 H のまわりの定理 — 七行(表 3)
  5. 試験関数と分光の定理 — 十行(表 4)
  6. 管の定理 — 七行(表 5)
  7. 一リンクと完全な族 — ゲージ場の型を持つ定理(表 6)
  8. 規約の翻訳 — β\beta・tr・格子の計量・η\eta・κ\kappa・CPC_P(表 7)
  9. 種別で数える — 既知と違う部分はどこか(表 8・図 2)

01

この章の約束 — 表の六つの列、五つの種別、載せる基準

第 10 部の本文に散らばる Lean の札の定理を一か所に集め、各定理について「何を仮定し、何を言い、既に知られたどの事実に当たるか」を並べます。

表の列は六つです。定理名、仮定(引数に現れる条件。一番大事な列)、言明(結論を本書の記号で)。規約・読みには、記号の読み方のうち表 7 に無いもの、仮定 H に関わる行では 10-03 の八つの読みのどれを仮定するか(冪/帯・ξ\xi/ξRG\xi_{\rm RG}・Eϑ\mathcal E_\vartheta/EA\mathcal E_A)、そして f の量化を書きます。f の量化は、言明が「すべての試験関数 ff」と「一つの ff」のどちらについて語るかで、10-03 §03 の H↑・H↓ の区別に当たります。断りの無い行は「なし」(言明に試験関数が現れない)です。対応する既知は第 1〜7 部の章で、既知に当たるものが無い行は「—」とします。種別は次の五つの分類です。

種別∈{R⏟既知の再証明, A⏟記録の整理, C⏟(仮定)⇒(結論), N⏟陰性対照, M⏟記録の定理}\text{種別}\in\{\underbrace{\text{R}}_{\text{既知の再証明}},\ \underbrace{\text{A}}_{\text{記録の整理}},\ \underbrace{\text{C}}_{(\text{仮定})\Rightarrow(\text{結論})},\ \underbrace{\text{N}}_{\text{陰性対照}},\ \underbrace{\text{M}}_{\text{記録の定理}}\}

R は文献にある事実を Lean で証明し直したもの、A は記録の定義や仮定を代数で言い換えたもの、C は「未証明の仮定から結論が出る」ことだけを確かめたもの、N は仮定を外すと結論が崩れる反例、M は記録の側の定理で、探した範囲で先行の記録が見当たらないものです。C の行の中身は仮定の側にあり、定理はその仮定を一歩も証明しません。

表に載せるのは、各章が結論として引く言明です。同じ言明の部品(補題・道具の不等式・数え上げ)は表に入れず、次の一覧に名前だけ置きます。どれも宣言と検査の記録を確かめました。10-02 の S4_fails_const・step_lowers_coupling・Chain.b_of_beta、10-09 の ratio_rg_invariant、10-05 の gap_ge_of_overlap・meff_var_ge・sqQuotient_isGreatest・sqQuotient_between・orbitAvg_continuous・sum_sub_eq_card_mul・periodic_violates_bound(周期的な箱では (3) の下界が外れる反例)、10-06 の rayleigh_le_tau、5-11 の star_S・star_S_sharp(定数 18 が達成される配位)・second_deriv_le・star_count・turan_series。本文の札のうち、この章で突き合わせた原稿の中に宣言が見当たらない名前は載せていません。

例。hup_is_gap_positivity は「CP=1/m2C_P=1/m^2 かつ CP≤Kξ2C_P\le K\xi^2 なら 1≤K(mξ)21\le K(m\xi)^2」です。両辺に m2m^2 を掛けるだけの代数なので種別は A、CPC_P が上限であること(すべての ff を動かすこと)は Lean の外にあるので、f の量化は「なし」です。

02

Lean の言明は何について語っているか — 対象の型の層

定理の引数の型を見ると、その文が実際に何について語っているかが機械的に分かります。この端末で、表に載せた四十六の定理の宣言を読み、引数の型で五つの層に分けました。

実数だけ ⊂ 数列・実関数 ⊂ 有限集合の上の和 ⊂ 内積空間の作用素 ⊂ 格子のゲージ場\text{実数だけ}\ \subset\ \text{数列・実関数}\ \subset\ \text{有限集合の上の和}\ \subset\ \text{内積空間の作用素}\ \subset\ \text{格子のゲージ場}

左ほど語る対象が素朴で、右ほど物理の対象に近い、という順です。正確には包含関係ではなく、「定理の文を理解するのに要る構造の量」の目安です。

表 1 四十六の定理を、言明が直接に語る対象の型で分ける 計算

層例定理の数仮定の本数(合計)
実数(と自然数)だけchain_band・drain_exponent2365
数列・実関数S4_two_sided・conditional_scale_bound1138
有限集合・有限群の上の和intact_frac_le・meff_ge_of_corr812
内積空間の作用素tau_int_le16
格子のゲージ場(四元数・Haar 測度)one_link・hess_gauge38
計46129

仮定の本数は、型が命題である引数(等式・不等式・∀\forall の文・Tendsto など)を数えたもの。群の元や関数のような対象の引数は数えない。四十六の定理すべてについて、この端末に残る検査の記録(原稿より新しい)の #print axioms の行が標準の三つの公理の部分集合で、sorryAx を含まないことを読み直した。表 1 は定理の数で、表 2〜6 と図は行の数(対にした二つの定理は一行)で数える。

読み方。ちょうど半分の 23 個は、実数の不等式か恒等式です。hup_is_gap_positivity の CPC_P も、chain_band の λ1\lambda_1 も、Lean の中では名前の付いたただの実数です。それが「Wilson 測度の Poincaré 定数」であることは、本文が付けた読みで、Lean は検査していません。格子のゲージ場を型として持つのは 5-11 の三つで、Wilson の重み e−SWe^{-S_W} が現れるのも一部のリンクを積分する恒等式 integral_star_links だけです。Wilson 測度の期待値・相関・隙間についての定理はありません。

例。図 1 で一行ずつ選ぶと、その定理が左の層から、中の種別を通り、右の章(読まれる場所)へ渡る線が太く出ます。灰色の線は四十一行すべての流れです。

図 1 表の一行を選ぶ(つまみ)と、その定理の「対象の型 → 種別 → 読まれる章」が太線になる。「順に見る」で一行ずつ進む
対象の型 種別 読まれる章
12/41 hup_is_gap_positivity・hdown_is_mass_finiteness — 実数だけ・記録の整理・仮定 H 10-03・仮定 6 本

計算この図の数値はこの端末で計算した(宣言の型と仮定の数は宣言を読む小さなスクリプト、種別と章は表 2〜6 の列)。行で数える(対にした二つの定理は一行)。JavaScript が無効なら表 1 と表 8 が中身です。

寄り道:#print axioms に出る三つの公理

寄り道 飛ばしてよい。

Lean の核の型理論の上に、標準の道具立ては三つの公理を足します。命題の外延性 propext(同値な命題は等しい)、商の健全性 Quot.sound(同値な元は商で等しい)、選択 Classical.choice(存在の証明から元を取り出す)です。Lean の手引き『Theorem Proving in Lean 4』の章 Axioms and Computation は、これらを使った定理が「#print axioms の命令に現れる」と書きます。

sorry で飛ばすと sorryAx が、native_decide を使うと Lean.ofReduceBool が一覧に加わるので、一覧が三つの部分集合であることが「穴が無い」ことの機械的な確認になります。四十六の定理のうち no_perfectZ_of_five だけは Classical.choice を使わず、propext と Quot.sound で閉じていました。Lean では排中律が Classical.choice から出るので、Classical.choice を使わない証明は排中律を使いません。propext と Quot.sound はカーネルでの簡約を止めることがありますが、計算の解釈とは両立する、と同じ章は書いています。

03

一段の記帳の定理 — 十一行

10-02 の一段の記帳は、格子を bb 倍に粗くする一段で結合 β\beta がどう下がるかを数える枠組みでした。定理は、一リンク積分の評価・格子の組合せの数え上げ・段の誤差の代数の三種です。中心の式は、段ごとの関数等式とその帰結です。

ξ(β−κln⁡b)=ξ(β)b  (すべての b≥1)⟹ξ(β)=ξ(0) eβ/κ,1κ=3π211=2.69171…(1)\xi(\beta-\kappa\ln b)=\frac{\xi(\beta)}{b}\ \ (\text{すべての } b\ge1)\quad\Longrightarrow\quad \xi(\beta)=\xi(0)\,e^{\beta/\kappa},\qquad \frac1\kappa=\frac{3\pi^2}{11}=2.69171\ldots \tag{1}

計算3π2/11=2.691710…3\pi^2/11=2.691710\ldots。xi_eq_exp は (1) の矢印で、連続性も単調性も仮定しません。Lean の中身は関数方程式から指数関数を出す代数で、物理の内容は仮定の関数等式(一ループの走りを厳密な等式として置いたもの)に入っています。κ\kappa は一ループ係数を β=4/g2\beta=4/g^2 に書き直した値です(4-06)。漸近スケーリング(5-05)は摂動論の水準の事実で、二ループの冪の補正を持ち、厳密な定理ではありません 物理。だから種別は A です。

表 2 一段の記帳(10-02)の定理

定理名仮定言明規約・読み対応する既知(章)種別
log_F0_le・log_F0_gex≥0x\ge0 だけx2−x24≤ln⁡F0(x)≤x2\frac x2-\frac{x^2}4\le\ln F_0(x)\le\frac x2F0(β2∣M∣2/4)F_0(\beta^2|M|^2/4) が一リンク積分一リンク積分の閉形(5-11・5-07)R
Incidence.intact_frac_le接続が正則(各面が ℓ\ell 辺・各辺は DD 面以下・ℓ∣P∣=D∣E∣\ell|P|=D|E|)残る面の割合 q≤q\le 残る辺の割合 ee格子の組合せだけ二重の数え上げ(標準)。ブロック化は 6-05A
no_blockingd≥2d\ge2。完全な段の列(定義に含む)残る辺の割合 2k+12k+1>2−d\frac{2^k+1}{2^{k+1}}\gt2^{-d}—6-05 のブロック化A
blocking_shortfall各段で消す割合 ρj≤1/4\rho_j\le1/4・辺が 1/161/16 以下残る 4-ループは 1/655361/65536 以下d=4d=46-05A
discStep_semigroupなし(円板の形の面を定義に含む)段 y↦yAy\mapsto y^{A} は面積について半群yn=In+1(β)/I1(β)y_n=I_{n+1}(\beta)/I_1(\beta)二次元の厳密な間引き(Migdal 1975。6-02・5-02)R
kappaDisj_lt_oneb≥2b\ge2辺を共有しない面の寄与 κdisj(b)<1\kappa_{\rm disj}(b)\lt1ツリーの bd−4=1b^{d-4}=1(d=4d=4)次元の勘定(4-04・5-05)A
xi_eq_expすべての t≥0t\ge0 で ξ(β−t)=ξ(β)e−t/κ\xi(\beta-t)=\xi(\beta)e^{-t/\kappa}ξ(β)=ξ(0) eβ/κ\xi(\beta)=\xi(0)\,e^{\beta/\kappa}仮定の関数等式=一ループの走りの厳密版 物理—(漸近スケーリングは 5-05・4-06)A
anomalous_exponentb>1b\gt1e−kd=(bk)−d/ln⁡be^{-kd}=(b^k)^{-d/\ln b}—代数A
S4_two_sided段の誤差の部分和 ∣∑j<kεj∣≤M|\sum_{j\lt k}\varepsilon_j|\le M・c,κ>0c,\kappa\gt0c e2∑ε/κc\,e^{2\sum\varepsilon/\kappa} は [ce−2M/κ, ce2M/κ][c e^{-2M/\kappa},\,c e^{2M/\kappa}] に入るこれを ak2CP(k)a_k^2C_P^{(k)} と読むのは本文の側。読み:帯・ξRG\xi_{\rm RG}(10-03 の (3):Hband\text{H}_{\rm band} と鎖 (ii)(iii))。5-09—(記録の仮定)C
fixed_step_bounded_iff一定の誤差 εj=d≥0\varepsilon_j=d\ge0部分和が有界   ⟺  d=0\iff d=0—代数A
c2_ge_of_nonneg_weightsc2=A+κSc_2=A+\kappa S・A,κ>0A,\kappa\gt0・S≥0S\ge0(測定した依り方)A≤c2A\le c_2 かつ c2>0c_2\gt0c2c_2 は一ループ核の模型の数。10-08 の B4—(記録の仮定。反射正値性 5-03 との緊張)C

例。c2_ge_of_nonneg_weights の「c2c_2 は SS の増加するアフィン関数」は、記録が一ループ核の族で測った依り方です。定理はそれを前提に置いた一行の不等式で、「正値な核では c2>0c_2\gt0」を無条件に示してはいません。同じく S4_two_sided は段の誤差を加法的で有界とする模型の中の代数で、その模型が格子ヤン–ミルズの一段を表すことは仮定です(10-01)。

04

仮定 H のまわりの定理 — 七行

10-03 の仮定 H は、CPC_P が ξ2\xi^2 と同じ冪で伸びるという冪の文で、記録が鎖と組み合わせて使うのは帯の文 (3)=Hband[Eϑ]\text{H}_{\rm band}[\mathcal E_\vartheta] と鎖 (ii)(iii) でした。この節の定理は主に後者を扱います。Lean の中での姿を一つ見ます。

theorem hup_is_gap_positivity {CP xi mlat K : ℝ}
    (hmlat : 0 < mlat) (hCP : CP = 1 / mlat ^ 2) (h : CP ≤ K * xi ^ 2) :
    1 ≤ K * (mlat * xi) ^ 2

四つの文字はすべて実数です。hCP の等式が、鎖 (i)(Langevin の隙間と質量の二乗が等しい)を一点で仮定しています。本文の式で書けば

CP=1m2⏟仮定(鎖 (i) の等号) ∧ CP≤KξRG2⏟H↑⟹mphys=m ξRG ≥ K−1/2(2)\underbrace{C_P=\frac1{m^2}}_{\text{仮定(鎖 (i) の等号)}}\ \wedge\ \underbrace{C_P\le K\xi_{\rm RG}^2}_{\text{H↑}}\quad\Longrightarrow\quad m_{\rm phys}=m\,\xi_{\rm RG}\ \ge\ K^{-1/2} \tag{2}

で、CP=1/m2C_P=1/m^2 は自由場で場 AA の正規化のときの値です(§08)。対になる hdown_is_mass_finiteness は不等号の向きを逆にした H↓ の読み替え c(mξ)2≤1c(m\xi)^2\le1 です。

表 3 仮定 H のまわり(10-03)の定理

定理名仮定言明規約・読み対応する既知(章)種別
hup_is_gap_positivity・hdown_is_mass_finitenessCP=1/m2C_P=1/m^2・m>0m\gt0・CP≤Kξ2C_P\le K\xi^2(↓ は cξ2≤CPc\xi^2\le C_P)1≤K(mξ)21\le K(m\xi)^2(↓ は c(mξ)2≤1c(m\xi)^2\le1)読み:帯・ξRG\xi_{\rm RG} の上/下の半分(10-03 の (5))。ただし CP=1/m2C_P=1/m^2 は EA\mathcal E_A の目盛り。∀f は CPC_P の定義の中。↓ の原稿の注にある「連続極限が自明でない」は言明に含まれない(10-10 §05)隙間と相関長(4-11)A
chain_band・sq_times_poincare_band六つの帯の不等式(鎖 (i)(ii)(iii) の上下)c1c2c3a2≤λ1≤C1C2C3a2c_1c_2c_3a^2\le\lambda_1\le C_1C_2C_3a^2、ゆえに a2CP=a2/λ1a^2C_P=a^2/\lambda_1 が正の帯読み:帯・ξRG\xi_{\rm RG}・Eϑ\mathcal E_\vartheta((3))。鎖は 7-12—(記録の仮定の代数)A
drain_exponent・drainExp_eq_zero_iff冪の形・0≤η≤20\le\eta\le2・θ≥0\theta\ge0p=η+(2−η)θ=0  ⟺  η=θ=0p=\eta+(2-\eta)\theta=0\iff\eta=\theta=0読み:冪・ξRG\xi_{\rm RG}。η\eta は §08。5-09・8-05—(記録の仮定。冪の代数)A
conditional_scale_bound射影 (P)・δj≥0\delta_j\ge0 で部分和 ≤D\le D・幾何級数の重みe−2TCPe^{-2T}C_P は TT に依らず有界読み:帯・ξRG\xi_{\rm RG} の上半分(H↑)。∀f は (P) の中二重み Hardy 不等式(Muckenhoupt 1972。1-10)の再証明を含むC
const_defect_scale_unbounded一定の取りこぼし 0≤d<L0\le d\lt Le−2Te2(n+1)L≥e2Td/(L−d)e^{-2T}e^{2(n+1)L}\ge e^{2Td/(L-d)}——N
tau_int_le有限次元・対称な TT・γ∥v∥2≤⟨v,v−Tv⟩\gamma\|v\|^2\le\langle v,v-Tv\rangle・T≥−1T\ge-1∑k<nρk−12≤1γ−12\sum_{k\lt n}\rho_k-\tfrac12\le\frac1\gamma-\tfrac12離散時間の可逆な連鎖。CP=1/γC_P=1/\gamma。∀f自己相関時間(8-03・5-07)R
exponent_invariant_of_slowly_varyingXn,ℓn>0X_n,\ell_n\gt0・ln⁡X/ln⁡a→p\ln X/\ln a\to p・ln⁡ℓ/ln⁡a→0\ln\ell/\ln a\to0ln⁡(Xℓ)/ln⁡a→p\ln(X\ell)/\ln a\to p読み:冪。Eϑ\mathcal E_\vartheta と EA\mathcal E_A で同じ文—(極限の和)A

例。conditional_scale_bound は仮定が十一本で、四十六の中で最も多い定理です。その一本 hproj が射影 (P)、すなわち「Hardy 不等式を満たす定数はどれも CPC_P の上界を与える」という文で、すべての ff を動かす量化子は、この仮定の中に入っています。結論の有界性は、二重み Hardy 不等式の挟み込み(Muckenhoupt 1972、1-10)の再証明と、取りこぼしの部分和の評価を合わせたものです。中身が (P) の側にあることは 10-06 §07 で見ました。

05

試験関数と分光の定理 — 十行

10-05 の方向 12〜14 は、試験関数や試しの演算子から隙間を読む道でした。多くは変分原理の言い換えで、R が五つです。基本の形は非負の重みの相関の表示です。

C(k)=∑nwn ρn k  (wn,ρn≥0),meff(k)=ln⁡C(k)C(k+1)(3)C(k)=\sum_n w_n\,\rho_n^{\,k}\ \ (w_n,\rho_n\ge0),\qquad m_{\rm eff}(k)=\ln\frac{C(k)}{C(k+1)} \tag{3}

(3) の下で meffm_{\rm eff} は単調に減り(meff_antitone)、すべての ρn≤R\rho_n\le R なら meff(k)≥−ln⁡Rm_{\rm eff}(k)\ge-\ln R です(meff_ge_of_corr)。前者は「平坦部には上から近づく」という格子分光の標準の事実、後者は Rayleigh–Ritz の原理です(1-10 §06・5-08)。

表 4 試験関数と分光(10-05)の定理

定理名仮定言明規約・読み対応する既知(章)種別
profileQuotient_isGreatest運動量は有限個・K^>0\hat K\gt0非負の重みでの比の上限は max⁡pG^(p)/K^(p)\max_p\hat G(p)/\hat K(p) で、達成される一つの演算子の族の中Rayleigh 商(1-10)R
fisherEta_eq_zero_iff_canonicalなし(η:=2Δ−(d−2)\eta:=2\Delta-(d-2) が定義)η=0  ⟺  Δ=(d−2)/2\eta=0\iff\Delta=(d-2)/2この η\eta は静的な ηs\eta_s8-05A
eta_ge_two_of_bounded_suscK>0K\gt0・ξ≥1\xi\ge1 で一様に Kξ2−η≤CK\xi^{2-\eta}\le Cη≥2\eta\ge2感受率の冪(静的)。10-05—(記録の仮定)C
prop_at_gap_scalem>0m\gt0・a>0a\gt0純冪の伝播関数を k=mk=m で読むと ∝ξ2\propto\xi^2—代数A
jump_energy_gen>0n\gt0・増分の和が Δ\DeltaΔ2/n≤∑idi2\Delta^2/n\le\sum_i d_i^2—Cauchy–SchwarzR
orbitAvg_gauge_invariant有限群の作用(仮定なし。重みが 0 のときは Lean の割り算の約束で 0)軌道平均はゲージ不変群は有限軌道の上の重み付き平均(Parrinello–Jona-Lasinio・Zwanziger の方式に当たる。4-08)R
cost_geτ≥L2/(4π2βD)\tau\ge L^2/(4\pi^2\beta D)・n≥4τ/ε2n\ge4\tau/\varepsilon^2nLd≥Ld+2/(π2βDε2)nL^d\ge L^{d+2}/(\pi^2\beta D\varepsilon^2)—臨界減速(5-07)C
HasNonnegWeights.meff_antitone非負の重みの表示・C(k)>0C(k)\gt0meff(k+1)≤meff(k)m_{\rm eff}(k+1)\le m_{\rm eff}(k)一つの演算子転送行列の表示(5-03・5-08)R
meff_ge_of_corr重みと固有値が非負・固有値 ≤R\le Rmeff(k)≥−ln⁡Rm_{\rm eff}(k)\ge-\ln R一つの演算子Rayleigh–Ritz(1-10)R
light_admixture_invisibleε≥0\varepsilon\ge0(二準位の具体例)重み ε\varepsilon の軽い状態は、どの kk でも相関を ε\varepsilon しか変えない—有限の窓(4-11)N

例。light_admixture_invisible は二準位 ρ=(1/2, 9/10)\rho=(1/2,\,9/10)、重み (1,ε)(1,\varepsilon) の具体例で、軽い方の準位を足しても相関は ε\varepsilon しか変わりません。有限個の測定から隙間の下界が出ないことの最小の例です(4-11 §04 の言い換え、種別 N)。規約・読みの列に「一つの演算子」とある行は、どれも H↓ の側(ある ff)にしか届きません。

06

管の定理 — 七行

10-06 の方向 15 は、閉じ込めの管の重さに c/ℓc/\ell の欠損があれば質量の下界が出る、という道でした。七つのうち三つが陰性対照です。中心の還元は相加相乗平均です。

f(ℓ) ≥ σℓ+cℓ  (ℓ>0)⟹min⁡ℓf(ℓ) ≥ 2cσ,m2 ≥ 4cσ(4)f(\ell)\ \ge\ \sigma\ell+\frac c\ell\ \ (\ell\gt0)\quad\Longrightarrow\quad \min_\ell f(\ell)\ \ge\ 2\sqrt{c\sigma},\qquad m^2\ \ge\ 4c\sigma \tag{4}

mass_sq_ge_of_tube は (4) を転送作用素のノルム t≤e−2cσt\le e^{-2\sqrt{c\sigma}} の形で仮定し、m=−ln⁡tm=-\ln t について結論します。仮定の中身は T(c,1)T(c,1) で、その証明の型は在りません。

表 5 管(10-06)の定理

定理名仮定言明規約・読み対応する既知(章)種別
mass_sq_ge_of_tubet≤e−2cσt\le e^{-2\sqrt{c\sigma}}(T(c,1)T(c,1) の帰結)m=−ln⁡tm=-\ln t について m2≥4cσm^2\ge4c\sigmamm は格子単位相加相乗平均。管の絵(7-03)C
entropy_rate_existsNn>0N_n\gt0・超乗法的・Nn≤MnN_n\le M^nlim⁡ln⁡Nn/n=L≤ln⁡M\lim\ln N_n/n=L\le\ln M が在る—Fekete の補題(10-06 の寄り道)R
linear_regime_breaks_onescale収束域の挟み込み・σ<cε2/16\sigma\lt c\varepsilon^2/16m2<cσm^2\lt c\sigma—強結合の管(5-02)N
linear_deficit_breaks_invf(ℓ)≤aℓ+bf(\ell)\le a\ell+b・a<σa\lt\sigma十分長い ℓ\ell で f(ℓ)<σℓ+c/ℓf(\ell)\lt\sigma\ell+c/\ell生の格子周長と軸方向の張力Wulff 形(7-03)N
four_arcs_geFF が凸4F(xˉ)≤F(a)+F(b)+F(c)+F(d)4F(\bar x)\le F(a)+F(b)+F(c)+F(d)—Jensen の不等式R
mass_bound_localized短い管の欠損 ≥c/ℓ\ge c/\ell・長い管の Casimir の床・つなぎ目すべての ℓ>0\ell\gt0 で f(ℓ)≥2cσf(\ell)\ge2\sqrt{c\sigma}—Lüscher 項(7-03)C
casimir_only_no_boundσ,κ>0\sigma,\kappa\gt0ある ℓ>0\ell\gt0 で σℓ−κ/ℓ<0\sigma\ell-\kappa/\ell\lt0—7-03 の Casimir 項N

例。三つの陰性対照が示すことは、それぞれ違います。casimir_only_no_bound は、短い管の欠損の仮定を外せないこと(Casimir の床 −κ/ℓ-\kappa/\ell だけでは ℓ→0\ell\to0 で負)を示します。linear_deficit_breaks_inv は、欠損を異方性を引いた後の形で置かねばならないこと(生の周長では欠損の仮定そのものが偽)を示します。linear_regime_breaks_onescale は、強結合の収束域では一尺度の下半分そのものが偽であることを示す、別の原稿の定理です。つなぎ目の仮定が要るかどうかは、Lean では確かめていません。

07

一リンクと完全な族 — ゲージ場の型を持つ定理

表 1 の右端の層、格子のゲージ場を型として持つ定理は 5-11 の三つです。SU(2)SU(2) の元は単位四元数 uu、Haar 測度は S3S^3 の上の一様な確率です。一リンク積分は

∫S3eβ⟨u,M⟩ dμ(u)=F0 ⁣(β2∣M∣24),F0(x)=∑k≥0xkk! (k+1)!=I1(2x)x(5)\int_{S^3}e^{\beta\langle u,M\rangle}\,d\mu(u)=F_0\!\Bigl(\frac{\beta^2|M|^2}4\Bigr),\qquad F_0(x)=\sum_{k\ge0}\frac{x^k}{k!\,(k+1)!}=\frac{I_1(2\sqrt x)}{\sqrt x} \tag{5}

で(I1I_1 は変形 Bessel 関数)、IsHaarS3.one_link は Haar の性質だけからこれを示します。式は熱浴法の標準の式で、種別は R です。

どのプラケットにもちょうど一本ずつ含まれるリンクの族(完全な族)を先に積分すると、残りのリンクの周辺密度は e−Φe^{-\Phi} になります。この Φ\Phi を有効作用と呼びます。integral_star_links はこの積分の恒等式で、一本ずつは (5) です。

表 6 一リンクと完全な族(5-11・10-02・10-13)の定理

定理名仮定言明規約・読み対応する既知(章)種別
IsHaarS3.one_linkμ\mu が S3S^3 の Haar の性質を持つ∫eβ⟨u,M⟩dμ=F0(β2∣M∣2/4)\int e^{\beta\langle u,M\rangle}d\mu=F_0(\beta^2|M|^2/4)⟨u,M⟩=12Re⁡tr⁡(UM†)\langle u,M\rangle=\tfrac12\operatorname{Re}\operatorname{tr}(UM^\dagger)Bessel の閉形(5-11)R
WilsonOneLink.integral_star_linksLL が偶数・∣We∣=1|W_e|=1・μ\mu が Haar完全な族のリンクを積分すると e−SWe^{-S_W} が e−Φe^{-\Phi} になるd=4d=4—(記録の組み立て。一本ずつは (5))A
StaplePerturbation.hess_gaugeLL が偶数で L≥3L\ge3・∣Ue∣=1|U_e|=1・XeX_e が純虚∂τ2Φ≥−27β2∑e∣Xe∣2\partial_\tau^2\Phi\ge-27\beta^2\sum_e|X_e|^2すべての配位。β=4βSZZ\beta=4\beta_{\rm SZZ}Bakry–Émery・Shen–Zhu–Zhu(5-11・5-04)。閾値は Wilson 測度についてのものM
PerfectFamily.no_perfectZ_of_fived≥5d\ge5(周期は仮定しない)Zd\mathbb Z^d に辺の完全な族は無い格子の組合せ符号理論の限界(5-11・10-02)M
PerfectFamily.perfectK_one_iff2≤d2\le d(周期 LL の箱 (Z/L)d(\mathbb Z/L)^d)辺の完全な族が在る   ⟺  d≤4\iff d\le4 かつ LL が偶数格子の組合せ。読まれる章は 10-02 §02・10-10 §06—(探した範囲で先行の記録が見当たらない)M
no_perfect_k4_d9・no_perfect_k5_d8周期 2 の格子(型に含む)(k,d)=(4,9)(k,d)=(4,9)・(5,8)(5,8) に kk-胞体の完全な族は無い族の大きさの割り算の検問 2(k+1)∣(dk)2d2(k+1)\mid\binom dk2^d。周期 2 に限る。10-13 問 2二重の数え上げ(標準)A

例。hess_gauge の仮定は「周期 LL が偶数で L≥3L\ge3」「リンクは単位四元数」「摂動は純虚」の三種で、β\beta の小ささは仮定しません。全ての配位で Φ\Phi の Hesse 形式が −27β2-27\beta^2 以上という言明です。これを S3S^3 の Ricci 曲率 2 既知 と合わせて Bakry–Émery の判定法 既知 に入れると、残りのリンクの周辺測度の曲率は 2−27β22-27\beta^2 以上で、閾値 β<2/27=0.2722\beta\lt\sqrt{2/27}=0.2722 計算 が出ます。判定法から質量ギャップへ進む段は紙の概略で、Lean の定理ではありません(5-11)。no_perfectZ_of_five は d≥5d\ge5 の Zd\mathbb Z^d に辺の完全な族が無いという組合せの定理です。周期の箱では perfectK_one_iff が「d≤4d\le4 かつ LL が偶数」と同値を与えます。この 4 は物理の四次元時空とは関係しない一致です(10-10 §09)。

08

規約の翻訳 — β\beta・tr・格子の計量・η\eta・κ\kappa・CPC_P

Lean の定理は記号の意味を知らず、同じ文字が別のファイルで別の量を指しても検査は通ります。定理の中の規約を本書の記号表(付録 A-01)に翻訳し、食い違いは食い違いとして書きます。

一番影響の大きいのは CPC_P の正規化です。Dirichlet 形は E(f)=E∣∇f∣2\mathcal E(f)=E|\nabla f|^2 で、CPC_P は Var⁡f≤CP E(f)\operatorname{Var}f\le C_P\,\mathcal E(f) を満たす最小の定数でした(1-10)。記録はリンクを U=eiϑ⋅σU=e^{i\vartheta\cdot\sigma} と角度 ϑ\vartheta で書き、場を A=β ϑA=\sqrt\beta\,\vartheta とします。E\mathcal E を cc 倍すると CPC_P は 1/c1/c 倍なので

EA=Eϑβ ⟹ CP(A)=β CP(ϑ),自由近似で  CP(ϑ)=g24 ξ2,  CP(A)=ξ2(6)\mathcal E_A=\frac{\mathcal E_\vartheta}{\beta}\ \Longrightarrow\ C_P^{(A)}=\beta\,C_P^{(\vartheta)},\qquad \text{自由近似で}\ \ C_P^{(\vartheta)}=\frac{g^2}4\,\xi^2,\ \ C_P^{(A)}=\xi^2 \tag{6}

です(8-05)。例:β=2.5\beta=2.5(g2=1.6g^2=1.6)では二つの正規化の比は 0.4、β=10\beta=10 では 0.1 で 計算、比は β\beta とともに 0 に向かいます。hup_is_gap_positivity の仮定 CP=1/m2C_P=1/m^2 は AA の正規化の値なので、角度の正規化で読むとこの仮定は自由場でも g2/4g^2/4 倍ずれます。

表 7 Lean の中の規約と本書の記号

量Lean の中本書(A-01)食い違い
β\betaone_link・hess_gauge:eβ⟨u,M⟩e^{\beta\langle u,M\rangle}、⟨u,M⟩=12Re⁡tr⁡(UM†)\langle u,M\rangle=\tfrac12\operatorname{Re}\operatorname{tr}(UM^\dagger)。log_F0_le は β=4/g2\beta=4/g^2β=2N/g2\beta=2N/g^2、SW=β∑P(1−1NRe⁡tr⁡UP)S_W=\beta\sum_P(1-\tfrac1N\operatorname{Re}\operatorname{tr}U_P)無い(N=2N=2 で β=4/g2\beta=4/g^2)。Shen–Zhu–Zhu とは β=4βSZZ\beta=4\beta_{\rm SZZ}
tr と角度四元数のノルム ∣X∣2=12tr⁡X†X|X|^2=\tfrac12\operatorname{tr}X^\dagger X。リンク角は U=eiϑ⋅σU=e^{i\vartheta\cdot\sigma}tr⁡(TaTb)=12δab\operatorname{tr}(T^aT^b)=\tfrac12\delta^{ab}、Ta=σa/2T^a=\sigma^a/2U=eiθaTaU=e^{i\theta^aT^a} の角とは θ=2ϑ\theta=2\vartheta。CP(θ)=4CP(ϑ)C_P^{(\theta)}=4C_P^{(\vartheta)}(θ\theta の Dirichlet 形は ϑ\vartheta の 1/4)。定数倍なので H(冪)にも Hband\text{H}_{\rm band}(帯)にも影響しない
aadrain_exponent の a、conditional_scale_bound の T=ln⁡(1/a)T=\ln(1/a)格子間隔(物理単位)a(β)a(\beta)Lean と第 10 部の aa は 1/ξRG1/\xi_{\rm RG}(記帳の長さの逆数)。鎖 (iii) の下でだけ定数倍で揃う
格子の計量長さはすべて格子単位(間隔 1)。距離・周長は歩数同じ(第 5 部)無い。ただし linear_deficit_breaks_inv の周長は外接長方形の周で、回転不変な長さではない
η\etafisherEta:2Δ−(d−2)2\Delta-(d-2)。eta_ge_two…:感受率の冪。drainExp の注:零運動量の重なりの冪から CP≍ξ2−ηC_P\asymp\xi^{2-\eta}ηs\eta_s(静的)と ηdyn\eta_{\rm dyn}(CP/ξ2∝ξ−ηdynC_P/\xi^2\propto\xi^{-\eta_{\rm dyn}})を添字で分ける在る。drainExp の η\eta は CPC_P の冪としては ηdyn\eta_{\rm dyn} と同じ量(8-05 §02)
κ\kappaxi_eq_exp・S4_two_sided:一ループの傾き。c2_ge…:SS の係数。casimir_only…:Casimir 項の係数。kappaDisj:κdisj(b)\kappa_{\rm disj}(b)κ=11/(3π2)\kappa=11/(3\pi^2)(一ループの傾き)だけ在る。同じ文字が四つの量
CPC_P名前の付いた実数。tau_int_le では離散時間の連鎖の 1/γ1/\gammaLangevin の Poincaré 定数。正規化を名指す在る。正規化は (6)。τexp=CP\tau_{\rm exp}=C_P は連続時間でだけ等号
mmm=−ln⁡tm=-\ln t(転送作用素のノルム)、格子単位mlatm_{\rm lat}、Δ=mlat/a\Delta=m_{\rm lat}/a無い(aa の読みは上の行)

例。drain_exponent のファイルの注は η\eta を「零運動量の重なり Z≍ξ1−ηZ\asymp\xi^{1-\eta} の冪、したがって CP≍ξ2−ηC_P\asymp\xi^{2-\eta}」と書きます。本書は CP/ξ2∝ξ−ηdynC_P/\xi^2\propto\xi^{-\eta_{\rm dyn}} で ηdyn\eta_{\rm dyn} を定義するので、注の η\eta は CPC_P の冪としては ηdyn\eta_{\rm dyn} と同じ量を指します。注はそれを重なりの冪から導いており、その重なりの冪が静的な ηs\eta_s と一致するかが Lean の外の問いです(8-03)。定理そのものは η\eta に何の意味も要求しないので、どちらの読みでも成り立ちます。

09

種別で数える — 既知と違う部分はどこか

四十一行を五つの種別で数えると、表 8 になります。既知の再証明と記録の整理で二十六行、全体の六割を超えます。条件つきの還元の七行は、どれも未証明の仮定(模型・測定・T(c,1)T(c,1)・(P)・感受率の有界性・自己相関の時間の下界)を引数に持ちます。

11⏟R+15⏟A+7⏟C+5⏟N+3⏟M=41(7)\underbrace{11}_{\text{R}}+\underbrace{15}_{\text{A}}+\underbrace{7}_{\text{C}}+\underbrace{5}_{\text{N}}+\underbrace{3}_{\text{M}}=41 \tag{7}

表 8 種別と、読まれる章(行で数える) 計算

章R 再証明A 整理C 還元N 陰性対照M 記録の定理計
一段の記帳(10-02)2720011
仮定 H のまわり(10-03)141107
試験関数と分光(10-05)5221010
管(10-06)202307
一リンクと完全な族(5-11・10-02・10-13)120036
計111575341
図 2 章ごとの行数を帯で積む。ボタンで、積む分け方を「種別」と「対象の型」で切り替える
濃い色ほど右の分類(種別:R → M)。行で数える(対にした二つの定理は一行)。

計算この図の数値はこの端末で計算した(表 8 と、型の層の章ごとの行数)。表 1 は定理で数えるので、層ごとの数は表 1 と少し違う。JavaScript が無効なら表 8 と表 1 が中身です。

既知の結果と比べて記録の側に定理として残るのは、M の三行です。C の行は仮定つきの組み立てで、その中身は仮定の側にあります。hess_gauge から出る閾値 2/27\sqrt{2/27} は、完全な族を積分した後に残るリンクの周辺測度の曲率で見たものです。それが Shen–Zhu–Zhu の Wilson 測度そのものの閾値(同じ規約で 1/121/12)の 42/3≈3.274\sqrt{2/3}\approx3.27 倍 計算 になります。比べている二つの測度は同じではありません。別の組み立てとして、Cao–Nissim–Sheffield(2025)は模型を頂点の上のスピン系として扱って Bakry–Émery を当て、Shen–Zhu–Zhu の閾値の 2 倍を得ています 既知。このサイトの論文(5-11)は、探した範囲で同じ組み立ては見当たらないとしつつ、強結合の範囲を広げたとは主張していません(5-11)。完全な族が d≤4d\le4 に限ることは、探した範囲で先行の記録が見当たらない組合せの事実で、既知かもしれません。どちらも連続極限からは反対側の、相関長が格子間隔の数倍の世界の話です。

例。図 2 を「対象の型で分ける」に切り替えると、10-03 と 10-06 の帯は実数と数列の層だけでほぼ埋まります。機械検査が届いているのは仮定を置いたあとの代数の部分で、残るのは仮定を格子ヤン–ミルズの測度について証明する部分です。何が足りないかは 10-08 壁の一覧 と 10-11 で扱います。数値の側のつじつま合わせは 10-12 です。


この章が言えている範囲

言えている言えていない
Lean表 2〜6 の四十六の定理と、§01 の一覧の十七の定理は、仮定を引数に明示した形で機械検査を通っている(検査の記録の #print axioms が標準の三つの部分集合)。仮定 H・鎖 (i)(ii)(iii)・T(c,1)T(c,1)・射影 (P)・段の誤差の模型・測定した依り方の証明。Lean の実数を格子ヤン–ミルズの量と読むこと自体の検査。Wilson 測度の期待値・相関・隙間についての定理。
既知R の十一行が対応する既知の事実(一リンク積分の閉形・二次元の厳密な間引き・Rayleigh–Ritz・Hardy の挟み込み・Fekete・Jensen・Cauchy–Schwarz・自己相関時間の上界・軌道の上の重み付き平均)。これらを記録の成果として数えること。
物理一ループの漸近スケーリング(xi_eq_exp の仮定の関数等式の出所)。漸近スケーリングを厳密な定理として扱うこと。
計算表 1・表 8・図 1・図 2:宣言の型と仮定の数の機械的な分類、種別の数え上げ。本文の数値(3π2/113\pi^2/11・2/27\sqrt{2/27}・42/34\sqrt{2/3}・正規化の比)。型の層は宣言の文字列による目安で、証明の難しさの尺度ではない。Lean の検査そのものはこの章のために再実行していない(残っている記録を読み直した)。
記録の整理:表 7 の規約の対応と食い違い(η\eta・κ\kappa・aa・CPC_P の正規化)。表 7 の tr の規約を Lean の原稿の中の定義と直接には突き合わせていない。静的な ηs\eta_s と重なりの冪が一致するか。つなぎ目の仮定が要るか。質量ギャップ・連続極限について、この章は何も示さない。

出典と再現

もの種別出典・道具
表 2〜6 と §01 の一覧の定理の宣言と検査の記録Leanこの端末の記録の Lean 4(Mathlib)の原稿と、各原稿の #print axioms の出力。定理名は本文の各行。
表 1・表 8・図 1・図 2・本文の数値計算この端末の Python 3:extract_decls.py(宣言の抜き出し)・audit_axioms.py(型の層・命題の型の引数の数・公理の行と、記録が原稿より新しいことの照合。表の 46 件と一覧の 17 件がすべて標準の三つ)・gen_tables.py(数え上げ)・numbers.py(数値)。
三つの公理と #print axioms・計算の解釈既知J. Avigad, L. de Moura, S. Kong, S. Ullrich ほか『Theorem Proving in Lean 4』の章 Axioms and Computation(オンライン版の該当箇所を確認)。
一ループ係数・漸近スケーリング既知・物理4-06・5-05 の出典表(Gross–Wilczek 1973、Politzer 1973)。
二重み Hardy 不等式既知B. Muckenhoupt, Studia Math. 44 (1972) 31–38(書誌のみ。1-10・10-03 の出典表による)。
Fekete の補題既知M. Fekete, Math. Z. 17 (1923) 228–249(書誌のみ。10-06 の寄り道を参照)。
二次元の厳密な間引き既知A. A. Migdal, Zh. Eksp. Teor. Fiz. 69 (1975) 810–822[Sov. Phys. JETP 42 (1975) 413–418](書誌のみ。INSPIRE の書誌で確認)。
Bakry–Émery の判定法既知D. Bakry, M. Émery, Diffusions hypercontractives, Séminaire de Probabilités XIX, Lecture Notes in Math. 1123 (1985) 177–206, doi:10.1007/BFb0075847(書誌のみ)。
強結合の Poincaré 不等式と質量ギャップ・規約の換算既知H. Shen, R. Zhu, X. Zhu, Commun. Math. Phys. 400 (2023) 805–851, doi:10.1007/s00220-022-04609-1, arXiv:2204.12737(要旨を確認。条件 ∣β∣<1/(16(d−1))|\beta|\lt1/(16(d-1))。5-04・5-11 の出典表による)。
頂点の上の組み立てと閾値の 2 倍既知S. Cao, R. Nissim, S. Sheffield, Dynamical approach to area law for lattice Yang–Mills, arXiv:2509.04688(2025)。要旨と Definition 1.4・Remark 1.5 を確認。
軌道の上の重み付き平均既知C. Parrinello, G. Jona-Lasinio, Phys. Lett. B 251 (1990) 175–180, doi:10.1016/0370-2693(90)90249-6。D. Zwanziger, Nucl. Phys. B 345 (1990) 461–471, doi:10.1016/0550-3213(90)90396-U(どちらも書誌を Crossref、題・要旨を INSPIRE で確認。本文は未読)。確率的ゲージ固定の Zwanziger, Nucl. Phys. B 192 (1981) 259–269 は別の論文(10-05・A-03 表 3)。
ηs\eta_s と ηdyn\eta_{\rm dyn}、CPC_P の正規化物理・記録8-05・8-03 と付録 A-01 の記号表。
種別の割り振り(R・A・C・N・M)記録の整理この章の判断。各行の根拠は本文の対応する章の札。

次に読む章:10-08 壁の一覧 — 仮定の側に何が残っているか。

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改訂 2026-10-01:初版。