この本の全体 目次と読む順
- 第 0 部 入口 — この本の読み方
- 0-01 この本の読み方
- 0-02 一枚の絵
- 0-03 問題文を一語ずつ読む
- 0-04 数学の四次元と物理の四次元
- 第 1 部 数学の準備
- 1-01 ベクトル空間と線形写像
- 1-02 群とは何か
- 1-03 リー群とリー環
- 1-04 SU(2) と SU(3)
- 1-05 多様体と接空間
- 1-06 微分形式と外微分
- 1-07 ベクトル束と接続
- 1-08 確率と測度
- 1-09 無限次元の確率
- 1-10 ヒルベルト空間と自己共役作用素
- 1-11 フーリエ解析と分布
- 1-12 寄り道
- 第 2 部 物理の準備
- 2-01 ラグランジアンと作用
- 2-02 場という考え
- 2-03 電磁気学はゲージ理論である
- 2-04 特殊相対論と時空
- 2-05 量子力学の骨
- 2-06 調和振動子と生成消滅
- 2-07 経路積分の考え方
- 2-08 統計力学と相転移
- 2-09 寄り道
- 2-10 緩和の時間と動的指数 z
- 第 3 部 ヤン–ミルズ理論(古典)
- 3-01 ゲージ原理
- 3-02 非可換ゲージ場
- 3-03 作用と方程式
- 3-04 幾何としてのゲージ理論
- 3-05 インスタントンと位相
- 3-06 寄り道
- 3-07 標準模型の中のヤン–ミルズ
- 第 4 部 量子化
- 4-01 正準量子化とハミルトニアン
- 4-02 経路積分とユークリッド化
- 4-03 摂動論と Feynman ダイアグラム
- 4-04 発散と繰り込み
- 4-05 発散の代数
- 4-06 漸近自由
- 4-07 次元転移と Λ
- 4-08 ゲージ固定と Faddeev–Popov
- 4-09 場の量子論の公理
- 4-10 Osterwalder–Schrader の公理と再構成
- 4-11 質量ギャップの定義
- 4-12 寄り道
- 第 5 部 格子ゲージ理論
- 5-01 Wilson の格子
- 5-02 強結合展開
- 5-03 反射正値性と転送行列
- 5-04 無限体積極限とクラスター展開
- 5-05 弱結合と連続極限
- 5-06 U(1) と非可換の違い
- 5-07 モンテカルロ法
- 5-08 グルーボールと弦張力の測定
- 5-09 何を固定して極限を取るか
- 5-10 有限群の格子ゲージ理論
- 5-11 寄り道
- 第 6 部 構成的場の理論
- 6-01 構成的場の理論とは
- 6-02 二次元の可解性とヤン–ミルズ測度
- 6-03 スカラー場の構成
- 6-04 クラスター展開
- 6-05 繰り込み群の段の列
- 6-06 三次元ヤン–ミルズの紫外安定性
- 6-07 四次元
- 6-08 四次元の φ⁴ の自明性
- 6-09 確率量子化と正則性構造
- 6-10 四次元で止まる場所
- 6-11 発散以外の障害
- 6-12 寄り道
- 第 7 部 物理の側から
- 7-01 物理はどう見ているか
- 7-02 閉じ込めの機構
- 7-03 弦の絵
- 7-04 大 N
- 7-05 ひも理論と余剰次元
- 7-06 余剰次元が見えなくなる仕組み
- 7-07 ゲージ場はどこから来るか
- 7-08 ホログラフィー
- 7-09 質量ギャップが幾何になる
- 7-10 四次元に戻す
- 7-11 超対称と Seiberg–Witten
- 7-12 等価原理に当たる一文
- 7-13 物理の掘り方が数学と離れる場所
- 第 8 部 二つの言葉の辞書 — 物理の視点と数学の視点
- 8-01 辞書の読み方
- 8-02 辞書 A
- 8-03 辞書 B
- 8-04 辞書 C
- 8-05 私たちの仮定の物理側の対応
- 第 9 部 現在地と課題
- 9-01 世界はどこまで来ているか
- 9-02 二つの掘り方の切れ目
- 9-03 新しい概念の候補
- 9-04 課題の一覧
- 9-05 よくある誤解
- 第 10 部 質量ギャップの厳密な証明へ — この端末の検討
- 10-00 第 10 部の入口 — 酔歩と定規と時計
- 10-01 理論の構成の筋
- 10-02 一段の記帳
- 10-03 仮定 H と三つの鎖
- 10-04 方向の地図
- 10-05 方向 12〜14
- 10-06 方向 15・15′
- 10-07 Lean で閉じた言明と既存の結果の対応表
- 10-08 壁の一覧
- 10-09 ひらめき帳から
- 10-10 主張しないこと
- 10-12 つじつま合わせ
- 10-11 定理までの距離
- 10-13 小さな問い — 卒業研究の大きさで決着のつく十〜二十問
- 付録
- A-01 記号表
- A-02 用語集
- A-03 文献案内
- A-04 Lean と機械検査
- A-05 この本の作り方
- A-06 仮定の索引
質量ギャップの定義 — 真空の上の最低エネルギーと、相関の一様な減衰
この章で分かること — 質量ギャップは「真空に直交する状態のエネルギーの下限」で、虚時間では「すべての連結相関が一つの速さ以上で減ること」と同値であること。一つの相関や有限の範囲の測定からは上界しか出ないこと。粒子状態・クラスター性・相関長と隙間の異同。
前提となる章 — 4-10 Osterwalder–Schrader の公理と再構成・2-08 統計力学と相転移。道具は 1-10(スペクトル定理・変分原理)。、。
先に言うこと — 定義と既知の対応の整理で、四次元ヤン–ミルズの隙間については何も示しません。そこでは隙間を問う前提の Hilbert 空間とハミルトニアンが未構成です。計算の例はすべて自由場です。
定義 — 真空に直交する状態の、エネルギーの下限
問題文 §4 の定義は 'A quantum field theory has a mass gap ∆ if H has no spectrum in the interval (0, ∆) for some ∆ > 0. The supremum of such ∆ is the mass m, and we require m < ∞.' です(一語ずつの読みは 0-03 §06)。この文は (a) Hilbert 空間 と自己共役な (4-10 §05 の再構成で得るもの)と、(b) 位相を除いて一つの真空 、(4-10 の表 1 の (E4))を前提にし、(c) 真空に直交する状態を問います。§1 の言葉では 'every excitation of the vacuum has energy at least ∆' です。(b) の下で、定義は次と同じです 既知。
二つ目の等号は変分原理です(1-10 §06)。(b) が要ることも (1) から読めます。真空と直交するエネルギー 0 の状態 があれば で (1) は 0 ですが、問題文の一文目だけなら 0 は の外なので見落とします。例。質量 の自由場では (1) も (同じ字を使います)、質量 0 なら 0 です(4-10 §07)。
虚時間の顔 — 隙間は「すべての相関が一様に減ること」と同値
4-10 §05 の記号で、正の時間の有界な量 はベクトル を与え、時間の向きに ずらす は になります。 と置くと、連結相関(真空の成分を引いた相関)について
です。不等式はスペクトル定理(1-10 §05)から出ます 既知。逆も成り立ちます。すべての有界な で なら です。
これを見るために、 のスペクトル測度 を使います。 を の固有成分に分けたときの、重みのエネルギー軸 の上の分布です。固有基底 ()があれば で( は点 に置いた重み 1)、連続スペクトルでも同じ意味の分布がスペクトル定理から定まります。このとき です。左辺は ()なので、 で です。 の全体は で稠密( のどのベクトルにもいくらでも近づける)なので、 の上で です。 も含むので、真空が一つであることも一緒に出ます 既知。隙間は、すべての連結相関が観測量によらない一つの速さ以上で減ることと同値です。
一つの相関 は対数凸、つまり が下に凸です(4-10 の (5) の がこれに当たります)。だから有効質量は単調に下ります。
(台)は の重みが載る最小の閉集合で、 は が触れる最低のエネルギーです。どの時刻の も の上界で、上からは一つの で押さえられ、下からはすべての が要ります(1-10 の囲み「上界と下界の非対称」と同じ形)。格子では が転送行列 で、、 です。・ は の最大と二番目に大きい固有値です(ゲージ理論ではゲージ不変な状態の上。08 節)(2-09 の (1) はその最小の例)。
観測量ごとの減衰 — 一つの相関が見るのは、その観測量が触れる部分だけ
が観測量で変わることを四次元の自由場()で見ます。4-10 §07 の Wick 積を空間で積分して運動量 0 にした の相関は
です( は四次元の自由場の二点関数、 は修正ベッセル関数)。 はちょうど 個の粒子を合計運動量 0 で作るので です。大きい では各粒子のエネルギーを と近似でき、合計運動量 0 の 粒子の相関は に、残る 個の三次元の運動量のガウス積分から が掛かります。そこで下端の近くでは です 計算。隙間 1 を見るのは だけで、 をどれだけ精密に測っても 2 に近づくだけです。自由場では粒子の数が保たれるからで、相互作用があっても対称性で部分が分かれます(ヤン–ミルズでは 09 節のチャネル)。射影しない一点どうしの では、同じ でも のようにゆっくり下ります。動く粒子のエネルギーが連続に並び、一つの三次元の運動量の積分が同じ理由で を掛けるからで、格子の測定が空間で和を取る理由です(5-08)。
計算この図の数値はこの端末で計算した((4) を τ の 0.5 刻みで求めた表を埋め込み)。
計算表 1 自由場()の 。括弧は下端 。運動量 0 の はどの でも 1.00000 で、閉じた形 と倍精度の丸めの範囲で一致した。
| τ | φ 一点(1) | :φ²:(2) | :φ³:(3) | :φ⁴:(4) |
|---|---|---|---|---|
| 2 | 1.81431 | 2.67113 | 4.43494 | 6.22414 |
| 4 | 1.39395 | 2.35013 | 3.72854 | 5.11460 |
| 8 | 1.19273 | 2.18027 | 3.36864 | 4.55915 |
| 16 | 1.09513 | 2.09177 | 3.18575 | 4.28029 |
どの列も単調に下り( の 0.25 刻みのすべての点で確かめた)、 で漸近形と 0.13% 以内で合い、最後まで下端より上にあります。読めるのは の上界です 計算。
有限の窓 — 減衰を測っても、隙間の下界は出ない
測定で見られる の範囲を窓と呼びます(正確には有限区間 )。(3) の下限は無限に多くの と を含むので、窓の中の測定はその一部しか見ません。質量 1 の自由場 と質量 0 の自由場 を独立に並べた、隙間の無い理論で見ます。 の相関は、交差項が消えて
です(第二項の係数は数値積分で 12 桁確かめた 計算)。二項が等しくなる までは で、「隙間 1 の理論」に見えます。
計算この図の数値はこの端末で計算した((5) をその場で計算。τ* は二分法)。
計算表 2 (5) の と 。
| ε | τ* | m_eff(20) |
|---|---|---|
| 10⁻¹ | 10.646 | 0.0502 |
| 10⁻² | 15.636 | 0.0652 |
| 10⁻³ | 20.512 | 0.6384 |
| 10⁻⁴ | 25.328 | 0.9942 |
| 10⁻⁶ | 34.858 | 1.0000 |
二項を等しく置くと なので、 が一桁小さくなるごとに は に対数の補正を足した約 5 だけ延び、どんな有限の窓にも「隙間 1」に見える があります(十分先では )。有限の窓の測定から隙間の下界は出ません 既知。格子の数値の読み方は 9-05 §07。
粒子状態との違い — 孤立した固有値は、隙間とは別の要求
質量の作用素 の隙間は の隙間と同じ幅でした(0-03 §06)。質量 の一粒子状態は の固有値 に属する状態で(粒子を Poincaré 群の既約表現と見る Wigner 1939 の考え)、 の近くに他の の点が無ければ孤立しています。問題文 §5 はこれを要求の外に置き、'one would like to prove the existence of an isolated one-particle state (an upper gap, in addition to the mass gap)' と書きます 既知。
違いは二点関数に出ます。スカラー場 ()のユークリッドの二点関数は、正の測度 で
と書け、Källén–Lehmann の表示と呼ばれます 既知(右は 4-10 の (3) を で重ねたもの)。隙間 があれば の台は に入り、質量 の粒子に が触れれば は に点の重みを持ちます。
例 1:隙間はあるが粒子は無い。 を 上の一様な重みにし、共分散 のガウス測度を取ります。反射正値性は共分散の正の重ね合わせで保たれる条件なので、各 で成り立てば(4-10 §07)正の測度 で積分しても成り立ちます。再構成すると「一粒子」の は を連続に埋め、 です。隙間は で、 の固有値は 0 のほかにありません。この種の場は一般化自由場と呼ばれます(Greenberg 1961)既知。例 2:粒子はあるが隙間は無い。04 節の理論で の一粒子状態は ですが、 の二粒子が を埋め、固有値 1 は連続スペクトルに埋もれています。
ヤン–ミルズで物理が期待するのは隙間の下端の孤立したグルーボールです 物理。相関から孤立点と連続の端を見分ける難しさは 9-05 §05。
クラスター性 — 空間の向きに離すと、どれだけ速く独立になるか
速さを問わないクラスター性(遠ざけた二つの量が独立に近づくこと)は (E4) で、真空が一つであることと対です(4-10 の表 1)既知。質量 0 の自由場もこれを満たしますが、相関は と冪でしか減りません。問題文 §5 の式 (2) は、 の局所場 について
です。ユークリッドの側の筋は (2) と回転不変性 (E1) です。半径 に局在した二つの量が距離 離れていれば、結ぶ向きを回転で 軸に合わせると (2) から連結相関は( によらない定数) 以下です。同時刻で空間的に離れた点では、Wightman 関数(場の積の真空期待値。4-09 §04)は Schwinger 関数の時刻 0 での値に等しいので(4-10 §05 の解析接続)、このユークリッドの相関の減衰がそのまま (7) になります。点の場 は有界な量ではないので、正確には場を半径 の範囲で少しぼかした量で考えます。(7) の「」「十分大きいとき」は、前に付く定数と幅 の分です。ミンコフスキーの側の定理は、Nachtergaele–Sims 2006 の序論が 'in [1] Fredenhagen proves a general theorem applicable to arbitrary strictly local theories' と紹介しています([1] は Fredenhagen 1985)既知。
逆向きは一般には成り立たず、同じ序論は、基底状態が一つで相関が指数関数的に減るのに隙間の無い格子の量子系があると書き、例として Nachtergaele 1996 の Example 2 を挙げます 既知。回転不変なユークリッドの理論では時間も向きの一つです。「すべての向きに一様な速さで減る」なら時間の向きにも同じ速さで減るので、02 節の逆向きの議論(前に付く定数は ごとでよい)がそのまま使え、隙間と同値です。二つの相を混ぜた状態(2-09 §08)はクラスター性そのものを破り、(1) の前提 (b) が崩れます。
相関長 — 隙間の逆数を、長さで言い直す
2-08 の (6) は一つの相関から相関長を定めました。理論の相関長は観測量にわたる上限です。
どちらも (3) の言い換えです 既知(単位を戻せば 、格子では )。Chatterjee 2018 の Problem 5.1 はプラケットの相関で格子の相関長を定め、'The number ξ represents the reciprocal of the mass of the lightest glueball' と書きます 既知。
二次の積率による もよく使われ、格子では減衰の速さが向きにもよります(4-02)。隙間の逆数に等しいのは転送行列の向き(軸)の長さです。四次元の格子の自由場(共分散 )では閉じた形があります。
三つ目の は長さ 1 のベクトルで、軸は 、対角は です。
計算表 3 四次元の格子の自由場。右の二列は との比(対角は の向き)。(9) の三つ目は、二次元の周期格子で二点関数を高速フーリエ変換で求め、軸と対角で 0.11% 以内で合うことを確かめた。
| m₀ | ξ軸 | ξ対角/ξ軸 | ξ2nd/ξ軸 |
|---|---|---|---|
| 2 | 0.5673 | 0.91579 | 0.88137 |
| 1 | 1.0390 | 0.97228 | 0.96242 |
| 0.2 | 5.0083 | 0.99876 | 0.99834 |
| 0.05 | 20.0021 | 0.99992 | 0.99990 |
相関長が格子間隔程度()だと三つの長さは 3〜12% 食い違い、 では差は の桁で、回転の対称性が戻ります(連続極限。2-08 §08)。自由場の外では長さどうしが一致する保証は無く、隙間に使うのは です。
有限の箱と一様性 — 隙間が問われるのは極限の側
有限の格子では、隙間が正であることはほとんど自明です。時間ゲージでは、転送行列 (5-03 §05)は一つの時刻のリンクの値の空間 ( はコンパクトな群、 はリンクの数)に作用する、正の連続な核を持つ積分作用素です。コンパクトな空間の上の連続な核なので はコンパクトな作用素(正確には、有限次元の行列のノルム極限)で、固有値は 0 以外に集積しない離散の列です。さらに核が正なので、Jentzsch の定理(Perron–Frobenius の定理の無限次元版)から最大固有値 は単純で、 です 既知。群が有限なら は成分が正の有限の行列で、文字どおり Perron–Frobenius の定理です。最大固有値が単純なだけでは、残りの固有値が に詰まる可能性が残るので、離散であることが要ります。問われるのは、体積 と格子間隔 の極限で が正に留まるかです。問題文 §6.5 は 'New ideas are needed to prove the existence of a mass gap that is uniform in the volume of space-time.' と書き、§5 も一様な隙間が無限体積極限の証明で役を果たしうると述べます 既知。(2) は相関どうしの不等式です(右辺の も相関です)。だから近似の列で同じ のまま成り立ち相関が収束すれば、極限でも成り立ちます。02 節の逆向きを極限の理論で使えば です( の全体が で稠密なことは再構成の作り方から。6-01)。
有限の箱の隙間が で閉じる型は、質量 0 の粒子(周期的な箱で 。2-05 §06)と対称性の破れ(相の間のトンネルの分裂。2-09 §08)です。後者では無限体積の各相に隙間があり、問題文 §6.3 は二次元の の各相が 'a non-zero mass gap and a unique, Poincaré-invariant vacuum state' を持つと書きます 既知。 では 一定なら で、格子単位の隙間が一様に正なことは連続極限の を意味します(5-09)。
ゲージ理論で読む — ゲージ不変な状態の上の隙間
ヤン–ミルズでは (1) の はゲージ不変な状態の空間で(4-01)、(2)・(3) の観測量は場の強さから作る のような局所量(問題文 §4)や Wilson ループです(4-10 §09)。状態はスピン・パリティ・荷電共役の組 (チャネル)で分かれ( はスピン、 と は空間反転と、場を複素共役〈反粒子〉に替える操作に対する符号 )、03 節の と同じく各チャネルの最低エネルギーの最小が です。格子の数値では が最低で(純 で の約 0.7 倍。Chen ほか 2006。5-08)、物理ではそれを隙間の下端と読みます 物理。
ゲージを固定した場の相関は一般に反射正値である保証が無く(4-10 §04・§09)、グルーオンの伝播関数では破れていると読まれています 物理。反射正値でない相関の減り方は の点を与えません。弦張力は静的な電荷の対のエネルギーで決まり、真空の上の励起とは別の量です(9-05 §06)。数学では、格子の強結合(小さい )での格子単位の隙間に以前からの結果があります(5-04)。Shen–Zhu–Zhu 2023 は 't Hooft の規約(作用の結合を の形に書く。他の規約への換算は 5-01 の表 4)で、 なら のとき、ある族の観測量の相関が指数関数的に減ることを示しました。要旨はこれを 'strictly positive mass gap' と呼び、'Our method improves earlier results' とも書きます 既知。02 節の同値に使うには、その族が稠密であることが要ります。これは 08 節の極限の手前の結果で、四次元の連続の理論では (1) の と がまだ構成されていません(6-10)。
付表:「隙間」の語の一覧 — 同じ語、同値・上界・別物
この本には「隙間」「ギャップ」と呼ばれる量が十以上出てきます。問題文の と同値なもの、 の上界にしかならないもの、別物(別の作用素の隙間、または追加の要求)があり、取り違えると主張の向きが変わります。下の表は、各行の定義・主に扱う章・ との関係を一行ずつ並べたものです(関係の付け方はこの本の整理。上界と下界の向きは 1-10 の囲み「上界と下界の非対称」)。
付表 「隙間」の語。関係の欄の「同値」は、記した前提の下で同じ数になること。
| # | 名前 | 定義(一行) | 章 | との関係 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | ハミルトニアンの隙間(質量ギャップ) | の上の のスペクトルの下限 | §01・0-03 §06 | 基準(問題文の ) |
| 2 | 質量作用素の隙間 | の 0 の次 | §05・0-03 §06 | 同値(同じ幅) |
| 3 | 一様な減衰率 | すべての連結相関が 以上の速さで減る最大の | §02 | 同値((2)・(3)。反射正値性の下) |
| 4 | 相関長の逆数 | 、(転送行列の向き) | §07 | 同値((8))。・対角の向きの長さは別物(自由場で近い) |
| 5 | 有効質量 | §02・§04・8-01 §08 | 上界() | |
| 6 | 転送行列の隙間(格子単位) | §02・5-03 | 格子で同値() | |
| 7 | 物理単位の隙間 | §08・5-09 | 6 と で結ぶ。連続極限で問われるのはこちら | |
| 8 | 有限体積の隙間 | 一辺 の箱の の | §08 | 常に正(Jentzsch の定理)。 については何も言わない |
| 9 | 一様な隙間 | 体積 (と範囲を決めた )について | §08・5-04・9-02 | 無限体積での 6 の下界。 に一様な格子単位の隙間は、物理単位では の側(偽の友。8-01) |
| 10 | 上の隙間(upper gap) | 一粒子の固有値 が の残りから離れている幅 | §05 | 別物(問題文 §5 の追加の要求) |
| 11 | Langevin の隙間 | 経路の測度(格子の Wilson 測度)の生成作用素 の隙間 | 1-10 §09・8-03 §05 | 別物(人工的な時間の隙間)。自由場では (隙間の二乗)。揃うと置くのが 10-03 の仮定 H |
| 12 | 時刻 0 の測度の Poincaré 定数 | 基底状態の分布 の | 2-05 §08 | 同値(基底状態変換。 の正規化で) |
11 と 12 はどちらも Poincaré 定数ですが、11 は虚時間の経路全体の測度、12 は一つの時刻の測度についての量で、同値なのは 12 だけです(2-05 §08)。5 と 9 は向きが逆で、5 は一つの観測量で出る上界、9 はすべての観測量と体積にわたる下界です。
この章が言えている範囲
| 内容 | 状態 |
|---|---|
| (1)〜(3)・(8)、05 節の例、08 節の有限の格子の隙間 | 既知。筋を本文に書いた |
| 表 1〜3・図 1・2・(5)・(9) の検査、03 節の漸近形との照合 | 自由場の倍精度の 計算 |
| (7) のユークリッドの側 | 筋のみ。ミンコフスキーの側は Fredenhagen 1985(書誌のみ) |
| 10 節の付表の「同値・上界・別物」 | この本の整理。各行の根拠は本文と挙げた章(既知の言い換え) |
| 09 節のグルーボール | 物理(格子の数値と外挿) |
| 四次元ヤン–ミルズの隙間 | ・ が未構成。この章は何も示していない |
出典と再現
| もの | 種別 | 出典・道具 |
|---|---|---|
| 表・図・本文の数値 | 計算 | python3・NumPy・SciPy(数値積分・二分法・FFT) |
| 問題文 §1・§4・§5・§6.3・§6.5、Problem 5.1 | 既知 | A. Jaffe, E. Witten, Quantum Yang–Mills Theory(Clay, 2000);S. Chatterjee, arXiv:1803.01950 §5。本文で確認 |
| 06 節 | 既知 | B. Nachtergaele, R. Sims, Comm. Math. Phys. 265 (2006) 119–130(arXiv:math-ph/0506030)序論を確認;K. Fredenhagen, 'A Remark on the Cluster Theorem', Comm. Math. Phys. 97 (1985) 461–463 書誌のみ;B. Nachtergaele, Comm. Math. Phys. 175 (1996) 565–606 の Example 2 書誌のみ |
| 05 節 | 既知 | H. Lehmann, Nuovo Cimento 11 (1954) 342–357;O. W. Greenberg, Ann. Phys. 16 (1961) 158–176;E. Wigner, Ann. of Math. 40 (1939) 149;G. Källén 1952 'On the Definition of the Renormalization Constants in Quantum Electrodynamics'(初出の誌名・巻は未確認)。書誌のみ |
| 08 節 | 既知 | K. Osterwalder, E. Seiler, Ann. Phys. 110 (1978) 440–471 書誌のみ(転送行列の構成は 5-03) |
| 09 節 | 物理・既知 | Y. Chen ほか, Phys. Rev. D 73 (2006) 014516 表 VIII(本文);H. Shen, R. Zhu, X. Zhu, Comm. Math. Phys. 400 (2023) 805–851(arXiv:2204.12737 の要旨) |
次に読む章:4-12 寄り道:摂動級数は発散する。極限で何を固定するかは 5-09。
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