この本の全体 目次と読む順
- 第 0 部 入口 — この本の読み方
- 0-01 この本の読み方
- 0-02 一枚の絵
- 0-03 問題文を一語ずつ読む
- 0-04 数学の四次元と物理の四次元
- 第 1 部 数学の準備
- 1-01 ベクトル空間と線形写像
- 1-02 群とは何か
- 1-03 リー群とリー環
- 1-04 SU(2) と SU(3)
- 1-05 多様体と接空間
- 1-06 微分形式と外微分
- 1-07 ベクトル束と接続
- 1-08 確率と測度
- 1-09 無限次元の確率
- 1-10 ヒルベルト空間と自己共役作用素
- 1-11 フーリエ解析と分布
- 1-12 寄り道
- 第 2 部 物理の準備
- 2-01 ラグランジアンと作用
- 2-02 場という考え
- 2-03 電磁気学はゲージ理論である
- 2-04 特殊相対論と時空
- 2-05 量子力学の骨
- 2-06 調和振動子と生成消滅
- 2-07 経路積分の考え方
- 2-08 統計力学と相転移
- 2-09 寄り道
- 2-10 緩和の時間と動的指数 z
- 第 3 部 ヤン–ミルズ理論(古典)
- 3-01 ゲージ原理
- 3-02 非可換ゲージ場
- 3-03 作用と方程式
- 3-04 幾何としてのゲージ理論
- 3-05 インスタントンと位相
- 3-06 寄り道
- 3-07 標準模型の中のヤン–ミルズ
- 第 4 部 量子化
- 4-01 正準量子化とハミルトニアン
- 4-02 経路積分とユークリッド化
- 4-03 摂動論と Feynman ダイアグラム
- 4-04 発散と繰り込み
- 4-05 発散の代数
- 4-06 漸近自由
- 4-07 次元転移と Λ
- 4-08 ゲージ固定と Faddeev–Popov
- 4-09 場の量子論の公理
- 4-10 Osterwalder–Schrader の公理と再構成
- 4-11 質量ギャップの定義
- 4-12 寄り道
- 第 5 部 格子ゲージ理論
- 5-01 Wilson の格子
- 5-02 強結合展開
- 5-03 反射正値性と転送行列
- 5-04 無限体積極限とクラスター展開
- 5-05 弱結合と連続極限
- 5-06 U(1) と非可換の違い
- 5-07 モンテカルロ法
- 5-08 グルーボールと弦張力の測定
- 5-09 何を固定して極限を取るか
- 5-10 有限群の格子ゲージ理論
- 5-11 寄り道
- 第 6 部 構成的場の理論
- 6-01 構成的場の理論とは
- 6-02 二次元の可解性とヤン–ミルズ測度
- 6-03 スカラー場の構成
- 6-04 クラスター展開
- 6-05 繰り込み群の段の列
- 6-06 三次元ヤン–ミルズの紫外安定性
- 6-07 四次元
- 6-08 四次元の φ⁴ の自明性
- 6-09 確率量子化と正則性構造
- 6-10 四次元で止まる場所
- 6-11 発散以外の障害
- 6-12 寄り道
- 第 7 部 物理の側から
- 7-01 物理はどう見ているか
- 7-02 閉じ込めの機構
- 7-03 弦の絵
- 7-04 大 N
- 7-05 ひも理論と余剰次元
- 7-06 余剰次元が見えなくなる仕組み
- 7-07 ゲージ場はどこから来るか
- 7-08 ホログラフィー
- 7-09 質量ギャップが幾何になる
- 7-10 四次元に戻す
- 7-11 超対称と Seiberg–Witten
- 7-12 等価原理に当たる一文
- 7-13 物理の掘り方が数学と離れる場所
- 第 8 部 二つの言葉の辞書 — 物理の視点と数学の視点
- 8-01 辞書の読み方
- 8-02 辞書 A
- 8-03 辞書 B
- 8-04 辞書 C
- 8-05 私たちの仮定の物理側の対応
- 第 9 部 現在地と課題
- 9-01 世界はどこまで来ているか
- 9-02 二つの掘り方の切れ目
- 9-03 新しい概念の候補
- 9-04 課題の一覧
- 9-05 よくある誤解
- 第 10 部 質量ギャップの厳密な証明へ — この端末の検討
- 10-00 第 10 部の入口 — 酔歩と定規と時計
- 10-01 理論の構成の筋
- 10-02 一段の記帳
- 10-03 仮定 H と三つの鎖
- 10-04 方向の地図
- 10-05 方向 12〜14
- 10-06 方向 15・15′
- 10-07 Lean で閉じた言明と既存の結果の対応表
- 10-08 壁の一覧
- 10-09 ひらめき帳から
- 10-10 主張しないこと
- 10-12 つじつま合わせ
- 10-11 定理までの距離
- 10-13 小さな問い — 卒業研究の大きさで決着のつく十〜二十問
- 付録
- A-01 記号表
- A-02 用語集
- A-03 文献案内
- A-04 Lean と機械検査
- A-05 この本の作り方
- A-06 仮定の索引
課題の一覧 — 開いた問いを「分かれば何が動くか」の矢印でつなぐ
この章で分かること — 十二の開いた課題と、いまある最も近い結果。課題をつなぐ矢印の三つの強さ(定理・道筋・物理の期待)。課題を仮に分かったことにして問題文のどの要件が動くかを、図と数えで確かめること。
前提となる章 — 9-02 二つの掘り方の切れ目。6-10(四次元の段ごとの到達点)・6-11(六つの障害)・9-01(盤面)の言葉を使います。
先に言うこと — 課題を並べてつなぐ章で、どの課題も片づけていません。矢印の選び方と数え方はこの本の整理で、一次資料で確かめた矢印だけを使っています。このサイトは質量ギャップの存在も連続極限の構成も示していません。
課題を「ならば」で書く
この章の課題は、まだ定理になっていない言明です。課題が分かったとき何が動くかは「A が分かれば B が言える」という矢印で書け、強さを三つに分けます。定理(証明された含意か定義)、道筋(問題文や総説が「これが分かれば次へ進めるはず」と書く見込み)、期待(物理の水準の含意)です。比喩で言えば鍵と扉の対応表で、正確には、前提がすべてそろえば結論が出る形の規則の一覧です。
行き先は問題文(Jaffe–Witten 2000、以下 JW。0-03)です。群 を一つ固定し、要求を四つの要件に分けます既知(JW §4 の要約。四つへの分け方はこの本の整理)。
は の上の理論の存在、 は公理(JW が挙げる Streater–Wightman の本 [45] と Osterwalder–Schrader の論文 [35] の公理と同等以上)、 は非自明性・局所場・短距離で漸近自由と一致すること(JW §4)、 は隙間 と です。
もう一つ、問題文の外の要件 を置きます。 は、連続の理論の弦張力 が 0 でないことです。 は Chatterjee 2018 の Problem 5.2 の定数で、6-10 §04 では と書きました。物理の期待では は正です。
例:Chatterjee(2021)の定理 2.4 は定理の矢印です。格子ゲージ理論が任意の境界条件の下で一様に指数減衰するなら(定義 2.3。定数は群・(格子の作用の結合の係数。逆温度ではない)・格子の次元だけにより、箱と境界条件によらない)、中心対称性は破れません。さらに、中心に自明でなく作用する既約表現の、長方形の Wilson ループは、どの Gibbs 測度(無限の格子の上で、どの箱の中も外を固定すれば格子の重みに従う分布)でも面積則に従います既知(9-05 §06)。道筋の例は JW §6.5 の 'Such a result presumably would enable the study of the limit as T4 → R4'(一様なギャップから無限体積極限へ)です。
十二の課題 — 連続の六つと格子の六つ
K1〜K6 は連続の理論の課題で、六つの段(6-01)の段 3〜6 と問題文の追加の条件に当たります。K7〜K12 は格子の課題と、低い次元・物理の前提を数学にした課題です。この章では極限を列全体で求めることにします(この本の整理)。JW の脚注 2(0-03 §08)は、コンパクト性だけによる弱い存在は、極限の性質(ギャップや公理)を別の方法で示さない限り、存在の部分の解と認めない、と書きます既知。最初の三つは次の形です(記号は 6-10)。
は格子の道の Wilson ループ、 は対数から周の長さに比例する項を取り除いたもの(Chatterjee 2018 の式 (5.2)。6-10 §04)、 は一辺 の箱 の測度、 はその隙間です。K1 と K2 で極限を列全体で求めるのは、この本の整理です。
既知表 1 十二の課題
| 課題 | 言明 | 最も近い結果 | 分かれば動くもの |
|---|---|---|---|
| K1 の構成 | ゲージ不変な量の期待値が で列全体として収束(列全体はこの本の整理) | 仮定つきの紫外安定性と部分列(Bałaban)、概略(MRS) | 段 3・ の半分 |
| K2 | の極限が列全体で在る(同じくこの本の整理) | 'Nor do present methods suggest how to obtain the existence of the infinite volume limit'(JW §6)。一様なギャップ(K3)が道を開くだろう、と §6.5 が書く段階。格子では強結合で示されている | 段 4・ の残り |
| K3 一様なギャップ | 'New ideas are needed'(JW §6.5) | 段 6・道筋で K2 | |
| K4 残りの公理 | 回転の対称性の回復と、再構成に要る正則性 | 反射正値性は格子から残る。回転は二次元で Driver の系 6.7 | 段 5・切れ目 5 |
| K5 非自明性 | 極限がガウスでない | 格子で切った四次元の (Ising 型を含む)のスケーリング極限はガウス(Aizenman–Duminil-Copin 2021。非自明性とは逆向きの結果) | の半分 |
| K6 局所場と短距離 | などの局所場。短距離で漸近自由と一致 | 摂動論の水準。自然な一対一対応は無い(JW 脚注 1) | の残り |
| K7 Problem 5.1 | (全 )、 | 強結合では指数減衰( の上界)が示されている。有限群では弱結合でも指数減衰(Adhikari–Cao。Problem 5.1 の対象外で、 も無い) | 格子の升目だけ |
| K8 Problem 5.2 | Wilson ループの連続極限で弦張力 | 未。周の項が要るかも開いている | |
| K9 強い減衰 | 任意の境界条件で一様な指数減衰(全 ) | 小さい では Dobrushin–Shlosman の方法で示せる、と Chatterjee 2021 が注する。大きい で強い版が期待されるかは明らかでない(同) | K10 |
| K10 Problem 4.1 | 全 で面積則 | 小さい はどの群でも(Osterwalder–Seiler 1978)。三次元 は全 (Göpfert–Mack 1982) | 格子の閉じ込めだけ |
| K11 尺度は一つ | で (定数 は によらない。 は格子単位の質量と弦張力で、 も も仮定しない) | 定理なし。この端末の記録は 7-12 式 (3) の形で仮定として置いた段階(仮定 H は別の式 (6)、7-12 §05) | 期待の水準で と を結ぶ |
| K12 三次元の測度 | の上の測度の構成 | 'remains open'(Chevyrev 2022) | 3D の段 3 だけ |
詳細は K1 が 6-07、K5 が 6-08、K7・K10 が 9-01 §07、K12 が 6-06。例:盤面(9-01 表 3)の四次元の升目を動かすのは K1〜K4 と K7、三次元の行は K12 です。K8〜K11 は升目を持たない、切れ目の側の課題です。
定理でつながる矢印
証明のある矢印は多くありません。三つを順に見ます。
反射正値性が極限に残る(R2)
一つ目は反射正値性です。Wilson の格子で成り立ち(Osterwalder–Seiler 1978)、不等式なので、測度の列 が弱く収束すれば極限にも残ります既知(4-10)。弱く収束するとは、有界で連続な量の期待値がすべて収束することです(0-03 §08)。
は時間の反射、 は正の時刻の側だけで決まる、有界で連続な量です。K4 と合わせれば、Osterwalder–Schrader の再構成でヒルベルト空間と が立ちます(規則 R2。JW も 'Establishing a quantum mechanical Hilbert space is part of the solution to this Millennium problem' と書く)。
一様な隙間が極限に残る(R3)
二つ目は、一様な隙間が極限に残ることです(規則 R3)。 を時間の向きに ずらす操作とし、 が作るベクトルから真空の成分を引いたもののスペクトル測度を と書きます。 は 4-11 §02 の と同じものです。この章では を測度の列に使うので、記号を替えます。
左辺がすべての有界な で の定数倍以下になることと、真空に直交する向きで であることは同じです既知(4-11 §02)。積分に の点も入っているので、真空が一つであることも一緒に出ます。
箱ごとの評価(6-10 式 (7))で、減る速さ が によらなければ、評価は極限に残って隙間になります(標準の議論)。(7) の前の因子 は、 なら 1 以下です。この議論には三つの前提が要ります。(i) 使う の期待値が の列に沿って収束すること( の一部)。(ii) その のベクトルが、再構成したヒルベルト空間で稠密であること。(iii) は時間の向きにも周期的なので箱の相関に加わる の項が、 で消えること( なら消えます)。R3 が出すのは だけで、 は理論が真空だけではないこと(6-10 §06)から別に出ます。
例:一つの の減り方が教えるのは の台の下端だけです。Problem 5.1(K7)の はプラケットの相関の減り方です。Chatterjee は をすべての向きで取る極限で を定義しますが、転送行列(5-03)のスペクトルに結びつくのは時間の向きの減り方です。時間の向きの減り方で読むと、分かるのはプラケットが作る部分空間での の下端です(この章の読み)。
中心対称性から面積則へ(R6)
三つ目は §01 の Chatterjee(2021)の定理 2.4 です(規則 R6)。その序論は、次元が一つ低い非線形 σ 模型の指数減衰からゲージ理論の閉じ込めを導く Durhuus–Fröhlich(1980)と、 の理論から の理論へ閉じ込めを運ぶ Fröhlich(1979)も挙げます既知(書誌のみ)。Fröhlich の論文の題名では行き先は の格子 Higgs 理論で、Chatterjee 2021 の序論は「 の理論」と紹介しています。
道筋の矢印 — 出題者と総説が書く順
JW は課題の順序に見込みを書いています。 の構成(K1)は既知の方法を延ばせば届く兆候が十分にあるとし、'One presumably needs to revisit known results at a deep level, simplify the methods, and extend them' と書きます。一様なギャップ(K3)には 'New ideas are needed' と書き、それが無限体積極限(K2)を可能にするだろうと続けます。§5 も、一様なギャップが無限体積極限の証明で 'may play a fundamental role' と書きます既知。これが規則 R8 です。
正確には、(6) の右は極限の存在ではなく、極限を取るための一様な評価の材料で、組み立て方は書かれていません('presumably')。
例:R8 が結ぶ二つ(一様な減衰と無限体積極限)は、小さい径数のある模型ではクラスター展開から同時に得られました。弱結合の ・ がその例です既知(6-04 §08)。一様な隙間から無限体積極限を導く順に通ったのではありません。四次元のヤン–ミルズの長い距離にはその径数がありません(6-11 障害 1)。格子の側では Chatterjee(2018)が Problem 5.2(K8)を、Wilson ループによる道筋の 'the most basic question that needs to be solved before making any further progress' と位置づけます既知。これは「先に要る」という必要の向きの文で、K8 から要件への十分の矢印ではありません。
仮に分かったとする — 課題の地図
表 2 の規則を一枚の図にします。課題の箱を押すとその課題が「仮に分かった」ことになり、前提がそろった規則から結論が点きます。点く範囲は、前提がすべて入れば結論も入る集合のうち最小のもの(閉包)です。
計算この図の点き方は、表 2 の規則の閉包 (7) をその場で計算したもの(矢印の選び方はこの本の整理)。
既知表 2 規則(前提がすべてそろえば結論)。R1〜R7 は定理か定義、R8 は道筋、R9・R10 は物理の期待物理。規則の選び方はこの本の整理。 は §01 の、連続の弦張力 が 0 でないこと(問題文の外)
| 規則 | 前提 ⇒ 結論 | 強さ | 根拠 |
|---|---|---|---|
| R1 | K1 ∧ K2 ⇒ | 定義 | JW §6.5 |
| R2 | ∧ K4 ⇒ | 定理 | 式 (4) と OS の再構成 |
| R3 | ∧ K3 ⇒ | 定理 | 式 (5) と 6-10 式 (7)(標準の議論。前提は §03) |
| R4 | K5 ∧ K6 ⇒ | 定義 | JW §4 |
| R5 | ∧ ∧ ⇒ | 定義 | 式 (2) |
| R6 | K9 ⇒ K10 | 定理 | Chatterjee 2021 定理 2.4 |
| R7 | K8 ⇒ | 定義 | Chatterjee 2018 §5( は Problem 5.2 の そのもの) |
| R8 | K3 ⇒ K2 | 道筋 | JW §5・§6.5 |
| R9 | ∧ ∧ K11 ⇒ | 期待 | 尺度は一つ(7-12) |
| R10 | ∧ ∧ K11 ⇒ | 期待 | 同じ一文の逆向き |
例:「格子の課題」のボタンで K7〜K10 と K12 を仮に分かったことにしても、点くのは だけで、要件は一つも点きません。9-05 §08 の「格子で示せば足りる」を矢印の言葉で言い直したものです。
地図を数える — どの道にも要る課題
に届く課題の組のうち、一つでも抜くと届かなくなるものを極小の組と呼びます。部分集合 4096 個を三つの水準で調べ、極小の組をすべて数えました計算。
定理だけなら {K1,…,K6} の一組、道筋を足すと {K1,K3,K4,K5,K6} の一組、物理の期待まで足すと {K1,K2,K4,K5,K6,K8,K11} が加わって二組です。中心が自明な群でも同じでした。
計算表 3 課題ごとに、 への極小の組のすべてに入るか(必須)、どれかに入るか、どれにも入らないか
| 課題 | 定理だけ | +道筋 | +物理の期待 | 単独で動くもの(物理の期待まで・中心が自明でない群) |
|---|---|---|---|---|
| K1・K4・K5・K6 | 必須 | 必須 | 必須 | なし |
| K2 | 必須 | — | 入る | なし |
| K3 一様なギャップ | 必須 | 必須 | 入る | K2(道筋) |
| K8 Problem 5.2 | — | — | 入る | |
| K11 尺度は一つ | — | — | 入る | なし |
| K7・K9・K10・K12 | — | — | — | K9 だけ K10(中心が自明でない群) |
例:(a) K1・K4・K5・K6 はどの道にも要ります。(b) 物理の期待の水準では、一様なギャップ K3 の代わりに「連続の弦張力 K8 と尺度は一つ K11」で質量ギャップに届きます。質量と弦張力を一つの尺度の二つの顔と見る物理の一文(7-12 の式 (3))が K3 の役を肩代わりする形です。(c) K7・K9・K10・K12 はどの極小の組にも入りません。一次資料で確かめた矢印だけの数えなので、格子から連続の要件へ延びる矢印が定理になれば数え直しです。
すべての群で — 群を替えると消える矢印
問題文はすべてのコンパクト単純群 で を求めます(式 (2))。リー環の候補は四つの系列と五つの例外で、同じリー環に中心で割った形の群も並びます既知(1-04 表 6)。一つの群の結果を別の群へ運ぶ一般の定理は、この章が読んだ範囲に見当たりません。群によって消える矢印もあります。規則 R6 は、有限次元の既約ユニタリ表現 が中心に自明でなく作用すること、つまり となる中心の元 があることを使います。中心の元はすべての と可換なので、既約な では Schur の補題(1-04 §06)によりスカラーとして働きます。
例: の基本表現では で です(1-04 §07)。中心が自明な群では (9) を満たす表現がありません。単連結な ・・ のほか、中心で割った形の や もそうで、中心で割った群はどれも中心が自明です既知。理由を一行で書きます。連結なリー群では、中心は随伴表現の核です(1-04 §06)。 は随伴表現の像 と同じ群で、その随伴表現は の上の そのものです(単純なリー環では が単射)。核は の元、つまり単位元だけです。図 1 の「中心が自明な群」はこの場合で、K9 から K10 への矢印が消えます。Chatterjee は、中心が自明な群(例に )では弱結合で閉じ込めないかもしれないと信じられている、と注します物理。問題文はそうした群にも隙間を求めるので、閉じ込めを経る道はすべての群には使えません。一方、一ループの係数 はどの群でも正で(4-06 §02)、摂動論の漸近自由は群によりません既知(0-03)。
問題文の外の課題
JW §5 は 'natural extensions' を挙げます。孤立した一粒子状態(ギャップに加えて上の隙間)、閉じ込め、漸近自由を保つ場を足した他の四次元ゲージ理論とその力学、 から一般の四次元多様体への拡張です既知。どれも要件ではなく、図 1 では だけを外側に置きました。孤立した一粒子状態は、質量の作用素 ( は運動量)のスペクトルで書けます(9-02 切れ目 6)。
例:質量 の自由場では、Fock 空間(2-06)の一粒子状態が 、二粒子以上が を埋め、スペクトルは 、上の隙間は です既知。JW §5 は、ギャップから出るクラスター性(6-10 §08)が の結果を一般の四次元多様体へ運ぶかもしれない('may make it possible')とも書きます。
本の座標系 — 辞書・切れ目・課題・壁を一つの枡に
辞書の二列の格(8-01 §05)を共通の座標にし、九つの枡に四つの一覧を打ちます。(a) は「両方が在るとしたら同じか」、(b) は「四次元で在るか」です。辞書の行の格は 8-01 のままで、切れ目・課題・壁の格はこの本の整理です。根拠は次のとおりです。
切れ目:9-02 表 1 の一文の対に当たる辞書の行の格を引き継ぐ(1→1・2→13・3→9・4→8・5→2・6→5・7→14)。課題:(a) は表 2 で課題から出る規則の強さ(定理か定義=確定、群の条件つき=条件つき、期待=未確定。規則の無い K7・K10・K12 は未格付け)、(b) は表 1 の「最も近い結果」(範囲を限った版があれば条件つき)。壁:10-08 表 1 の列が名指す辞書の行の格(H↑・H↓・η・鎖→13、(S4)→8、極限→7。一段と Σδ は辞書に行が無く未格付け)。
例。仮定 H に掛かる十三の壁は、辞書の 13(・「尺度は一つ」)・切れ目 2・課題 K11 と同じ「未確定・無い」の枡に集まります。壁の型(10-08 §01)は原理・構造・道具・仮定・測定と分かれても、辞書の上では同じ一つの対に掛かっています。「確定・条件つき」に入るのは課題だけで、範囲を限った版が在り、要件への矢印が定理か定義のもの(K1・K2・K4)です。
計算格の割り当ては、8-01 表 2・9-02 表 1・この章の表 1 と表 2・10-08 表 1 から上の規則でこの端末で作り、数(14・7・12・21)を照合しました。
表 4 九つの枡と未格付けに入る行(番号は各表の行。図では辞書に #、切れ目に「切」を付ける)。
| (a)・(b) | 辞書(8-01 表 2) | 切れ目(9-02 表 1) | 課題(表 1) | 壁(10-08 表 1) |
|---|---|---|---|---|
| 確定・構成済み | 3・10 | |||
| 確定・条件つき | K1・K2・K4 | |||
| 確定・無い | 1・2 | 1・5 | K3・K5・K6・K8 | |
| 条件つき・構成済み | 12 | |||
| 条件つき・条件つき | 11 | K9 | ||
| 条件つき・無い | 4・5・6・7・8 | 4・6 | A2・B7・E4 | |
| 未確定・構成済み | ||||
| 未確定・条件つき | 9 | 3 | ||
| 未確定・無い | 13・14 | 2・7 | K11 | A1・B1・B2・B3・B5・C1・C2・C3・D1・D3・D4・E1・E3 |
| 未格付け | K7・K10・K12 | B4・B6・C4・D2・E2 |
この章が言えている範囲
| 言えている | 言えていない | |
|---|---|---|
| 既知 | 課題の言明と現状(一次資料の範囲)。R2・R3・R6 の含意(R3 は標準の議論で、§03 の前提 (i)〜(iii) つき)と JW の道筋の文 | 十二で尽きること。矢印の選び方と、極限を列全体で求めること(この本の整理)。確かめていない矢印は数えていない |
| 計算 | 表 2 の規則の下での極小の組と表 3 | 別の規則の下での数え。R3 を四次元のヤン–ミルズの観測量で細部まで書くこと |
| 物理 | R9・R10 を認めれば K8 と K11 が K3 の役を肩代わりすること | R9・R10 が定理であること |
| 整理 | 図 2・表 4 の打点は §09 の規則の下で各表から機械的に出る | 規則の選び方そのもの(切れ目・課題・壁の格は定理ではない) |
| 全体 | — | どの課題もこのサイトは片づけていない。質量ギャップの存在と連続極限の構成は示していない |
出典と再現
| もの | 種別 | 出典・道具 |
|---|---|---|
| 問題文の引用(§4・§5・§6・§6.5・脚注 1・2)、K2・K3・K6 の現状 | 本文 | A. Jaffe, E. Witten, Quantum Yang–Mills Theory, Clay Math. Inst. (2000) |
| 公理の文献 [45](式 (2) の ) | 書誌のみ | R. Streater, A. Wightman, PCT, Spin and Statistics and All That, W. A. Benjamin (1964)(書誌は JW の文献表による) |
| Problem 4.1・5.1・5.2(K7・K8・K10)と §4・§5・§6 の文、 の定義 | 本文 | S. Chatterjee, Yang–Mills for probabilists, arXiv:1803.01950 (2018) |
| 定理 2.2・2.4、定義 2.3 とその注(K9)、 の注、序論の紹介 | 本文 | S. Chatterjee, A probabilistic mechanism for quark confinement, arXiv:2006.16229, Comm. Math. Phys. 385 (2021) 1007–1039 |
| の注の出典/K9 の小さい | 書誌のみ | J. Greensite, B. Lautrup, Phys. Rev. Lett. 47 (1981) 9–11/R. L. Dobrushin, S. B. Shlosman, Constructive criterion for the uniqueness of Gibbs field, in Statistical Physics and Dynamical Systems, Birkhäuser (1985) 347–370(どちらも書誌は Chatterjee 2021 の文献表による) |
| σ 模型から閉じ込め/ から Higgs | 書誌のみ | B. Durhuus, J. Fröhlich, CMP 75 (1980) 103–151/J. Fröhlich, Phys. Lett. B 83 (1979) 195–198(題名と Chatterjee 2021 の紹介) |
| 反射正値性・再構成、K10 の小さい | 要旨・書誌のみ | K. Osterwalder, E. Seiler, Ann. Phys. 110 (1978) 440–471(要旨:強結合での無限体積の極限の存在と解析性・Wilson の閉じ込めの評価)/K. Osterwalder, R. Schrader, CMP 31 (1973) 83–112; 42 (1975) 281–305 |
| K1 の現状 | 要旨と序文/本文 pp.325–328(6-07) | T. Bałaban, Comm. Math. Phys. 122 (1989) 355–392/J. Magnen, V. Rivasseau, R. Sénéor, Comm. Math. Phys. 155 (1993) 325–383 |
| K2・K7 の強結合、K7 の有限群 | 本文 §1(9-01) | H. Shen, R. Zhu, X. Zhu, arXiv:2204.12737, Comm. Math. Phys. 400 (2023) 805–851/A. Adhikari, S. Cao, arXiv:2202.10375, Ann. Probab. 53 (2025) 140–174 |
| K4 の Driver の系 6.7 | 本文の序論 | B. K. Driver, CMP 123 (1989) 575–616 |
| K5 の現状 | 本文(6-08) | M. Aizenman, H. Duminil-Copin, Marginal triviality of the scaling limits of critical 4D Ising and models, Ann. of Math. 194 (2021) 163, arXiv:1912.07973 |
| K10 の三次元 | 要旨 | M. Göpfert, G. Mack, Proof of confinement of static quarks in 3-dimensional U(1) lattice gauge theory for all values of the coupling constant, CMP 82 (1982) 545–606(要旨(INSPIRE):Villain 作用・全結合で弦張力が正・ を固定した連続極限は自由スカラー場。本文は未読。年は Crossref の発行年で、INSPIRE は 1981) |
| K11 の言明と現状 | この端末の記録 | 7-12 の式 (3)・(6) と出典表 |
| K12 の現状 | 本文 §1.1(6-06) | I. Chevyrev, Stochastic quantisation of Yang–Mills, J. Math. Phys. 63 (2022) 091101, arXiv:2202.13359 |
| 本文で引いた本書の章 | 既知 | 0-03 §08(脚注 2・弱収束)、1-04 §06・§07(Schur の補題・中心)、4-06 §02()、4-10・4-11 §02(再構成と )、6-04 §08(クラスター展開)、6-10 §04・§06・§07(ren・・式 (7)) |
| 式 (5)・(10) | 既知 | スペクトル定理と再構成(4-10・4-11)、Fock 空間(2-06) |
| 表 3・図 1 | 計算 | この端末の Python:graph.py(部分集合 4096 個 × 三水準 × 中心の有無で閉包と極小の組)。図は同じ規則 |
| 表 4・図 2 | 計算 | Python(coord.py。8-01 表 2・9-02 表 1・表 1・表 2・10-08 表 1 を読んで割り当て、行の数を照合) |
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