この本の全体 目次と読む順
- 第 0 部 入口 — この本の読み方
- 0-01 この本の読み方
- 0-02 一枚の絵
- 0-03 問題文を一語ずつ読む
- 0-04 数学の四次元と物理の四次元
- 第 1 部 数学の準備
- 1-01 ベクトル空間と線形写像
- 1-02 群とは何か
- 1-03 リー群とリー環
- 1-04 SU(2) と SU(3)
- 1-05 多様体と接空間
- 1-06 微分形式と外微分
- 1-07 ベクトル束と接続
- 1-08 確率と測度
- 1-09 無限次元の確率
- 1-10 ヒルベルト空間と自己共役作用素
- 1-11 フーリエ解析と分布
- 1-12 寄り道:四次元でだけ起きること
- 第 2 部 物理の準備
- 2-01 ラグランジアンと作用
- 2-02 場という考え
- 2-03 電磁気学はゲージ理論である
- 2-04 特殊相対論と時空
- 2-05 量子力学の骨
- 2-06 調和振動子と生成消滅
- 2-07 経路積分の考え方
- 2-08 統計力学と相転移
- 2-09 寄り道:イジング模型で見るギャップと相関長
- 2-10 緩和の時間と動的指数 z
- 第 3 部 ヤン–ミルズ理論(古典)
- 3-01 ゲージ原理
- 3-02 非可換ゲージ場
- 3-03 作用と方程式
- 3-04 幾何としてのゲージ理論
- 3-05 インスタントンと位相
- 3-06 寄り道:Donaldson とエキゾチック R⁴
- 3-07 標準模型の中のヤン–ミルズ
- 第 4 部 量子化
- 4-01 正準量子化とハミルトニアン
- 4-02 経路積分とユークリッド化
- 4-03 摂動論と Feynman ダイアグラム
- 4-04 発散と繰り込み
- 4-05 発散の代数
- 4-06 漸近自由
- 4-07 次元転移と Λ
- 4-08 ゲージ固定と Faddeev–Popov
- 4-09 場の量子論の公理
- 4-10 Osterwalder–Schrader の公理と再構成
- 4-11 質量ギャップの定義
- 4-12 寄り道:摂動級数は発散する
- 第 5 部 格子ゲージ理論
- 5-01 Wilson の格子
- 5-02 強結合展開
- 5-03 反射正値性と転送行列
- 5-04 無限体積極限とクラスター展開
- 5-05 弱結合と連続極限
- 5-06 U(1) と非可換の違い
- 5-07 モンテカルロ法
- 5-08 グルーボールと弦張力の測定
- 5-09 何を固定して極限を取るか
- 5-10 有限群の格子ゲージ理論
- 5-11 寄り道:Bakry–Émery と一リンク積分
- 第 6 部 構成的場の理論
- 6-01 構成的場の理論とは
- 6-02 二次元の可解性とヤン–ミルズ測度
- 6-03 スカラー場の構成
- 6-04 クラスター展開
- 6-05 繰り込み群の段の列
- 6-06 三次元ヤン–ミルズの紫外安定性
- 6-07 四次元
- 6-08 四次元の φ⁴ の自明性
- 6-09 確率量子化と正則性構造
- 6-10 四次元で止まる場所
- 6-11 発散以外の障害
- 6-12 寄り道:「1/0 に記号を与えれば」
- 第 7 部 物理の側から
- 7-01 物理はどう見ているか
- 7-02 閉じ込めの機構
- 7-03 弦の絵
- 7-04 大 N
- 7-05 ひも理論と余剰次元
- 7-06 余剰次元が見えなくなる仕組み
- 7-07 ゲージ場はどこから来るか
- 7-08 ホログラフィー
- 7-09 質量ギャップが幾何になる
- 7-10 四次元に戻す
- 7-11 超対称と Seiberg–Witten
- 7-12 等価原理に当たる一文
- 7-13 物理の掘り方が数学と離れる場所
- 第 8 部 二つの言葉の辞書 — 物理の視点と数学の視点
- 8-01 辞書の読み方
- 8-02 辞書 A
- 8-03 辞書 B
- 8-04 辞書 C
- 8-05 私たちの仮定の物理側の対応
- 第 9 部 現在地と課題
- 9-01 世界はどこまで来ているか
- 9-02 二つの掘り方の切れ目
- 9-03 新しい概念の候補
- 9-04 課題の一覧
- 9-05 よくある誤解
- 第 10 部 質量ギャップの証明へ向けて — 階段の一段目を組む
- 10-00 入口 — 階段と、酔歩・物差し・時計
- 10-01 構成の筋と仮定 H
- 10-02 四次元格子で試した道と壁
- 10-03 階段の四段 — なぜ 0+1 次元から始めるか
- 10-04 二重井戸の経路の測度とキンク
- 10-05 一段目の言明 — 四条件と命題 4.5
- 10-06 (H1) 相の中の局所 Poincaré
- 10-07 (H2) の地図 — 七つの道筋と環の継ぎ目
- 10-08 計算機援用とは何か — 窓の中の鎖の条件
- 10-09 区画の枠組みと道筋 5 の三本の筋
- 10-10 迂回策の一覧 — 壊れ方の型
- 10-11 (H3)(H4) と芯の定数
- 10-12 統合表と依存グラフ
- 10-13 Lean の言明と機械検査の限界
- 10-14 突き合わせ — 記録の数と既知の数
- 10-15 残件と費用 — 定理までの距離
- 10-16 主張しないこと
- 10-17 ひらめきと小さな問い
- 第 11 部 今後の考察 — 仮定 H の先と、別の見方
- 11-00 今後の考察 — 入口
- 11-01 H を妨げる一つの形 — ほぼ保存される大域の量
- 11-02 物差しと座標を選び直す — 保存が壊れる長さ
- 11-03 区画の H と局所の H
- 11-04 片側の橋はどの H を要るか
- 11-05 時間を連続にする — Hamiltonian 格子と真空の測度
- 11-06 凸性の代わりに稀さで払う — 群の上の繰り込みと対数 Sobolev
- 11-07 四次元だからこそ — 無次元の結合と位相
- 11-08 問いと、主張しないこと
- 11-A1 第 11 部の記号の対応表
- 付録
- A-01 記号表
- A-02 用語集
- A-03 文献案内
- A-04 Lean と機械検査
- A-05 この本の作り方
- A-06 仮定の索引
計算機援用とは何か — 窓の中の鎖の条件
この章で分かること — この部で「計算機援用」の札(機)が付いた結果が、何を保証し何を保証しないかを読めるようにします。例は、芯の外へ伸びる鎖の縮みの条件 です。浮動小数の値をそのまま書くのではなく、全ての数を真の値を含む区間で持ち、 そのものも区間にして、計算した の窓 の全ての点で不等式が成り立つことを確かめる仕組みと、その前提(丸めの規約)を述べます。最後に、計算機援用が「否」を返す例と、窓の外については何も言わないことを確かめます。
前提となる章 — 10-07 §02(道筋 1 と道筋 6)・10-00 §01(五分類の札)・10-04 §01(経路の測度)。
先に言うこと — 水準は〔二〕〜〔三〕です。§01〜§03 は〔二〕で読めるように書き、§04 以降は〔三〕寄りです。この章で扱う不等式は、仮定 H を軸に置いた一段目の組み立ての中の一つの入力で、それ自身は条件 (H2) を閉じません(10-07 §06)。
- 浮動小数の値と、区間で書いた不等式 — 手で確かめられる小さな例
- 鎖の条件 が保証すること — Stein の核の比と、影響の幾何級数
- 区間演算の前提 — 丸めの規約と自前の指数関数
- を区間にする — 素朴には壊れる理由と三つの補題
- 例 1:橋の芯の外の鎖 — 25 の部分区間(表 1)
- 例 2:環の外の鎖 — 条件づけた鎖から条件づけない鎖へ
- 照合・対照・事前登録 — 別の実装との再現と、陽性・陰性の対照
- Lean が確かめたこと — 区間演算の出力の表を仮定に置いた組み立て
- 計算機援用が「否」を返す例 — 内の鎖と、一次の傾けの部分区間
- 計算機援用が言わないこと・費用 — 札の読み方(囲み)
浮動小数の値と、区間で書いた不等式
計算機の実数は浮動小数で、ほとんどの演算の結果は真の値を一番近い表せる数に丸めたものです。例えば は倍精度で になります。丸めは毎回小さいので、多くの計算では気にしなくてよいのですが、「 である」という不等式を、 のように 1 に近い値について主張するときには、丸めが積もって不等号の向きを変えないことを示す必要があります。
区間演算は、全ての数を「真の値を必ず含む区間」で持つ計算です。足し算は 、掛け算は四つの端の積の最小と最大、のように区間から区間を作り、端を計算するときの丸めは外向き(下の端は下へ、上の端は上へ)に取ります。こうすると、最後に出た区間 は真の を必ず含み、 なら が不等式として従います。この部では、こうして得た不等式に 機(計算機援用)の札を付けます。浮動小数の値をそのまま書いたものは 読 です。
手で確かめられる例。 の での値の範囲は真には です。区間演算で素朴に評価すると、・ から になります。真の値を含みますが、幅が 8 倍に広がりました。原因は、 と が同じ から来るという依存を区間が忘れることです。直し方は二つあります。
- 細かく割る。 と に割ると、 と 、合わせて で幅は 1.25 に縮みます。
- 中心で展開する。、、 とすると で幅は 1 です。依存の一次の部分を、区間の外に出した形です。
§04 で を区間にするときに出会うのは、この二つの直し方の大がかりな版です。 の窓を 25 の部分区間に割り(細かく割る)、各部分区間の中では期待値を について展開して一次と二次の動きを区間の外に出します(中心で展開する)。
鎖の条件 が保証すること
芯の中のあるサイトから見て、片側へ伸びる鎖 を考えます。作用の隣どうしの項は で、測度は です。 を止め、さらに遠い側を積分して畳むと、 の条件つきの法則は
の形になります( は遠い側を畳んだ有効な位置エネルギーで に依らない)。 の平均を 、 の核を
と置きます。部分積分で です(境界の項は で消える)。一方 (1) の についての対数微分は なので
です 初(積分記号の下の微分と部分積分。箱は有界で密度は滑らか)。(3) は「一段さかのぼるごとに、関数の傾き(Lipschitz 定数)が 倍以下になる」と読めます。 段さかのぼれば 倍以下です。 なら、遠いサイトの揺らぎが手前のサイトに及ぼす影響は幾何級数で減ります。これが「鎖の条件」の中身で、 を Stein の核の比と呼びます。
確かめの例。 が分散 の正規分布なら、(2) を計算すると で、 です。調和の鎖( が二次式)では、この比が段ごとに一定の値へ収束することを手で確かめられます。
何に使うか。サイトの窓の対数 Sobolev 定数の組み立て(10-07 §04 の積の形)では、窓の外の全ての段の影響を足した量 が因子として入ります。窓の中の段の寄与と、窓の外の段の寄与 を左右の二つの側で足して
です(窓の中の段の比を 1 と置いた形。組み立ての紙は本に置かないので、(4) を使う段は 仮 の行の上にあります)。 なら は有限で、 なら 、 です 初(算術)。
なぜ は 1 に近いのか。芯の外の鎖の箱の右の壁は頂上 で、そこで です。この壁の角では古典の比がちょうど 1 になり(10-07 §03 の壁の角)、1 からの離れは壁の近くの薄い層の幅 で決まり、 の大きさです 読(古典の写像の展開と転送行列の値の照合)。 が小さいほど は 1 に近づきます。固定した の窓の中で を確かめても、 での振る舞いは別の問いであることが、ここからも分かります。
区間演算の前提
この部の計算機援用は、Python の倍精度の浮動小数(float64)で組んだ区間演算です。前提を一か所にまとめます。
- 丸めの規約。四則の各演算は、IEEE 754 の規格どおり真の値に最も近い浮動小数を返す(正しい丸め)と仮定します。各演算の結果を、隣の浮動小数へ一つずつ外へ動かして(下の端は一つ下へ、上の端は一つ上へ)区間にします。正しい丸めの誤差は半目盛り以下なので、一目盛り外へ動かせば真の値を含みます。演算ごとに丸めの向きを切り替える方式ではありません。融合積和(FMA)は使いません。
- 和の誤差。長い和は、和の誤差の既知の上界で外向きに広げます。
- 指数関数。標準の数学関数の誤差は保証されていないので、指数関数は自前の実装を使い、その誤差の上界を区間に足します。上界の定数の算術は Lean で確かめています。
- 積分。格子のセルごとに被積分関数の上下の包み(凹性の補正つき)を作り、積分を外向きに挟みます。積分の打ち切り(重みが最大の 未満のセル)は、打ち切った質量の上界として区間に入れます。
この前提の行は、この部では 仮 です(10-07 §05 の行 IA)。計算機と処理系が IEEE 754 の正しい丸めを守っていることは、前提として置いており、確かめた事柄ではありません。計算機援用の結果を引くときは、この前提を同じ行に書きます。
を区間にする — 素朴には壊れる理由と三つの補題
点の (例えば )で を出すだけなら、§03 の区間演算で足ります。窓 の全ての について言うには、 そのものを区間に入れる必要があります。三点で値が下がる傾向が見えても、上界が について単調であることは紙では導けないからです(上界の式の中に、 の逆の端で最大になる二つの項がある)。
記号を決めます。、部分区間 に対して 、中点 、半幅 、 です。 は を通してしか入りません。
素朴な区間は壊れる。 の区間をそのまま密度の指数 に掛けると、格子の各セルの重みが互いに独立に 倍ずつ動いてよいことになり、指数の幅は の桁になります。§01 の と同じ依存の喪失です。実際、二重井戸の鎖では二段目で平均の区間が箱の全体(幅 )に広がり、段の写像が意味を失いました。
補題 TAU(期待値を の一次分数にする)。( は定数)、 と置くと、 で
です(・・・、 は剰余の積分)。剰余の値を止めると、 は一次分数で、分母が で正なら の上で単調です。したがって全ての で、期待値は両端 の二つの値の間にあり、その二つを区間で評価すれば囲えます 初 Leanmobius_between(仮定:分母が で正・)。一次の項 は真の による変化を表し、区間の幅には求積の誤差の 倍と剰余( の桁)しか残りません。
補題 SH・SH2(囲いを について傾けて持つ)。段の写像の不動点(鎖の段ごとの条件つきの平均 )は、 とともに真に動きます。部分区間の幅が のとき、その動きだけで あり、それを囲いの幅に入れると下流の評価を壊します。そこで囲いを「 が区間に入る」の形で持ちます(・ は浮動小数の列)。出力の側は恒等式
で一次の動きを取り出します 初 Leanshear_identity(仮定:・)。二次まで傾けると、残る幅は の桁になります。§01 の「中心で展開する」の形です。
補題 DVτ(中心を とともに動かす)。分散の上界は二つの片側の和 の形で、平均が だけ動くと一方が増え他方が減ります。二つを の端で別々に最大にすると、真には打ち消す動きを足すことになります。中心を と動かし、 で押さえると、この損は から に下がりました 初 Leandvtau_pos(仮定なし)。
不変集合。鎖は無限に長いので、段の写像を有限回回して終わりにはできません。部分区間の写像 は全ての の写像 の結果を含むように作るので、ある囲い で を区間演算で確かめれば、全ての で です 初(包含の推移)。それより先の段は全て の中にあり、 の上界を の上で一度評価すれば足ります。
| 版 | (幅 3%) | (幅 10%) |
|---|---|---|
| 素朴な区間 | 二段目で壊れる | 二段目で壊れる |
| 補題 TAU だけ | 機 | — |
| TAU+一次の傾け+DVτ | 機 | 上界が で 1 を越え、証明書は出ない(§09) |
| TAU+二次の傾け+DVτ | — | 機 |
二次の傾けで幅 10% の部分区間が使えるようになり、窓 は端を (、隣の比 )とする 25 の部分区間で覆えました。格子の幅は 、段の数は上の半分で 20、下の半分で 25 です。
例 1:橋の芯の外の鎖 — 窓の全体で
橋の芯(箱 、)の、サイトの窓の外へ伸びる印なしの鎖の比を と書きます(10-07 §02 の道筋 1)。25 の部分区間の各々で、段の写像の囲いと不変集合を区間演算で作り、全ての鎖の長さ ・箱の全てのピン(鎖の端の値)について の上界 を出しました。結果が表 2 の左の列です。
0+1 次元の二重井戸(・・・印の閾 )の経路の測度で、§03 の前提の下、窓 の全ての について
上の半分 では 。最大は窓の下の端の部分区間。正則性と区画の枠組みの入力は 仮。
表の値(9 桁で切り上げ)は、 を下げると増え、上の端の二つだけ盛り上がります。律速の場所は、鎖の端の値が壁 のすぐ下にあるセルです。§02 の「壁の角がちょうど 1」の場所そのものです。
| # | の部分区間 | 橋 | 環 |
|---|---|---|---|
| 01 | 0.997808483 | 0.993773312 | |
| 02 | 0.998098180 | 0.993531447 | |
| 03 | 0.996740073 | 0.993402112 | |
| 04 | 0.995689889 | 0.993847141 | |
| 05 | 0.994979345 | 0.994267993 | |
| 06 | 0.995310186 | 0.994690320 | |
| 07 | 0.995450880 | 0.995072576 | |
| 08 | 0.995739245 | 0.995442678 | |
| 09 | 0.996022449 | 0.995791525 | |
| 10 | 0.996294103 | 0.996116234 | |
| 11 | 0.996551317 | 0.996416208 | |
| 12 | 0.996695721 | 0.996606914 | |
| 13 | 0.996969923 | 0.996887371 | |
| 14 | 0.997198625 | 0.997139630 | |
| 15 | 0.997410737 | 0.997371392 | |
| 16 | 0.997607042 | 0.997583254 | |
| 17 | 0.997791698 | 0.997780790 | |
| 18 | 0.997966990 | 0.997966387 | |
| 19 | 0.998126215 | 0.998135077 | |
| 20 | 0.998276990 | 0.998293614 | |
| 21 | 0.998414660 | 0.998437926 | |
| 22 | 0.998559421 | 0.998572746 | |
| 23 | 0.998691543 | 0.998697045 | |
| 24 | 0.998741829 | 0.998780022 | |
| 25 | 0.998854904 | 0.998888530 |
例 2:環の外の鎖 — 条件づけた鎖から条件づけない鎖へ
環の継ぎ目の外の鎖(10-07 §03)は、符号の決まった領域を動く鎖で、鏡像で に写すと例 1 と同じ型になります。ただし橋の箱の下の壁 が無いので、例 1 の証明書はそのままは使えません。同じ機械の格子を差し替え、二段で閉じました。
- 箱に条件づけた鎖。部分区間ごとに有限の箱(上の半分で 、下の半分で )に条件づけた鎖で、窓の全体の上界 機。このままでは、箱の外へ出る配位を別に払う仮定の行が四つ要ります。
- 条件づけない鎖。箱を に広げ、 の尾の寄与を、尾の凸性からの接線の上界で区間演算の剰余に入れます。尾の分散の上界は、法則を尾の端の一行に押し込む形で、全ての で (凸性に要る ・相関不等式に要る の内)。ピンが より深い所は閉じた形の上界で覆い、。結果が表 2 の右の列で、最大は です 機(全てのピン ・評価点 、端の値 、(lim)・(ENDrand)・正則性は 仮)。
二つの列を比べると、橋の上界は上の端の二つで盛り上がり、環の上界は三番目の部分区間で最小になってから単調に増えます。下の端では環の方がわずかに 1 に近く(差 )、浮動小数の点の値の順序(環の方が 1 に近い)がそのまま上界にも出ています。条件づけない鎖の各行は、条件づけた鎖の対応する行より 〜 だけ上で、律速の場所と形は同じでした。
境の段は覆っていない。右の列の主張はピン の上の主張です。塊が窓の端に触れる配位では、外の最初の段のピンが に入り、そこでは浮動小数の読みで です 読。有限の段一つなので組み立ての有限性は壊しませんが、表 2 の右の列を引くときは「ピン 」の条件を落とせません。
照合・対照・事前登録
区間演算の台本そのものの正しさは、形式的には検証していません。代わりに、次の検査を通しています。どれも「確かめたつもりのものが、確かめたいものとずれていないか」を見るための検査です。
- 別の実装との照合。例 1 の全ての部分区間で、段の写像を区間演算とは別の浮動小数の再帰で、部分区間の両端と中点の三つの について回し、全ての段・全ての格子点でその値が区間の囲いに入るかを数えました(75 本、外れ 0)。環の条件づけない鎖では各部分区間の一つの で同じ検査(25 本、外れ 0)。
- 点の値との照合。転送行列で求めた浮動小数の点の値(26 個の端)は、全て、その端を含む部分区間の上界の下にありました(差の最小は窓の下の端で )。
- 陽性対照。答えが閉じた式で分かる場合に、機械がそれを再現するか。純ガウスの鎖(段ごとの分散 、平均 、どちらも に依らない)で、 の区間のまま全ての点が囲いの中に入りました。 の区間の幅を 0 にすると、点の の機械と の桁で同じ値を出しました。環の条件づけない機械は、箱に条件づけた版と同じ部分区間で、律速の場所と形を再現し、値は の桁の上向きの差に収まりました(同じ鎖ではないので一致ではなく再現の検査です)。
- 陰性対照。成り立たないはずの主張を機械が拒むか。律速のセルで目標の上界を だけ下げると Lean の検査が閉じない、表の一本を 1 に置き換えると窓の全体の が閉じない、尾の分散を凸性の線より大きく置くと尾の段が止まる、を確かめました。
- 事前登録。計算を走らせる前に、予想する値の範囲・律速の場所・陽性と陰性の対照の合格の線を書いておき、結果の後に当否を記録しました。例 1 では、部分区間の数を 60〜120 と予想して 25 で済み(外れ)、律速が窓の下の端に来ることは当たりました。予想が外れたことは結果を弱めませんが、結果を見てから合格の線を動かしていないことの記録になります。
Lean が確かめたこと — 区間演算の出力の表を仮定に置いた組み立て
計算機援用の結果に付けた Lean の欄は、次の三つの層に分かれます。
- 代数の核。補題 TAU の一次分数の単調性(
mobius_between)、傾けの恒等式(shear_identity)、補題 DVτ の不等式(dvtau_pos)、被覆から窓の全体へ移る代数(cover_le、仮定:各部分区間で )。 - セルの再計算。区間演算が出した入力の値(浮動小数の正確な値)と部分区間の端の有理数から、律速のセルと無作為に選んだセル(例 1 で 46、環の条件づけた版で 23)について、最後の段の上界の式を Lean の中で計算し直し、区間演算の値+ 以下を閉じました。全てのセルの検証ではありません(一つの部分区間に数百万を越えるセルがある中の数十)。
- 表の組み立て。
win_qfree_window_le_of_interval_table(例 1)・unc_window_lt_one_of_table(例 2)・vt_window_of_table(尾の分散)は、仮定として「各部分区間の全ての で 」(区間演算の出力の表。 は抽象の関数)を置き、結論として「窓の全ての で 」を出します。
Lean の外にあるのは、段の写像(補題 TAU・SH2・DVτ の区間の評価)、求積、不変集合、 の上界の式の層、評価点の選び方の全てです。したがって機械検査の欄は「区間演算の出力が正しいなら、窓の全体の結論は代数として正しい」を保証し、「区間演算の出力が正しい」ことは §03 の前提と §07 の検査に依ります。
計算機援用が「否」を返す例
区間演算の上界が 1 を越えたとき、言えるのは「この組み立てでは証明書が出ない」ことだけで、「真の値が 1 を越える」ことではありません。二つの場合を区別します。
(a) 道具の側で出ない例。表 1 の幅 10% の部分区間で、一次の傾けまでの版は上界が になりました。真の値は同じ部分区間で二次の傾けの版により と分かっているので、この「否」は道具の幅(真の の についての曲がりを区間に入れていたこと)から来ています。部分区間を細かくするか、展開の次数を上げれば消える種類の「否」です。
(b) 対象の側で出ない例 — 環の内の鎖。環のサイトの窓の中の段(内の鎖)では、浮動小数の転送で を測ると で 読 で、格子を細かくすると上がる向きでした。律速は塊の箱の遠い壁の際にピンがある段で、壁の力が箱の外へ向かう角(古典の値 )です(10-07 §03)。ここでは区間演算の機械を作っても は出ず、得られるのは の有限の上界だけの見込みです。この「否」は道具を細かくしても消えない種類で、組み立ての側( を要らない形にする、または係数 を払う)で受けるしかありません。
読者が計算機援用の結果を読むときは、上界が 1 を越えた報告を見たら、(a) と (b) のどちらかが書かれているかを確かめてください。
計算機援用が言わないこと・費用
機 の付いた不等式は、次の全てが揃ったときにだけ付けます。(1) 全ての数を外向きの区間で持った計算の出力で、浮動小数の値をそのまま書いたものではない。(2) 前提(IEEE 754 の正しい丸め・和の誤差の上界・自前の指数関数の誤差の上界・正則性)を同じ行に書いた。(3) 主張の範囲( の窓・鎖の長さ・ピンの範囲)を同じ行に書いた。 の窓の外、、範囲の外のピンについては、何も言っていない。
言わないこと。(i) 窓 の外の 。§02 で見たとおり は で 1 に近づくので、窓を下へ延ばすほど部分区間は細かく、格子は細かく要り、有限の計算で の全体を覆うことはできません。冪の H は の言明なので、そこは紙の漸近の仕事です。(ii) 格子 の模型の外(連続の経路の測度との差)。(iii) 正則性(固有関数・条件つきの期待値の滑らかさ)と区画の枠組みの入力。(iv) 例 2 の境の段(ピン )。(v) 条件 (H2) そのもの(10-07 §06)。
| 計算 | 本数 | 時間 | 一本の大きさ |
|---|---|---|---|
| 例 1 橋の芯の外の鎖(窓の全体) | 27 本 | 約 4 時間 10 分 | 6〜16 分・107 MB 以下 |
| 例 2 環の外の鎖・箱に条件づけた形 | 25 本 | 約 3 時間 19 分 | 5〜12 分・114 MB 以下 |
| 例 2 環の外の鎖・条件づけない形 | 25 本 | 約 6 時間 44 分 | 13〜22 分・123 MB 以下 |
| 環の内の鎖の区間化(見積もり) | 約 50 本 | 約 42 時間 | 約 50 分 |
| 道筋 2 の残る数値(見積もり・走らせない判断) | 約 42 本 | 約 21 時間 | 30 分以内 |
この部は仮定 H を軸に置いた検討で、計算機援用はその中で、窓の中の個々の不等式を浮動小数の読みから不等式へ上げる道具として使っています。別の視点は第 11 部で扱います。
この章が言えている範囲
| 言えている | 言えていない |
|---|---|
| 機 窓の全ての で 、環の外の鎖(ピン )で 。§03 の前提の上で | 窓の外・・境の段 |
| 初 鎖の条件 (3) の導出、補題 TAU・SH・DVτ の代数、不変集合の包含 Lean(代数の核と表の組み立て) | 区間演算の台本の形式的な正しさ(照合と対照で確かめた範囲だけ) |
| 読 環の内の鎖 | その区間の上界 |
出典と再現
| もの | 種別 | 出典・道具 |
|---|---|---|
| 区間演算の考え方・依存の喪失と中心形 | — | 標準の方法(区間演算・Taylor の形の囲い)。この章では書誌を引かず、§01 の例と §04 の補題を本文に置いた。 |
| Stein の核と鎖の条件 | 初 | §02 の (2)(3)(部分積分と積分記号の下の微分)。 |
| 区間演算の実装 | 機 | Python の float64、演算ごとに隣の浮動小数へ外向きに一つ、自前の指数関数、格子 、段 20/25、部分区間 25。 |
| 照合 | 読 | 別の浮動小数の再帰(三つの )・転送行列の点の値(26 点)。 |
| Lean | Lean | mobius_between・shear_identity・dvtau_pos・cover_le・win_qfree_window_le_of_interval_table・unc_window_lt_one_of_table・vt_window_of_table(仮定は本文の各行)。言明の一覧は 10-13。 |
この章で使った語 — 計算機援用・区間演算・外向きの丸め・依存の喪失・中心で展開する・Stein の核の比・鎖の条件・部分区間・傾け・不変集合・照合・陽性対照と陰性対照・事前登録・境の段。意味は A-02 用語集 にあります。
次に読む章:10-09 区画の枠組みと道筋 5 の三本の筋 — 区画の和の五つの段と閉じる条件を述べ、要る値の導出、残る一命題を攻めた三本の筋の到達点、頂上の一サイトの曲率の不足という共通の壁を述べる。
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