computo ergo sum

2026-10-09 · chapter ヤン–ミルズと質量ギャップ第 11 部 今後の考察問い・規則の候補・主張しないこと · Kiichi, Shiori and Rin

この本の全体 目次と読む順
  1. 第 0 部 入口 — この本の読み方
  2. 0-01 この本の読み方
  3. 0-02 一枚の絵
  4. 0-03 問題文を一語ずつ読む
  5. 0-04 数学の四次元と物理の四次元
  6. 第 1 部 数学の準備
  7. 1-01 ベクトル空間と線形写像
  8. 1-02 群とは何か
  9. 1-03 リー群とリー環
  10. 1-04 SU(2) と SU(3)
  11. 1-05 多様体と接空間
  12. 1-06 微分形式と外微分
  13. 1-07 ベクトル束と接続
  14. 1-08 確率と測度
  15. 1-09 無限次元の確率
  16. 1-10 ヒルベルト空間と自己共役作用素
  17. 1-11 フーリエ解析と分布
  18. 1-12 寄り道:四次元でだけ起きること
  19. 第 2 部 物理の準備
  20. 2-01 ラグランジアンと作用
  21. 2-02 場という考え
  22. 2-03 電磁気学はゲージ理論である
  23. 2-04 特殊相対論と時空
  24. 2-05 量子力学の骨
  25. 2-06 調和振動子と生成消滅
  26. 2-07 経路積分の考え方
  27. 2-08 統計力学と相転移
  28. 2-09 寄り道:イジング模型で見るギャップと相関長
  29. 2-10 緩和の時間と動的指数 z
  30. 第 3 部 ヤン–ミルズ理論(古典)
  31. 3-01 ゲージ原理
  32. 3-02 非可換ゲージ場
  33. 3-03 作用と方程式
  34. 3-04 幾何としてのゲージ理論
  35. 3-05 インスタントンと位相
  36. 3-06 寄り道:Donaldson とエキゾチック R⁴
  37. 3-07 標準模型の中のヤン–ミルズ
  38. 第 4 部 量子化
  39. 4-01 正準量子化とハミルトニアン
  40. 4-02 経路積分とユークリッド化
  41. 4-03 摂動論と Feynman ダイアグラム
  42. 4-04 発散と繰り込み
  43. 4-05 発散の代数
  44. 4-06 漸近自由
  45. 4-07 次元転移と Λ
  46. 4-08 ゲージ固定と Faddeev–Popov
  47. 4-09 場の量子論の公理
  48. 4-10 Osterwalder–Schrader の公理と再構成
  49. 4-11 質量ギャップの定義
  50. 4-12 寄り道:摂動級数は発散する
  51. 第 5 部 格子ゲージ理論
  52. 5-01 Wilson の格子
  53. 5-02 強結合展開
  54. 5-03 反射正値性と転送行列
  55. 5-04 無限体積極限とクラスター展開
  56. 5-05 弱結合と連続極限
  57. 5-06 U(1) と非可換の違い
  58. 5-07 モンテカルロ法
  59. 5-08 グルーボールと弦張力の測定
  60. 5-09 何を固定して極限を取るか
  61. 5-10 有限群の格子ゲージ理論
  62. 5-11 寄り道:Bakry–Émery と一リンク積分
  63. 第 6 部 構成的場の理論
  64. 6-01 構成的場の理論とは
  65. 6-02 二次元の可解性とヤン–ミルズ測度
  66. 6-03 スカラー場の構成
  67. 6-04 クラスター展開
  68. 6-05 繰り込み群の段の列
  69. 6-06 三次元ヤン–ミルズの紫外安定性
  70. 6-07 四次元
  71. 6-08 四次元の φ⁴ の自明性
  72. 6-09 確率量子化と正則性構造
  73. 6-10 四次元で止まる場所
  74. 6-11 発散以外の障害
  75. 6-12 寄り道:「1/0 に記号を与えれば」
  76. 第 7 部 物理の側から
  77. 7-01 物理はどう見ているか
  78. 7-02 閉じ込めの機構
  79. 7-03 弦の絵
  80. 7-04 大 N
  81. 7-05 ひも理論と余剰次元
  82. 7-06 余剰次元が見えなくなる仕組み
  83. 7-07 ゲージ場はどこから来るか
  84. 7-08 ホログラフィー
  85. 7-09 質量ギャップが幾何になる
  86. 7-10 四次元に戻す
  87. 7-11 超対称と Seiberg–Witten
  88. 7-12 等価原理に当たる一文
  89. 7-13 物理の掘り方が数学と離れる場所
  90. 第 8 部 二つの言葉の辞書 — 物理の視点と数学の視点
  91. 8-01 辞書の読み方
  92. 8-02 辞書 A
  93. 8-03 辞書 B
  94. 8-04 辞書 C
  95. 8-05 私たちの仮定の物理側の対応
  96. 第 9 部 現在地と課題
  97. 9-01 世界はどこまで来ているか
  98. 9-02 二つの掘り方の切れ目
  99. 9-03 新しい概念の候補
  100. 9-04 課題の一覧
  101. 9-05 よくある誤解
  102. 第 10 部 質量ギャップの証明へ向けて — 階段の一段目を組む
  103. 10-00 入口 — 階段と、酔歩・物差し・時計
  104. 10-01 構成の筋と仮定 H
  105. 10-02 四次元格子で試した道と壁
  106. 10-03 階段の四段 — なぜ 0+1 次元から始めるか
  107. 10-04 二重井戸の経路の測度とキンク
  108. 10-05 一段目の言明 — 四条件と命題 4.5
  109. 10-06 (H1) 相の中の局所 Poincaré
  110. 10-07 (H2) の地図 — 七つの道筋と環の継ぎ目
  111. 10-08 計算機援用とは何か — 窓の中の鎖の条件
  112. 10-09 区画の枠組みと道筋 5 の三本の筋
  113. 10-10 迂回策の一覧 — 壊れ方の型
  114. 10-11 (H3)(H4) と芯の定数
  115. 10-12 統合表と依存グラフ
  116. 10-13 Lean の言明と機械検査の限界
  117. 10-14 突き合わせ — 記録の数と既知の数
  118. 10-15 残件と費用 — 定理までの距離
  119. 10-16 主張しないこと
  120. 10-17 ひらめきと小さな問い
  121. 第 11 部 今後の考察 — 仮定 H の先と、別の見方
  122. 11-00 今後の考察 — 入口
  123. 11-01 H を妨げる一つの形 — ほぼ保存される大域の量
  124. 11-02 物差しと座標を選び直す — 保存が壊れる長さ
  125. 11-03 区画の H と局所の H
  126. 11-04 片側の橋はどの H を要るか
  127. 11-05 時間を連続にする — Hamiltonian 格子と真空の測度
  128. 11-06 凸性の代わりに稀さで払う — 群の上の繰り込みと対数 Sobolev
  129. 11-07 四次元だからこそ — 無次元の結合と位相
  130. 11-08 問いと、主張しないこと
  131. 11-A1 第 11 部の記号の対応表
  132. 付録
  133. A-01 記号表
  134. A-02 用語集
  135. A-03 文献案内
  136. A-04 Lean と機械検査
  137. A-05 この本の作り方
  138. A-06 仮定の索引

問いと、主張しないこと

この章で分かること — 第 11 部の各章が残した問いを一つの表にし(済み・一部済み・未・新、と決着したら動くもの・決着しても動かないもの)、「新しい数学を作るなら何を規則に置くか」という問いへの規則の候補を一覧にし、第 11 部が主張しないことを十六行にして、それぞれを本文のどの章のどの文が支えるかを対応させます。

前提となる章 — なし。どこから読んでもよい章です。三つの意味(示さない・強く読まない・偽とも言わない)は 10-16 §01 のとおりに使います。記号は 11-A1。

先に言うこと — 水準は〔二〕〜〔三〕です。この章は新たな結果を足しません。問いの表は問いで、主張はありません。規則の候補は候補で、どれも三段目(連続極限と OS 公理)を閉じる見込みを約束しません。第 10 部の「主張しないこと」(10-16)は、この部にもそのまま効きます。

この章の順序
  1. 問いの表 — 十九の問い・状態・決着しても動かないもの(表 1)
  2. 規則の候補の一覧 — 六つの候補と三つの組み合わせ・根との関係(表 2・表 3)
  3. 主張しないこと — 十六の項目と、それを支える本文の文(表 4)
  4. 第 10 部との関係

01

問いの表 — 卒業研究の大きさで決着のつく問い

表 1 は、第 11 部の各章が残した問いです。「大きさ」は決着に要る作業の種類(紙・読む・計算・Lean)で、時間の見積もりではありません。各行に「決着しても動かないもの」を必ず書きました。問いが決着しても、質量ギャップの問題は動きません。状態の「済み」は、この部の本文がその問いに答えた(条件つきで)という意味で、答えの札は右の章にあります。

表 1 第 11 部の問い(状態:済み・一部済み・未・新〔この部の執筆で足した問い〕)
問問い大きさ状態決着したら動くもの決着しても動かないものどの章から
F1自由場で、箱に台を持つ観測量の励起のエネルギーの比べ(仮定 (Loc-Δc))を計算する紙済み:モーメントの形 (Loc-Δc)′ で、自由場は γ=dπ2\gamma=d\pi^2 で成り立つ局所の橋の係数の形相互作用のある模型の (Loc-Δc)′11-04 §05
F2窓の因子 φ(x)/x2\varphi(x)/x^2 の単調性初等・Lean済み:x>0x\gt0 で狭義減少(Lean wr_strictAntiOn、仮定なし)窓の閾の陽な形何も(定数の形だけ)11-04 §03
F3小さな周期の箱の Polyakov ループの符号(答えの分かった遅い区画の量)で、静的な比 Var⁡/E\operatorname{Var}/\mathcal E が遅さを捕まえるか小さな計算未静的な試験関数の方法の陽性対照位相電荷の判定11-01 §02
F4二次元の層のコンパクトな U(1)U(1) で、帯を伸ばしたとき隙間が M−2M^{-2} で下がり続けるか飽和するか(保存が壊れる長さの非線形の値)計算済み:幅 2 の帯・外周凍結・β=2..6\beta=2..6 の五点で ℓc∝e0.916β\ell_c\propto e^{0.916\beta}(読み)保存が壊れる長さの非線形の値四次元の ℓ∗\ell_*11-02 §03
F5SU(2)SU(2) の純ゲージの位相電荷の自己相関の一次資料(無ければ物理の体積を止めた小さな測り)読む・計算一部済み:一次資料は一本(HMC・小さな箱・a−2a^{-2} に近い)。小さな測りは未SU(2)SU(2) の行の札(境目か、明らかに ξ2\xi^2 より速いか)HMC と Langevin の関係の予想11-07 §07
F6二つの射影の補題の多族版(dd 次元の箱の 2d2^d 色の族)と、その最大相関の条件紙未四次元の箱の帰着の節点最大相関の β\beta に一様な評価11-03 §06
F7SU(2)SU(2) の上で熱核と畳み込んだ一リンクの Wilson の重みの inf⁡Hess⁡Vt\inf\operatorname{Hess}V_t と、悪い集合の重さの流れ(類関数の一変数)紙+小さな計算未(稀さで払う測度の類の最初の一歩)群の上の Polchinski 流の最初の数・類が一段で閉じるか階層模型でない格子・多段で一様に閉じること11-06 §07
F8Wilson の転送作用素で、仮定 (D)(隣の時刻の増分と勾配の比べが β\beta に一様)を低いエネルギーに切った関数に限って示す紙未有限体積の窓の橋を Wilson の時間を刻む格子へ無限体積11-04 §08
F9有限状態の可逆な Markov 連鎖で、τint≤CP\tau_{\rm int}\le C_P と基底状態変換の恒等式(命題 V の代数)を、確率の対象から定義して Lean で閉じるLean未対象そのものを型にした形式化の一例(10-13 の別の形の検査)経路の測度・連続の場11-05 §01
F10二次元 CPN−1CP^{N-1} の局所のモードと位相のモードの自己相関を、局所の H の目で読み直す読む・計算一部済み:文献は読んだ。試験台の測りは一つの体積・一つの相関長の条件つきの読みまで試験台の材料四次元11-02 §07
F11二次元 SU(2)SU(2)(プラケットが独立)で、ループの族の λW\lambda_W・Γ\Gamma を有限の β\beta で求める計算新色の一重項の閾の β\beta 依存四次元の値11-04 §06
F12四次元の箱で、差し渡しの大きさのループ(平らでないもの・投げ縄の積を含む)の族の値計算新色の一重項の参照の四次元の値対象の測度の比11-04 §06
F130+1 の二重井戸で、キンクの位置を座標にした一次元への還元で局所の比を挟む紙+小さな計算新窓を横切る運動の定数四次元の比11-04 §07
F14帯の β=7\beta=7 を一点足し、生の率の傾きが 2−1/β2-1/\beta に乗り続けるか、ℓc\ell_c の傾きが収まるか計算新二次元の帯の傾きの確かさ四次元11-02 §05
F15比が閾と 1 の間の帯 [K∗,1)[K_*,1) に入る場について、比の形のままで質量を見る別の議論があるか(Jensen と Dirichlet の試験関数の外)紙新未決の帯の扱い相互作用のある場の比の値11-04 §06
F16Wilson の時間を刻む格子で、窓の版の橋(命題 W と有限体積の下界)を仮定 (D) の下で書く紙新窓の橋の格子の版無限体積11-04 §03
F17Kogut–Susskind のハミルトニアンを区画にまとめて分けたとき、frustration-free になるか紙新局所から大域への隙間の定理が当たるか弱結合の隙間11-05 §04
F18CPN−1CP^{N-1} の試験台で、別の乱数の種と NN の残りの組を足し、位相のモードの遅さの指数を二点目の相関長で読む計算新凍結が NN で割れる読みの確かさ四次元11-02 §07
F19保存が壊れる長さの定義 (2)(比が飽和の値の半分に届く最小の RR)を、四次元の部分領域の電荷で測る計算新四次元の保存が壊れる長さの最初の値H の真偽11-02 §01

どの問いも、決着すれば一つの章の一つの行の札が動きます。質量ギャップ・仮定 H・H↑ の真偽は、どの問いの決着でも動きません。

02

規則の候補の一覧 — 「新しい数学を作るなら、何を規則に置くか」

第 11 部の考察は、「新しい数学を作るなら、何を数学の規則にすればよいか」という問いにも行き当たりました(11-07 §06)。命題の意味を捨てて等式の規則だけを残したブール代数のように、繰り込みや連続極限の性質を規則に置いた体系を組み立てるとしたら、どう組めるか。表 2 はその候補の一覧です。全ての行は候補で、無矛盾性も、既存の結果を言い直せることも確かめていません 見。ブール代数の喩えは組み立て方の比喩で、数学の主張ではありません。

どの候補も同じ形で書けます:既存の枠組みの仮定を一つ外し、代わりの規則を置く。外すものと置くものを各行の一行に縮め、問いを一つと、その問いが決着しても動かないものを添えました。

表 2 規則の候補(各一行・問い一つ)見
記号規則の候補(一行)問い(一つ)決着しても動かないもの
N1尺度の公理化:粗視化の半群・局所性・ゲージ共変・縮む方向と周辺の方向・大きな場の重み階層的な SU(2)SU(2) 模型で、五つの規則のうちどれが当たり、どれが当たらないか階層でない格子・連続極限
N2ループの代数:有界・Mandelstam の恒等式・正値と反射正値・ループ方程式(接続を捨て、ループの値を残す)二次元 SU(2)SU(2) の格子で、四つの規則を満たす状態は有限の β\beta で一つに決まるか三次元以上の連続のループの定義
N3保存量と区画:分散の分解・挟み Ctrans≤CP≤sup⁡CPsec+CtransC_{\rm trans}\le C_P\le\sup C_P^{\rm sec}+C_{\rm trans}・局所の窓・二つの長さ(11-03 §04)挟みの CtransC_{\rm trans} を、区画の間の縮約した鎖の量で書けるか構成(三段目)
N4稀さで払う測度の類:良い集合の上の局所の凸性・悪い集合の稀さ・戻る漂流・エントロピーの通貨(11-06 §07)一リンクの Wilson の重みを熱核と一段畳み込んで、類の母数がどう写るか(F7)多段で一様に閉じること
N5漸近自由の公理:尺度の変換・単調な結合・紫外で自由場・次元転移(赤外には何も置かない)紫外で自由場に近づく規則から、局所の比が短い距離で 1 に近づくことが従うか赤外・質量ギャップ
N6曲率の規則:ゲージ軌道の空間の上の Bakry–Émery一つのプラケットの軌道の空間で、商の曲率の項は強結合の範囲を広げるか弱結合
N1+N4粗視化の一段で閉じる稀さの類階層的な SU(2)SU(2) 模型で、紫外の側の類の閉じ方と強結合の道具の間に残る結合の窓の幅はいくらか四次元の窓
N3+N4区画つきの稀さの類(区画の中の定数と、区画の間の遷移の率の大きい方で挟む Eyring–Kramers の型)二次元 U(1)U(1) の帯で、隙間の上界が「区画の中」と「遷移の率」の大きい方で挟めるか四次元の位相電荷
N2+N3ループの代数に区画を入れる(状態の集合の端点への分解を区画と読む)ループの規則の解が一つでないことと、相(区画)が複数あることは対応するか弱結合での一点性

三段目の三つの根(11-07 表 3:(R1) 無限個の段を段数に一様に制御すること・(R2) 紫外と赤外をつなぐ展開が無いこと・(R3) 大局的なゲージ固定が無く大きな場が凸性で制御できないこと)との関係を表 3 にします。

表 3 規則の候補と三つの根(「効く」は規則の言葉がその根を扱えるという意味で、根を越えるという意味ではない)見
候補(R1) 段数に一様(R2) 紫外と赤外(R3) ゲージと大きな場
N1 尺度の公理化効く(言葉そのもの)効かない(結合が O(1)O(1) で領域を出る)半分(群の重みが未定式化)
N2 ループの代数効かない(連続のループの定義に戻る)形の上では効く(全ての β\beta で同じ規則)。解が一つに決まるかが未決最も効く(ゲージ固定が現れない)
N3 保存量と区画効かない効かない名前を与えるだけ
N4 稀さの類N1 と組んだときだけ効かない(稀さの率が尽きる)正面から効く
N5 漸近自由の公理書き写すだけ効かない(赤外を空ける)効かない
N6 曲率の規則効かない効かない(強結合の側だけ)意味を与える

表の読み 見。(R2) の列に「効く」は一つもありません。N2 だけが全ての結合で同じ形の規則を持ちますが、規則の解が一つに決まるかどうかが (R2) の中身そのものに置き換わっています。N1+N4 で現れる結合の窓(11-06 §07)は、この (R2) を規則の言葉で言い直したものです。

ブール代数の型はどこで可能か 見。連続の対象を離散の規則に置き換えることは、観測量の代数の段では既に半分あります:格子(連続の場を辺の上の群の元に置き換える)、ループの Mandelstam の恒等式とループ方程式、区画の整数、階層模型の一変数の漸化式。しかし三段目を決める規則は、等式でなく不等式です:正値性・稀さ・凸性・段数に一様な評価。ループ方程式(等式)は解を一つに決めず、解を絞るのは正値性(無限個の不等式)です。比喩として言えば、三段目に要るのはブール代数より、測度論(σ 加法性という不等式の規則と極限の規則)に近い型です。

規則の候補について主張しないこと。(i) どの候補も、三段目を閉じる見込みを約束しません。(ii) ブール代数の喩えは比喩で、「三段目の規則は不等式」も見立てです。ヤン–ミルズの規則が等式で書けないことを示してはいません。(iii) 候補と既存の結果の対応(例えば、N1 の安定多様体の形と、有限体積の紫外安定性の対応)は、どれも原典の本文で確かめていない言い直しです。(iv) 「階層模型は紫外の側・窓・強結合の側の三つが揃う場所」は探した範囲での言い方で、四次元への含意はありません。(v) 届かないと書いた候補は、偽であることの証拠ではありません。

03

主張しないこと — 十六の項目と、それを支える本文の文

表 4 は、第 11 部が主張しないことを一行ずつ書き、その行を支える本文の場所を並べたものです。「支える」とは、その章の文が条件・仮定・範囲をすでに書いていて、この行はそれを一行に写しただけ、という意味です。種類の列は 10-16 の三つの意味(示さない・強く読まない・偽とも言わない)です。

表 4 第 11 部が主張しないことと、それを支える本文の文
項目主張しないこと種類支える本文の文(要旨)
1ヤン–ミルズの存在と質量ギャップの問題の解決。連続極限・回転の回復・OS 公理・非自明性には触れない示さない11-00 §05:扱わないもの。11-07 §04:三段目・四段目は届かない
2仮定 H が偽であること。四次元の周期の箱で H↑ が成り立たないという文は、SU(3)SU(3) 以上の原典の数値と、開いた境界の観察に付いた予想(HMC と Langevin が同じ動的な普遍類)を周期の箱の位相の遅さへ延ばした読みの上の文偽とも言わない11-01 §06 の (a)(b)・11-07 §07
3区画の H と局所の H は定義の候補で、どの β\beta でも示していない。H の「正しい直し方」も主張しない示さない11-03 §07
4片側の橋(局所の版を含む)は時間を連続に取った格子の上の不等式で、Wilson の時間を刻む格子では仮定 (D) が残る。局所の版はさらに仮定 (Loc-Δc)′ の上にある強く読まない11-04 §08(表 4)・11-04 §09
5「隙間=真空の測度の Poincaré 定数」は恒等式で、問題を易しくしたとは主張しない強く読まない11-05 §01・11-05 §07
6保存が壊れる長さ ℓ∗\ell_* の定義と、比べる相手の言い直し CP≍max⁡(ξ2,τglob)C_P\asymp\max(\xi^2,\tau_{\rm glob}) は候補で、どの模型でも示していない強く読まない11-02 §06・11-02 §08
7階層模型と二次元の模型の結果は、四次元のヤン–ミルズに何も含意しない強く読まない11-06 §09 の (a)・11-02 §08
8物理の非摂動的な機構(閉じ込め・インスタントン・中心渦・双対)は、この部では証明の道具として使っていない示さない11-07 §08(表 4)
9「四次元だからこそ」の二点は臨界次元の性質としての見立てで、四次元でだけ起きるとは主張しない強く読まない11-07 §01・11-07 §09 の (d)
10第 10 部の「主張しないこと」は、この部にもそのまま効く—10-16 §02
11局所の H は、定義と比の形まで。どの β\beta でも、対象のゲージ理論について局所の H↑ を示していない。示したのは定義の性質と、自由場の参照の値示さない11-03 §03・11-04 §04
12局所の橋の閾(0.342κ0.342\kappa・0.502κ0.502\kappa・約 0.62κ0.62\kappa)は参照の取り方と試験の観測量の族に依る。比が閾と 1 の間にある場について、橋は何も言わない強く読まない11-04 §06(表 2)
130+1 の二重井戸では、局所の比は最短の窓でも 1 にならない。四次元で「短い距離で比は 1 に近づく」とするのは、漸近自由に依る仮定強く読まない11-04 §07・11-03 の (7)
14保存が壊れる長さを測ったのは、二次元 U(1)U(1) の幅 2 の帯(外周凍結・β=2..6\beta=2..6)だけ。四次元・非可換・β→∞\beta\to\infty の指数については何も言わない強く読まない11-02 §03(表 2)
15SU(2)SU(2) について、位相電荷の凍結が仮定 H を壊すかは決まっていない。一次資料は一本で、その数は a−2a^{-2} に近い側にある偽とも言わない11-07 §07・11-01 §06 の (b)
16二次元 CPN−1CP^{N-1} の試験台の結果は、四次元のヤン–ミルズに何も含意しない(比は一つの体積を止めた条件つきの自己相関の比で、静的な比とは別の量)強く読まない11-02 §07

項目 1〜10 は部の設計の段の骨子で、11〜16 は各章の記述から足したものです。項目 2 は設計の段の文を直しました:「予想」の語は原典では開いた境界の観察に付いた語なので、周期の箱への適用は「延ばした読み」と書きます。規則の候補(§02)についての主張しないことは §02 の末尾に置きました。

04

第 10 部との関係

第 10 部の「主張しないこと」の十四項目(10-16)は、この部にもそのまま効きます。ここでは重ねて列挙しません。とくに、届かなかったことは偽の証拠ではない(10-16 の項目 8・12)、条件は要約で落ちる(10-16 §06)、の二つは、この部の見立ての文(札〔見〕)を読むときにも同じです。


この章が言えている範囲

言えている言えていない
第 11 部の問いの一覧と、各問いが決着しても動かないもの(表 1)どの問いの答えも。問いの「大きさ」は作業の種類で、時間の見積もりではない
規則の候補の一覧と、三つの根との関係の見立て(表 2・表 3)どの候補の無矛盾性も、三段目への見込みも
第 11 部が主張しないことの十六項目と、それを支える本文の場所(表 4)各項目の命題の真偽

出典と再現

もの種別出典・道具
表 1 の各行本書右の列の章と節
表 2・表 3 の候補と根見11-06 §07・11-07 §05・§06。候補が引く既存の結果の出典は各章の出典表(重みの四性質は Bauerschmidt–Brydges–Slade の本、二次元のループ方程式は Chatterjee の総説 §6 の整理、強結合の対数 Sobolev は Shen–Zhu–Zhu の要旨)
表 4 の各行本書右の列の章と節
三つの意味本書10-16 §01

この章で使った語 — 問いの状態(済み・一部済み・未・新)・決着しても動かないもの・規則の候補・組み合わせ・三つの根・結合の窓・示さない/強く読まない/偽とも言わない。意味は A-02 用語集 と 11-A1 にあります。

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改訂 2026-10-09:初版。