この本の全体 目次と読む順
- 第 0 部 入口 — この本の読み方
- 0-01 この本の読み方
- 0-02 一枚の絵
- 0-03 問題文を一語ずつ読む
- 0-04 数学の四次元と物理の四次元
- 第 1 部 数学の準備
- 1-01 ベクトル空間と線形写像
- 1-02 群とは何か
- 1-03 リー群とリー環
- 1-04 SU(2) と SU(3)
- 1-05 多様体と接空間
- 1-06 微分形式と外微分
- 1-07 ベクトル束と接続
- 1-08 確率と測度
- 1-09 無限次元の確率
- 1-10 ヒルベルト空間と自己共役作用素
- 1-11 フーリエ解析と分布
- 1-12 寄り道:四次元でだけ起きること
- 第 2 部 物理の準備
- 2-01 ラグランジアンと作用
- 2-02 場という考え
- 2-03 電磁気学はゲージ理論である
- 2-04 特殊相対論と時空
- 2-05 量子力学の骨
- 2-06 調和振動子と生成消滅
- 2-07 経路積分の考え方
- 2-08 統計力学と相転移
- 2-09 寄り道:イジング模型で見るギャップと相関長
- 2-10 緩和の時間と動的指数 z
- 第 3 部 ヤン–ミルズ理論(古典)
- 3-01 ゲージ原理
- 3-02 非可換ゲージ場
- 3-03 作用と方程式
- 3-04 幾何としてのゲージ理論
- 3-05 インスタントンと位相
- 3-06 寄り道:Donaldson とエキゾチック R⁴
- 3-07 標準模型の中のヤン–ミルズ
- 第 4 部 量子化
- 4-01 正準量子化とハミルトニアン
- 4-02 経路積分とユークリッド化
- 4-03 摂動論と Feynman ダイアグラム
- 4-04 発散と繰り込み
- 4-05 発散の代数
- 4-06 漸近自由
- 4-07 次元転移と Λ
- 4-08 ゲージ固定と Faddeev–Popov
- 4-09 場の量子論の公理
- 4-10 Osterwalder–Schrader の公理と再構成
- 4-11 質量ギャップの定義
- 4-12 寄り道:摂動級数は発散する
- 第 5 部 格子ゲージ理論
- 5-01 Wilson の格子
- 5-02 強結合展開
- 5-03 反射正値性と転送行列
- 5-04 無限体積極限とクラスター展開
- 5-05 弱結合と連続極限
- 5-06 U(1) と非可換の違い
- 5-07 モンテカルロ法
- 5-08 グルーボールと弦張力の測定
- 5-09 何を固定して極限を取るか
- 5-10 有限群の格子ゲージ理論
- 5-11 寄り道:Bakry–Émery と一リンク積分
- 第 6 部 構成的場の理論
- 6-01 構成的場の理論とは
- 6-02 二次元の可解性とヤン–ミルズ測度
- 6-03 スカラー場の構成
- 6-04 クラスター展開
- 6-05 繰り込み群の段の列
- 6-06 三次元ヤン–ミルズの紫外安定性
- 6-07 四次元
- 6-08 四次元の φ⁴ の自明性
- 6-09 確率量子化と正則性構造
- 6-10 四次元で止まる場所
- 6-11 発散以外の障害
- 6-12 寄り道:「1/0 に記号を与えれば」
- 第 7 部 物理の側から
- 7-01 物理はどう見ているか
- 7-02 閉じ込めの機構
- 7-03 弦の絵
- 7-04 大 N
- 7-05 ひも理論と余剰次元
- 7-06 余剰次元が見えなくなる仕組み
- 7-07 ゲージ場はどこから来るか
- 7-08 ホログラフィー
- 7-09 質量ギャップが幾何になる
- 7-10 四次元に戻す
- 7-11 超対称と Seiberg–Witten
- 7-12 等価原理に当たる一文
- 7-13 物理の掘り方が数学と離れる場所
- 第 8 部 二つの言葉の辞書 — 物理の視点と数学の視点
- 8-01 辞書の読み方
- 8-02 辞書 A
- 8-03 辞書 B
- 8-04 辞書 C
- 8-05 私たちの仮定の物理側の対応
- 第 9 部 現在地と課題
- 9-01 世界はどこまで来ているか
- 9-02 二つの掘り方の切れ目
- 9-03 新しい概念の候補
- 9-04 課題の一覧
- 9-05 よくある誤解
- 第 10 部 質量ギャップの証明へ向けて — 階段の一段目を組む
- 10-00 入口 — 階段と、酔歩・物差し・時計
- 10-01 構成の筋と仮定 H
- 10-02 四次元格子で試した道と壁
- 10-03 階段の四段 — なぜ 0+1 次元から始めるか
- 10-04 二重井戸の経路の測度とキンク
- 10-05 一段目の言明 — 四条件と命題 4.5
- 10-06 (H1) 相の中の局所 Poincaré
- 10-07 (H2) の地図 — 七つの道筋と環の継ぎ目
- 10-08 計算機援用とは何か — 窓の中の鎖の条件
- 10-09 区画の枠組みと道筋 5 の三本の筋
- 10-10 迂回策の一覧 — 壊れ方の型
- 10-11 (H3)(H4) と芯の定数
- 10-12 統合表と依存グラフ
- 10-13 Lean の言明と機械検査の限界
- 10-14 突き合わせ — 記録の数と既知の数
- 10-15 残件と費用 — 定理までの距離
- 10-16 主張しないこと
- 10-17 ひらめきと小さな問い
- 第 11 部 今後の考察 — 仮定 H の先と、別の見方
- 11-00 今後の考察 — 入口
- 11-01 H を妨げる一つの形 — ほぼ保存される大域の量
- 11-02 物差しと座標を選び直す — 保存が壊れる長さ
- 11-03 区画の H と局所の H
- 11-04 片側の橋はどの H を要るか
- 11-05 時間を連続にする — Hamiltonian 格子と真空の測度
- 11-06 凸性の代わりに稀さで払う — 群の上の繰り込みと対数 Sobolev
- 11-07 四次元だからこそ — 無次元の結合と位相
- 11-08 問いと、主張しないこと
- 11-A1 第 11 部の記号の対応表
- 付録
- A-01 記号表
- A-02 用語集
- A-03 文献案内
- A-04 Lean と機械検査
- A-05 この本の作り方
- A-06 仮定の索引
四次元だからこそ — 無次元の結合と位相
この章で分かること — 四次元で効いていることを二点に限って述べます。結合が無次元であること(臨界次元・次元転移・ とヤン–ミルズで漸近自由の向きが逆)と、尺度を持たない位相的な配位があること(インスタントンと位相電荷)。二点を合わせると、遅い量と相関長が別の起源に割れる、という見立てが立ちます。次に、第 10 部の四段の階段のそれぞれについて、ハードル・既知の到達点・この本の道具で届くか・費用の種類を一枚の表にし、三段目(連続極限)を扱う数学がなぜまだ無いのかを、難しさの根の三つと一次資料の記述で述べます。位相については、周期の箱で H↑ が偽と読める範囲と、この本の群 では凍結が H を壊すかが決まっていないことを、11-02 の二次元の試験台と並べます。物理の非摂動的な機構が証明にならない理由を一行ずつ添えます。
前提となる章 — 10-03 §02(四段の定義)と 10-03 §06(持ち上がる見込みと持ち上がらない理由)・10-15 §07(二段目以後の距離)・10-16(主張しないこと)・10-01 §05(H と位相の区画の注)・4-07(次元転移)・6-07(Balaban と MRS)・11-01・11-02。記号は 11-A1。
先に言うこと — 水準は〔三〕です。二点は「四次元でだけ起きること」ではなく、理論がその臨界次元にいることの性質として述べます。二点を合わせた読みは見立てです 見。四段の表の「届くか」と費用は見立てと見積もりです。§05 は読んだ一次資料の記述の整理で、Balaban の論文の本文は取れていません(書誌と、他の資料の記述を通して)。この章は質量ギャップも、連続極限の構成も示しません。
- 結合が無次元であること — 臨界次元・次元転移・逆向きの漸近自由((1)(2)・図 1)
- 尺度を持たない位相的な配位 — インスタントンと、転位の重みの二つの数え方((3)・表 1)
- 二点を合わせた見立て — 遅い量と相関長が別の起源に割れる
- 四段のハードル — 段・ハードル・既知の到達点・届くか・費用(表 2)
- なぜ三段目の数学が無いか — 根の三つ・対象・道具・理論・歴史(表 3)
- 規則の候補について一段落 — 「結合の窓」は根の二つ目の言い直し
- 位相と箱 — では未決 — 周期の箱・開いた境界・二次元の試験台との対応
- 物理の機構と、証明にならない理由 — 表 4
- 言えないこと
- 五分類の表と依存グラフ — 表 5
結合が無次元であること — 臨界次元・次元転移・逆向きの漸近自由
次元のヤン–ミルズの作用を
と書くと、結合 は四次元でちょうど無次元になります 典(次元の数え。格子では Wilson の発見法で 、四次元で は格子間隔 に依らない、Chatterjee の総説 §3)。三次元以下では が長さの負の冪の次元を持ち、短い距離で相互作用は冪で弱まります(超くりこみ可能)。五次元以上では逆に強まります(くりこみ不可能)。ちょうど四次元では、尺度を一段変えるごとの補正が冪で縮まず、 の大きさで残ります。冪の数え方の言葉では、四次元の四次の単項式は relevant でも irrelevant でもなく marginal です(Bauerschmidt–Brydges–Slade の本の定義 5.2.1 典)。
次元転移。非可換の場合、その補正の符号は「短い距離ほど弱い」側に向きます(漸近自由、4-06)。作用は長さの物差しを持たないのに、量子化すると一ループで
という長さの逆数が生まれます 典(一ループの標準形、4-07)。質量ギャップと閉じ込めの尺度は の定数倍だと予想されています。 は で全ての導関数が消えるので、 は の摂動の展開のどの次数にも現れません(4-07 の「摂動論に映らない」)。
H への現れ。(a) 相関長は について指数で伸び( の一ループの記帳で 、10-03 表 2)、 で測る量には の因子が付きます。第 10 部が H を帯の文でなく冪の文に置いたのはこのためでした(10-01 §07)。(b) Gauss 近似では結合が流れません。階層格子の Gauss 近似で、プラケットの静的な相関は質量の無い の減り方で、相関長は体積で切られるだけでした(11-02 §02)。尺度は非可換の補正からだけ生まれます。(c) 確率量子化の方程式の解の理論は、劣臨界性()を鍵の条件にしていて、四次元はちょうど臨界です(Chevyrev の総説 §1.2 典、6-09)。
同じ marginal でも向きが逆。四次元の も結合が無次元(marginal)ですが、繰り込みの流れで結合が 0 に近づくのは長い距離の側です(「赤外の漸近自由」、Bauerschmidt–Brydges–Slade の命題 6.1.7 典)。制御したい向き(長い距離)で理論が Gauss に近づくので道具が届き、届いた先の極限は自明(スケーリング極限は Gauss)でした(Aizenman–Duminil-Copin 2021 典(要旨)、6-08)。ヤン–ミルズでは結合が 0 に近づくのは短い距離の側で、長い距離に向かって結合が育ちます。
図 1 二本の矢印(結合 g の流れ。左が短い距離、右が長い距離)
短い距離(紫外) 長い距離(赤外)
φ⁴₄ : g は大きい側へ ←―――――――――――――― g → 0(Gauss に近づく)
→ 制御したい向きで Gauss に近い。道具は届き、極限は自明
YM₄ : g → 0(Gauss に近づく) ――――――――――――――→ g が育つ(Λ の尺度で g = O(1))
→ Gauss に近いのは紫外だけ。赤外の側に展開の参照が無い
四次元でだけ、とは書かない。二次元の ()模型と 模型も、結合が無次元で漸近自由という同じ組を持ち、 には尺度を持たないインスタントンもあります。そこでも紫外極限の構成は完成していません(Rivasseau 2000、Douglas 2004 典)。逆に、臨界次元でも可換()や非ゲージ()なら、理論は自由場に同値か自明になります。この章の「四次元だからこそ」は、臨界次元にいること(無次元の結合)と、非可換であること(漸近自由の向き・位相・ゲージ軌道の幾何)が同時に起きることを指します 見。
尺度を持たない位相的な配位 — インスタントンと転位の重み
により、四次元のゲージ場には整数の位相電荷 があり、自己双対な解(インスタントン)の作用は大きさ に依らず です 典(Belavin–Polyakov–Schwartz–Tyupkin 1975 の要旨、作用の値は Lucini–Teper 2001・Athenodorou–Teper 2021 の本文)。作用が に依らないのは、古典のヤン–ミルズが四次元で尺度を持たないことの現れです。
格子の上では、滑らかにした位相電荷は格子間隔の大きさの小さなインスタントンが格子を通り抜けるとき(「超立方体の中に消える」)にだけ変わります(Lucini–Teper 2001 §6.1 典)。その重みは、一ループの小さなインスタントンの密度 から見積もられ、位相電荷が一単位動く時間について
という勘定が一次資料にあります(Athenodorou–Teper 2021 の式 (32)(34) 典)。 では係数が で、原典自身が「かなり弱い」と書きます。当てはめた傾きとの比べは表 1 です。
| (3) の係数 | 当てはめた傾き | |
|---|---|---|
| 2 | 表から除外(測定の間隔より が十分大きくならない) | |
| 3 | 6.0 | 6.82(7) |
| 4 | 9.67 | 9.27(12) |
| 5 | 13.3 | 11.13(20) |
| 6 | 17.0 | 13.50(30) |
| 8 | 24.3 | 17.58(43) |
表 1 の札は 典(原典の数)です。独立な経路が一つあります。Wilson 流で滑らかにした場が位相の区画の間にいる確率(滑らかさの閾 を越える確率)は、物理の大きさを止めた格子で に比例して消えると原典の図が示唆していて(Lüscher 2010 §4.3、・示唆の語 典)、(3) の の係数 6 と同じ数です。 について同じ型の測定は、探した範囲で見当たりません。
二つの数え方。転位の作用を一ループのインスタントンの作用の 倍と置く粗い勘定では、動的指数は の型になります 仮。(3) の数え方とは、 の体積の因子と の幅の数え方で 1 違います。 の数(当てはめの 、あるいは別の原典の )に を合わせると、どちらの数え方でも は の境目の近くに落ちます 見。この本は二つの数え方のどちらが正しいかを判定しません。また が群に依らないことも確かめていません。
二点を合わせた見立て — 遅い量と相関長が別の起源に割れる
二点を並べると、次の見立てが立ちます 見。遅い量(位相電荷)の時間と相関長 は、どちらも同じ無次元の結合から の形で生まれます。ところが指数が別の数です。相関長は (2) から 、位相電荷の時間は (3) から で、格子単位では は の型、比べる相手の とは指数が揃いません。
- 0+1 次元の二重井戸では、遅い量(キンクの数)と が同じキンクから生まれ、指数が揃って対数の差しか残りません(11-01 表 3)。
- 二次元 の帯では、静的な長さは について一次、保存が壊れる長さは で、二つが指数で離れます(11-02 §03、二次元の玩具の読み)。
- 二次元 では、 を動かすと凍結の強さと保存が壊れる長さが割れ、局所の比は割れませんでした(11-02 §07、条件つきの一点の読み)。
「質量ギャップは生まれても、H の形( と を同じ冪で結ぶ形)では捕まらない」ことの正体の候補は、遅い量と相関長が別の起源に割れることで、その割れは結合が無次元であることと位相の二つから来る、という読みです。この読みでは、質量ギャップを捕まえる形は H の全体ではなく、時刻に局所な部分(11-04)と、その裏返しの真空の測度の Poincaré 定数(11-05)の側にあります。
この節が言えている範囲:読みで、定理ではありません。指数の数は原典の当てはめと半古典の勘定で、 ではちょうど境目の近くに落ちるので、 について「割れる」かは決まっていません(§07)。原典の自己相関は熱浴・過緩和・HMC の力学の数で、リンクの Langevin の への読み替えは仮定です(11-01 §06)。
四段のハードル
第 10 部は仮定 H を四段に分けました(10-03 §02):一段目=0+1 次元の二重井戸の経路の測度、二段目=四次元格子の非可換ゲージ理論(格子間隔を止める)、三段目=連続極限と OS 公理、四段目=極限での質量ギャップ。表 2 は、各段のハードル・既知の到達点・この本の道具で届くか・費用の種類を一枚にしたものです。費用の種類は三つです。「週」=既存の道具の組み合わせで作業を重ねれば届く見込み、「年」=既存の道具の大きな拡張か、大きな仕事の再構成が要る、「新しい数学」=読んだ資料の中に道筋の記述が無い(この語は「なぜ三段目の数学が無いのか」という問いの言い方をそのまま借りたもの)。
| 段 | ハードル | 既知の到達点〔出典と札〕 | この本の道具で届くか | 費用の種類 |
|---|---|---|---|---|
| 一段目:0+1 次元の二重井戸 | 冪の H を で一様に。頂上の曲率の不足 を稀さで払う | 静的な側(トンネル分裂・相関長)は半古典で既知 典。H の上の側は命題 4.5(四条件の上の代数)まで、行ごとに初・典・機・仮が混在(10-12) | 部分的に届いている。残りは条件ごとの行(10-15 表 1) | 週(多くの行)。ただし の行は「別の方法」、頂上の一命題は「方法未定」で、見積もりが無い |
| 二段目:四次元格子・非可換 | 弱結合(大きな )での相関の指数減衰(格子の質量ギャップ)を体積に一様に。H↑ と H↓ | 強結合(小さな )では定理(Osterwalder–Seiler 1978 典(書誌と二次資料))。階層模型では全ての で閉じ込め(Ito 1985 典(要旨))。弱結合の実格子では未解決(Chatterjee の問題 5.1) | 階層模型の中では静的な側は既知で、動的な側(座標と保存、11-02 §02)は届く範囲。実格子の弱結合は届かない(閉じ込めの尺度を横切ることそのもの、§05 の根の二つ目) | 週(階層模型の動的な側)/「新しい数学」(実格子の弱結合) |
| 三段目:連続極限と OS 公理 | 格子間隔 の極限の存在・一意性・無限体積・OS 公理・非自明性 | 有限体積の格子の紫外安定性(三・四次元、Balaban の Commun. Math. Phys. 1983–89 の 13 本 典(書誌と、他の資料の本文の記述))。赤外切断つき・軸ゲージの Schwinger 関数(Magnen–Rivasseau–Sénéor 1993 典(序を本文で))。三次元の測度ですら有限の箱で未構成(Chevyrev 2022 典) | 届かない。根の一つ目と三つ目は Balaban の規模の仕事の再構成、根の二つ目は資料に道筋が無い | 年(有限体積・紫外の再構成)+「新しい数学」(無限体積・赤外) |
| 四段目:極限での質量ギャップ | 体積に一様な隙間 | 無い。問題文は「体積に一様な質量ギャップには新しい考えが要る」と書く(Jaffe–Witten §6.5 典)。数値では の最も軽いグルーボールが弦張力の平方根の 倍(Athenodorou–Teper 2021 典)で、有限個の格子間隔と有限の箱からの外挿 | 届かない。片側の橋(10-01 §06)は形だけ持ち上がる見込み 見 | 「新しい数学」 |
表 2 の「年」は根の一つ目と三つ目についての見積もりで、資料の記述に依ります 見:Rivasseau 2000 の「Balaban の結果を簡潔にし書き直せ。数百頁に及ぶので小さな仕事ではない」、Dimock の再構成が三次元の から始めて、三次元の QED の分配関数の安定性に十年あまりで届いたこと(要旨)。根の二つ目には、費用の見積もりを支える資料がありません。一段目の行の費用は 10-15 §03 の見積もりのとおりで、「週」と書いた行にも走らせた見積もりは一つもありません。
この節が言えている範囲:既知の到達点の行は出典の札のとおりです。「届くか」と費用の種類は見立てで、届かないと書いた段について「不可能」とは言いません。
なぜ三段目の数学が無いか
まず十三行で要約します〔三〕。
- 三段目は「格子を細かくした極限に一つの確率測度があり、それが OS 公理を満たす」ことです。手元にある定理は、有限の箱の中で、格子をどれだけ細かくしても粗視化した理論が暴れない、という一様な評価(Balaban の紫外安定性)までです。
- そこから先には、相関関数の評価・極限の一意性・箱を無限に広げること、の三つが別々に要り、どれもまだ示されていません。三次元の非可換ゲージ理論でさえ、有限の箱の中の測度は構成されていません。
- 難しさの一つ目は、四次元では結合が無次元であることです。三次元以下では尺度を細かくするほど相互作用が冪で弱まり、扱う発散は有限個で済みました。四次元では一段ごとの補正が冪で縮まず、無限個の段の補正を、段の数に依らない形で全部制御しなければなりません。
- 二つ目は、漸近自由が「短い距離でだけ」効くことです。短い距離では結合が小さく、自由場の周りの展開が使えます。長い距離では結合が大きくなり、閉じ込めの尺度 が現れます。
- この は結合のどの次数の展開にも現れないので、短い距離から展開を延ばしても届きません。結合が大きい側で収束する強結合展開は、格子間隔が大きい側でしか使えず、連続極限に届きません。二つの展開の間の尺度を横切る道具がありません。
- 三つ目は、非可換のゲージ不変性です。全ての配位で同時に効く連続なゲージ固定が存在せず(Gribov・Singer)、Balaban は尺度ごと・場所ごとにゲージを選び直しました。
- 場が大きい所では展開が使えず、そこは「起こりにくい」ことで押さえるしかありません。群の上では大きな場は必ず非凸になるので、凸性に頼る方法は使えず、稀さで払う方法が要ります(11-06)。
- Magnen–Rivasseau–Sénéor(1993)は、長い距離に切断を置いたまま、軸ゲージで Schwinger 関数を構成しました。切断を外さない理由を、彼らは序で、結合が大きくなり閉じ込めの非摂動効果に入ること、その周りで展開できる易しい可解模型が無いこと、と書いています。
- 格子の数値計算では、 の最も軽いグルーボールの質量が弦張力の平方根の約 倍と、連続極限へ外挿されています。
- しかし数値は有限個の格子間隔と有限の箱からの外挿で、極限が存在すること・一意であること・箱の大きさに一様であることを示しません。
- 四次元で非自明な相互作用を持つ場の理論は、漸近自由なものに限られると考えられています。 理論は四次元で自明(スケーリング極限が Gauss)であることが示されました。
- その結果、四次元で比べる相手になる「相互作用のある構成済みの理論」は一つも無く、ヤン–ミルズはその最初の例として求められています。
- この本が一段目(二重井戸)と二段目(階層的なゲージ模型)で出会った壁——頂上の凸性の不足を稀さで払うこと、群の上で凸性の仮定が立たないこと、隙間に映らない大域の量——は、三段目の三つ目の難しさの小さな版です。三段目では、その「稀さ」が長い距離で稀でなくなります 見。
根の三つ
| 根 | 事実(一次資料の記述) | 何が止まるか | この本の壁との対応 |
|---|---|---|---|
| (R1) 結合が無次元で、全ての尺度が同じ重さで効く | 四次元で は無次元・四次の項は marginal(§01)。構成された模型は二・三次元の超くりこみ可能なものと、二次元の質量のある Gross–Neveu だけ(Rivasseau 2000 典)。 は よりかなり易しい(Chevyrev 2022 典) | 無限個の段の補正を段数に一様に足し上げる必要。漸近自由は で、和は対数でしか収束しない | H を冪の文に置いたこと( の因子) |
| (R2) 紫外と赤外をつなぐ展開が無い | MRS 1993 の序の文(下)。「紫外極限の弱結合展開は低温展開とある程度矛盾する」「異なる展開・繰り込み群の異なる領域を貼り合わせる技法を発展させるべき」(Rivasseau 2000 典)。強結合展開は格子間隔の大きい側でしか収束しない(Chatterjee 典) | Balaban と MRS の制御は が小さい段だけで効き、 の尺度を横切る段に使える定理が無い | 一段目では頂上の配位が稀で、稀さという通貨があった。赤外では Gauss 近似の効かない配位が典型になり、その通貨が無い |
| (R3) 非可換のゲージ不変性 | 連続な大域のゲージ固定が無い(Gribov 1978・Singer 1978 典(書誌のみ、中身は記憶))。Balaban は正則な配位の上で局所的・尺度ごとに固定し、群値の場の平均を別に定義した(論文の題)。大きな場の凸性が階層模型の外への主な課題(Bauerschmidt–Bodineau 典) | 大きな場を凸性で制御できず、稀さで払うしかない | 群の上の凸性の天井(11-06 の補題)。凸と非凸の場所が平らな と逆 |
三つの根の関係 見:(R1) は「何段あるか」(段数が無限で各段が同じ重さ)、(R2) は「どの段で展開が切れるか」(閉じ込めの尺度)、(R3) は「一段の中で何が足りないか」(凸性と大域のゲージ)。Balaban は有限体積の紫外の段で (R3) を処理し、 が小さい範囲で (R1) を処理しました。(R2) には、読んだ資料のどれも手を付けていません。
Balaban と MRS が止まった場所
Balaban。ゲージ理論の系列は Commun. Math. Phys. の 13 本(1983〜1989、格子の Green 関数の評価の一本を含む)で、頁を足すと約 426 頁です 典(書誌で数えた。本文は取れていない)。到達点は、他の資料の本文の記述を合わせると次のとおりです。有限体積の格子で、ブロックスピン変換を任意に多く繰り返した後も、単位格子の上の有効作用が有界に留まること(紫外安定性)。そこから、滑らかにした Wilson ループのようなゲージ不変な量の極限が、コンパクト性による部分列で存在することは従うはずですが、極限は一意とは限りません(MRS 1993 の序の整理 典)。相関関数の評価・極限の一意性・無限体積・OS 公理・質量ギャップは、どの資料も Balaban の到達点に含めていません。
MRS 1993。示したのは、純 の四次元ヤン–ミルズの Schwinger 関数を、固定した赤外切断つき・紫外切断なしで、正則化した軸ゲージで、自明な位相の区画で構成することと、Slavnov 恒等式が非摂動的に成り立つことです。著者自身、収束の証明を全ての細部で与えたとは主張しない、詳しい概略だと書いています 典(序を本文で確認、証明の本体は読んでいない)。止めた理由は序の次の文です(この本の訳)。
大きなゲージ変換の下の不変性や、インスタントンのような非自明な位相の効果は調べない。また赤外切断を外そうとはしない。それは結合定数の大きな値に、おそらく閉じ込めに対応するいわゆる非摂動効果につながるからである。これらの問題は今のところ私たちの構成的方法の及ぶ範囲の外にある。とくに、周りで展開できる、これらの現象の易しい可解模型が無いからである。
引用の「私たち」は MRS の著者たちを指します。赤外切断を外さないので、OS 公理の全体も調べられない、と序は続けます。
対象・道具・理論・歴史
対象が未定義。問題文は「非自明な量子ヤン–ミルズ理論が の上に存在し、質量ギャップを持つことを示せ」で、存在の部分に Wightman または OS と同じ強さの公理を求め、脚注でコンパクト性による弱い存在だけでは解とみなさないと書きます(Jaffe–Witten 典)。構成そのものが問題の中身で、構成が済んだ対象の性質を問う形になっていません。Douglas の 2004 年の報告も「量子ヤン–ミルズ理論の満足な数学的定義は無い」と書きます 典。さらに、測度を置く空間が決まっていません。自然な空間はゲージ軌道全体の商で、非可換なら非線形の空間になり、状態空間の構成さえ自明でない。三次元ではすでに Gauss 自由場が線に制限できないほど特異で、二次元で使えたホロノミーの空間は使えない、と Chevyrev の総説は書きます 典。二段目までの対象(格子の上の有限次元の確率測度)は定義済みで、その性質を問う数学があります。三段目の対象は、どの空間にどの位相で置くかからして未定です。「数字が無い」の一段手前に「対象が無い」があります 見。
道具は Gauss の参照の周りの摂動。構成された模型の多くは弱結合の領域で、クラスター展開と Mayer 展開とその多重尺度版で作られています(Rivasseau 2000 典)。繰り込み群の一段の解析は、場が 0 の周りの冪の摂動とテイラー近似に頼り、それは場が小さいときだけ良い近似です(Bauerschmidt–Brydges–Slade の本 典)。確率量子化の解の理論は、劣臨界性()のもとで解が Gauss 自由場を不変測度に持つ確率熱方程式の摂動であることを使います(Chevyrev 典)。どれも「各尺度で Gauss 測度に近い」ことを入力にします。ヤン–ミルズの漸近自由は、この入力を短い距離でだけ与えます。長い距離では、Gauss の参照から出発する根拠が尽きます。四次元 では逆に長い距離で Gauss に近づくので同じ道具が効き、結論は自明でした。四次元で道具の届く理論は自明になり、非自明であるべき理論には道具の入力が無い 見。
小さいパラメータも凸性も無しに、無限個の尺度を横切る理論が無い。読んだ範囲の多重尺度の定理は、どれも各段に小さいパラメータか凸性を置きます:小さな結合(階層と Euclid の )、各段の条件つき測度の一様な凸性(Bauerschmidt–Bodineau)、収束する摂動展開(二次元の Gross–Neveu、書誌のみ)、小さな と大きな場の稀さ(Balaban・MRS)典。群に値をとる場では、凸性の仮定が弱結合の尺度で原理的に立ちません(11-06 の補題:直径 のコンパクトな多様体で なら )。ゲージ不変性はこの制御を禁じます 見:ゲージ不変な関数は軌道に沿って一定なので、軌道の向きに凸性()を持てません。ゲージを固定して軌道の向きを消そうとすると、連続な大域の固定がありません。Balaban の局所の固定と MRS の二つのゲージの継ぎ目は、どちらも小さな場の領域でだけ効きます。軌道の空間の Riemann 幾何は記述されていますが(Singer 1981、書誌のみ)、その上の Gauss でもその摂動でもない測度を扱う一般論は、読んだ資料の中にはありません。
歴史。Balaban の仕事は「非常に印象的だが近づきにくい。結果が多くの出版物に散らばり、全ての議論の整合性を確かめるのは非常に難しい」と MRS の序は書き、Rivasseau 2000 は書き直しを未解決の問題に挙げます 典。Dimock の再構成は「他の人々はこの方法を採り入れるのが遅かった」と書いて三次元の から始め(本文)、三次元の QED の分配関数の格子間隔に一様な評価に至っています(要旨)典。四次元の非可換の再構成は、読んだ資料の中にありません。中間の目標(有限の箱 の上の構成、三次元の測度)も空いています。別の数学を作る動きもあります。Wilson ループと確率論の言葉での定式化(Chatterjee)と、確率量子化でゲージ軌道の上の Markov 過程を作り不変測度の構成を開いた問題として掲げる道(Chandra–Chevyrev–Hairer–Shen、Chevyrev の総説)です 典。どちらも格子の繰り込み群を延ばすのでなく、対象の置き場(状態空間)や構成の手段(確率力学)を作り直す向きです。ただし後者の鍵の条件 は、この新しい道具も四次元でちょうど臨界になることを示しています。
この節が言えている範囲:一次資料の記述の整理と、根の対応づけ(見立て)です。Balaban の本文は取れていないので、到達点の記述は他の資料の本文を通したものです。Gribov と Singer の中身は記憶で、書誌だけを照合しました。
規則の候補について一段落
§04 の表の「新しい数学」を作るとしたら何を規則に置くか、という候補の一覧は 11-08 で扱います。ここでは一つだけ書きます 見。尺度の公理化(粗視化の半群とその上の流れ)と、稀さで払う測度の類(良い集合の上では局所に凸・悪い集合は稀・悪い集合から戻る漂流・稀さはエントロピーの不等式を通してだけ払う)を組み合わせると、紫外の側で、粗視化の一段ごとに類が閉じる形が書けそうです。強結合の側では、群の曲率で払う型の道具が狭い範囲で効きます。二つの間に、どちらの通貨も足りない「結合の窓」が残ります。稀さの率は実効の結合に比例して閉じ込めの尺度で尽き、曲率の通貨はまだ足りない、という範囲です。この窓は、根の二つ目 (R2)(紫外と赤外をつなぐ展開が無いこと)を規則の言葉で言い直したもので、新しい障害ではありません。階層的なゲージ模型は、紫外の側・窓・強結合の側の三つが一つの模型の中で揃う場所ですが、そこでの結果は四次元のヤン–ミルズに何も含意しません。
位相と箱 — この本の群 では未決
周期の箱。可逆な力学では なので(11-01 の (1))、位相電荷の自己相関が より速く伸びれば H↑ は破れます(11-01 の (3)。Lean LatticeGauge.FourDTrial.not_hup_of_fast_tau、仮定:・・・。陰性対照 z_two_compatible_with_hup、仮定なし: は H↑ と両立する)。周期の箱では 以上の原典がそう報告しているので、HMC と Langevin が同じ動的な普遍類という予想(原典では開いた境界の観察に付いた語)を周期の箱の位相の遅さへ延ばした読みの下で、H↑ は周期の箱で偽と読めます 仮(10-01 §05 の注・11-01 §06)。
開いた境界は有限の箱でしか救わない。開いた境界では、物理の一辺を止めた箱の中で自己相関の伸びが に戻ります。ただし箱の空間の一辺を止めて時間の向きの長さだけを延ばすと、 の自己相関時間は ・・(時間の向きの長さ 24・48・80 の格子)とほぼ長さに比例して伸びます(Lüscher–Schaefer 2011 §5.3 典)。電荷が境界を通る輸送でしか出入りしないからで、先に体積を無限にするこの本の順では救いにならない見込みです 仮(11-03 §05 と表 2)。
は一次資料が一本で、 の側。 の純ゲージで位相電荷の自己相関の格子間隔への依存を測った一次資料は、探した範囲で一本です(Abe–Morikawa–Suzuki 2025:HMC・周期・物理の一辺が 程度の小さな箱・三つの格子間隔、 にかなりよく乗ると報告 典)。熱浴系の原典はどれも では凍結が測れるほど強くならない側の観察で、表 1 でも は除かれていました。§02 の二つの数え方は、どちらも を の境目の近くに置きます。したがって、この本の群 について、位相電荷の凍結が仮定 H を壊すかは決まっていません。一次資料は境目かその下の側に寄っています 読。
11-02 の二次元の試験台との対応 見。二次元の では、 で凍結は で割れ( で強く凍り、 は凍らない)、局所の量の比は割れませんでした(11-02 §07、条件つきの一点の読み)。群の大きさの役をする で凍結の強さが割れることは、四次元で が境目に落ち 以上が明らかに越えることの二次元の類比として読めます。一次資料の二次元の勘定も「」の型で、同じ議論が四次元の にも当てはまると書いています(Del Debbio–Manca–Vicari 2004 典)。ただし には紫外の札(位相感受率の二つの定義が 13〜14% 違う)が付き、 が凍らないのは格子の尺度が位相電荷を決めている側だからかもしれません。類比はこの留保つきで、二次元の結果は四次元に何も含意しません。
この節が言えている範囲:「H↑ は周期の箱で偽と読める」は 以上の原典と予想を延ばした読みの上の文で、H↑ が偽であることは主張しません。 については未決です。
物理の機構と、証明にならない理由
質量ギャップと閉じ込めを説明する物理の機構は多くあります。この本はどれも証明の道具として使いません。表 4 は、各機構が何を言い、なぜ証明にならないかを一行ずつ並べたものです。最後の行は、この本の 11-05 の主項の文を物理の言葉に寄せた見立てで、他の行と性格が違います。
| 機構 | 何を言うか | 証明にならない理由(一行) | 出所と札 |
|---|---|---|---|
| 強結合の面積則 | 強結合の格子では Wilson ループが面積で減り、自由なクォークは無い | 強結合の極限には回転(Euclid)不変性が無く、連続極限の側(弱結合)へは延びない | Wilson 1974 典(要旨)。強結合の定理(Osterwalder–Seiler 1978)は 仮(記憶) |
| 双対超伝導(可換射影・単極子の凝縮) | 非可換部分を先にゲージ固定すると 個の可換ゲージ場と単極子になり、単極子が凝縮すれば閉じ込め | 凝縮は示されておらず、射影はゲージの選び方に依る。凝縮で閉じ込めが記述される例は物質場を含む超対称の理論に摂動を加えたもので、純ゲージに当たらない | 't Hooft 1981・Seiberg–Witten 1994 典(要旨)・Jaffe–Witten §6.6 典 |
| 中心渦 | 中心の元に値をとる渦が弦張力を担う | 最大中心ゲージと射影の上の格子の数値(「示唆する」の語)で、評価の不等式も極限の文も無い。't Hooft 1978 の代数は相を分類するが、どの相にあるかは決めない | Del Debbio–Faber–Greensite–Olejník 1997・'t Hooft 1978 典(要旨) |
| インスタントンの希薄気体 | 作用 の位相的な解のまわりの半古典の和で真空を近似 | 小さな でだけもっともらしく、 が大きくなると(反)インスタントンが重なり実効の作用が変わる。隙間の生まれる尺度で近似の前提が崩れる | BPST 1975・'t Hooft 1976・Callan–Dashen–Gross 1978 典(要旨)・Lucini–Teper 2001 §6 典(本文)。大きさの積分の赤外の発散は 仮(記憶) |
| 大 N・弦との双対 | 平面図形が支配し、 が弦の結合定数の役をする | 摂動級数の並べ替えか予想で、 が有限への戻り方が無い。問題文も「十分大きな では出発点かもしれない」としつつ、フェルミオンの無いゲージ理論への有効な道は無いと書く | 't Hooft 1974・Witten 1979 典(要旨)・Jaffe–Witten §6.6 典 |
| 軌道の空間の曲率 | ゲージ軌道の空間の曲率と波動汎関数のゲージ不変性から、励起が有限のエネルギーを持つ | Feynman 自身が定性的・示唆的な議論と書き、3+1 次元は論じない。Singer は幾何の記述で、ハミルトニアンの下界の文は無い。言葉は Bakry–Émery(曲率の下界から隙間)に最も近い 見 | Singer 1981・Feynman 1981 典(要旨)・Jaffe–Witten §6.6 典 |
| (この本の見立て)グルーボールは色の一重項の二粒子 | 真空の測度の側で、ゲージ不変な最低の試験の空間は では一粒子に無く、二粒子(二次のカオス)にある(11-05 §05) | 主項(・三色の独立なガウス)の文で、 が有限の値については何も言わない。無限体積では主項の右辺も 0 へ行く。グルーボールとの対応そのものが見立て | 11-05 の (7)(8) 初(主項)・対応は 見 |
この節が言えている範囲:各行の「何を言うか」は原典の要旨か本文の写しで、どの機構の正否も判定しません。
言えないこと
(a) 正体の候補。§03 の「遅い量と相関長が別の起源に割れる」は見立てです。転位の作用の比 の値も、それが群に依らないことも確かめていません。 は二つの数え方のどちらでも境目の近くに落ちます。
(b) 機構。表 4 のどの機構も、この本は証明の道具として使いません。
(c) 二次元。二次元の模型( の帯・)の結果が四次元の何を含意するかは言いません。
(d) 四次元でだけ、とは言わない。二点は臨界次元にいることの性質として述べました。
(e) 表 2。「届くか」と費用の種類は見立てと見積もりで、「新しい数学」は読んだ資料の中に道筋の記述が無いことを指し、不可能を意味しません。
(f) 資料。§05 は読んだ一次資料の範囲の整理で、Balaban の本文・Gribov・Singer・Osterwalder–Seiler の本文は取れていません。「無い」と書いた理論は「読んだ資料の中に無い」の意味です。
(g) 。この本の群 について、位相電荷の凍結が仮定 H を壊すかは決まっていません。H↑ が偽であることも主張しません。
五分類の表と依存グラフ
| 行 | 言明(一行) | 分類 | 根拠 | 範囲 | 機械検査 |
|---|---|---|---|---|---|
| [01] | 四次元で は無次元・四次の項は marginal((1)) | 典 | §01 | — | — |
| [02] | 次元転移 (2)(一ループ) | 典 | 4-07 | 一ループ | — |
| [03] | のスケーリング極限は Gauss | 典 | Aizenman–Duminil-Copin(要旨) | 最近接・格子切断 | — |
| [04] | Balaban の紫外安定性(有限体積・格子・部分列) | 典 | 書誌と他の資料の本文 | 三・四次元・有限体積 | — |
| [05] | MRS の構成(赤外切断・軸ゲージ・・自明な区画・概略) | 典 | 序を本文で | 固定した赤外切断 | — |
| [06] | 三次元の測度も未構成・解の理論は が鍵 | 典 | Chevyrev の総説 | — | — |
| [07] | ・・(3) | 典 | §02 | 一ループ | — |
| [08] | 表 1 の当てはめ( で ) | 典 | 表 1 | 熱浴と過緩和・周期 | — |
| [09] | の一次資料一本( に近い) | 典 | §07 | HMC・小さな箱・三点 | — |
| [10] | 開いた境界の の自己相関が時間の向きの長さに比例 | 典 | §07 | ・物理の一辺を止めた箱 | — |
| [11] | ()なら H↑ は破れる | 初 | 11-01 の (3) | の列 | LatticeGauge.FourDTrial.not_hup_of_fast_tau(仮定:・・)・陰性対照 z_two_compatible_with_hup(仮定なし) |
| [12] | 予想を周期の箱の位相の遅さへ延ばした読み | 仮 | 11-01 §06 | 周期の箱 | — |
| [13] | 周期の箱で H↑ は偽と読める( 以上) | 仮 | §07 | 周期の箱 | — |
| [14] | 先に体積を無限にする順では開いた境界は救いにならない | 仮 | 11-03 §05 | 無限体積 | — |
| [15] | 二つの数え方で は の境目の近く | 見 | §02 | 半古典 | — |
| [16] | で凍結が H を壊すかは未決 | 見 | §07 | — | — |
| [17] | 遅い量と相関長が別の起源に割れる(二点の見立て) | 見 | §03 | — | — |
| [18] | 二点は臨界次元の性質(四次元でだけとは言わない) | 見 | §01 | — | — |
| [19] | 根の三つ (R1)〜(R3) とその関係 | 見 | §05・表 3 | 読んだ資料の範囲 | — |
| [20] | 「結合の窓」は (R2) の言い直し | 見 | §06 | — | — |
| [21] | 四段の表の「届くか」と費用の種類 | 見 | 表 2 | — | — |
| [22] | 二次元の の割れは の境目の類比 | 見 | §07 | 二次元・ に紫外の札 | — |
機械検査の欄が保証するのは実数の列の代数だけで、 が可逆な力学の自己相関時間であること、 が Wilson 測度の Poincaré 定数であることは Lean の外です(10-13)。
依存グラフ(前提の番号は結論の番号より小さい):
[01] 典 DIM 四次元で g² は無次元・marginal [02] 典 DT 次元転移 Λ = μ e^(−1/(2b₀g²)) 一ループ [03] 典 TRIV φ⁴₄ の極限は Gauss [04] 典 BAL Balaban の紫外安定性(部分列・一意性なし) 有限体積 [05] 典 MRS MRS 1993(赤外切断・軸ゲージ・SU(2)・概略) [06] 典 CHV 三次元の測度も未構成・d < 4 が鍵 [07] 典 INST 8π²/g²・D(ρ) ∝ ρ^(11N/3−5)・(3) [08] 典 FIT SU(3) の当てはめ 6.82(7) 熱浴・周期 [09] 典 SU2 SU(2) の一次資料一本(a⁻² に近い) HMC・小さな箱 [10] 典 OB 開いた境界の τ(Q²) が時間の長さに比例 物理の一辺を止めた箱 [11] 初 NH τ ≥ cξ^p(p > 2)⇒ H↑ は破れる Lean not_hup_of_fast_tau [12] 仮 HL 予想を周期の箱へ延ばした読み [13] 仮 R4 周期の箱で H↑ は偽と読める ⟸ [08][11][12] SU(3) 以上 [14] 仮 IV 無限体積を先に取る順で開いた境界は救わない ⟸ [10] [15] 見 SEMI SU(2) は z = 2 の境目の近く ⟸ [07][08] [16] 見 UND SU(2) で凍結が H を壊すかは未決 ⟸ [09][15] [17] 見 TWO 遅い量と相関長が別の起源に割れる ⟸ [01][02][07] [18] 見 CRIT 臨界次元の性質 ⟸ [01][03] [19] 見 ROOT 根の三つ ⟸ [01][02][04][05][06] [20] 見 WIN 結合の窓は (R2) の言い直し ⟸ [19] [21] 見 HUR 四段の表の「届くか」と費用 ⟸ [04][05][06][19] [22] 見 ANA 二次元の N の割れは SU(2) の境目の類比 ⟸ [15][16]
確かめ方は、全ての「⟸」の右の番号が左の番号より小さいことを目で見ることです。円はありません。この章の結論の節点 [13]〜[22] は「仮」か「見」で、質量ギャップの節点も、連続極限の節点もありません。[09]( の一次資料)は [16] にだけ入り、[13] の前提には入りません。 の読みが決まっていないことのグラフの上の姿です(11-01 の依存グラフと同じ形)。
この章が言えている範囲
| 言えている | 言えていない |
|---|---|
| 典 四次元で結合が無次元であること・次元転移・ の自明性・インスタントンの作用と一ループの密度・原典の当てはめ | と格子間隔の関係の数学の証明。 の定数倍が質量ギャップであること |
| 典 三段目の到達点(Balaban の紫外安定性・MRS の赤外切断つきの構成・三次元の測度も未構成)と、MRS が止めた理由の序の文 | Balaban の本文の確認。極限の一意性・無限体積・OS 公理・質量ギャップ |
| 仮 周期の箱で H↑ は偽と読める( 以上・予想を延ばした読み) | H↑ が偽であること。 での同じ読み |
| 見 二点の見立て・根の三つ・結合の窓・四段の表の「届くか」と費用・二次元の類比 | どれも定理ではない。二次元の結果の四次元への含意 |
出典と再現
| もの | 種別 | 出典・道具 |
|---|---|---|
| 問題文と状況報告 | 典 | A. Jaffe, E. Witten, Quantum Yang–Mills Theory, Clay Mathematics Institute (2000)(§6・§6.5・§6.6・脚注 2 を本文で確認)。M. R. Douglas, Report on the Status of the Yang–Mills Millenium Prize Problem (2004)(本文) |
| 構成的場の理論の現状 | 典 | V. Rivasseau, Constructive field theory and applications: perspectives and open problems, arXiv:math-ph/0006017(II・VI を本文で確認。雑誌の巻頁は記憶)。S. Chatterjee, Yang–Mills for probabilists, arXiv:1803.01950(§3・§5・§6 を本文で)。I. Chevyrev, Stochastic quantisation of Yang–Mills, arXiv:2202.13359(§1・§3・§4 を本文で) |
| Balaban の系列 | 典(書誌) | T. Balaban, Commun. Math. Phys. 89 (1983) 571; 95 (1984) 17; 96 (1984) 223; 98 (1985) 17; 99 (1985) 75; 99 (1985) 389; 102 (1985) 255; 102 (1985) 277; 109 (1987) 249; 116 (1988) 1; 119 (1988) 243; 122 (1989) 175; 122 (1989) 355(書誌を照合、本文は取れていない。頁は書誌から数えた) |
| MRS 1993 | 典 | J. Magnen, V. Rivasseau, R. Sénéor, Construction of YM₄ with an infrared cutoff, Commun. Math. Phys. 155 (1993) 325–383(序を本文で確認、引用はこの本の訳) |
| 再構成 | 典 | J. Dimock, The renormalization group according to Balaban I, arXiv:1108.1335(序を本文で)。同じ著者の三次元の QED の概観 arXiv:2204.07201(要旨) |
| 冪の数え・赤外の漸近自由・大きな場 | 典 | R. Bauerschmidt, D. C. Brydges, G. Slade, arXiv:1907.05474(定義 5.2.1・命題 6.1.7・§7 を本文で)。R. Bauerschmidt, T. Bodineau, arXiv:1809.02075(序と §2 を本文で) |
| の自明性 | 典 | M. Aizenman, H. Duminil-Copin, Ann. of Math. 194 (2021) 163–235(要旨。6-08 の出典表) |
| (2) の一ループの形 | 典 | 4-06・4-07 の出典表 |
| インスタントン・(3)・表 1 | 典 | A. A. Belavin, A. M. Polyakov, A. S. Schwartz, Yu. S. Tyupkin, Phys. Lett. B 59 (1975) 85(要旨)。A. Athenodorou, M. Teper, JHEP 12 (2021) 082(§6.2・式 (32)(34)・表 42・43 を本文で)。B. Lucini, M. Teper, JHEP 06 (2001) 050(§6 を本文で)。M. Lüscher, JHEP 08 (2010) 071(§4.3 を本文で) |
| 位相電荷の自己相関・開いた境界 | 典 | M. Lüscher, S. Schaefer, JHEP 07 (2011) 036(§3・§5.3 を本文で)。M. Abe, O. Morikawa, H. Suzuki, PTEP 2025 063B03(§3.2 と図 6 の文を本文で、図の数値は読んでいない)。L. Del Debbio, G. M. Manca, E. Vicari, Phys. Lett. B 594 (2004) 315(本文) |
| ゲージ固定の大域の障害 | 典(書誌のみ) | V. N. Gribov, Nucl. Phys. B 139 (1978) 1。I. M. Singer, Commun. Math. Phys. 60 (1978) 7。中身は記憶 |
| 表 4 の機構 | 典 | K. G. Wilson, Phys. Rev. D 10 (1974) 2445。G. 't Hooft, Nucl. Phys. B 190 (1981) 455。N. Seiberg, E. Witten, Nucl. Phys. B 426 (1994) 19。L. Del Debbio, M. Faber, J. Greensite, Š. Olejník, Phys. Rev. D 55 (1997) 2298。G. 't Hooft, Nucl. Phys. B 138 (1978) 1。G. 't Hooft, Phys. Rev. D 14 (1976) 3432。C. G. Callan, R. F. Dashen, D. J. Gross, Phys. Rev. D 17 (1978) 2717。G. 't Hooft, Nucl. Phys. B 72 (1974) 461。E. Witten, Nucl. Phys. B 160 (1979) 57。I. M. Singer, Phys. Scripta 24 (1981) 817。R. P. Feynman, Nucl. Phys. B 188 (1981) 479(どれも要旨で確認)。K. Osterwalder, E. Seiler, Ann. Phys. 110 (1978) 440(書誌のみ) |
| グルーボールの数値 | 典 | A. Athenodorou, M. Teper, JHEP 12 (2021) 082(表 24・33) |
| H↑ が破れる一行の代数 | Lean | LatticeGauge.FourDTrial(not_hup_of_fast_tau・z_two_compatible_with_hup)。束が保証するのは実数の列の代数だけ |
この章で使った語 — 臨界次元・marginal・次元転移・赤外の漸近自由・インスタントン・転位・四段のハードル・根の三つ (R1)〜(R3)・紫外安定性・結合の窓・双対超伝導・中心渦。意味は A-02 用語集 と 11-A1 にあります。
次に読む章:11-08 問いと、主張しないこと — 卒業研究の大きさで決着のつく問いと、規則の候補の一覧、第 11 部が主張しないこと。
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