この本の全体 目次と読む順
- 第 0 部 入口 — この本の読み方
- 0-01 この本の読み方
- 0-02 一枚の絵
- 0-03 問題文を一語ずつ読む
- 0-04 数学の四次元と物理の四次元
- 第 1 部 数学の準備
- 1-01 ベクトル空間と線形写像
- 1-02 群とは何か
- 1-03 リー群とリー環
- 1-04 SU(2) と SU(3)
- 1-05 多様体と接空間
- 1-06 微分形式と外微分
- 1-07 ベクトル束と接続
- 1-08 確率と測度
- 1-09 無限次元の確率
- 1-10 ヒルベルト空間と自己共役作用素
- 1-11 フーリエ解析と分布
- 1-12 寄り道:四次元でだけ起きること
- 第 2 部 物理の準備
- 2-01 ラグランジアンと作用
- 2-02 場という考え
- 2-03 電磁気学はゲージ理論である
- 2-04 特殊相対論と時空
- 2-05 量子力学の骨
- 2-06 調和振動子と生成消滅
- 2-07 経路積分の考え方
- 2-08 統計力学と相転移
- 2-09 寄り道:イジング模型で見るギャップと相関長
- 2-10 緩和の時間と動的指数 z
- 第 3 部 ヤン–ミルズ理論(古典)
- 3-01 ゲージ原理
- 3-02 非可換ゲージ場
- 3-03 作用と方程式
- 3-04 幾何としてのゲージ理論
- 3-05 インスタントンと位相
- 3-06 寄り道:Donaldson とエキゾチック R⁴
- 3-07 標準模型の中のヤン–ミルズ
- 第 4 部 量子化
- 4-01 正準量子化とハミルトニアン
- 4-02 経路積分とユークリッド化
- 4-03 摂動論と Feynman ダイアグラム
- 4-04 発散と繰り込み
- 4-05 発散の代数
- 4-06 漸近自由
- 4-07 次元転移と Λ
- 4-08 ゲージ固定と Faddeev–Popov
- 4-09 場の量子論の公理
- 4-10 Osterwalder–Schrader の公理と再構成
- 4-11 質量ギャップの定義
- 4-12 寄り道:摂動級数は発散する
- 第 5 部 格子ゲージ理論
- 5-01 Wilson の格子
- 5-02 強結合展開
- 5-03 反射正値性と転送行列
- 5-04 無限体積極限とクラスター展開
- 5-05 弱結合と連続極限
- 5-06 U(1) と非可換の違い
- 5-07 モンテカルロ法
- 5-08 グルーボールと弦張力の測定
- 5-09 何を固定して極限を取るか
- 5-10 有限群の格子ゲージ理論
- 5-11 寄り道:Bakry–Émery と一リンク積分
- 第 6 部 構成的場の理論
- 6-01 構成的場の理論とは
- 6-02 二次元の可解性とヤン–ミルズ測度
- 6-03 スカラー場の構成
- 6-04 クラスター展開
- 6-05 繰り込み群の段の列
- 6-06 三次元ヤン–ミルズの紫外安定性
- 6-07 四次元
- 6-08 四次元の φ⁴ の自明性
- 6-09 確率量子化と正則性構造
- 6-10 四次元で止まる場所
- 6-11 発散以外の障害
- 6-12 寄り道:「1/0 に記号を与えれば」
- 第 7 部 物理の側から
- 7-01 物理はどう見ているか
- 7-02 閉じ込めの機構
- 7-03 弦の絵
- 7-04 大 N
- 7-05 ひも理論と余剰次元
- 7-06 余剰次元が見えなくなる仕組み
- 7-07 ゲージ場はどこから来るか
- 7-08 ホログラフィー
- 7-09 質量ギャップが幾何になる
- 7-10 四次元に戻す
- 7-11 超対称と Seiberg–Witten
- 7-12 等価原理に当たる一文
- 7-13 物理の掘り方が数学と離れる場所
- 第 8 部 二つの言葉の辞書 — 物理の視点と数学の視点
- 8-01 辞書の読み方
- 8-02 辞書 A
- 8-03 辞書 B
- 8-04 辞書 C
- 8-05 私たちの仮定の物理側の対応
- 地図
- 第 9 部 現在地と課題
- 9-01 世界はどこまで来ているか
- 9-02 二つの掘り方の切れ目
- 9-03 新しい概念の候補
- 9-04 課題の一覧
- 9-05 よくある誤解
- 9-06 証明が含むべき段 — 七段の表
- 一本目の道 — 時間の方向から
- 第 10 部 一本目の道(前半)— 時間の方向から:質量ギャップと拡散型緩和時間の仮定
- 10-00 入口 — 階段と、酔歩・物差し・時計
- 10-01 構成の筋と仮定 ξ²
- 10-02 四次元格子で試した道と壁
- 10-03 階段の四段 — なぜ 0+1 次元から始めるか
- 10-04 二重井戸の経路の測度とキンク
- 10-05 一段目の言明 — 四条件と命題 4.5
- 10-06 (H1) 相の中の局所 Poincaré
- 10-07 (H2) の地図 — 七つの道筋と環の継ぎ目
- 10-08 計算機援用とは何か — 窓の中の鎖の条件
- 10-09 区画の枠組みと道筋 5 の三本の筋
- 10-10 迂回策の一覧 — 壊れ方の型
- 10-11 (H3)(H4) と芯の定数
- 10-12 統合表と依存グラフ
- 10-13 Lean の言明と機械検査の限界
- 10-14 突き合わせ — 記録の数と既知の数
- 10-15 残件と費用 — 定理までの距離
- 10-16 主張しないこと
- 10-17 ひらめきと小さな問い
- 第 11 部 一本目の道(後半)— 仮定の形を直し、時間を連続にする
- 11-00 今後の考察 — 入口
- 11-01 仮定 ξ² を妨げる一つの形 — ほぼ保存される大域の量
- 11-02 物差しと座標を選び直す — 保存が壊れる長さ
- 11-03 仮定 ξ² を直す二つの形 — 区画の仮定 ξ² と局所の仮定 ξ²
- 11-04 片側の橋はどの仮定 ξ² を要るか
- 11-05 時間を連続にする — Hamiltonian 格子と真空の測度
- 11-06 凸性の代わりに稀さで払う — 群の上の繰り込みと対数 Sobolev
- 11-07 四次元だからこそ — 無次元の結合と位相
- 11-08 問いと、主張しないこと
- 11-A1 第 11 部の記号の対応表
- 二本目の道 — 空間の方向から
- 第 12 部 二本目の道:空間の方向から — 小さな捩れた T² と閉じ込め
- 12-00 入口 — 時間でなく空間を
- 12-01 捩れた T² と 't Hooft の流束
- 12-02 渦と分数インスタントン
- 12-03 容器 — 枠を条件づけると独立になる
- 12-04 板の閉じ込め
- 12-05 渦の挿入の恒等式
- 12-06 力学で駆動した挿入と流れの補題
- 12-07 なぜ決まった写像は失敗するか
- 12-08 測った記録
- 12-09 この道が止まる場所 — T² を広げることが帯である
- 移り変わりの帯 — 二本の道が同じ壁に着く
- 第 13 部 移り変わりの帯 — 二本の道が同じ壁に着く
- 13-00 入口 — 合流
- 13-01 帯の正しい形
- 13-02 一つの不等式への還元
- 13-03 非可換が効く唯一の場所
- 13-04 構造だけでは渡れない
- 13-05 チェス盤と同時の反転
- 13-06 繰り込みの比較 — 群を区別する比較
- 13-07 時間の側から見た帯
- 13-08 試して止まった道の地図
- 13-09 測った記録
- 13-10 新しい見方の候補
- 13-11 紫外の制御 — 無限個の段で閉じるとは何か
- 閉じる
- 第 14 部 閉じる — 条件つきの言明
- 14-00 入口 — この部の約束
- 14-01 条件つきの言明 — 質量ギャップと閉じ込めを矢印ごとに
- 14-02 条件の台帳
- 14-03 問いの表(横断の索引)
- 14-04 主張しないこと(横断の索引)
- 付録
- A-01 記号表
- A-02 用語集
- A-03 文献案内
- A-04 Lean と機械検査
- A-05 この本の作り方
- A-06 仮定の索引
- A-07 この本から出た論文
板の閉じ込め
この章で分かること — 二つの方向が小さな T²(一辺 の格子)に巻かれ、残りの二つの方向(平面)が広い「板」の格子を考えます。格子間隔と T² の大きさを止めれば、 の Wilson ループは全ての で面積則に従い、弦の張力は です(板の閉じ込めの定理)。証明は初等的で、平面のプラケットの真上に立つ渦の面 の上の符号を一斉に反転する群について平均するだけです。この章では、定理の言明(§02)、五つの手順の証明(§03)、容器の形 と、連続極限ではこの下界が 0 になる理由(§04)、二次元での検査(§05)、先行文献との位置(§06)を置きます。
前提となる章 — 12-03(区画の和のアンサンブル・枠と容器・補題 5)・12-01(捩れの区画と流束)。第 5 部の 5-01(Wilson 作用)・5-02(強結合の面積則)・第 6 部の 6-02(二次元)。
先に言うこと — 定理は格子の上の文で、格子間隔と T² の一辺 を止めたときの文です。連続極限(、)では、この下界は 0 に消えます。定理が強結合の展開を使わずに全ての で成り立つのは、板が実質的に二次元の系だからで、四次元の空間の閉じ込めについては何も言いません。先行文献との照合は済んでいません(Tomboulis–Yaffe 型の議論・Borgs 1985 との照合が残る)。
- 要約〔三〕 — 渦の面を一斉に反転して平均する
- 設定と定理 — 定理 S
- 証明 — 手順 1〜5
- 容器の形と細い渦の費用 — 連続極限では張力の下界が 0
- 二次元での検査
- 先行文献との位置
- 言えないこと
- 五分類の表と依存グラフ — 表 1
要約〔三〕 — 渦の面を一斉に反転して平均する
- 二次元の格子ゲージ理論は、どの結合でも閉じ込めます(Wilson ループが面積の指数で減る)。プラケットが互いに独立に振る舞うからです(6-02)。
- 二つの方向が小さく閉じた板 の格子は、遠くから見れば二次元の系です。だから、T² の大きさを止めておけば、やはり全ての結合で閉じ込めると期待できます。この章はそれを、格子の上で証明つきで述べます 初。
- 道具は 12-03 の区画の和のアンサンブルです。平面のプラケット ごとに、その真上に立つ T² の全ての点の (3,4) プラケット 枚の面 を考えます。 の上の符号 を一斉に反転しても、余閉の条件は保たれ、リンクは変わりません。ループの内側の で反転すると Wilson ループの符号が変わり、重みは高々 倍しか変わりません。
- 全ての反転の組み合わせ( 通り)で平均すると、Wilson ループは内側のプラケットごとの因子 の積で押さえられ、各因子は 以下です。よって ( はループの面積)。
- この下界は について超指数的に弱く(、 で )、連続極限では 0 になります。細い渦の面を一度に反転する費用 が、T² の格子の点の数とともに増えるからです。物理の渦(分数インスタントン)の費用は の程度で に依らないので、太い渦で同じことをする道が次の二章(12-05・12-06)です。
設定と定理
格子 。第 1・2 方向が T²(一辺 )、第 3・4 方向が平面(周期 で切ったもの)です。群は 、作用は Wilson 作用 、T² の捩れ( など)は任意に固定します。ループ は T² の一点 の (3,4) 平面の中にあり、平面の中で面積 (プラケットの数)の領域 を囲むとします。
と置く。全ての 、全ての 、固定した任意の捩れの区画で
とくに の任意の極限点で であり、ループの面積について一様に
初(証明は §03)。(2) の は格子の単位の弦の張力で、条件は「・Wilson 作用・ 固定・格子間隔固定・全ての 」です。(2) の右の不等式は、 と置いて から出ます。
証明 — 手順 1〜5
手順 1(区画の和のアンサンブル)。 12-03 §02 の (1):余閉な と について重み 、測度は Haar × 数え上げ。(、)と書ける は全て、Haar 測度の不変性 により と同じ積分を与えるので、同じコホモロジー類の の和は、その類が表す捩れの区画の 分配関数の定数倍です 初。区画は の類で決まり、区画の指示関数は の関数です。ゲージ不変な Wilson ループは で、同じ置き換えで が の側の符号と打ち消し合うので、区画の中では と(区画の代表の選び方による符号を除いて)同じ期待値を持ちます。
手順 2(渦の面は余閉)。 平面のプラケット ごとに ( 枚)と置きます。三次元の立方体のうち (3,4) の面を持つのは向き (1,3,4) と (2,3,4) のものだけで、例えば T² の点 から方向 1 に伸びて平面のプラケット を張る (1,3,4) の立方体の (3,4) の面は、 と の の二枚です。 なら二枚とも に入り、 なら一枚も入りません。(1,2,3)・(1,2,4) の立方体は (3,4) の面を持ちません。よって全ての立方体は の面を 0 枚か 2 枚含み、 の上の を反転しても余閉の条件は保たれます 初。 なら と は共通のプラケットを持ちません。
手順 3(群の作用)。 平面の全てのプラケットの集合を ()とし、部分集合 に ( の上で反転)を対応させます。これは群 の作用で、余閉な の上の全単射であり、 を変えないので Haar × 数え上げの測度を保ちます。
- Wilson ループ: は の平面の中の 枚で、 は の平面のプラケットを の位置の一枚だけ含みます。よって 、()・(それ以外)。
- 重み: の上の を反転すると作用は だけ変わるので、 と置くと、 から 。 は の上の値だけで決まり、面どうしは交わらないので、。
手順 4(平均)。 を区画の和のアンサンブルの期待値、 を の和と の Haar の積分とします。各 について変数の付け替えで 。 について平均し、 を使うと
です。一枚の不等式 (、ここでは )は、 と から出ます。 と合わせて、(3) の左の式の右辺の絶対値は 以下です。よって
この段では軌道に分ける必要がありません。 ごとの付け替え(全単射)と、 の和と の和の交換だけを使っています。
手順 5(固定した区画への射影)。 群 は (3,4) の流束の偶奇だけを変えます。 は の (3,4) 平面のプラケットを一枚含むので ( の (3,4) 平面全体の の積)を反転し、他の向きのプラケットを含まないので などの他のラベルの指示関数 を変えません。区画 に固定した期待値は 12-03 の (8) と同じく
です。( の平面の補集合、面積 )は、 の反転で符号を変え、 の反転で変わりません。 は全ての の反転で符号を変えます。 は で不変なので、手順 4 と同じ平均で( の役を取り替えて)
(5) の分子と分母を (6) で押さえると (1) です。 で 、()なので、極限点で 、(2) が出ます。∎
ここでは平面の全てのプラケットに群が働くので、12-03 §04 の「外側の項が小さくならない」問題は起きません。外側の項は と自動的に小さくなります。
Lean SlabConfine(SlabConfine.group_average)(仮定なし:)・SlabConfine(SlabConfine.factor_split)(仮定なし:内側と外側への分解)・SlabConfine(SlabConfine.tanh_bound)(仮定:・・)・SlabConfine(SlabConfine.one_sheet)(仮定:・。結論:)・SlabAverage(SlabAverage.average_bound)(仮定:配位の集合が有限・・・ ごとの作用が全単射・・・・。結論:)。手順 4 の有限和の版です。和を Haar 測度の積分に置き換えること、余閉な と区画の位相(手順 1・2・5)は Lean の外で、本文の議論に依ります。
容器の形と細い渦の費用
同じ平均を一つの容器の中だけで行うと、12-03 の偏りの言葉で書けます。平面の一辺 の正方形 ( 枚のプラケット)と T² の積を容器とし、 を張る面の の積を とします。 の反転は容器の内側の だけを変えるので枠 を変えず、 を 倍します。一つの の軌道 の上で、重みは と積の形なので、軌道を条件づけると の各成分は独立で、
です 初。軌道の条件づけは枠の条件づけより細かいので
です 初。枠の最大値で押さえられるのは、細い面の反転の費用 が枠に依らず一様だからです。
極端に弱いこと。 (2) の下界は について超指数的に小さくなります。、 で 、 です。物理の弦の張力 の下界 は、T² の物理の大きさ を止めて (、漸近自由により は増える)とすると 0 に行きます 初。連続極限では、この定理の張力の下界は 0 です。
理由は細い渦の費用。 反転の費用 は、厚さ一つの格子の面 の 枚を一度に裏返す作用で、T² の格子の点の数とともに増えます。一方、物理で渦の費用と考えられているのは、T² を巻く滑らかな分数インスタントンの作用 ()の程度で、 に依りません(12-02)読(物理)。同じ群平均の議論は、反転の重みの比 が に入れば で通るので、細い面の反転を「太い渦を挿入する、測度を保つ写像」に置き換え、 を に依らない量で押さえられれば、格子間隔に一様な下界が見込めます 仮(根拠の在りか:この章の (7) の形と、12-05 の挿入の恒等式・12-06 の力学で駆動した挿入)。そのためには、挿入の費用の一様な評価(紫外の制御)が要り、この本はそれを示していません。
また (8) は、 を使う議論が について超指数的に悪くなることも示しています。T² を広げる話(移り変わりの帯)で一様性を得るには、枠についての最大値でなく平均の形しか使えません(12-03 の補題 5 が平均を取る理由の一つ)。
二次元での検査
手順 1〜5 を二次元の格子 に直接当てると、立方体が無いので余閉の条件は空で、渦の面は (プラケット一枚、定理 S の式で と置いたもの)です。よって同じ証明が二次元の について を与えます。二次元の真の値は 、 なので、定理は全ての で を含みます。
- 大きな での主項: から 、一方 。下界は真の張力 より指数的に小さく、矛盾はありません 初。
- 数で:真の は で 、定理の下界 は です 読(浮動小数)。
- この下界は、12-03 の表 1 の「一辺 1 の容器・枠の最大値の形」 とちょうど一致します。一辺 1 の容器ではプラケット一枚の だけが内側にあり、、その最大が だからです 初(12-03 §07)。板の定理は「厚さ一つの容器を、枠について最大値で押さえる」評価と同じ形をしています。
四次元の板の Wilson ループの測定(Creutz 比・捩れの有無の比較)は、測った記録の章 12-08 に置きます。
先行文献との位置
定理 S の論法(コンパクトな方向を巻く中心の面の上の符号を群として平均する)は、Mack–Petkova・Tomboulis–Yaffe の渦の自由エネルギーの議論と同じ系統で、厚さ一つの容器 の自由エネルギーを作用で直接に押さえたものに当たります 典(系統の対応は Kovács–Tomboulis hep-lat/0108017 §2〜§3 の枠組みとの比較による)。発想は古典的なので、同じ評価が文献に、あるいは言い伝えとして既にある可能性があります。照合が残っているのは次の二つです。
- Tomboulis–Yaffe(Commun. Math. Phys. 100 (1985) 313)型の議論:捩れた分配関数の比で Wilson ループを押さえる不等式(Kanazawa arXiv:0808.3442 の再述)。板の上で同じ形の評価が明示的に書かれているかは、確かめていません。
- Borgs(Nucl. Phys. B 261 (1985)、高温の格子ゲージ理論の空間的な Wilson ループの面積則):十分高い温度で、クラスター展開により空間的な Wilson ループの面積則を示した仕事と記録されています。この本は原典の本文を確かめていません(書誌は二次の記録による)。定理 S との違いとして見込まれるのは、非可換の ・ を止めて全ての ・評価が明示的で初等的、の三点ですが、照合は未了です。
この本の中では、定理 S は次の章の挿入の恒等式の特別な場合(細い挿入)として再び出てきます(12-05 §06)。
言えないこと
(a) 連続極限。(2) の下界は で 0 になります。定理 S は格子間隔に一様な張力について何も言いません。
(b) 四次元の空間。定理 S は T² の大きさ を止めた文で、(四次元の空間へ近づける)では下界が消えます。四次元の閉じ込めについては何も言いません。T² を広げる段が移り変わりの帯です(12-09・13-01)。
(c) 太い渦への改良。§04 の「太い渦の写像で を に依らず押さえる」は仮の筋で、挿入の費用の一様な評価を含め、証明はありません。
(d) 先行文献。§06 の二つとの照合は済んでいません。この章の結果に新しさは主張しません。
(e) Lean。機械検査の欄は有限和の代数(群平均の恒等式・tanh の評価・一枚の不等式)だけです。 の Haar 測度、余閉な 、区画の位相と射影(手順 1・2・5)は Lean の外です。
(f) 極限の存在。 の極限の測度の存在はこの章では扱わず、全ての極限点についての上界として述べています。
五分類の表と依存グラフ
| 行 | 言明(一行) | 分類 | 根拠 | 範囲 | 機械検査 |
|---|---|---|---|---|---|
| [01] | 区画の和のアンサンブルは区画の分配関数の和・Wilson ループの対応(手順 1) | 初 | §03 | ・有限格子 | — |
| [02] | 渦の面 は余閉で互いに交わらない(手順 2) | 初 | §03 | 板 | — |
| [03] | 反転で は 倍・重みは 倍(手順 3) | 初 | §03 | Wilson 作用 | — |
| [04] | 群平均 (3) と (4) | 初 | §03 手順 4 | 区画の和のアンサンブル | SlabAverage(SlabAverage.average_bound)・SlabConfine(SlabConfine.group_average・SlabConfine.tanh_bound・SlabConfine.one_sheet)(仮定は §03 の末尾の通り) |
| [05] | 固定した区画への射影 (5)(6) | 初 | §03 手順 5 | 平面の全てのプラケットに群が働く | — |
| [06] | 定理 S:(1) と | 初 | §02・§03 | ・Wilson 作用・ 固定・格子間隔固定・全ての | —(有限和の核だけ [04]) |
| [07] | 容器の形 (7)・ (8) | 初 | §04 | 一辺 の容器 × T² | — |
| [08] | 連続極限( 固定・)では下界が 0 | 初 | §04 | が で減らないこと | — |
| [09] | 物理の渦の費用は の程度で に依らない | 読(物理) | 12-02 | 希薄な領域・半古典 | — |
| [10] | 太い渦を挿入する写像で、格子間隔に一様な下界が出る | 仮 | 筋:§04 の (7) の形と 12-05・12-06 | 紫外の制御の下 | — |
| [11] | 二次元へ当てると ・一辺 1 の容器の最大値の形と一致 | 初 | §05 | 二次元 | — |
| [12] | §05 の数 | 読 | §05 | 浮動小数 | — |
| [13] | 論法は Mack–Petkova・Tomboulis–Yaffe の渦の自由エネルギーの系統 | 典 | Kovács–Tomboulis §2〜§3 との比較 | — | — |
機械検査の欄の束は、本体の再検査で sorry を含まず、公理が標準の三つの部分集合であることが確かめられたものです。保証されるのは有限の配位の集合の上の和の代数で、手順 1・2・5 と Haar 測度の積分は Lean の外です(10-13)。
依存グラフ(前提の番号は結論の番号より小さい):
[01] 初 SUM 区画の和 = 区画の分配関数の和・W の対応 SU(2)・有限格子 [02] 初 SHEET 渦の面 S_p は余閉・互いに素 板 [03] 初 ACT W は ε_p 倍・重みは r_p 倍、|ln r_p| ≤ 2βN² [04] 初 AVG 群平均 (3)(4) ⟸ [02][03] Lean average_bound ほか [05] 初 PROJ 固定した区画へ (5)(6) ⟸ [01][04] [06] 初 THM 定理 S (1)(2) ⟸ [05] N 固定・a 固定・全ての β [07] 初 BOX 容器の形 (7)(8) ⟸ [03] [08] 初 ZERO 連続極限では下界 0 ⟸ [06] L = Na 固定 [09] 読 FI 物理の渦の費用 π²β(物理) 希薄・半古典 [10] 仮 THICK 太い渦で一様な下界 ⟸ [07][09] 紫外の制御の下 [11] 初 TWO 二次元へ・最大値の形と一致 ⟸ [06] [12] 読 NUM §05 の数 ⟸ [11] 浮動小数 [13] 典 FAM 渦の自由エネルギーの系統
確かめ方は、全ての「⟸」の右の番号が左の番号より小さいことを目で見ることです。円はありません。定理 S([06])の前提は [01]〜[05] だけで、仮定の行 [10] はどの行の前提にも入りません。[10] の結論は「格子間隔に一様な下界」で、[06] の量( を止めた下界)を含みません。
この章が言えている範囲
| 言えている | 言えていない |
|---|---|
| 初 板 の Wilson 作用で、 と格子間隔を止めれば、全ての と全ての捩れの区画で (定理 S) | 格子間隔に一様な張力。T² を広げたときの張力(移り変わりの帯)。新しさ(照合が未了) |
| 初 容器の形 ・連続極限では下界が 0 になること | 太い渦の挿入の費用の一様な評価([10] は仮) |
| 初+読 二次元での整合(・一辺 1 の容器の最大値の形との一致) | 四次元の板の測定(12-08) |
出典と再現
| もの | 種別 | 出典・道具 |
|---|---|---|
| 定理 S と手順 1〜5・容器の形 (7)(8)・二次元への適用 | 初 | 本文 §03〜§05 の証明 |
| 渦の容器・自由エネルギーの議論の系統 | 典 | T. G. Kovács, E. T. Tomboulis, arXiv:hep-lat/0108017(Phys. Rev. D 65 (2002) 074501)§2〜§3 を本文で確認。G. Mack, V. B. Petkova, Ann. Phys. 125 (1980) 117 と E. T. Tomboulis, L. G. Yaffe, Commun. Math. Phys. 100 (1985) 313 はその引用を通して(本文は未確認) |
| Tomboulis–Yaffe の不等式の再述 | 典 | T. Kanazawa, arXiv:0808.3442 |
| 高温の空間的な Wilson ループの面積則 | 照合未了 | C. Borgs, Nucl. Phys. B 261 (1985)(書誌は二次の記録。本文は未確認) |
| 二次元の数 | 読 | と の浮動小数の値(12-03 表 1 と同じ計算) |
| Lean | Lean | SlabConfine(SlabConfine.group_average・SlabConfine.factor_split・SlabConfine.tanh_bound・SlabConfine.one_sheet)・SlabAverage(SlabAverage.average_bound)。束が保証するのは有限和の代数だけ |
この章で使った語 — 板・渦の面 ・反転の群・群平均・細い渦の費用・容器の偏り ・板の閉じ込めの定理(定理 S)。意味は A-02 用語集 にあります(第 12 部の語は追加の予定)。
次に読む章:12-05 渦の挿入の恒等式 — 細い面の反転を一般の「区画を反転する全単射」に置き換えると、何が無条件に言えるか。
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