computo ergo sum

2026-10-15 · chapter ヤン–ミルズと質量ギャップ第 13 部 移り変わりの帯四つの顔・Z₂ のガラス・帯の候補 · Kiichi, Shiori and Rin

この本の全体 目次と読む順
  1. 第 0 部 入口 — この本の読み方
  2. 0-01 この本の読み方
  3. 0-02 一枚の絵
  4. 0-03 問題文を一語ずつ読む
  5. 0-04 数学の四次元と物理の四次元
  6. 第 1 部 数学の準備
  7. 1-01 ベクトル空間と線形写像
  8. 1-02 群とは何か
  9. 1-03 リー群とリー環
  10. 1-04 SU(2) と SU(3)
  11. 1-05 多様体と接空間
  12. 1-06 微分形式と外微分
  13. 1-07 ベクトル束と接続
  14. 1-08 確率と測度
  15. 1-09 無限次元の確率
  16. 1-10 ヒルベルト空間と自己共役作用素
  17. 1-11 フーリエ解析と分布
  18. 1-12 寄り道:四次元でだけ起きること
  19. 第 2 部 物理の準備
  20. 2-01 ラグランジアンと作用
  21. 2-02 場という考え
  22. 2-03 電磁気学はゲージ理論である
  23. 2-04 特殊相対論と時空
  24. 2-05 量子力学の骨
  25. 2-06 調和振動子と生成消滅
  26. 2-07 経路積分の考え方
  27. 2-08 統計力学と相転移
  28. 2-09 寄り道:イジング模型で見るギャップと相関長
  29. 2-10 緩和の時間と動的指数 z
  30. 第 3 部 ヤン–ミルズ理論(古典)
  31. 3-01 ゲージ原理
  32. 3-02 非可換ゲージ場
  33. 3-03 作用と方程式
  34. 3-04 幾何としてのゲージ理論
  35. 3-05 インスタントンと位相
  36. 3-06 寄り道:Donaldson とエキゾチック R⁴
  37. 3-07 標準模型の中のヤン–ミルズ
  38. 第 4 部 量子化
  39. 4-01 正準量子化とハミルトニアン
  40. 4-02 経路積分とユークリッド化
  41. 4-03 摂動論と Feynman ダイアグラム
  42. 4-04 発散と繰り込み
  43. 4-05 発散の代数
  44. 4-06 漸近自由
  45. 4-07 次元転移と Λ
  46. 4-08 ゲージ固定と Faddeev–Popov
  47. 4-09 場の量子論の公理
  48. 4-10 Osterwalder–Schrader の公理と再構成
  49. 4-11 質量ギャップの定義
  50. 4-12 寄り道:摂動級数は発散する
  51. 第 5 部 格子ゲージ理論
  52. 5-01 Wilson の格子
  53. 5-02 強結合展開
  54. 5-03 反射正値性と転送行列
  55. 5-04 無限体積極限とクラスター展開
  56. 5-05 弱結合と連続極限
  57. 5-06 U(1) と非可換の違い
  58. 5-07 モンテカルロ法
  59. 5-08 グルーボールと弦張力の測定
  60. 5-09 何を固定して極限を取るか
  61. 5-10 有限群の格子ゲージ理論
  62. 5-11 寄り道:Bakry–Émery と一リンク積分
  63. 第 6 部 構成的場の理論
  64. 6-01 構成的場の理論とは
  65. 6-02 二次元の可解性とヤン–ミルズ測度
  66. 6-03 スカラー場の構成
  67. 6-04 クラスター展開
  68. 6-05 繰り込み群の段の列
  69. 6-06 三次元ヤン–ミルズの紫外安定性
  70. 6-07 四次元
  71. 6-08 四次元の φ⁴ の自明性
  72. 6-09 確率量子化と正則性構造
  73. 6-10 四次元で止まる場所
  74. 6-11 発散以外の障害
  75. 6-12 寄り道:「1/0 に記号を与えれば」
  76. 第 7 部 物理の側から
  77. 7-01 物理はどう見ているか
  78. 7-02 閉じ込めの機構
  79. 7-03 弦の絵
  80. 7-04 大 N
  81. 7-05 ひも理論と余剰次元
  82. 7-06 余剰次元が見えなくなる仕組み
  83. 7-07 ゲージ場はどこから来るか
  84. 7-08 ホログラフィー
  85. 7-09 質量ギャップが幾何になる
  86. 7-10 四次元に戻す
  87. 7-11 超対称と Seiberg–Witten
  88. 7-12 等価原理に当たる一文
  89. 7-13 物理の掘り方が数学と離れる場所
  90. 第 8 部 二つの言葉の辞書 — 物理の視点と数学の視点
  91. 8-01 辞書の読み方
  92. 8-02 辞書 A
  93. 8-03 辞書 B
  94. 8-04 辞書 C
  95. 8-05 私たちの仮定の物理側の対応
  96. 地図
  97. 第 9 部 現在地と課題
  98. 9-01 世界はどこまで来ているか
  99. 9-02 二つの掘り方の切れ目
  100. 9-03 新しい概念の候補
  101. 9-04 課題の一覧
  102. 9-05 よくある誤解
  103. 9-06 証明が含むべき段 — 七段の表
  104. 一本目の道 — 時間の方向から
  105. 第 10 部 一本目の道(前半)— 時間の方向から:質量ギャップと拡散型緩和時間の仮定
  106. 10-00 入口 — 階段と、酔歩・物差し・時計
  107. 10-01 構成の筋と仮定 ξ²
  108. 10-02 四次元格子で試した道と壁
  109. 10-03 階段の四段 — なぜ 0+1 次元から始めるか
  110. 10-04 二重井戸の経路の測度とキンク
  111. 10-05 一段目の言明 — 四条件と命題 4.5
  112. 10-06 (H1) 相の中の局所 Poincaré
  113. 10-07 (H2) の地図 — 七つの道筋と環の継ぎ目
  114. 10-08 計算機援用とは何か — 窓の中の鎖の条件
  115. 10-09 区画の枠組みと道筋 5 の三本の筋
  116. 10-10 迂回策の一覧 — 壊れ方の型
  117. 10-11 (H3)(H4) と芯の定数
  118. 10-12 統合表と依存グラフ
  119. 10-13 Lean の言明と機械検査の限界
  120. 10-14 突き合わせ — 記録の数と既知の数
  121. 10-15 残件と費用 — 定理までの距離
  122. 10-16 主張しないこと
  123. 10-17 ひらめきと小さな問い
  124. 第 11 部 一本目の道(後半)— 仮定の形を直し、時間を連続にする
  125. 11-00 今後の考察 — 入口
  126. 11-01 仮定 ξ² を妨げる一つの形 — ほぼ保存される大域の量
  127. 11-02 物差しと座標を選び直す — 保存が壊れる長さ
  128. 11-03 仮定 ξ² を直す二つの形 — 区画の仮定 ξ² と局所の仮定 ξ²
  129. 11-04 片側の橋はどの仮定 ξ² を要るか
  130. 11-05 時間を連続にする — Hamiltonian 格子と真空の測度
  131. 11-06 凸性の代わりに稀さで払う — 群の上の繰り込みと対数 Sobolev
  132. 11-07 四次元だからこそ — 無次元の結合と位相
  133. 11-08 問いと、主張しないこと
  134. 11-A1 第 11 部の記号の対応表
  135. 二本目の道 — 空間の方向から
  136. 第 12 部 二本目の道:空間の方向から — 小さな捩れた T² と閉じ込め
  137. 12-00 入口 — 時間でなく空間を
  138. 12-01 捩れた T² と 't Hooft の流束
  139. 12-02 渦と分数インスタントン
  140. 12-03 容器 — 枠を条件づけると独立になる
  141. 12-04 板の閉じ込め
  142. 12-05 渦の挿入の恒等式
  143. 12-06 力学で駆動した挿入と流れの補題
  144. 12-07 なぜ決まった写像は失敗するか
  145. 12-08 測った記録
  146. 12-09 この道が止まる場所 — T² を広げることが帯である
  147. 移り変わりの帯 — 二本の道が同じ壁に着く
  148. 第 13 部 移り変わりの帯 — 二本の道が同じ壁に着く
  149. 13-00 入口 — 合流
  150. 13-01 帯の正しい形
  151. 13-02 一つの不等式への還元
  152. 13-03 非可換が効く唯一の場所
  153. 13-04 構造だけでは渡れない
  154. 13-05 チェス盤と同時の反転
  155. 13-06 繰り込みの比較 — 群を区別する比較
  156. 13-07 時間の側から見た帯
  157. 13-08 試して止まった道の地図
  158. 13-09 測った記録
  159. 13-10 新しい見方の候補
  160. 13-11 紫外の制御 — 無限個の段で閉じるとは何か
  161. 閉じる
  162. 第 14 部 閉じる — 条件つきの言明
  163. 14-00 入口 — この部の約束
  164. 14-01 条件つきの言明 — 質量ギャップと閉じ込めを矢印ごとに
  165. 14-02 条件の台帳
  166. 14-03 問いの表(横断の索引)
  167. 14-04 主張しないこと(横断の索引)
  168. 付録
  169. A-01 記号表
  170. A-02 用語集
  171. A-03 文献案内
  172. A-04 Lean と機械検査
  173. A-05 この本の作り方
  174. A-06 仮定の索引
  175. A-07 この本から出た論文

新しい見方の候補

この章で分かること — 移り変わりの帯の真ん中を渡るには、非可換性を使う不等式が一つ要る、というところまで絞れています(13-06 §07)。この章は、その一つをどの局所量で書くかの候補を並べます。四つの顔——捩れの向きの柔らかさ κw\kappa_w・箱の磁束の混合 δ(L0)\delta(L_0)・柱の捩れのコスト f(ℓ)f(\ell)・圧力の余裕——について、担う局所量、SU(2)SU(2) で成り立つと見る理由、U(1)U(1) で壊れる場所、数値の有無を書きます(§02)。帯の下半分に限った Z2\mathbb Z_2 のガラスの表示(§03)、検討の結果否定的だった共形な枠 H2×S2H^2\times S^2(§04)、そして新しい三つの候補——帯のコンパクト性による還元・Weyl の測度の対数凹性と高さ・方位の分解・柱の局所の階段関数(§05)——を置きます。

前提となる章 — 13-06(繰り込みの比較・四つの顔の一覧・還元の補題)・13-08(止まった道と選別の基準)・13-09(測った記録)・12-03(容器)・13-01(帯の正しい形)。

先に言うこと — この頁の候補は、どれも物理の見立ての水準のものです。どの候補も帯を閉じず、帯のどの β\beta でも定理を与えません。紙の証明を置くのは、候補の足場になる初等的な事実(輸送の恒等式・Jensen の挟み・射影の密度など)だけで、それぞれに「初」を付けます。候補が当たる見込みの数は書きません(見込みの数は判断の補助にすぎず、根拠のある数ではないため)。

この章の順序
  1. 候補の読み方 — 候補が通るべき関所
  2. 真ん中の帯の四つの顔(表 1)
  3. Z2\mathbb Z_2 のガラス — 帯の下半分に限る
  4. 共形な枠 H2×S2H^2\times S^2 — 検討の結果否定的
  5. 三つの新しい候補 — コンパクト性による還元・Weyl の測度・柱の階段関数
  6. ほかの五つの候補(表 2)
  7. 言えないこと
  8. 五分類の表と依存グラフ

01

候補の読み方 — 候補が通るべき関所

この頁の候補は、13-08 §07 の選別の基準を関所として通してから並べています。とくに次の四つを、各候補で名指しします。

候補ごとに、(i) 担う局所量、(ii) SU(2)SU(2) で成り立つと見る理由(非可換性が入る場所)、(iii) U(1)U(1) と Z2\mathbb Z_2 で壊れる場所、(iv) 台帳(13-08)との照合、(v) 数値の有無、を書きます。札は、初等的な事実に「初」、数値に「読」、見立てに「読(物理)」です。

02

真ん中の帯の四つの顔

帯を渡る非可換な不等式を、どの局所量で書くかの候補が四つあります。どれか一つを、尺度に一様に、U(1)U(1) で破れる形で示せばよい、という意味で「顔」と呼びます。どの顔でも、尺度をまたぐ比較(例えば f(2ℓ,2N,β)≤Kf(ℓ,N,β′)f(2\ell,2N,\beta)\le Kf(\ell,N,\beta'))は大域の繰り込みの比較と同じ難しさの局所版で、易しくなるわけではありません。顔を替えて得るのは、証明の対象が「境界を止めた有限の領域の言明」に変わることです。

表 1 四つの顔(予想と理由は物理の見立て。数値は読)
顔担う局所量SU(2)SU(2) で成り立つと見る理由U(1)U(1)・Z2\mathbb Z_2 で壊れる場所数値
捩れの向きの柔らかさ κw\kappa_w幅 ww の帯の中で、捩れの生成場に沿った力の分散(適応した剛性)ww とともに減る。Nielsen–Olesen の柔らかい方向で、一ループのスピンの項 +4+4 の非摂動版U(1)U(1) はスピンの項が無く κw≥cβ\kappa_w\ge c\beta。Z2\mathbb Z_2 は連続な道が無く、細い面(面積あたり 2β2\beta)しか使えない無し
箱の磁束の混合 δ(L0)\delta(L_0)箱の境界の中心の磁束を変えたときの、内側の立方体の法則の全変動距離L0L_0 とともに指数的に 0 へU(1)U(1) の Coulomb の相では O(β)O(\beta) のまま残る無し
柱の捩れのコスト f(ℓ)f(\ell)外枠を止めた TN2×ℓ×ℓT^2_N\times\ell\times\ell の柱の、捩れの条件つきの自由エネルギーと偏り E∣θB∣\mathbb E|\theta_B|e−σℓ2e^{-\sigma\ell^2} の型U(1)U(1) は π2β/ℓ2\pi^2\beta/\ell^2 の型、Z2\mathbb Z_2 は ≈2β\approx2\beta有り(13-09 §07)
圧力の余裕捩れの模様を入れた系と入れない系の圧力の差 p∞−pG,Lp_\infty-p_{G,L}(チェス盤の密度 κcb\kappa_{\rm cb} の指数)中間の β\beta で正の余裕が残るU(1)U(1) は小さな κcb\kappa_{\rm cb} を作らない無し

顔 1 捩れの向きの柔らかさ κw\kappa_w — 輸送で区画をつなぐ

足場になるのは、区画を写す写像による自由エネルギーの恒等式です。区画 0 の配位空間から区画 1 の配位空間への可測な全単射 TT(Jacobian JTJ_T)を取り、μ0,μ1\mu_0,\mu_1 を二つの区画の Gibbs 測度、ΔF=−ln⁡(Z1/Z0)\Delta F=-\ln(Z_1/Z_0) とすると

ΔF = Eμ0[S∘T−S−ln⁡JT] − KL(T#μ0 ∥ μ1)(1)\Delta F\ =\ \mathbb E_{\mu_0}\bigl[S\circ T-S-\ln J_T\bigr]\ -\ \mathrm{KL}\bigl(T_\#\mu_0\,\big\|\,\mu_1\bigr)\tag{1}

が成り立ちます 初。

証明。変数変換で Z1=∫e−S(Tx)JT(x) dxZ_1=\int e^{-S(Tx)}J_T(x)\,dx なので、G:=S∘T−S−ln⁡JTG:=S\circ T-S-\ln J_T と置くと Z1/Z0=Eμ0[e−G]Z_1/Z_0=\mathbb E_{\mu_0}[e^{-G}]。測度 μ~∝e−Gμ0\tilde\mu\propto e^{-G}\mu_0 は μ1\mu_1 を T−1T^{-1} で引き戻したもので、KL(μ0∥μ~)=Eμ0[G]+ln⁡Eμ0[e−G]\mathrm{KL}(\mu_0\|\tilde\mu)=\mathbb E_{\mu_0}[G]+\ln\mathbb E_{\mu_0}[e^{-G}]。TT が全単射なので KL(μ0∥μ~)=KL(T#μ0∥μ1)\mathrm{KL}(\mu_0\|\tilde\mu)=\mathrm{KL}(T_\#\mu_0\|\mu_1)。整理すると (1)。∎

(1) の第一項は「写像の作用の費用」、第二項は余りです。写像 TT が決定論的だと、余り(相対エントロピー)は渦の面の面積とともに増えるので、e−σAe^{-\sigma A} 型の面積則は出ません 読(物理)(13-08 §05 の C3)。したがって輸送の道の目標は、面積則ではなく、定性的な ΔF(L,L)→0\Delta F(L,L)\to0(13-06 §08 の中間の到達点)です。

(ii) SU(2)SU(2) で成り立つと見る理由 読(物理)。捩れの生成場に沿って区画を写す「適応した」写像は、変数を三角に変換するもので JT=1J_T=1、つまり体積を保ちながら揺らぎの形を変える写像です。12-07 の原理——体積を保つことでなく、揺らぎの形を変えないことが反遮蔽の +4+4 を見えなくする——の非摂動版にあたります。κw\kappa_w は、その写像の作用の費用の揺らぎの大きさで、幅 ww の帯の中で Nielsen–Olesen の柔らかい方向が効けば ww とともに減ると見ます。

(iii) 壊れる場所。U(1)U(1) にはスピンの項が無く、κw≥cβ\kappa_w\ge c\beta が残ります。Z2\mathbb Z_2 には区画をつなぐ連続な道が無く、細い面(面積あたり 2β2\beta)しか使えません。(iv) 台帳:表 1 の 25(スピンと指数定理は一ループで漸近自由の言い換え)に当たる危険があり、非摂動の部分を分散 κw\kappa_w の評価として切り出せるかが分かれ目です。(v) 数値:無し。

顔 2 箱の磁束の混合 δ(L0)\delta(L_0) — 有限の箱の判定

Dobrushin–Shlosman 型の有限サイズの判定の、ゲージ版の候補です。目標の形は「δ(L0,β)≤εd\delta(L_0,\beta)\le\varepsilon_d ならば面積則」で、判定そのものは書き下されていません 読(物理)。相関不等式(GKS)を使わないので、SU(2)SU(2) に GKS が無いという障害(表 1 の 2・4)には当たりません。

SU(2)SU(2) では δ(L0)\delta(L_0) が L0L_0 とともに指数的に 0 へ向かうと見ます。U(1)U(1) の Coulomb の相では、Gauss 近似の Villain 模型で相対エントロピーが L0L_0 に依らず O(β)O(\beta) で残ります(見立ての水準の勘定)読(物理)。注意:通常の Dobrushin の判定を枠つきで使うと、連続な場が境界に追随して影響係数がほぼ 1 になります(13-08 の C7)。δ(L0)\delta(L_0) が中心の磁束だけを変える量なのは、この追随を避けるためです。数値は無し。

顔 3 柱の捩れのコスト f(ℓ)f(\ell) — 箱の Wilson ループと同じ量

柱の内部は、骨格 Σ\Sigma(柱の外枠)を与えると条件つきで独立なので

∣θ∣ ≤ E∏B∣θB(Σ)∣(2)|\theta|\ \le\ \mathbb E\prod_B|\theta_B(\Sigma)|\tag{2}

が成り立ちます 初(12-03 §03 の補題 5 と同じ枠組みで、新しい内容はありません)。新しいのは f(ℓ)f(\ell) の読み方です。外を止めた箱の中の電気的な流束は、箱の Wilson ループの面積則と同じ量です 読(物理)。すると輪が一つできます:Tomboulis–Yaffe の不等式(θ\theta から Wilson の面積則、13-01 §04)と、(2)(箱の Wilson の面積則から θ\theta)です。

輪を回すには二つ足りません(開):周期的な境界条件と止めた境界条件の比較、そして ln⁡N\ln N の損失です。損失が残っても ln⁡(1/θ(L,L))≥cL2/ln⁡L\ln(1/\theta(L,L))\ge cL^2/\ln L は出て、Tomboulis–Yaffe を通せば ⟨W⟩≤2exp⁡(−cA/ln⁡A)\langle W\rangle\le2\exp(-cA/\ln A)(周長則より速い減衰)になる、という見立てです 読(物理)。

数値は有ります(13-09 §07)読。外枠を止めた T42×ℓ×ℓT^2_4\times\ell\times\ell で、ℓ≥5\ell\ge5 の SU(2)SU(2)(β=2.3\beta=2.3)の E∣θB∣\mathbb E|\theta_B| は U(1)U(1)(β=1.3\beta=1.3)の 1/5〜1/7 で、θ\theta を小さく保つのに要る ℓ\ell は SU(2)SU(2) では N≤8N\le8 で 6〜7 とほとんど伸びず、U(1)U(1) では伸びます。この大きさでは、止めた境界条件と周期的な境界条件の違いは問題になっていないように見えます。ただし SU(2)SU(2) の値は統計の底に近く、e−σℓ2e^{-\sigma\ell^2} と冪の区別はつきません。

顔 4 圧力の余裕 — 計算機援用の挟み撃ち

チェス盤の密度を κΛ=exp⁡(∣B∣(pG,Λ−pΛ))\kappa_\Lambda=\exp(|B|(p_{G,\Lambda}-p_\Lambda))(pGp_G は捩れの模様を入れた系の圧力、∣B∣|B| はタイルの体積)と書きます。上からは、模様が鏡映対称なら周期の転送行列が正で、Schatten ノルムの単調性から pG,Λ≤pG,Lp_{G,\Lambda}\le p_{G,L}(Λ\Lambda が LL の倍数)。下からは pΛ≥p∞p_\Lambda\ge p_\infty と、無限体積の圧力の下界 plbp_{\rm lb} をループ方程式のブートストラップの双対の証明書(Kazakov–Zheng の方法、照合未了)から取る。合わせると κΛ≤exp⁡(∣B∣(pG,L−plb))\kappa_\Lambda\le\exp(|B|(p_{G,L}-p_{\rm lb})) が Λ\Lambda に一様になり、固定した β\beta で明示的な張力の面積則が出る、という見立てです 読(物理)。

この顔は帯(格子間隔に一様)を越えません。得られるとすれば、四次元 SU(2)SU(2) の中間の結合(例えば β=1.0\beta=1.0)での、固定した β\beta の閉じ込めです。探した範囲で、その証明は見当たりません。§05 の還元(候補 A)と組むと、この種の固定した β\beta の結果がそのまま帯の部品になります。U(1)U(1) の β=1.2\beta=1.2 は小さな κ\kappa を作らないはずで、対照に使えます。数値は無し。

03

Z₂ のガラス — 帯の下半分に限る

SU(2)SU(2) の元を U=σVU=\sigma V(σ∈Z2\sigma\in\mathbb Z_2、VV は SO(3)SO(3) の切断)と書くと、捩れの区画の分配関数は Zn=∫dω Zn(ω)Z_n=\int d\omega\,Z_n(\omega) と書けます。Zn(ω)Z_n(\omega) は、SO(3)SO(3) の背景 ω\omega が決める結合 βJp(ω)\beta J_p(\omega)(Jp=12tr VpJ_p=\tfrac12\mathrm{tr}\,V_p、符号はランダム)と捩れ nn を持つ Z2\mathbb Z_2 ゲージ理論の分配関数です。X(ω)=ln⁡Z0(ω)/Z1(ω)X(\omega)=\ln Z_0(\omega)/Z_1(\omega) と置き、Pn(dω)∝Zn(ω)dωP_n(d\omega)\propto Z_n(\omega)d\omega とすると

EP1[X] ≤ ΔF ≤ EP0[X](ΔF=ln⁡Z0/Z1)(3)\mathbb E_{P_1}[X]\ \le\ \Delta F\ \le\ \mathbb E_{P_0}[X]\qquad(\Delta F=\ln Z_0/Z_1)\tag{3}

です 初。

証明。Z0/Z1=∫Z1(ω)eX(ω)dω/Z1=EP1[eX]≥eEP1XZ_0/Z_1=\int Z_1(\omega)e^{X(\omega)}d\omega/Z_1=\mathbb E_{P_1}[e^X]\ge e^{\mathbb E_{P_1}X}(Jensen)から左側。同様に Z1/Z0=EP0[e−X]≥e−EP0XZ_1/Z_0=\mathbb E_{P_0}[e^{-X}]\ge e^{-\mathbb E_{P_0}X} から右側。∎

(3) の右辺は、SO(3)SO(3) の背景で焼き入れた Z2\mathbb Z_2 のランダムな面のゲージ模型の、捩れの自由エネルギーです。この表示だけなら U(1)U(1) にも同じものがあるので、基準 (m) は満たしません。群の区別は、背景のフラストレーション(Z2\mathbb Z_2 の単極子)と柔らかい面の密度という力学の量に入ります 読(物理)。

診断の結果(13-09 §08)読。848^4 で、β≳2.0\beta\gtrsim2.0 では実効的な Z2\mathbb Z_2 結合の平均が 1.1〜1.9 と純 Z2\mathbb Z_2 の転移点 0.44 を大きく超え、フラストレーションを独立な符号に換算した peffp_{\rm eff} は 0.017〜0.09 で、Nishimori 多重臨界点 0.11 より小さい。帯の上半分では、ガラスは秩序相の側にあります。SO(3)SO(3) の場がすでに区画を見分けてしまい(∣X∣|X| が大きい)、挟み (3) は大きく緩みます。そこでの閉じ込めは SO(3)SO(3) の部分(太い中心渦)が担う、と読めます。弱結合で中心渦が太いという物理の描像と合います 読(物理)。

β≲1.5\beta\lesssim1.5 では peff≥0.16p_{\rm eff}\ge0.16、柔らかい面は 28〜49% で、ガラスは無秩序の側です。したがってガラスの道は帯の下半分に限ります。上半分については捨てました(13-08 §05 の C4)。下半分での使い方の候補は、箱の磁束の混合(顔 2)の変種で、外を SO(3)SO(3) の部分だけで条件づけ、境界の中心の流束(Z2\mathbb Z_2 の符号)だけを裏返したときの内側の法則の全変動距離 δc(L0,β)\delta_c(L_0,\beta) を測るものです。SO(3)SO(3) の枠は動かないので、連続な場が境界に追随する障害(C7)を避けられます。残る結合は Z2\mathbb Z_2 のガラスだけです。帯の上半分では δc\delta_c も 1 に近いはずで、この変種は帯の下の端を押し上げる作業(13-06 §04)の側に属します 読(物理)。

04

共形な枠 H² × S² — 検討の結果否定的

R4\mathbb R^4 から一本の直線を除いた空間は、H2×S2H^2\times S^2 に共形です 初:直線からの距離を rr、直線に沿う座標を tt とすると

dt2+dr2+r2dΩ2 = r2[dt2+dr2r2+dΩ2](4)dt^2+dr^2+r^2d\Omega^2\ =\ r^2\Bigl[\frac{dt^2+dr^2}{r^2}+d\Omega^2\Bigr]\tag{4}

で、括弧の中は双曲平面 H2H^2(上半平面のモデル)と単位球面の積です。直線の上に 't Hooft の線を置くと、直線を囲む全ての球面に Z2\mathbb Z_2 の流束 1 が乗ります(n12=1n_{12}=1 の正確な類似)。そして、点 (t,r)∈H2(t,r)\in H^2 に対応する球 {t}×Sr2\{t\}\times S^2_r は、半平面の中のループ CC と、(t,r)(t,r) が CC の囲む領域の内側にあるとき、かつそのときに限り奇数回まわります 初(球が張る三次元の球体と CC の交点は、線分 {t}×[0,r)\{t\}\times[0,r) と CC の交点)。R4\mathbb R^4 で局所的な閉曲面を使う道を止めた位相的な障害(表 1 の 8:閉曲面は平面と偶数回交わる)を、直線を「外側」として使うことで避けている形です。直線の近く(r→0r\to0)が小さな球の領域(弱結合)、遠く(r→∞r\to\infty)が赤外で、尺度が位置に変わります。

見込みがあったのはここまでで、検討の結果は否定的でした 読(物理)。

結論:共形な枠は「尺度の変化=H2H^2 の中の平行移動」として繰り込みを空間の言葉にしますが、運動学だけでは面積則は出ず、核心(漸近自由による乱れの増加)は同じ場所に残ります。価値は、R4\mathbb R^4 の段(9-06 の段 6)を板を経由せずに述べる枠組みとしての見通しの良さにあります。't Hooft の線のある測度でのループと、線の無い R4\mathbb R^4 のループの関係は開いていて、比較原理が失敗した前例(13-08 §04)があります。

05

三つの新しい候補

帯の候補を八つ検討し、そのうち三つをここに置きます(残りは §06)。選んだ理由は、候補 A は紙で確実に書ける還元で、帯の「どこが本当に難しいか」を動かすこと、候補 B は二次元の関所で四次元より先に安く試せ、単調性の源と乱れの機構が逆向きになる型(13-08 §01 の教訓)に当たらない数少ない形であること、候補 C は既にある柱の数値の道具でそのまま試せ、基準 (m) を直接見られることです。

候補 A 帯のコンパクト性による還元

(i) 一行。帯は β\beta について有界な閉区間 I=[βa,βb]I=[\beta_a,\beta_b] なので、帯の中の繰り込みの比較は、β′\beta' を β\beta から少し下げるだけで成り立ち、帯は有限回の段で渡れる。要るのは帯の各 β\beta での「固定した β\beta の閉じ込め(周長の次数の誤差つきの両側の漸近)」だけ。

これは 13-06 §06 の補題 1 として、証明つきで置かれています 初(仮定 (A1)(A2)・N≥N1N\ge N_1・M≥M0M\ge M_0 の下)。ここでは「見方」としての意味だけを書きます。

(ii) 担う局所量。固定した β\beta での、大きな体積の渦の自由エネルギーの両側の評価。局所量としては、柱の偏りの、ℓ≫ξ(β)\ell\gg\xi(\beta) での面積の率 σN(β)\sigma_N(\beta) と、周長の次数の誤差 pp。

(iii) 非可換性の入る場所 読(物理)。補題そのものは群に依りません。非可換性は全て仮定(帯の中の SU(2)SU(2) の閉じ込め)に入ります。この候補は道具でなく還元で、難しさの場所を移すためのものです。還元の後、帯の中に残るのは固定した β\beta の問題(体積に一様な評価・凸でない大きな場・相転移が無いこと)で、尺度をまたぐ難しさは帯の上端(相関長 ξ(β)\xi(\beta) が格子単位で急に伸びる所)と紫外の制御の継ぎ目に寄ります。

(iv) 壊れる場所。U(1)U(1)(β∈(1.01,2.7)\beta\in(1.01,2.7))と Z2\mathbb Z_2(転移より弱結合の側)では仮定が偽なので、結論も出ません。基準 (m) は仮定が担います。

(v) 台帳との照合。表 1 の 6(小さな T2T^2 から連続に延ばす背理法)とは違い、使う連続性は β\beta についての有限体積の量の連続性だけです。連続極限の結合の階段関数を有界な区間で考える着想と同じ精神ですが、こちらは格子の β\beta で止めて、連続極限を経ません。

(vi) 既知の結果との関係。強結合の側では、ちょうどこの形の言明が筋の水準であります(13-06 §03 の命題 S)。帯の中の β≈1\beta\approx1 での四次元 SU(2)SU(2) の格子の閉じ込めの証明は、探した範囲で見当たりません(強結合の側の最前線は小さな β\beta、13-08 §07)。Chatterjee(arXiv:2006.16229、抄録で確認・本文は照合未了)は、中心が非自明で、任意の境界条件の下で相関が指数的に減衰すれば中心対称性は破れず、破れなければ閉じ込める、という形の結果を与えています。固定した β\beta の定性的な閉じ込めへの入口になりえますが、仮定 (A1) の周長の次数の精度は出しません。

(vii) 次に要るもの。(A1) の上側を、有限の箱の判定(顔 2・顔 4)で β\beta ごとに出す道と、下側(渦が安すぎないこと=弦の張力の上界)を試行の渦の変分で出す道です。どちらも固定した β\beta の問題で、箱の大きさは ξ(β)\xi(\beta) 程度で済みますが、帯の上端では ξ(β)\xi(\beta) が格子単位で 10 を超え、四次元の有限の箱の計算は規模で止まります(表 1 の 3)。数値は無し。

候補 B Weyl の測度の対数凹性と、高さ・方位の分解

(i) 初等的な事実 初。単位球面 Sn−1⊂RnS^{n-1}\subset\mathbb R^n の一様な測度を一つの座標 tt に射影した密度は

ρn(t) ∝ (1−t2)(n−3)/2,t∈[−1,1](5)\rho_n(t)\ \propto\ (1-t^2)^{(n-3)/2},\qquad t\in[-1,1]\tag{5}

です。証明。高さ tt の切り口は半径 1−t2\sqrt{1-t^2} の球面 Sn−2S^{n-2} で、その面積は (1−t2)(n−2)/2(1-t^2)^{(n-2)/2} に比例し、高さ dtdt の帯の幅(球面に沿う長さ)は dt/1−t2dt/\sqrt{1-t^2} です。掛けて (5)。∎ よって n≥3n\ge3 で ρn\rho_n は対数凹(n=3n=3 で平ら)、n=2n=2 で対数凸(逆正弦の分布)です。SU(2)≅S3SU(2)\cong S^3(n=4n=4)では t=12tr Ut=\tfrac12\mathrm{tr}\,U の密度は ∝1−t2\propto\sqrt{1-t^2}(Weyl の測度)、U(1)=S1U(1)=S^1 では ∝1/1−t2\propto1/\sqrt{1-t^2} です。

二次元の O(3)O(3) 模型では、スピンを s=(1−t2cos⁡φ, 1−t2sin⁡φ, t)s=(\sqrt{1-t^2}\cos\varphi,\ \sqrt{1-t^2}\sin\varphi,\ t) と書くと、S2S^2 の一様な測度は dt dφ/(4π)dt\,d\varphi/(4\pi) で((5) の n=3n=3)、si⋅sj=(1−ti2)(1−tj2)cos⁡(φi−φj)+titjs_i\cdot s_j=\sqrt{(1-t_i^2)(1-t_j^2)}\cos(\varphi_i-\varphi_j)+t_it_j なので、高さ tt を条件にした方位 φ\varphi の模型は、結合 Jij=β(1−ti2)(1−tj2)≥0J_{ij}=\beta\sqrt{(1-t_i^2)(1-t_j^2)}\ge0 の XY 模型です 初。フラストレーションはありません。

(ii) 担う局所量。ブロック b×bb\times b の粗い変数で測った、方位の実効結合 Jeff(b)J_{\rm eff}(b) と、高さの揺らぎ。

(iii) 成り立つと見る理由 読(物理)。条件つきの方位の模型は強磁性なので、XY の Ginibre の不等式(照合未了)が向きよく使えます:結合を下げると相関が下がる。指数減衰に要るのも相関の上界なので、単調性の源と乱れの機構が同じ向きを向きます。乱れは高さの揺らぎ、つまり n≥3n\ge3 の測度 (5) から来ます。O(2)O(2) には高さがありません。

(iv) 壊れる場所。O(2)O(2):高さが無く、方位は結合 β\beta の XY のまま(KT 相)。四次元の U(1)U(1):類の向きの自由度(S2S^2)が無い。Z2\mathbb Z_2:連続な方位が無い。

(v) 台帳との照合と危険。表 1 の 22(一点の Bakry–Émery)・26(曲率の繰り込み)と違い、曲率でなく射影の対数凹性と条件つきの Ginibre を使います。表 1 の 10(Z2\mathbb Z_2 の GKS)と違い、条件つきの模型にフラストレーションがありません。危険は二つです。(a) 赤道の向きの埋め込みで逆の結論(O(3)O(3) に KT 型の相がありうる)を論じた Patrascioiu–Seiler の議論(照合未了)があり、この候補はその論争の場所に立ちます。(b) 一サイトの水準では JijJ_{ij} の典型値が KT の閾値を超え、比較は何も言いません。効くとすればブロックの水準だけで、そこには Ginibre の比較が直接には無く、迂回の型 7(移しかえ)の危険があります。

(vi) 四次元へ。U=t+i1−t2 n⋅σU=t+i\sqrt{1-t^2}\,n\cdot\sigma(n∈S2n\in S^2 は類の向き)の nn を条件にした残りの U(1)U(1) が強磁性になる表示が要りますが、作れていません。二次元の格子の O(n)O(n)(n≥3n\ge3)で全ての温度の指数減衰を示すこと(Polyakov の予想)は未解決です(13-08 §07 の (j))。

(vii) 数値。無し。最初の試験の形は決まっています:二次元の O(3)O(3)(β=1.5,1.7\beta=1.5,1.7)・対照の O(2)O(2)(KT 相と無秩序相)・補助の O(4)O(4)(高さの密度が SU(2)SU(2) と同じ 1−t2\sqrt{1-t^2})で Jeff(b)J_{\rm eff}(b) を測り、O(3)O(3) で相関がすでに減衰している大きさでも JeffJ_{\rm eff} が KT の目安を超えたままなら、この候補を捨てる。O(2)O(2) で JeffJ_{\rm eff} が bb とともに下がれば、測り方が機械的に結合を下げているとして結果を使わない。ブロックの水準の Ginibre の比較は定理として存在しないので、通っても必要条件の見張りにとどまります。

候補 C 柱の局所の階段関数

(i) 一行。大域の ΔF\Delta F の繰り込みの比較を、外枠を止めた柱の量の比較に置き換える:

f(2ℓ,2N,β) ≤ K⋅f(ℓ,N,β′)c,β′<β,  ℓ≥ℓmin⁡(6)f(2\ell,2N,\beta)\ \le\ K\cdot f(\ell,N,\beta')^{c},\qquad\beta'\lt\beta,\ \ \ell\ge\ell_{\min}\tag{6}

(KK・cc は ℓ\ell・NN に依らない)。(ii) 担う局所量。柱 TN2×ℓ×ℓT^2_N\times\ell\times\ell(外枠は平衡な配位で止める)の条件つきの捩れの自由エネルギー ΔFB\Delta F_B と偏り θB=tanh⁡(ΔFB/2)\theta_B=\tanh(\Delta F_B/2)。比べる量は、枠についての ΔFB\Delta F_B の中央値(符号つき)と E∣θB∣\mathbb E|\theta_B| の二つ。

(iii) 成り立つと見る理由 読(物理)。既にある数値(13-09 §07)で、θ\theta を小さく保つのに要る ℓ\ell は SU(2)SU(2) では NN とともにほとんど伸びず、U(1)U(1) では伸びます。非可換性は、渦が T2T^2 の大きさの塊(分数インスタントン)に局在できる所に入ります。その作用は Bogomolny の下界で T2T^2 の大きさに依らないからです(12-02)。

(iv) 壊れる場所。U(1)U(1) の Coulomb の相では流束が一様に広がり、柱の偏りは冪でしか減らない(ℓ=5→8\ell=5\to8 で約 ℓ−1.4\ell^{-1.4})ので、局所の β′\beta' は β\beta 以上に出るはずです。Z2\mathbb Z_2 は面の張力が残り、同様です。

(v) 台帳との照合。表 1 の 27(境界条件・幾何の比較)とは違い、同じ対象を二つの尺度で比べます。表 1 の 2 の相関不等式も使いません。基準 (k) のため、小さな ℓ\ell(3 以下)は格子の人工物で破れうるとして、主張は ℓ≥ℓmin⁡\ell\ge\ell_{\min} の形にします。捩れの境界条件で定義した結合の階段関数(de Divitiis らの方法、照合未了)の局所版にあたります。

(vi) 数値。(6) そのものを測った数は、まだ有りません。試験の形は決まっています:細かい側 (N,ℓ)=(4,4)(N,\ell)=(4,4)、粗い側 (2,2)(2,2)(余裕があれば (4,6)(4,6) と (2,3)(2,3))で、SU(2)SU(2) は β=2.3\beta=2.3、U(1)U(1) は閉じ込めの相 β=0.9\beta=0.9 と Coulomb の相 β=1.3\beta=1.3。予言は、SU(2)SU(2) で β′<β\beta'\lt\beta、U(1)U(1) は β=0.9\beta=0.9 で β′<β\beta'\lt\beta、1.31.3 で β′≥β\beta'\ge\beta(相で符号が反転)。U(1)U(1) の二点で符号が分かれなければ、この観測量は相を見分けないとして候補を一段下げます。(2,2)(2,2) は人工物が大きいので、(4,6)/(2,3)(4,6)/(2,3) で確かめるまでは兆候として扱います。

(vii) 難しさ。(6) を示すことは、大域の繰り込みの比較と同じ難しさの局所版です(§02 の冒頭)。得るのは、証明の対象が「境界を止めた有限の領域の言明」になること、そして候補 A の仮定 (A1) を柱の言葉で書けることです。

06

ほかの五つの候補

検討した八つの候補のうち、残りの五つを一行ずつ置きます。どれも §05 の三つより優先しなかった理由を添えます。札は全て「読(物理)」で、初等的な恒等式を含むものはその行に「初」を足します。

表 2 ほかの五つの候補
候補一行優先しなかった理由札
D 符号の打ち消しとしての閉じ込め捩れの和を取った測度 PP(重み Z0(ω)+Z1(ω)Z_0(\omega)+Z_1(\omega))で θ=EP[tanh⁡(X/2)]\theta=\mathbb E_P[\tanh(X/2)]。帯の上半分でガラスが秩序相(∣X∣|X| が大きい)でも、XX の符号が打ち消せば θ\theta は小さい群の区別が NN を大きくしたときの伸び方に出る点で、柱の顔 f(ℓ)f(\ell) と同じ量の言い換えに近い。数値は乱れた Z2\mathbb Z_2 ゲージ理論の分配関数の比を ω\omega ごとに要し、規模が大きい初(恒等式は θ\theta の定義 (Z0−Z1)/(Z0+Z1)(Z_0-Z_1)/(Z_0+Z_1) を ω\omega について書き直すだけ)・読(物理)
E 中心だけの影響係数§03 の δc(L0,β)\delta_c(L_0,\beta)。外を SO(3)SO(3) の部分だけで条件づけ、境界の中心の流束だけを裏返す帯の上半分では δc\delta_c も 1 に近いはずで、帯の下半分専用(帯の下の端を押し上げる作業の側)読(物理)
F Z2\mathbb Z_2 の単極子の流れによる流束の符号の拡散平面ごとの符号の流束は、間を横切る Z2\mathbb Z_2 の単極子の閉曲線の数の偶奇だけ変わる。単極子の巻きの密度で流束が混ざるU(1)U(1) の単極子の描像の Z2\mathbb Z_2 版で、基準 (d) が弱い。単極子を抑えた作用でも閉じ込めが残るかどうかに論争がある(照合未了)読(物理)
G 自己双対の座標の行列式各区画で、測度を反自己双対の部分への押し出しと見たときの Jacobian の、区画の間の差表 1 の 25(スピンと指数定理は一ループで漸近自由の言い換え)に当たる危険が大きい。格子には自己双対の分解が無い読(物理)
H 二次元に落ちた板の「離散の 1-形式対称性は破れない」の定量版を NN に一様に板の閉じ込めを、二次元で離散の 1-形式対称性が自発的に破れないという型の文の格子版と読み、その定量版(張力 ≥ 最も安い区画の壁の密度)を NN に一様にする道としては、小さな T2T^2 の準古典で NN を増やす道(Tanizaki–Ünsal の断熱的な連続性の予想と同じ重さ)そのもので、新しいのは読み方だけ。一般化された対称性の文献の次元の条件は照合未了読(物理)
07

言えないこと

08

五分類の表と依存グラフ

この頁の候補そのものは全て「読(物理)」です。紙の証明を置いたのは、候補の足場になる初等的な事実だけです。

表 3 この章の行(「—」は機械検査の無い行)
行言明(一行)分類根拠範囲機械検査
[01]区画を写す全単射の自由エネルギーの恒等式 (1)初§02 顔 1可測な全単射・Jacobian が定まる—
[02]決定論的な写像では余りが面の面積とともに増え、面積則は出ない読(物理)§02 顔 1・13-08 の C3——
[03]柱の分解 ∣θ∣≤E∏B∣θB(Σ)∣|\theta|\le\mathbb E\prod_B|\theta_B(\Sigma)|初§02 顔 3・12-03 の補題 5 の枠組み骨格を止めた条件つきの独立性—
[04]柱の偏り:ℓ≥5\ell\ge5 で SU(2)SU(2) は U(1)U(1) の 1/5〜1/7、要る ℓ\ell は SU(2)SU(2) で伸びない読13-09 §07β=2.3\beta=2.3(SU(2)SU(2))・1.31.3(U(1)U(1))・N≤8N\le8・枠 3〜12—
[05]四つの顔の SU(2)SU(2) の予想と、U(1)U(1)・Z2\mathbb Z_2 で壊れる場所読(物理)§02 表 1見立て—
[06]Z2\mathbb Z_2 のガラスの Jensen の挟み (3)初§03U=σVU=\sigma V の表示—
[07]ガラスは帯の上半分で秩序相の側、ガラスの道は下半分に限る読(物理)§03・13-09 §08848^4・換算は粗い—
[08]R4∖\mathbb R^4\setminus直線 ≅H2×S2\cong H^2\times S^2(共形)と、球とループの偶奇の判定初§04 (4)——
[09]双曲的な入れ子の面積 4/34/3、半平面のループの双曲面積 ≈T/d\approx T/d初§04積分の計算—
[10]共形な枠では運動学だけで面積則は出ず、核心は同じ場所に残る読(物理)§04検討の結果否定的—
[11]候補 A:帯の中の比較は固定した β\beta の両側の面積則に還元される初13-06 §06 の補題 1仮定 (A1)(A2)・N≥N1N\ge N_1・M≥M0M\ge M_0—
[12]射影の密度 (5) と、O(3)O(3) の高さ・方位の分解(結合 Jij≥0J_{ij}\ge0 の XY)初§05 候補 B——
[13]候補 B の機構:単調性の源と乱れの機構が同じ向き読(物理)§05 候補 Bブロックの水準の比較は定理として無い—
[14]候補 C の予言 (6):SU(2)SU(2) で β′<β\beta'\lt\beta、U(1)U(1) は相で符号が反転読(物理)§05 候補 Cℓ≥ℓmin⁡\ell\ge\ell_{\min}。(6) の数値は無し—
[15]候補 D の恒等式 θ=EP[tanh⁡(X/2)]\theta=\mathbb E_P[\tanh(X/2)]初§06 表 2θ\theta の定義の書き直し—

依存グラフ(前提の番号は結論の番号より小さい):

[01] 初 TRN     輸送の恒等式 (1)
[02] 読 KLA     決定論的な写像の余りは面積とともに増える ⟸ [01]      物理
[03] 初 COL     柱の分解                                             12-03 の枠組み
[04] 読 FNUM    柱の偏りの数値                                       13-09 §07
[05] 読 FACE    四つの顔の予想 ⟸ [01][02][03][04]                    物理
[06] 初 JEN     ガラスの Jensen の挟み (3)
[07] 読 GLS     ガラスの道は下半分に限る ⟸ [06]                      8⁴・物理
[08] 初 CONF    共形同値と偶奇の判定 (4)
[09] 初 HYP     双曲的な入れ子の面積
[10] 読 NEG     共形な枠は否定的 ⟸ [08][09]                          物理
[11] 初 RED     候補 A の還元                                        13-06 補題 1・仮定 (A)
[12] 初 WEYL    射影の密度 (5) と高さ・方位の分解
[13] 読 MON     候補 B の機構 ⟸ [12]                                 物理
[14] 読 LST     候補 C の予言 (6) ⟸ [03][04][11]                     物理
[15] 初 SGN     θ = E_P[tanh(X/2)]

確かめ方は、全ての「⟸」の右の番号が左の番号より小さいことを目で見ることです。円はありません。結論の側の節点([05]・[07]・[10]・[13]・[14])は全て「読(物理)」で、「初」の節点は候補の足場の初等的な事実か、別の章に証明を置いた還元です。帯を渡る文の節点はこの頁にありません。


この章が言えている範囲

言えている言えていない
初 候補の足場の初等的な事実:輸送の恒等式・柱の分解・ガラスの Jensen の挟み・共形同値と偶奇の判定・射影の密度と高さ・方位の分解・θ=EP[tanh⁡(X/2)]\theta=\mathbb E_P[\tanh(X/2)]それらから帯を渡る評価が出ること
初 帯の中の比較が、固定した β\beta の両側の面積則に還元されること(13-06 の補題 1、仮定 (A) の下)仮定 (A) のどの β\beta での証明。帯を易しくしたこと
読(物理) 四つの顔と三つの候補の、SU(2)SU(2) で成り立つと見る理由と U(1)U(1) で壊れる場所どの顔・候補についても、尺度に一様な評価
読(物理) Z2\mathbb Z_2 のガラスの道は帯の下半分に限ること・共形な枠は運動学だけでは面積則を出さないこと下半分でガラスの道が帯の下の端を押し上げること

出典と再現

もの種別出典・道具
四つの顔・ガラスの表示・共形な枠の検討本書の検討この本の検討の記録(移り変わりの帯を閉じる道の整理・物理の視点からの機構の案)
三つの新しい候補とほかの五つ本書の検討この本の検討(帯の候補の検討)。候補 A の補題は 13-06 §06
柱の偏り・ガラスの診断の数値読13-09
Tomboulis–Yaffe の不等式典E. T. Tomboulis, L. G. Yaffe, Commun. Math. Phys. 100 (1985) 313。章 13-01
分数インスタントンの作用典Y. Tanizaki, M. Ünsal, arXiv:2201.06166。章 12-02
固定した β\beta の閉じ込めへの入口抄録で確認S. Chatterjee, arXiv:2006.16229(本文は照合未了)
照合未了の文献照合未了Kazakov–Zheng(格子ヤン–ミルズのブートストラップ)、Patrascioiu–Seiler(O(3)O(3) の KT 型の相の議論)、XY の Ginibre の不等式、de Divitiis ら(捩れの境界条件の階段関数)、単極子を抑えた作用の論争、一般化された対称性の Coleman–Mermin–Wagner 型の文献、Dobrushin–Shlosman の判定

この章で使った語 — 四つの顔・適応した剛性 κw\kappa_w・箱の磁束の混合 δ(L0)\delta(L_0)・柱の捩れのコスト f(ℓ)f(\ell)・圧力の余裕・Z2\mathbb Z_2 のガラス・フラストレーション・共形な枠・帯のコンパクト性・Weyl の測度・高さと方位・柱の局所の階段関数・移り変わりの帯(帯)。意味は A-02 用語集 にあります。

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改訂 2026-10-15:初版。