この本の全体 目次と読む順
- 第 0 部 入口 — この本の読み方
- 0-01 この本の読み方
- 0-02 一枚の絵
- 0-03 問題文を一語ずつ読む
- 0-04 数学の四次元と物理の四次元
- 第 1 部 数学の準備
- 1-01 ベクトル空間と線形写像
- 1-02 群とは何か
- 1-03 リー群とリー環
- 1-04 SU(2) と SU(3)
- 1-05 多様体と接空間
- 1-06 微分形式と外微分
- 1-07 ベクトル束と接続
- 1-08 確率と測度
- 1-09 無限次元の確率
- 1-10 ヒルベルト空間と自己共役作用素
- 1-11 フーリエ解析と分布
- 1-12 寄り道:四次元でだけ起きること
- 第 2 部 物理の準備
- 2-01 ラグランジアンと作用
- 2-02 場という考え
- 2-03 電磁気学はゲージ理論である
- 2-04 特殊相対論と時空
- 2-05 量子力学の骨
- 2-06 調和振動子と生成消滅
- 2-07 経路積分の考え方
- 2-08 統計力学と相転移
- 2-09 寄り道:イジング模型で見るギャップと相関長
- 2-10 緩和の時間と動的指数 z
- 第 3 部 ヤン–ミルズ理論(古典)
- 3-01 ゲージ原理
- 3-02 非可換ゲージ場
- 3-03 作用と方程式
- 3-04 幾何としてのゲージ理論
- 3-05 インスタントンと位相
- 3-06 寄り道:Donaldson とエキゾチック R⁴
- 3-07 標準模型の中のヤン–ミルズ
- 第 4 部 量子化
- 4-01 正準量子化とハミルトニアン
- 4-02 経路積分とユークリッド化
- 4-03 摂動論と Feynman ダイアグラム
- 4-04 発散と繰り込み
- 4-05 発散の代数
- 4-06 漸近自由
- 4-07 次元転移と Λ
- 4-08 ゲージ固定と Faddeev–Popov
- 4-09 場の量子論の公理
- 4-10 Osterwalder–Schrader の公理と再構成
- 4-11 質量ギャップの定義
- 4-12 寄り道:摂動級数は発散する
- 第 5 部 格子ゲージ理論
- 5-01 Wilson の格子
- 5-02 強結合展開
- 5-03 反射正値性と転送行列
- 5-04 無限体積極限とクラスター展開
- 5-05 弱結合と連続極限
- 5-06 U(1) と非可換の違い
- 5-07 モンテカルロ法
- 5-08 グルーボールと弦張力の測定
- 5-09 何を固定して極限を取るか
- 5-10 有限群の格子ゲージ理論
- 5-11 寄り道:Bakry–Émery と一リンク積分
- 第 6 部 構成的場の理論
- 6-01 構成的場の理論とは
- 6-02 二次元の可解性とヤン–ミルズ測度
- 6-03 スカラー場の構成
- 6-04 クラスター展開
- 6-05 繰り込み群の段の列
- 6-06 三次元ヤン–ミルズの紫外安定性
- 6-07 四次元
- 6-08 四次元の φ⁴ の自明性
- 6-09 確率量子化と正則性構造
- 6-10 四次元で止まる場所
- 6-11 発散以外の障害
- 6-12 寄り道:「1/0 に記号を与えれば」
- 第 7 部 物理の側から
- 7-01 物理はどう見ているか
- 7-02 閉じ込めの機構
- 7-03 弦の絵
- 7-04 大 N
- 7-05 ひも理論と余剰次元
- 7-06 余剰次元が見えなくなる仕組み
- 7-07 ゲージ場はどこから来るか
- 7-08 ホログラフィー
- 7-09 質量ギャップが幾何になる
- 7-10 四次元に戻す
- 7-11 超対称と Seiberg–Witten
- 7-12 等価原理に当たる一文
- 7-13 物理の掘り方が数学と離れる場所
- 第 8 部 二つの言葉の辞書 — 物理の視点と数学の視点
- 8-01 辞書の読み方
- 8-02 辞書 A
- 8-03 辞書 B
- 8-04 辞書 C
- 8-05 私たちの仮定の物理側の対応
- 地図
- 第 9 部 現在地と課題
- 9-01 世界はどこまで来ているか
- 9-02 二つの掘り方の切れ目
- 9-03 新しい概念の候補
- 9-04 課題の一覧
- 9-05 よくある誤解
- 9-06 証明が含むべき段 — 七段の表
- 一本目の道 — 時間の方向から
- 第 10 部 一本目の道(前半)— 時間の方向から:質量ギャップと拡散型緩和時間の仮定
- 10-00 入口 — 階段と、酔歩・物差し・時計
- 10-01 構成の筋と仮定 ξ²
- 10-02 四次元格子で試した道と壁
- 10-03 階段の四段 — なぜ 0+1 次元から始めるか
- 10-04 二重井戸の経路の測度とキンク
- 10-05 一段目の言明 — 四条件と命題 4.5
- 10-06 (H1) 相の中の局所 Poincaré
- 10-07 (H2) の地図 — 七つの道筋と環の継ぎ目
- 10-08 計算機援用とは何か — 窓の中の鎖の条件
- 10-09 区画の枠組みと道筋 5 の三本の筋
- 10-10 迂回策の一覧 — 壊れ方の型
- 10-11 (H3)(H4) と芯の定数
- 10-12 統合表と依存グラフ
- 10-13 Lean の言明と機械検査の限界
- 10-14 突き合わせ — 記録の数と既知の数
- 10-15 残件と費用 — 定理までの距離
- 10-16 主張しないこと
- 10-17 ひらめきと小さな問い
- 第 11 部 一本目の道(後半)— 仮定の形を直し、時間を連続にする
- 11-00 今後の考察 — 入口
- 11-01 仮定 ξ² を妨げる一つの形 — ほぼ保存される大域の量
- 11-02 物差しと座標を選び直す — 保存が壊れる長さ
- 11-03 仮定 ξ² を直す二つの形 — 区画の仮定 ξ² と局所の仮定 ξ²
- 11-04 片側の橋はどの仮定 ξ² を要るか
- 11-05 時間を連続にする — Hamiltonian 格子と真空の測度
- 11-06 凸性の代わりに稀さで払う — 群の上の繰り込みと対数 Sobolev
- 11-07 四次元だからこそ — 無次元の結合と位相
- 11-08 問いと、主張しないこと
- 11-A1 第 11 部の記号の対応表
- 二本目の道 — 空間の方向から
- 第 12 部 二本目の道:空間の方向から — 小さな捩れた T² と閉じ込め
- 12-00 入口 — 時間でなく空間を
- 12-01 捩れた T² と 't Hooft の流束
- 12-02 渦と分数インスタントン
- 12-03 容器 — 枠を条件づけると独立になる
- 12-04 板の閉じ込め
- 12-05 渦の挿入の恒等式
- 12-06 力学で駆動した挿入と流れの補題
- 12-07 なぜ決まった写像は失敗するか
- 12-08 測った記録
- 12-09 この道が止まる場所 — T² を広げることが帯である
- 移り変わりの帯 — 二本の道が同じ壁に着く
- 第 13 部 移り変わりの帯 — 二本の道が同じ壁に着く
- 13-00 入口 — 合流
- 13-01 帯の正しい形
- 13-02 一つの不等式への還元
- 13-03 非可換が効く唯一の場所
- 13-04 構造だけでは渡れない
- 13-05 チェス盤と同時の反転
- 13-06 繰り込みの比較 — 群を区別する比較
- 13-07 時間の側から見た帯
- 13-08 試して止まった道の地図
- 13-09 測った記録
- 13-10 新しい見方の候補
- 13-11 紫外の制御 — 無限個の段で閉じるとは何か
- 閉じる
- 第 14 部 閉じる — 条件つきの言明
- 14-00 入口 — この部の約束
- 14-01 条件つきの言明 — 質量ギャップと閉じ込めを矢印ごとに
- 14-02 条件の台帳
- 14-03 問いの表(横断の索引)
- 14-04 主張しないこと(横断の索引)
- 付録
- A-01 記号表
- A-02 用語集
- A-03 文献案内
- A-04 Lean と機械検査
- A-05 この本の作り方
- A-06 仮定の索引
- A-07 この本から出た論文
構造だけでは渡れない
この章で分かること — 格子ゲージ理論の構造的な道具——転送行列の正値性・中心と双対の恒等式・鏡映正値性・格子の対称性・有限の補題——を、捩れのある板の言葉で並べ、どれも と U(1) でそのまま成り立つことを確かめます。そこから、この入力の組だけでは横広げの不等式は導けない、という否定の補題が出ます。帯を渡るには、閉じ込めない相を外す力学の入力が要ります。途中で、構造の側から確かに言える二つのこと——区画の偏りの電場の流束の形 と、z のアンサンブルの格子点を通る鏡映の正値性——を証明つきで置きます。後者は次の章のチェス盤の評価の入力になります。
前提となる章 — 13-01(区画の偏りと大域の形 (8))・13-02(横広げの不等式)・13-03(U(1)・ で破れること)・5-03(鏡映正値性と転送行列)・12-01(捩れと 't Hooft の流束)・A-04(Lean)。
先に言うこと — 否定の補題は「この入力の組だけでは」の形の文で、入力の一覧を明示した上での論理の整理です。どの入力も役に立たない、とは言いません(鏡映正値性は 13-05 で使います)。「U(1)・ で横広げの不等式が破れる」は 13-03 の見立て(〔読〕、物理)なので、否定の補題の結論の最後の一段もその札を引き継ぎます。Lean で検査したのは、電場の流束の形のスペクトルの代数と、鏡映正値性の最後の和の代数だけです。
- 構造の入力の一覧 — 何を「構造」と呼ぶか
- 電場の流束の形 — (補題 1・補題 2)
- z の鏡映正値性 — 格子点を通る鏡映(定理 3)と、横向きの鏡映が捩れで崩れること(補題 4)
- 否定の補題 — この入力の組だけでは(補題 5)
- 要る入力 — 閉じ込めない相を外すもの
- Lean の言明を読む —
FluxDuality・ReflPos - 五分類の表と依存グラフ
構造の入力の一覧 — 何を「構造」と呼ぶか
格子 の上の Wilson 作用の格子ゲージ理論で、横の二方向 1・2 に背景の捩れ を置きます(12-01)。方向 3・4 が平面です。この章で構造の入力と呼ぶのは、次の五つの組 です。
- 転送行列の正値性:平面の方向(3 または 4)を時間とする転送行列 が正の作用素(5-03、Osterwalder–Seiler・Lüscher 典)。
- 中心と双対の恒等式:捩れの流束を入れることは中心変換の挿入であり、電場の流束の射影で分解できること('t Hooft 典)。§02 の補題 1 はこの形の一つです。
- 平面の方向の鏡映正値性:捩れを固定した z のアンサンブルでの、方向 3・4 の格子点を通る鏡映の正値性(§03 の定理 3)。
- 格子の対称性:平行移動・回転・鏡映と、それらで捩れの類が保たれること。
- 有限の補題:容器の恒等式と入れ子(12-03)、板の評価 (12-04)、流れの補題 (12-06)。どれも測度と有限和の性質だけを使います。
問いは、 から横広げの不等式(13-02 の (5))が出るか、です。答えは §04 で「出ない」です。そこへ行く前に、 の中で、区画の偏りについて確かに言えることを二つ置きます。
電場の流束の形 —
格子を とし、 に加えて平面 (3,4) を通る捩れの流束 を入れた分配関数を と書きます。13-01 の (8) の大域の偏りは
でした。方向 3 を時間に選びます。時刻一つ分の空間は (方向 1・2・4)で、そこには空間の磁束 があります。転送行列 と、方向 4 の中心変換 (方向 4 に一周する結合に中心の元 を掛ける操作)は可換で、 です。 の固有値 で空間を分けたときの が、方向 4 の電場の流束です('t Hooft 典)。射影を とし
とおきます。
補題 1(電場の流束の形) 初 上の設定で、 で
よって のとき 。さらに なら 、すなわち で 。
証明 分配関数は転送行列の跡 で、平面 (3,4) を通る捩れ は、時間の一周のどこかで を挟むことと同じなので です('t Hooft の構成 典)。、 を代入すると (3)。 は と可換な直交射影なので は正の作用素で、跡は 0 以上です。 のとき (1) に (3) を入れて 。 から 。∎
二つの注意があります。第一に、 と は (3) と だけから出るスペクトルの事実ですが、 に要る はそうではありません。 は捩れた面の重み を含む正の関数の積分なので 0 以上ですが、これは Boltzmann の重みの正値性で、転送行列のスペクトルからは出ません。第二に、補題 1 は「渦の自由エネルギー(磁束)が小さい ⟺ 電場の流束 の状態が に比べて重い」という 't Hooft の電場と磁場の双対性の格子版です。閉じ込めの領域では は電場の弦の張力で小さくなると見込まれます 読(物理、13-05 §04)。
大域の形で横広げを書くときに使う、初等的な補題を一つ添えます。
補題 2 初 、、 とする。()なら 。
証明 は で単調増加かつ凹で なので、 について (凹関数 で なら )。よって 。∎
つまり、渦の自由エネルギーの形の横広げ は、偏りの形の横広げを導きます。
z の鏡映正値性 — 格子点を通る鏡映と、横向きの鏡映
設定。トーラス 、 は偶数とします。変数は結合 と面の変数 で、次の拘束を課します。
- 全ての三次元の立方体 で ( は閉じた の 2-余鎖)。
- 大域の類の固定 。 は を固定した (1,2) 平面で、 が閉じているので の位置に依りません。
測度は
( は Haar 測度)です。これが 13-01 §01 の捩れを和に取ったアンサンブルで、横の捩れを固定したものです。
鏡映。 を方向 3 の格子点を通る鏡映 (mod )とします。固定される平面は と です。結合には、方向 なら 、方向 3 なら 、面の変数には で作用させ、関数には で作用させます。
定理 3(z の鏡映正値性) 初 右半分 の変数(平面 の上の変数を含む)だけに依る任意の有界な関数 について 。方向 4 についても同じ。
証明 五段で示す。
段 1(変数の分割)。変数を三つに分ける。:平面 の上の変数(平面の中の方向 1・2・4 の結合と、平面の中の (1,2)・(1,4)・(2,4) 型の面の )。:右の変数( から出る方向 3 の結合、 の他の方向の結合、 の 型の面、 の平面の中の型の面の )。:左の変数。 は を動かさない。
段 2(重みの分解)。面の重み は、 が右・左・平面のどれか一つに属するので、そのどれかに入る。平面の面の重みは に入れる。立方体の拘束も同様に分かれる:方向 3 を含む立方体は を張るので片側と平面の変数だけに依り、方向 3 を含まない立方体は なら右、平面の上なら平面の変数だけに依る。大域の拘束 は で測れば の関数。よって重みは 、、 の形。
段 3(左右の因子の関係)。作用と拘束は で不変である。面の向きが逆になっても では 。立方体は立方体に移り、 を測る平面は固定される。よって 。
段 4(測度の不変性)。Haar 測度は逆元をとる操作で不変、 の数え上げの測度は置換で不変。
段 5(正値性)。以上から
∎
最後の等式から不等式への代数(有限和の版)は Lean の ReflPos(ReflPos.refl_pos) で検査されています(§06)。正値性から出る Cauchy–Schwarz の形 (実の )の、因子に分けた後の代数が ReflPos(ReflPos.refl_cs) です。これはチェス盤の評価の入力です(13-05)。
定理 3 は Osterwalder–Seiler の格子点を通る鏡映の議論 典(5-03)に、 の面の変数と閉性の拘束を加えたものです。要点は、立方体の拘束が一つずつ片側と平面に収まることと、大域の類 が鏡映の方向(3)と直交する平面にあって平面 の上で測れることです。
横向きの鏡映。同じ議論を方向 1・2 の鏡映でしようとすると、捩れが邪魔をします。
補題 4 初 で ( はスピン の指標、)とすると、捩れた面の重みは
で、半整数の の係数が負になる。したがって、捩れを固定したまま横の方向 1・2 の鏡映の平面をまたぐ面の重みは正の型でなく、鏡映正値性の標準の議論はそこで成り立たない。
証明 は の中心の元で、、。よって から (5)。 の式と正値性は、変形 Bessel 関数 ()による標準の展開です 典。正の型の重み(指標展開の係数が 0 以上)であることが、鏡映の平面をまたぐ面について標準の議論の要る性質で、(5) はそれを満たさない。∎
補題 4 の帰結は、鏡映正値性からは横の大きさ についての凸性や単調性が出ないことです。横広げの不等式は についての比較なので、それを鏡映から得る道は最初から閉じています。補題 4 が言うのは標準の議論が使えないことで、横の鏡映の正値性が全ての関数で破れることまでは示していません。
否定の補題 — この入力の組だけでは
補題 5(否定の補題) 初 §01 の構造の入力の組 (転送行列の正値性・中心と双対の恒等式(補題 1 を含む)・平面の方向の鏡映正値性(定理 3)・格子の対称性・有限の補題)は、群を から または U(1) に替え、捩れの変数を のまま置いた四次元の Wilson の理論でも、同じ証明で成り立つ。したがって、 だけを使って横広げの不等式を導く議論があれば、同じ議論が と U(1) でも横広げの不等式を導く。対偶として、 か U(1) のどちらかで横広げの不等式が偽なら、この入力の組だけでは横広げの不等式は導けない。
証明 入力ごとに、使っている群の性質を確かめる。
- 転送行列の正値性:Osterwalder–Seiler の議論は、コンパクト群の Wilson 作用で、指標展開の係数が正の作用について成り立つ。・U(1) の はこれを満たす 典。
- 中心と双対の恒等式:使うのは、 が群の中心にあること( と U(1) の中心は群そのもので を含む)と、捩れの流束が中心変換の挿入であることだけ。補題 1 の証明はそのまま通る。
- 鏡映正値性:定理 3 の証明が使う群の性質は、段 3 の と、段 4 の Haar 測度の逆元についての不変性だけ。U(1) では作用を で書くと 、 では で、どちらも成り立つ。
- 格子の対称性:作用と捩れの類の定義が群に依らない形なので同じ。
- 有限の補題:容器の恒等式は枠で条件づけた独立性(Markov 性)、板の評価は面の変数の反転の軌道についての条件づけ、流れの補題は定常性だけを使い、どれも群の非可換性を使わない。
前半が示せたので、後半は論理である:議論が の性質しか使わないなら、 を満たす全ての理論で同じ結論を与える。∎
補題 5 の前提「 か U(1) で横広げの不等式が偽」は、13-03 §02 の見立てです 読(物理。U(1) のクーロン相の勘定と、弱結合の の壁の勘定)。それを認めると、横広げの不等式は構造の入力だけからは出ないという結論になります。この最後の一段は、前提の札〔読〕(物理)を引き継ぎます。
同じ議論は、弱い形(13-02 の (C′))にも、一様な板の張力にもそのまま当てはまります。U(1)・ では板の張力が とともに 0 に向かうと見立てられるので、どちらも同じ入力の組だけでは出ません 読(物理)。
補題 5 が言っていないことも書いておきます。第一に、 が帯に無用だとは言っていません。 を固定すれば、定理 3 は枠の減相関をチェス盤の密度 に置き換えます(13-05)。第二に、 に一つ力学の入力を足したときに何が出るかは、補題 5 の外です。第三に、強結合(小さな )では U(1) も閉じ込めるので、補題 5 が分けるのは群そのものではなく、閉じ込めない相があるかどうかです。
要る入力 — 閉じ込めない相を外すもの
補題 5 から、帯を渡る議論は の外の入力を少なくとも一つ使わなければなりません。それは、弱結合の U(1) と ——閉じ込めない相——で偽になる入力でなければなりません。この本の検討で名指しできる候補は、どれも非可換の力学の性質です。
| 入力 | U(1)・ で | 入る場所 | 章 |
|---|---|---|---|
| 漸近自由(結合の走りの符号) | U(1) は走らないか逆向き、 は連続な走りを持たない | 希薄な領域の余裕 ・繰り込みの比較の | 13-03 §04・13-06 |
| 自己双対の塊への局在(非線形性) | アーベルの流束は一様に広がるしかない | 横広げの古典的な費用が 0 | 13-03 §03 |
| 紫外の制御(多重尺度の解析) | U(1) では別の形(共形な長距離) | 小さな T² の基点 | 13-02 の (A)・14-02 |
表 1 の各行は〔読〕(物理)の見立てで、どの入力も帯 で使える形になっていません。強結合の側では、多面体の展開で横広げの不等式が定数 で成り立つ筋が考えられています(因子 が強結合の主要項の文献(Münster 1981)と整合するという報告がありますが、照合未了です)。ただし平面の大きさ に一様な評価は確かめられておらず、この本では〔仮〕に置きます。強結合では U(1) も閉じ込めるので、この行は補題 5 と矛盾しません。
補題 5 は予想どおりの結果を明示したもので、驚きはありません。役目は、帯の議論を読むときの試金石を一つ与えることです:議論が の性質だけで進んでいるなら、その議論は U(1) でも同じ結論を与えるので、どこかに誤りがあります。13-08 の、U(1) を区別しないという批判を受けた道の記録は、この試金石の実例です。
Lean の言明を読む — FluxDuality・ReflPos
補題 1 のスペクトルの部分と、定理 3 の段 5 の代数は、Lean 4 のファイル FluxDuality.lean・ReflPos.lean の五つの定理です。言明を本文の言葉で読みます。どれも有限集合 (または )の上の実数の和の文です。
FluxDuality.split:実数の族 について、仮定「全ての で または 」の下で、 かつ 。本文では が の固有値、 が の固有値で、二つの式が (3) の です。
FluxDuality.twisted_le:仮定「全ての で 」「」の下で 。本文の です。
FluxDuality.bias_mem:仮定「」「」「」「」の下で、 について 。第三の仮定 が に使われ、これはスペクトルの事実ではなく、本文の Boltzmann の重みの正値性に当たります。
ReflPos.refl_pos:有限集合 と実関数 、 について、仮定「全ての で 」の下で 。定理 3 の段 5 の の有限和の版で、 の符号は問いません。
ReflPos.refl_cs:同じ仮定 の下で、、 について 。鏡映の Cauchy–Schwarz の形 を、重みが因子に分かれた後の代数として書いたものです。
機械検査が保証するのは、この有限和と実数の代数だけです。転送行列が正であること、 と可換であること、捩れが の挿入であること、重みが の形に分かれること(定理 3 の段 1〜4)、Haar 測度——は Lean の外にあり、本文の証明と文献が担います。五つの定理の公理は、記録では標準の三つ(propext・Classical.choice・Quot.sound)で、本書の再検査を通しています(A-04)。
五分類の表と依存グラフ
| 行 | 言明(一行) | 分類 | 根拠 | 範囲 | 機械検査 |
|---|---|---|---|---|---|
| [01] | 転送行列の正値性 | 典 | Osterwalder–Seiler・Lüscher・5-03 | コンパクト群の Wilson 作用 | — |
| [02] | 捩れ は中心変換 の挿入、 は の固有値 | 典 | 't Hooft・12-01 | 中心が を含む群 | — |
| [03] | 補題 1:、、 | 初 | §02 の証明 ⟸ [01][02] | ・・ | FluxDuality(FluxDuality.split)(仮定:)・twisted_le(仮定:・) |
| [04] | () | 初 | §02 ⟸ [03] | (Boltzmann の重みの正値性)を使う | FluxDuality(FluxDuality.bias_mem)(仮定:・・・) |
| [05] | 補題 2:()なら | 初 | §02 の証明( の凹性) | — | |
| [06] | 定理 3:z のアンサンブルの、方向 3・4 の格子点を通る鏡映の正値性 | 初 | §03 の証明(Osterwalder–Seiler の議論に z と拘束を加えた形) | ・ は偶数・捩れ を固定 | ReflPos(ReflPos.refl_pos)(段 5 の代数だけ。仮定:)・refl_cs(仮定:) |
| [07] | 指標展開の係数 | 典 | 標準の展開(数値で照合) | ・ | — |
| [08] | 補題 4:捩れた面の重みは半整数の で負の係数、横向きの鏡映は正の型でない | 初 | §03 の証明 ⟸ [07] | 捩れを固定・方向 1・2 の鏡映 | — |
| [09] | 補題 5: は ・U(1) でも成り立ち、 だけからの議論はそこでも同じ結論を与える | 初 | §04 の証明 ⟸ [01][03][06] | 「この入力の組だけでは」の形・捩れは | — |
| [10] | U(1)・ で横広げの不等式は偽 | 読(物理) | 13-03 §02 | 弱結合・見立て | — |
| [11] | 横広げの不等式(強い形・弱い形)と一様な板の張力は、構造の入力だけからは出ない | 読(物理) | §04 ⟸ [09][10] | [10] の見立ての上 | — |
| [12] | 鏡映正値性からは横の大きさ についての凸性・単調性は出ない | 初 | §03 ⟸ [08] | 標準の議論が使えない、の意味 | — |
| [13] | 強結合で横広げの不等式は で成り立つ | 仮 | 筋:多面体の展開(平面の大きさに一様な評価は未確認) | 小さな | — |
| [14] | 閉じ込めの領域で は電場の弦の張力で小さい | 読(物理) | 13-05 §04 | ・見立て | — |
依存グラフ(前提の番号は結論の番号より小さい):
[01] 典 TM 転送行列の正値性 コンパクト群・Wilson 作用 [02] 典 CEN 捩れは中心変換の挿入、e₄ は固有値 't Hooft [03] 初 EFLUX 補題 1:θ = Y(1)/Y(0) ≥ 0 ⟸ [01][02] Lean split・twisted_le [04] 初 LE1 θ ≤ 1 ⟸ [03] Z(1,1) ≥ 0 を使う・Lean bias_mem [05] 初 TANH 補題 2:F′ ≤ KF ⇒ θ′ ≤ Kθ K ≥ 1 [06] 初 RP 定理 3:方向 3・4 の z の鏡映正値性 Lean refl_pos・refl_cs(代数) [07] 典 CHAR 指標展開の係数 c_j > 0 SU(2) [08] 初 TWX 補題 4:横向きの鏡映は正の型でない ⟸ [07] 捩れを固定 [09] 初 NOGO 補題 5:I は Z₂・U(1) でも成り立つ ⟸ [01][03][06] この入力の組だけでは [10] 読 FAIL U(1)・Z₂ で横広げは偽 13-03・見立て [11] 読 NEED 構造の入力だけからは出ない ⟸ [09][10] [12] 初 NOCVX 鏡映から L の凸性・単調性は出ない ⟸ [08] [13] 仮 SC 強結合で C ≈ 1 筋・M に一様は未確認 [14] 読 EL 閉じ込めの領域で Y(1)/Y(0) は小さい 見立て
確かめ方は、全ての「⟸」の右の番号が左の番号より小さいことを目で見ることです。円はありません。紙で立つ節点は [03]〜[06]・[08]・[09]・[12] で、文献の行 [01]・[02]・[07] の上にあります。章の題の主張 [11] だけが見立ての行 [10] を前提に持ち、「読(物理)」です。仮定の行 [13] はどの結論の前提にも入っていません。
この章が言えている範囲
| 言えている | 言えていない |
|---|---|
| 初 区画の大域の偏りは電場の流束の比 (上界は重みの正値性を使う) | の大きさの評価。帯での電場の弦の張力 |
| 初 捩れを固定した z のアンサンブルは、方向 3・4 の格子点を通る鏡映で正値。横向きの鏡映は捩れで正の型でない | 横の鏡映の正値性が全ての関数で破れること。 についての凸性 |
| 初 構造の入力の組 は ・U(1) でも成り立ち、 だけからの議論はそこでも同じ結論を与える(この入力の組だけでは) | に力学の入力を足したときに何が出るか |
| 読(物理) 横広げの不等式と一様な板の張力は、構造の入力だけからは出ない | U(1)・ で横広げの不等式が偽であることの定理としての証明 |
Lean:スペクトルの代数(FluxDuality(FluxDuality.split・FluxDuality.twisted_le・FluxDuality.bias_mem))と鏡映の最後の和の代数(ReflPos(ReflPos.refl_pos・ReflPos.refl_cs)) | 転送行列・中心変換・重みの分解・Haar 測度(Lean の外) |
出典と再現
| もの | 種別 | 出典・道具 |
|---|---|---|
| 鏡映正値性と転送行列の正値性 | 典 | K. Osterwalder, E. Seiler, Ann. Phys. 110 (1978) 440。M. Lüscher, Commun. Math. Phys. 54 (1977) 283。章 5-03 |
| 電場と磁場の流束・捩れと中心変換 | 典 | G. 't Hooft, Nucl. Phys. B153 (1979) 141。章 12-01 |
| 捩れを和に取ったアンサンブル | 典 | G. Mack, V. B. Petkova, Ann. Phys. 123 (1979) 442。章 12-03 |
| 補題 1・補題 2・定理 3・補題 4・補題 5 | 初 | 本文 §02〜§04 の証明。帯の還元の論文(この本から出た論文 2、A-07)の命題「site-reflection positivity」「no-go from structure」と同じ内容 |
| 指標展開の係数の式 | 典 | 標準の展開。、 で Haar 測度の数値積分と小数点以下 8 桁で一致することを確かめた |
| 強結合の多面体の展開の筋 | 仮 | 筋のみ。主要項の比較の文献(Münster 1981)は照合未了 |
| Lean | Lean | FluxDuality(FluxDuality.split・FluxDuality.twisted_le・FluxDuality.bias_mem)、ReflPos(ReflPos.refl_pos・ReflPos.refl_cs)。保証するのは有限和と実数の代数だけ。A-04 |
この章で使った語 — 構造の入力・転送行列・中心変換・電場の流束 ・区画の偏り ・z のアンサンブル・格子点を通る鏡映・正の型・否定の補題・横広げの不等式・試金石。意味は A-02 用語集 と A-06 仮定の索引 にあります。
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