computo ergo sum

2026-10-15 · chapter ヤン–ミルズと質量ギャップ第 12 部 二本目の道駆動した挿入の仕事・渦の自由エネルギー・板の弦の張力 · Kiichi, Shiori and Rin

この本の全体 目次と読む順
  1. 第 0 部 入口 — この本の読み方
  2. 0-01 この本の読み方
  3. 0-02 一枚の絵
  4. 0-03 問題文を一語ずつ読む
  5. 0-04 数学の四次元と物理の四次元
  6. 第 1 部 数学の準備
  7. 1-01 ベクトル空間と線形写像
  8. 1-02 群とは何か
  9. 1-03 リー群とリー環
  10. 1-04 SU(2) と SU(3)
  11. 1-05 多様体と接空間
  12. 1-06 微分形式と外微分
  13. 1-07 ベクトル束と接続
  14. 1-08 確率と測度
  15. 1-09 無限次元の確率
  16. 1-10 ヒルベルト空間と自己共役作用素
  17. 1-11 フーリエ解析と分布
  18. 1-12 寄り道:四次元でだけ起きること
  19. 第 2 部 物理の準備
  20. 2-01 ラグランジアンと作用
  21. 2-02 場という考え
  22. 2-03 電磁気学はゲージ理論である
  23. 2-04 特殊相対論と時空
  24. 2-05 量子力学の骨
  25. 2-06 調和振動子と生成消滅
  26. 2-07 経路積分の考え方
  27. 2-08 統計力学と相転移
  28. 2-09 寄り道:イジング模型で見るギャップと相関長
  29. 2-10 緩和の時間と動的指数 z
  30. 第 3 部 ヤン–ミルズ理論(古典)
  31. 3-01 ゲージ原理
  32. 3-02 非可換ゲージ場
  33. 3-03 作用と方程式
  34. 3-04 幾何としてのゲージ理論
  35. 3-05 インスタントンと位相
  36. 3-06 寄り道:Donaldson とエキゾチック R⁴
  37. 3-07 標準模型の中のヤン–ミルズ
  38. 第 4 部 量子化
  39. 4-01 正準量子化とハミルトニアン
  40. 4-02 経路積分とユークリッド化
  41. 4-03 摂動論と Feynman ダイアグラム
  42. 4-04 発散と繰り込み
  43. 4-05 発散の代数
  44. 4-06 漸近自由
  45. 4-07 次元転移と Λ
  46. 4-08 ゲージ固定と Faddeev–Popov
  47. 4-09 場の量子論の公理
  48. 4-10 Osterwalder–Schrader の公理と再構成
  49. 4-11 質量ギャップの定義
  50. 4-12 寄り道:摂動級数は発散する
  51. 第 5 部 格子ゲージ理論
  52. 5-01 Wilson の格子
  53. 5-02 強結合展開
  54. 5-03 反射正値性と転送行列
  55. 5-04 無限体積極限とクラスター展開
  56. 5-05 弱結合と連続極限
  57. 5-06 U(1) と非可換の違い
  58. 5-07 モンテカルロ法
  59. 5-08 グルーボールと弦張力の測定
  60. 5-09 何を固定して極限を取るか
  61. 5-10 有限群の格子ゲージ理論
  62. 5-11 寄り道:Bakry–Émery と一リンク積分
  63. 第 6 部 構成的場の理論
  64. 6-01 構成的場の理論とは
  65. 6-02 二次元の可解性とヤン–ミルズ測度
  66. 6-03 スカラー場の構成
  67. 6-04 クラスター展開
  68. 6-05 繰り込み群の段の列
  69. 6-06 三次元ヤン–ミルズの紫外安定性
  70. 6-07 四次元
  71. 6-08 四次元の φ⁴ の自明性
  72. 6-09 確率量子化と正則性構造
  73. 6-10 四次元で止まる場所
  74. 6-11 発散以外の障害
  75. 6-12 寄り道:「1/0 に記号を与えれば」
  76. 第 7 部 物理の側から
  77. 7-01 物理はどう見ているか
  78. 7-02 閉じ込めの機構
  79. 7-03 弦の絵
  80. 7-04 大 N
  81. 7-05 ひも理論と余剰次元
  82. 7-06 余剰次元が見えなくなる仕組み
  83. 7-07 ゲージ場はどこから来るか
  84. 7-08 ホログラフィー
  85. 7-09 質量ギャップが幾何になる
  86. 7-10 四次元に戻す
  87. 7-11 超対称と Seiberg–Witten
  88. 7-12 等価原理に当たる一文
  89. 7-13 物理の掘り方が数学と離れる場所
  90. 第 8 部 二つの言葉の辞書 — 物理の視点と数学の視点
  91. 8-01 辞書の読み方
  92. 8-02 辞書 A
  93. 8-03 辞書 B
  94. 8-04 辞書 C
  95. 8-05 私たちの仮定の物理側の対応
  96. 地図
  97. 第 9 部 現在地と課題
  98. 9-01 世界はどこまで来ているか
  99. 9-02 二つの掘り方の切れ目
  100. 9-03 新しい概念の候補
  101. 9-04 課題の一覧
  102. 9-05 よくある誤解
  103. 9-06 証明が含むべき段 — 七段の表
  104. 一本目の道 — 時間の方向から
  105. 第 10 部 一本目の道(前半)— 時間の方向から:質量ギャップと拡散型緩和時間の仮定
  106. 10-00 入口 — 階段と、酔歩・物差し・時計
  107. 10-01 構成の筋と仮定 ξ²
  108. 10-02 四次元格子で試した道と壁
  109. 10-03 階段の四段 — なぜ 0+1 次元から始めるか
  110. 10-04 二重井戸の経路の測度とキンク
  111. 10-05 一段目の言明 — 四条件と命題 4.5
  112. 10-06 (H1) 相の中の局所 Poincaré
  113. 10-07 (H2) の地図 — 七つの道筋と環の継ぎ目
  114. 10-08 計算機援用とは何か — 窓の中の鎖の条件
  115. 10-09 区画の枠組みと道筋 5 の三本の筋
  116. 10-10 迂回策の一覧 — 壊れ方の型
  117. 10-11 (H3)(H4) と芯の定数
  118. 10-12 統合表と依存グラフ
  119. 10-13 Lean の言明と機械検査の限界
  120. 10-14 突き合わせ — 記録の数と既知の数
  121. 10-15 残件と費用 — 定理までの距離
  122. 10-16 主張しないこと
  123. 10-17 ひらめきと小さな問い
  124. 第 11 部 一本目の道(後半)— 仮定の形を直し、時間を連続にする
  125. 11-00 今後の考察 — 入口
  126. 11-01 仮定 ξ² を妨げる一つの形 — ほぼ保存される大域の量
  127. 11-02 物差しと座標を選び直す — 保存が壊れる長さ
  128. 11-03 仮定 ξ² を直す二つの形 — 区画の仮定 ξ² と局所の仮定 ξ²
  129. 11-04 片側の橋はどの仮定 ξ² を要るか
  130. 11-05 時間を連続にする — Hamiltonian 格子と真空の測度
  131. 11-06 凸性の代わりに稀さで払う — 群の上の繰り込みと対数 Sobolev
  132. 11-07 四次元だからこそ — 無次元の結合と位相
  133. 11-08 問いと、主張しないこと
  134. 11-A1 第 11 部の記号の対応表
  135. 二本目の道 — 空間の方向から
  136. 第 12 部 二本目の道:空間の方向から — 小さな捩れた T² と閉じ込め
  137. 12-00 入口 — 時間でなく空間を
  138. 12-01 捩れた T² と 't Hooft の流束
  139. 12-02 渦と分数インスタントン
  140. 12-03 容器 — 枠を条件づけると独立になる
  141. 12-04 板の閉じ込め
  142. 12-05 渦の挿入の恒等式
  143. 12-06 力学で駆動した挿入と流れの補題
  144. 12-07 なぜ決まった写像は失敗するか
  145. 12-08 測った記録
  146. 12-09 この道が止まる場所 — T² を広げることが帯である
  147. 移り変わりの帯 — 二本の道が同じ壁に着く
  148. 第 13 部 移り変わりの帯 — 二本の道が同じ壁に着く
  149. 13-00 入口 — 合流
  150. 13-01 帯の正しい形
  151. 13-02 一つの不等式への還元
  152. 13-03 非可換が効く唯一の場所
  153. 13-04 構造だけでは渡れない
  154. 13-05 チェス盤と同時の反転
  155. 13-06 繰り込みの比較 — 群を区別する比較
  156. 13-07 時間の側から見た帯
  157. 13-08 試して止まった道の地図
  158. 13-09 測った記録
  159. 13-10 新しい見方の候補
  160. 13-11 紫外の制御 — 無限個の段で閉じるとは何か
  161. 閉じる
  162. 第 14 部 閉じる — 条件つきの言明
  163. 14-00 入口 — この部の約束
  164. 14-01 条件つきの言明 — 質量ギャップと閉じ込めを矢印ごとに
  165. 14-02 条件の台帳
  166. 14-03 問いの表(横断の索引)
  167. 14-04 主張しないこと(横断の索引)
  168. 付録
  169. A-01 記号表
  170. A-02 用語集
  171. A-03 文献案内
  172. A-04 Lean と機械検査
  173. A-05 この本の作り方
  174. A-06 仮定の索引
  175. A-07 この本から出た論文

測った記録

この章で分かること — 第 12 部の数値の記録を一か所にまとめます。三つの系列があります:(1) 駆動した挿入(12-06)の仕事と受理率、(2) 捩れた T2T^2 を広げたときの、大域の流束の渦の自由エネルギー(U(1)U(1) の対照つき)、(3) 板の弦の張力(Creutz 比)。最後に、同時の反転の測定と、その位置づけが撤回された理由を注記します。

前提となる章 — 12-06(駆動した挿入・流れの補題)・12-03(容器・区画の偏り θ\theta)・13-02(横広げの不等式・弦の張力の単調性)。第 5 部の 5-07(モンテカルロ)と 5-08(弦の張力・Creutz 比)。

先に言うこと — この章の数は全て数値の読み〔読〕で、どれも証明ではありません。各行に群・β\beta・T2T^2 の大きさ NTN_T・平面の大きさ MM・測定の数・誤差を書きます。誤差が記録に無いものは「記録に無い」と書きます。格子は小さく、β\beta は数点です。NT=2N_T=2 の行は、T2T^2 が格子の単位で 2 しかない、格子の人工物が大きい領域です。

この章の順序
  1. 要約〔三〕 — 三つの系列
  2. 共通の設定と読み方
  3. 駆動した挿入の仕事 — 表 1・表 2
  4. T² を広げたときの渦の自由エネルギー — 表 3・表 4・表 5
  5. 板の弦の張力 — 表 6・表 7
  6. 同時の反転の測定と、撤回された位置づけ — 表 8・表 9
  7. 言えないこと
  8. 五分類の表と依存グラフ — 表 10

01

要約〔三〕 — 三つの系列

  1. 駆動した挿入。 SU(2)SU(2) の板で、渦を一度に挿入する費用(段数 0)は T2T^2 の面積に比例して 11.8・24.2・44.9(NT=2,3,4N_T=2,3,4、β=2.3\beta=2.3)と大きいのに、256 段で駆動すると 0.50〜0.63 まで下がりました 読(表 1 の行 A・B・C。条件の違う行 G・H では、256 段の仕事は 3.64・6.67 と高いままです)。容器(円板)が渦の大きさより小さいと、段数を増やしても下がりきりません。
  2. 容器の半径 4 を固定して NT=4,6,8N_T=4,6,8(β=2.5\beta=2.5、1024 段)と広げても、仕事は 1.1〜1.6 で、NTN_T についてはっきりした増加はありませんでした 読(10 配位 × 3 位置)。
  3. 渦の自由エネルギー。 大域の流束の区画の自由エネルギー ΔF\Delta F は、T2T^2 を広げると U(1)U(1)(β=1.5\beta=1.5)では増え、SU(2)SU(2)(β=2.4,2.5\beta=2.4,2.5)では増えないか減りました 読(M=8M=8 と 1212、誤差は U(1)U(1) で 0.04〜0.78、SU(2)SU(2) で 0.1〜0.36)。
  4. 板の弦の張力。 SU(2)SU(2)、β=2.5\beta=2.5、M=16M=16 の Creutz 比 χ(4)\chi(4) は、NT=4→8N_T=4\to8 で増え、NT=10N_T=10 でほぼ飽和しました。有意な行き過ぎは見えません 読(2000 測定)。
  5. 同時の反転。 容器を同時に駆動した測定は、移り変わりの帯の数値的な姿としては使えないことが分かり、その位置づけは撤回されました(12-06 §07)。T2T^2 を固定した板の張力の下界の道具としてだけ残ります。
02

共通の設定と読み方

03

駆動した挿入の仕事

全て SU(2)SU(2)、捩れ n12=1n_{12}=1。標本の数は「配位の数 × 一つの配位あたりの挿入の位置の数」です。WW の括弧の中は標本の標準偏差(実行の出力の記録から)で、平均の誤差ではありません。同じ配位の異なる位置の標本は独立でないので、平均の誤差は標準偏差を標本の数の平方根で割ったものより大きいと見るべきです。

表 1 駆動した挿入(段数 0 と最も遅い駆動の比較。斜線の左右は段数または半径の二つの値)
実行β\betaNTN_TMMrr段数 mm標本WW の平均(標準偏差)tanh⁡(W/2)\tanh(W/2) の平均受理率
P2.32820 / 4 / 166 × 410.7 / 6.5 / 2.9(記録に無い)0.990 / 0.968 / 0.6880.005 / 0.016 / 0.156
A2.32820 / 25612 × 411.8(2.5)/ 0.50(0.71)1.00 / 0.220.000 / 0.39
B2.33820 / 25612 × 424.2(4.6)/ 0.52(0.84)1.00 / 0.210.000 / 0.39
C2.34820 / 2568 × 444.9(6.8)/ 0.63(1.19)1.00 / 0.240.000 / 0.38
D2.3210325612 × 40.19(0.74)0.090.46
E2.54102 / 410248 × 32.40(2.11)/ 0.44(1.21)0.67 / 0.170.17 / 0.41
F2.74122 / 410246 × 36.00(1.34)/ 3.77(1.18)0.99 / 0.920.006 / 0.04
G2.74188256 / 10244〜6 × 33.64(3.98)/ 2.72(2.53)0.54 / 0.590.23 / 0.20
H2.58124256 / 10244〜6 × 36.67(2.63)/ 0.51(1.64)0.98 / 0.170.012 / 0.42

行 P は 12-06 §04 で引いた測定です。行 P・A・D は NT=2N_T=2(格子の人工物の領域)です。

読み 読:(i) 段数 0 の費用は NT2N_T^2 にほぼ比例します(A・B・C で 11.8・24.2・44.9)。(ii) 容器が十分大きければ、駆動した挿入の仕事は 0 近くまで下がります。(iii) 必要な容器の半径は、格子間隔が半分になるごとに約 2 倍に見えます(β=2.3\beta=2.3 で 2、2.52.5 で 4、2.72.7 では 4 で不足、8 でも 0 近くには届かない)。渦の太さが物理的な長さで決まっていることと整合します。(iv) H(NT=8N_T=8)の 1024 段の仕事 0.51 は E(NT=4N_T=4)の 0.44 とほぼ同じですが、256 段では 6.67 と高く、駆動の速さに強く依存します。

表 2 統計を増やした駆動した挿入(SU(2)SU(2)、捩れ n12=1n_{12}=1)
実行β\betaNTN_TMMrr段数 mm標本WW の平均(標準偏差)−ln⁡⟨e−W⟩-\ln\langle e^{-W}\rangletanh⁡(W/2)\tanh(W/2) の平均受理率
I42.54124102410 × 31.32(1.12)0.720.480.26
I62.56124102410 × 31.14(1.03)0.590.440.28
I82.58124102410 × 31.64(1.59)0.220.520.24
J2.741884096記録に無い2.84(0.84)2.440.850.07

読み 読:(i) I:容器の半径 4 を固定して NT=4,6,8N_T=4,6,8 と広げても、仕事は 1.1〜1.6 で、NTN_T についてはっきりした増加はありません(平均の誤差は標準偏差 /30/\sqrt{30} で 0.2〜0.3 程度)。表 1 の E・H の 0.44・0.51 は少ない統計の揺らぎでした。(ii) J:β=2.7\beta=2.7、r=8r=8 で駆動を G の 4 倍遅くしても W≈2.8W\approx2.8(G の 1024 段で 2.7)で、Jarzynski の推定は 2.4。仕事の大部分は駆動の速さによる散逸ではなく、本当の自由エネルギーと読めます。β=2.7\beta=2.7 の NT=4N_T=4 は物理的に小さな T2T^2(Lσ≈0.4L\sqrt\sigma\approx0.4)で、希薄な領域の側にいるので渦が実際に高い、という読みです(物理)。

Jarzynski の推定について。 −ln⁡⟨e−W⟩-\ln\langle e^{-W}\rangle は 12-06 の系 3 から区画の自由エネルギーの推定ですが、稀な小さい WW に支配されるので、少ない標本では大きく揺らぎます。表 1 には載せていない列ですが、負の値も出ています(例:E の半径 4、1024 段で −0.30-0.30。A の 64 段で −0.085-0.085)。この列は検算の目安で、値そのものは信頼できません。

この系列の限界。 R⁴ の閉じ込めに要るのは、偏りが LL とともに面積の指数で小さくなること(13-01)で、それはこの測定では見えません。β\beta は 2.3〜2.7 の数点で、誤差の評価もまだ粗いままです。

04

T² を広げたときの渦の自由エネルギー

容器は平面の全体(M×MM\times M)で、T2=NT×NTT^2=N_T\times N_T を広げます。横広げの不等式(13-02)の符号の試験です。全てレプリカ交換 + BAR、捩れ n12=1n_{12}=1、レプリカの数 24(断りの無い限り)。反復の数は記録にありません。

表 3 ΔF\Delta F、平面 M=8M=8
理論β\betaNT=2N_T=2NT=4N_T=4NT=6N_T=6NT=8N_T=8
U(1)U(1)(対照)1.5−0.03±0.04-0.03\pm0.040.83±0.110.83\pm0.112.10±0.472.10\pm0.475.14±0.785.14\pm0.78
SU(2)SU(2)2.5−0.01±0.12-0.01\pm0.120.63±0.180.63\pm0.180.33±0.220.33\pm0.221.51±0.291.51\pm0.29
表 4 ΔF\Delta F、平面 M=12M=12(容器を大きくした再測定)
理論β\betaNT=4N_T=4NT=6N_T=6NT=8N_T=8
U(1)U(1)(対照)1.50.20±0.210.20\pm0.211.35±0.301.35\pm0.301.72±0.471.72\pm0.47(レプリカ 40。24 では 0.54±0.530.54\pm0.53 で混ざりが悪かった)
SU(2)SU(2)2.50.57±0.220.57\pm0.220.42±0.240.42\pm0.24−0.15±0.36-0.15\pm0.36
表 5 ΔF\Delta F、SU(2)SU(2)、β=2.4\beta=2.4、平面 M=8M=8
NTN_T48
ΔF\Delta F0.31±0.100.31\pm0.100.11±0.250.11\pm0.25

読み 読:(i) U(1)U(1) は T2T^2 を広げると ΔF\Delta F が増えます(M=8M=8 で θ\theta が 0→0.39→0.78→0.990\to0.39\to0.78\to0.99、M=12M=12 で 0.20→1.35→1.720.20\to1.35\to1.72)。(ii) SU(2)SU(2) は三つの設定(β=2.5\beta=2.5 の M=8M=8・1212、β=2.4\beta=2.4 の M=8M=8)で、広げても増えないか減ります。例外は β=2.5\beta=2.5、M=8M=8 の NT=8=MN_T=8=M(対称なトーラス T84T^4_8)の 1.51 です。(iii) NT=4→8N_T=4\to8 で ln⁡(1/θ)\ln(1/\theta) は U(1)U(1) で 0.93 → 0.012(約 80 分の 1)、SU(2)SU(2) で 1.18 → 0.45(約 2.6 分の 1)(M=8M=8)。横広げの不等式の符号の、数値的な兆候と読めます。(iv) β=2.4\beta=2.4 の NT=8N_T=8 が β=2.5\beta=2.5 より小さいのは、同じ格子が物理的に大きい(Lσ≈2.2L\sqrt\sigma\approx2.2 と 1.5)ことと整合します。

限界。 θ\theta が 1 に近くない(O(1)O(1) の)領域なので、θ≤1\theta\le1 のために U(1)U(1) の比も抑えられ、この幾何では横広げの不等式の判別力は弱いです。誤差は U(1)U(1) で 0.04〜0.78、SU(2)SU(2) で 0.1〜0.36 と大きく、β\beta は一点か二点です。U(1)U(1) の β=1.5\beta=1.5 と SU(2)SU(2) の β=2.5\beta=2.5 は「同じ物理」に合わせたものではありません。NT=2N_T=2 の列は格子の人工物の領域です。

05

板の弦の張力

SU(2)SU(2)、β=2.5\beta=2.5、平面 M=16M=16、捩れ n12=1n_{12}=1。平面の中の Wilson ループの Creutz 比 χ(R)\chi(R) を T2T^2 の大きさ NTN_T ごとに測りました。13-02 の強い形の横広げの不等式が含む「縮めた二次元の弦の張力 σeff(NT)\sigma_{\rm eff}(N_T) の単調性」と、L∼1/ΛL\sim1/\Lambda で張力が一度大きくなる「行き過ぎ」の試験です。記録では、四次元の β=2.5\beta=2.5 の値は σa2≈0.036\sigma a^2\approx0.036 とされています 読。

表 6 Creutz 比、400 測定
NTN_Tχ(3)\chi(3)χ(4)\chi(4)χ(5)\chi(5)
20.098±0.0060.098\pm0.0060.034±0.0290.034\pm0.029−0.02±0.14-0.02\pm0.14
40.113±0.0070.113\pm0.0070.070±0.0180.070\pm0.0180.07±0.060.07\pm0.06
60.108±0.0030.108\pm0.0030.089±0.0130.089\pm0.0130.11±0.050.11\pm0.05
80.113±0.0030.113\pm0.0030.051±0.0100.051\pm0.0100.07±0.040.07\pm0.04
表 7 Creutz 比、2000 測定(5 倍の統計)と NT=10N_T=10
NTN_Tχ(3)\chi(3)χ(4)\chi(4)χ(5)\chi(5)
40.103±0.0020.103\pm0.0020.059±0.0090.059\pm0.0090.03±0.040.03\pm0.04
60.115±0.0010.115\pm0.0010.061±0.0040.061\pm0.0040.084±0.0190.084\pm0.019
80.116±0.0020.116\pm0.0020.076±0.0020.076\pm0.0020.070±0.0220.070\pm0.022
100.112±0.0020.112\pm0.0020.071±0.0020.071\pm0.0020.076±0.0090.076\pm0.009

読み 読:(i) 400 測定で χ(4)\chi(4) は NT=6N_T=6 が最大(0.089)で、NT=8N_T=8 との差は約 2.3 標準偏差でした。行き過ぎの兆候に見えましたが、2000 測定では NT=6N_T=6 は 0.061±0.0040.061\pm0.004 で、統計の揺らぎでした。(ii) 2000 測定の χ(4)\chi(4) は NT=4→8N_T=4\to8 で増え、NT=10N_T=10 で 0.071(NT=8N_T=8 との差 1.7 標準偏差)とほぼ飽和します。有意な行き過ぎは見えません。張力の単調性(13-02 の必要条件)と整合します。(iii) χ(4)\chi(4) はクーロンの項を含むので、四次元の σa2≈0.036\sigma a^2\approx0.036 より大きく出ます。絶対値ではなく、NTN_T についての傾向だけを読みます。(iv) NT=2N_T=2 の行(表 6)は格子の人工物の領域で、400 測定だけです。

限界。 β\beta は 2.5 の一点、平面は M=16M=16 の一つです。χ(5)\chi(5) 以上は誤差が大きく、張力の値そのものは決まりません。NT=10N_T=10 は LσL\sqrt\sigma で 2 程度で、L→∞L\to\infty の傾向は外挿になります。

06

同時の反転の測定と、撤回された位置づけ

12-06 の定理 10(E∏θ≤P(どの容器も反転しない)\mathbb E\prod\theta\le\mathbb P(\text{どの容器も反転しない}))を数値に使った測定です。SU(2)SU(2)、β=2.5\beta=2.5、容器を間隔 BB で並べ、一つの配位あたり 4 つの容器で同時に、受理 min⁡(1,e−W)\min(1,e^{-W}) の駆動した挿入(512 段)を行いました。受理率の平均を aˉ\bar a と書きます。

表 8 容器の半径 r=4r=4 を固定(B=10B=10、M=20M=20、512 段)
NTN_T配位の数aˉ\bar aWW の平均W/NT2W/N_T^2
4300.36±0.030.36\pm0.031.60.10
6200.25±0.040.25\pm0.042.60.07
8100.12±0.030.12\pm0.034.50.07
1060.02±0.010.02\pm0.018.20.08
表 9 容器の半径を NTN_T に比例させた再測定(r=NTr=N_T、B=2r+2B=2r+2、M=2BM=2B、512 段)
NTN_Trr配位の数aˉ\bar aWW の平均
44300.35±0.030.35\pm0.031.6
66110.34±0.050.34\pm0.052.0
8830.16±0.080.16\pm0.084.5

読み 読:(i) 表 8:半径を固定して T2T^2 を広げると、仕事は NT2N_T^2 にほぼ比例して増え、受理率は落ちます。渦の大きさは T2T^2 の大きさで決まるので、半径 r<Lr\lt L の容器には渦が収まらず、細い管の中の面として面積に比例した費用を払う、と読めます。横広げの不等式は容器の大きさが LL 以上の範囲の主張なので、これは反例ではありません。保証つきの張力(−ln⁡P(反転なし)-\ln\mathbb P(\text{反転なし}) を容器の数と B2B^2 で割ったもの)は NT=4N_T=4 で約 0.005 でした。(ii) 表 9:容器を LL とともに大きくすると、受理率は NT=4→6N_T=4\to6 でほぼ一定です(NT=8N_T=8 は 3 配位で判断できません)。

撤回された位置づけ。 この測定は当初「一様な板の張力(移り変わりの帯)の数値的な姿」として設計されましたが、その位置づけは撤回されています。理由は 12-06 §07 のとおりです:流れの補題の保証は θ≤1−a\theta\le1-a で、一段の核の aa は 12\tfrac12 程度で頭打ちになる(表 1・表 2・表 8・表 9 の受理率は全て 0.46 以下)ので、言えるのは「大きさ LL の容器で θ≤θ0\theta\le\theta_0、θ0∼12\theta_0\sim\tfrac12」だけで、そこから出る σ≥ln⁡(1/θ0)/L2\sigma\ge\ln(1/\theta_0)/L^2 は U(1)U(1) も満たす弱い形です(13-01)。帯の形 θ≤e−cL2\theta\le e^{-cL^2} を確かめるには a→1a\to1 の核が要ります。この測定は、T2T^2 を固定した板の張力の下界を測る道具としてだけ使えます。表 9 の NT=6,8N_T=6,8 の続きは止められています。

07

言えないこと

(a) 証明。この章の数はどれも証明ではなく、どの不等式の仮定も確かめていません。

(b) 帯。表 2・表 3〜5・表 7 の傾向は、移り変わりの帯(LL に一様な θ≤e−cL2\theta\le e^{-cL^2})を数値で示すものではありません。測った T2T^2 は Lσ≈2L\sqrt\sigma\approx2 程度までで、L→∞L\to\infty は外挿です。

(c) 誤差。駆動した挿入の誤差の評価はまだ粗く(標本の標準偏差だけ)、レプリカ交換の誤差は記録の推定値で、自己相関の扱いは記録にありません。

(d) 格子の人工物。NT=2N_T=2 の行は格子の人工物の領域です。NT=4N_T=4 でも小さな格子の補正は残ります。

(e) 対照の釣り合い。U(1)U(1) の β=1.5\beta=1.5 と SU(2)SU(2) の β=2.5\beta=2.5 は、物理の大きさを揃えた比較ではありません。

(f) 同時の反転。表 8・表 9 を帯の数値的な姿として読むことは撤回されています。

08

五分類の表と依存グラフ

表 10 この章の行(全て数値の読み。条件は各行の範囲の欄)
行言明(一行)分類根拠範囲機械検査
[01]段数 0 の挿入の費用は NT2N_T^2 にほぼ比例読表 1(A・B・C)SU(2)SU(2)・β=2.3\beta=2.3・M=8M=8・r=2r=2・8〜12 配位 × 4—
[02]容器が十分大きければ駆動した仕事は 0 近くまで下がる読表 1β=2.3\beta=2.3〜2.52.5・256〜1024 段・NT=2N_T=2 の行を含む—
[03]要る容器の半径は格子間隔が半分になるごとに約 2 倍読表 1(E・F・G)β=2.3,2.5,2.7\beta=2.3,2.5,2.7・統計は少ない—
[04]半径 4 を固定して NT=4→8N_T=4\to8 で仕事ははっきり増えない読表 2(I)β=2.5\beta=2.5・M=12M=12・1024 段・10 配位 × 3・誤差 0.2〜0.3—
[05]β=2.7\beta=2.7、r=8r=8 の仕事は散逸でなく自由エネルギー読(物理)表 1(G)・表 2(J)NT=4N_T=4・M=18M=18・Jarzynski の推定は揺らぎが大きい—
[06]T2T^2 を広げると U(1)U(1) の ΔF\Delta F は増える読表 3・表 4β=1.5\beta=1.5・M=8,12M=8,12・誤差 0.04〜0.78—
[07]T2T^2 を広げても SU(2)SU(2) の ΔF\Delta F は増えないか減る(NT=M=8N_T=M=8 を除く)読表 3〜5β=2.4,2.5\beta=2.4,2.5・M=8,12M=8,12・誤差 0.1〜0.36—
[08][06][07] は横広げの不等式の符号の兆候読(物理)§04 ⟸ [06][07]θ\theta が O(1)O(1) の領域で判別力は弱い—
[09]NT=6N_T=6 の行き過ぎは統計の揺らぎ読表 6・表 7β=2.5\beta=2.5・M=16M=16・400 と 2000 測定—
[10]χ(4)\chi(4) は NT=4→8N_T=4\to8 で増え NT=10N_T=10 でほぼ飽和読表 7β=2.5\beta=2.5・M=16M=16・2000 測定・クーロンの項を含む—
[11]半径を固定すると同時の反転の仕事は NT2N_T^2 に比例して増える読表 8β=2.5\beta=2.5・r=4r=4・6〜30 配位 × 4 容器—
[12]一段の核の受理率は測った範囲で 0.46 以下読表 1・表 2・表 8・表 9測った β\beta・NTN_T・容器の範囲—
[13]同時の反転の測定は帯の試験に使えない(位置づけの撤回)初§06・12-06 §07 ⟸ [12]流れの補題 θ≤1−a\theta\le1-a だけを使う場合—(核は 12-06 の FluxLemma(FluxLemma.flip_le_one_sub_abs))

[13] だけは数値でなく論理の行です:θ≤1−a\theta\le1-a から出るのは弱い形だけ、という 12-06 の [16] の当てはめで、[12] の読みはそれがどの程度効くかを示します。

依存グラフ(前提の番号は結論の番号より小さい):

[01] 読 COST0    段数 0 の費用 ∝ N_T²                        β = 2.3・M = 8
[02] 読 DRIVE    大きな容器で駆動した仕事 → 0 近く             β = 2.3〜2.5
[03] 読 RADIUS   要る半径は格子間隔の半分ごとに約 2 倍 ⟸ [02]
[04] 読 FIXR     半径 4 で N_T を広げても仕事は増えない        β = 2.5・10 配位 × 3
[05] 読 FREE     β = 2.7 の仕事は自由エネルギー(物理)        Jarzynski は揺らぐ
[06] 読 U1UP     U(1) の ΔF は T² とともに増える               β = 1.5
[07] 読 SU2FLAT  SU(2) の ΔF は増えない                        β = 2.4, 2.5
[08] 読 SIGN     横広げの不等式の符号の兆候(物理)⟸ [06][07]
[09] 読 NOOVER   N_T = 6 の行き過ぎは揺らぎ                    2000 測定
[10] 読 SATUR    χ(4) は増えて飽和 ⟸ [09]                     クーロンの項を含む
[11] 読 AREA     半径固定の同時の反転は面積に比例
[12] 読 HALF     一段の核の受理率 ≤ 0.46(測った範囲)
[13] 初 RETRACT  同時の反転は帯の試験に使えない ⟸ [12]        12-06 の流れの補題

確かめ方は、全ての「⟸」の右の番号が左の番号より小さいことを目で見ることです。円はありません。仮定(仮)の行はありません。閉じ込めの節点も、質量ギャップの節点もありません。


この章が言えている範囲

言えている言えていない
読 駆動した挿入は、容器が渦より大きければ仕事を 0 近くまで下げる(SU(2)SU(2)・β=2.3\beta=2.3〜2.52.5)仕事の上界が LL と格子間隔に一様であること
読 T2T^2 を広げると U(1)U(1) の渦は高くなり、SU(2)SU(2) は高くならない(β=2.4,2.5\beta=2.4,2.5・M=8,12M=8,12)横広げの不等式。θ\theta が小さい領域での判別
読 板の弦の張力(Creutz 比)は NTN_T とともに増えて飽和し、有意な行き過ぎは無い(β=2.5\beta=2.5・2000 測定)張力の値そのもの。L→∞L\to\infty の振る舞い
初 同時の反転の保証は帯の試験には使えないa→1a\to1 の核による帯の数値の試験

出典と再現

もの種別出典・道具
表 1〜9 の全ての数読この本の検討で行ったモンテカルロの記録(熱浴・駆動した挿入・レプリカ交換と BAR・Creutz 比)。各実行の出力の記録と照らし、表 1 の標準偏差は出力の記録から写した
表 1 の行 P読A-07 の論文 1 の数値の節と同じ測定(A-07)
表 3〜5・表 7読A-07 の論文 2 の数値の節と同じ測定
LσL\sqrt\sigma と四次元の σa2≈0.036\sigma a^2\approx0.036読記録の換算(既知の aσa\sqrt\sigma の値による。原典の値は未照合)
Jarzynski の等式典12-06 の出典の表
[13] の論理初12-06 §07

この章で使った語 — 駆動した挿入・段数・仕事・受理率・大域の流束の自由エネルギー・レプリカ交換・BAR・Creutz 比・行き過ぎ・同時の反転・保証つきの張力。意味は A-02 用語集 にあります(第 12 部の語は追加の予定)。第 13 部の数値(格子全体を 2 倍にした試験・階段関数・柱の偏り)は 13-09 にあります。

次に読む章:12-09 この道が止まる場所 — T2T^2 を広げることが、そのまま移り変わりの帯であることを確かめ、空間の方向の道の到達点をまとめます。

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改訂 2026-10-15:初版。