この本の全体 目次と読む順
- 第 0 部 入口 — この本の読み方
- 0-01 この本の読み方
- 0-02 一枚の絵
- 0-03 問題文を一語ずつ読む
- 0-04 数学の四次元と物理の四次元
- 第 1 部 数学の準備
- 1-01 ベクトル空間と線形写像
- 1-02 群とは何か
- 1-03 リー群とリー環
- 1-04 SU(2) と SU(3)
- 1-05 多様体と接空間
- 1-06 微分形式と外微分
- 1-07 ベクトル束と接続
- 1-08 確率と測度
- 1-09 無限次元の確率
- 1-10 ヒルベルト空間と自己共役作用素
- 1-11 フーリエ解析と分布
- 1-12 寄り道:四次元でだけ起きること
- 第 2 部 物理の準備
- 2-01 ラグランジアンと作用
- 2-02 場という考え
- 2-03 電磁気学はゲージ理論である
- 2-04 特殊相対論と時空
- 2-05 量子力学の骨
- 2-06 調和振動子と生成消滅
- 2-07 経路積分の考え方
- 2-08 統計力学と相転移
- 2-09 寄り道:イジング模型で見るギャップと相関長
- 2-10 緩和の時間と動的指数 z
- 第 3 部 ヤン–ミルズ理論(古典)
- 3-01 ゲージ原理
- 3-02 非可換ゲージ場
- 3-03 作用と方程式
- 3-04 幾何としてのゲージ理論
- 3-05 インスタントンと位相
- 3-06 寄り道:Donaldson とエキゾチック R⁴
- 3-07 標準模型の中のヤン–ミルズ
- 第 4 部 量子化
- 4-01 正準量子化とハミルトニアン
- 4-02 経路積分とユークリッド化
- 4-03 摂動論と Feynman ダイアグラム
- 4-04 発散と繰り込み
- 4-05 発散の代数
- 4-06 漸近自由
- 4-07 次元転移と Λ
- 4-08 ゲージ固定と Faddeev–Popov
- 4-09 場の量子論の公理
- 4-10 Osterwalder–Schrader の公理と再構成
- 4-11 質量ギャップの定義
- 4-12 寄り道:摂動級数は発散する
- 第 5 部 格子ゲージ理論
- 5-01 Wilson の格子
- 5-02 強結合展開
- 5-03 反射正値性と転送行列
- 5-04 無限体積極限とクラスター展開
- 5-05 弱結合と連続極限
- 5-06 U(1) と非可換の違い
- 5-07 モンテカルロ法
- 5-08 グルーボールと弦張力の測定
- 5-09 何を固定して極限を取るか
- 5-10 有限群の格子ゲージ理論
- 5-11 寄り道:Bakry–Émery と一リンク積分
- 第 6 部 構成的場の理論
- 6-01 構成的場の理論とは
- 6-02 二次元の可解性とヤン–ミルズ測度
- 6-03 スカラー場の構成
- 6-04 クラスター展開
- 6-05 繰り込み群の段の列
- 6-06 三次元ヤン–ミルズの紫外安定性
- 6-07 四次元
- 6-08 四次元の φ⁴ の自明性
- 6-09 確率量子化と正則性構造
- 6-10 四次元で止まる場所
- 6-11 発散以外の障害
- 6-12 寄り道:「1/0 に記号を与えれば」
- 第 7 部 物理の側から
- 7-01 物理はどう見ているか
- 7-02 閉じ込めの機構
- 7-03 弦の絵
- 7-04 大 N
- 7-05 ひも理論と余剰次元
- 7-06 余剰次元が見えなくなる仕組み
- 7-07 ゲージ場はどこから来るか
- 7-08 ホログラフィー
- 7-09 質量ギャップが幾何になる
- 7-10 四次元に戻す
- 7-11 超対称と Seiberg–Witten
- 7-12 等価原理に当たる一文
- 7-13 物理の掘り方が数学と離れる場所
- 第 8 部 二つの言葉の辞書 — 物理の視点と数学の視点
- 8-01 辞書の読み方
- 8-02 辞書 A
- 8-03 辞書 B
- 8-04 辞書 C
- 8-05 私たちの仮定の物理側の対応
- 地図
- 第 9 部 現在地と課題
- 9-01 世界はどこまで来ているか
- 9-02 二つの掘り方の切れ目
- 9-03 新しい概念の候補
- 9-04 課題の一覧
- 9-05 よくある誤解
- 9-06 証明が含むべき段 — 七段の表
- 一本目の道 — 時間の方向から
- 第 10 部 一本目の道(前半)— 時間の方向から:質量ギャップと拡散型緩和時間の仮定
- 10-00 入口 — 階段と、酔歩・物差し・時計
- 10-01 構成の筋と仮定 ξ²
- 10-02 四次元格子で試した道と壁
- 10-03 階段の四段 — なぜ 0+1 次元から始めるか
- 10-04 二重井戸の経路の測度とキンク
- 10-05 一段目の言明 — 四条件と命題 4.5
- 10-06 (H1) 相の中の局所 Poincaré
- 10-07 (H2) の地図 — 七つの道筋と環の継ぎ目
- 10-08 計算機援用とは何か — 窓の中の鎖の条件
- 10-09 区画の枠組みと道筋 5 の三本の筋
- 10-10 迂回策の一覧 — 壊れ方の型
- 10-11 (H3)(H4) と芯の定数
- 10-12 統合表と依存グラフ
- 10-13 Lean の言明と機械検査の限界
- 10-14 突き合わせ — 記録の数と既知の数
- 10-15 残件と費用 — 定理までの距離
- 10-16 主張しないこと
- 10-17 ひらめきと小さな問い
- 第 11 部 一本目の道(後半)— 仮定の形を直し、時間を連続にする
- 11-00 今後の考察 — 入口
- 11-01 仮定 ξ² を妨げる一つの形 — ほぼ保存される大域の量
- 11-02 物差しと座標を選び直す — 保存が壊れる長さ
- 11-03 仮定 ξ² を直す二つの形 — 区画の仮定 ξ² と局所の仮定 ξ²
- 11-04 片側の橋はどの仮定 ξ² を要るか
- 11-05 時間を連続にする — Hamiltonian 格子と真空の測度
- 11-06 凸性の代わりに稀さで払う — 群の上の繰り込みと対数 Sobolev
- 11-07 四次元だからこそ — 無次元の結合と位相
- 11-08 問いと、主張しないこと
- 11-A1 第 11 部の記号の対応表
- 二本目の道 — 空間の方向から
- 第 12 部 二本目の道:空間の方向から — 小さな捩れた T² と閉じ込め
- 12-00 入口 — 時間でなく空間を
- 12-01 捩れた T² と 't Hooft の流束
- 12-02 渦と分数インスタントン
- 12-03 容器 — 枠を条件づけると独立になる
- 12-04 板の閉じ込め
- 12-05 渦の挿入の恒等式
- 12-06 力学で駆動した挿入と流れの補題
- 12-07 なぜ決まった写像は失敗するか
- 12-08 測った記録
- 12-09 この道が止まる場所 — T² を広げることが帯である
- 移り変わりの帯 — 二本の道が同じ壁に着く
- 第 13 部 移り変わりの帯 — 二本の道が同じ壁に着く
- 13-00 入口 — 合流
- 13-01 帯の正しい形
- 13-02 一つの不等式への還元
- 13-03 非可換が効く唯一の場所
- 13-04 構造だけでは渡れない
- 13-05 チェス盤と同時の反転
- 13-06 繰り込みの比較 — 群を区別する比較
- 13-07 時間の側から見た帯
- 13-08 試して止まった道の地図
- 13-09 測った記録
- 13-10 新しい見方の候補
- 13-11 紫外の制御 — 無限個の段で閉じるとは何か
- 閉じる
- 第 14 部 閉じる — 条件つきの言明
- 14-00 入口 — この部の約束
- 14-01 条件つきの言明 — 質量ギャップと閉じ込めを矢印ごとに
- 14-02 条件の台帳
- 14-03 問いの表(横断の索引)
- 14-04 主張しないこと(横断の索引)
- 紫外の壁 — 二本の道の下にある土台
- 第 15 部 紫外の制御 — 無限個の段で閉じるとは何か
- 15-00 入口 — 紫外の制御とは何か
- 15-01 紫外の難しさ — 無次元の結合・群値の場・ゲージ
- 15-02 原典の地図 — Bałaban の計画・BBS の鎖・原典に無い二行
- 15-03 分解の言明 — 有限個の母数で閉じる類と三つの剰余
- 15-04 一リンクの熱核の類と階層模型
- 15-05 束の網の定理 — 横の縮みと母数の流れを一つの射影で
- 15-06 母数の数え方 — ループの形ごとの結合と引き込む先の類
- 15-07 背景に依る揺らぎ η — 一段ごとの吸収
- 15-08 閉じない四行と、その案
- 15-09 言えないこと・問いの索引・依存の図
- 付録
- A-01 記号表
- A-02 用語集
- A-03 文献案内
- A-04 Lean と機械検査
- A-05 この本の作り方
- A-06 仮定の索引
- A-07 この本から出た論文
紫外の難しさ — 無次元の結合・群値の場・ゲージ
この章で分かること — 四次元では結合が無次元なので、一段ごとの の大きさの損の和が段数の対数で発散し、損を結合の流れに正確に吸収した類を作らなければならないこと(一行ずつの計算)。三次元ではこの和が有限で、結合の流れを追う必要が無いこと。群に値をとる場では、平らな場の重みの道具のうち「揺らぎの期待値で一段閉じる」性質が無いこと。ゲージ不変な関数は軌道の向きに凸性を持たず、ゲージは尺度ごとに張り替えるしかなく、その境目も評価に入ること。難しさの根と、ゲージの無い二次元の模型でも止まっていること。
前提となる章 — 15-00 §01(三つの条件と一段で閉じる形)・6-05 §06(結合の走り)・6-05 §05(局所ゲージ)・11-07 §05(難しさの根の三つ)・11-06 §07(重みの四性質)。
先に言うこと — この章の計算は一ループの流れを正確な式と見なした算術で、実際の有効結合の列についての定理ではありません。難しさを三つ(無次元の結合・群値の場・ゲージ)に分けますが、三つは独立ではなく、15-07 と 15-08 で一つの所(揺らぎの測度が背景に依ること)に集まります。
- 難しさ 1:無次元の結合 — 損の和が対数で発散する(式 (1)〜(5))・三次元との対比
- 難しさ 2:群に値をとる場 — 重みの四性質と、群で足りない性質 3
- 難しさ 3:ゲージ対称性 — 軌道の向きの凸性・尺度ごとの張り替え
- 根と、ゲージの無い模型 — R1〜R3・二次元 (表 1)
- 言えないこと
- 五分類の表と依存グラフ(表 2)
この章で分かること
- 四次元では一段の損 の和が で発散するので、その部分は結合の流れに正確に吸収し、残りを和の有限な大きさ( の型か幾何級数)に閉じ込める必要があります(§01)。
- 三次元では が有限で、一段の損を誤差として運べます(§01)。
- 群に値をとる場では、重みの四性質のうち「揺らぎの期待値で一段閉じる」(性質 3)が無く、揺らぎの測度が背景に依ります(§02)。
- ゲージ不変な関数の最小点では軌道の向きの Hesse 形式が 0 で、凸性の道具はゲージを消さないと使えません。ゲージはブロックの大きさでしか効かず、尺度ごとに張り替える境目も評価に入ります(§03)。
- 壁の核は「群値の場 × 無次元の結合 × 大きな場」にあり、ゲージの無い二次元 σ 模型()でも紫外の構成は止まっています(§04)。
難しさ 1:無次元の結合 — 損の和が対数で発散する
四次元では結合 に長さの次元が無く、細かい尺度で結合を弱めるのは漸近自由だけです(11-07 §01)。一ループの流れを段に刻むと、 として
です 典(6-05 §06 の式 (9)。一ループだけを残した式)。以下、(1) を正確な式と見なして、損の和を一行ずつ数えます。
(a) 結合の列。最も粗い段の結合を に止め、粗い端から数えた段 ()で書くと、(1) を 回使って
です 初。左の不等式は ()から、右は を落としただけです。細かい側ほど結合は小さいが、 でしか小さくなりません。
(b) 和。 の積分と比べて なので、(2) を足して
です 初。一段ごとに の大きさの損があると、その和は段数の対数で増え続けます。例:・ なら で、 を倍にするたびに上界が 増えます。6-05 表 4 の部分和が の倍ごとに約 7.2 増えるのと合います(算術)。
(c) 積。一段ごとに定数(解析性の半径・減衰の率・Hesse 行列の下界など)が 倍に減るとすると、 と (3) の左から
です 初( の範囲で)。 なので、定数は の冪で 0 に向かいます。ゆっくりですが、一様ではありません。
(d) 和が有限になる大きさ。損が ()の大きさなら、(2) の右から
で、 に一様に有限です 初。(損が 、一ループの次の大きさ)なら です。
だから要ること。(4) と (5) を合わせると、一段の後に の大きさで動く部分を「誤差」として運ぶことはできません。その部分は類の母数そのものの動きにしなければなりません。具体的には、類 を結合 を母数に持つ形で定義し、一段の後の有効作用から主要な項(Wilson の項、 の向き)の係数を読み取って と定めます。こうすると の大きさの部分は、15-00 の (3) の結合の流れに正確に吸収されます。吸収した後に残る損(局在した補正 の定数の劣化など)は、(5) の型の和の有限な大きさ——代表的には 、または尺度について幾何級数で縮む無関係な項——に閉じ込めなければなりません 初((4)(5) の算術から出る要請。一段の損が掛け算で効く場合)。この要請を言明の形に書き直したのが 15-03 の分解 です。
結合の流れの側は事情が違います。15-00 の (3) の剰余 は の変数で の大きさ(二ループの大きさ)を許してよく、その和は (3) のとおり で増えますが、 自身が の大きさで増えるので結合の列は崩れません。必要なのは列が に留まることで、それを 15-03 の補題 F で扱います。
三次元との対比。三次元では が長さの 乗の次元を持ち、段 の無次元の結合は の形で細かい側に幾何級数で小さく、 は有限です(6-05 表 4 で 2 に収まる)典。発散しうる型は有限個で、要る相殺項は定数一つ、半単純性から有効作用に育つ変数(relevant な変数)が無い、と Bałaban 1985 は書きます(6-06 §05)典。三次元では一段の の損を誤差として運べ、結合の流れを追う必要がありません。四次元では の項がちょうど marginal で、追わなければなりません。これが 11-07 表 3 の根 (R1) の、紫外の側の正確な形です。
「吸収」が最も小さな場でどう見えるか——一リンクの熱核の類では損が望遠鏡和になること——は 15-04 §01 で見ます。
難しさ 2:群に値をとる場 — 重みの四性質と、群で足りない性質 3
格子の辺の変数 は群 の元です。群の元は拡大縮小できず、足して割ることもできません(6-05 §05 の (i)(ii))典。群はコンパクトなので場は有界ですが、「大きな場」は群の遠い側(単位元から遠い所)で、そこでは一リンクの Wilson の重みの曲率が負になります(11-06 §03 の命題 3)初(11-06 に証明)。大きな場は凸性でなく稀さで払うしかありません。
平らな場の道具。スカラー場の繰り込みでは、大きな場の稀さを重み(regulator) のノルムに入れ、一段の期待値で閉じることを次の四つの性質から出します 典(Bauerschmidt–Brydges–Slade の本の付録 A.6(補題 A.6.1)。四性質は §A.6.2 の regulator の望ましい性質として並ぶもの。11-06 §07。原典の鎖は 15-02 §04)。
- 交わらない集合の上で積に分かれる。
- (場の和について)。
- (揺らぎの期待値で一段閉じる)。
- (次の段の重みで押さえられる)。
ここから一段の評価 (補題 A.6.1)が出ます。性質 2 は場の加法 を、性質 3 は揺らぎが背景に依らない Gauss 変数であることを使っています。補題の証明で性質 3 は揺らぎだけの関数の期待値として使われ、その測度は背景 に依りません 読(証明の鎖を読んだもの)。
群の上で何が残り、何が足りないか。性質 2 は、場の和 を「背景 × 揺らぎ」 に替えた版が三角不等式と共役不変性だけで立ちます(補題 R とその系。15-07 §02)初。足りないのは性質 3 です。群では揺らぎの測度が背景に依ります(背景場の中の伝播関数、6-07 表 1 の土台の論文の題)。だから の評価に背景の正則性が要り、背景が群の遠い側にある大きな場の領域では、揺らぎは背景の小さな摂動になりません。測度が背景に依る分を と書き、性質 3・4 の群版を言明の形で置き、 をどう吸収するかを見るのが 15-07 です。スカラーの場では測度が背景に依らないので で、この問題そのものがありません。
難しさ 3:ゲージ対称性 — 軌道の向きの凸性と、尺度ごとの張り替え
軌道の向きには凸性が無い。ゲージ変換の群は有限の格子ではコンパクトな群の積で、作用 はゲージ不変、つまり軌道に沿って一定です。
命題 O。 を配位の空間(コンパクトな多様体)の上の滑らかなゲージ不変な関数、 を の最小点とする。 を通る軌道の接ベクトル について 。とくに、そのような が一つでも在れば、()は成り立たない。
初 証明。( はゲージ変換のリー環の元で )とすると が全ての で成り立つ。 なので 、左辺は 0。∎
凸性に頼る道具(Bakry–Émery・Brascamp–Lieb)は、軌道の向きを消さないと使えません 読(物理の見立て。11-07 §05 の「理論」の段落と同じ)。消すにはゲージを固定しますが、全ての配位で同時に効く連続な大域のゲージ固定は存在しません(Gribov 1978・Singer 1978)典(書誌のみ。6-05 §05)。
ゲージはブロックの大きさでしか効かない。二次元の一辺 のブロックで完全軸性ゲージをとると、プラケットの条件 から辺について しか出ません(6-05 §05)初(6-05 に証明)。 が 2 を越えると何も言わないので、ゲージはブロックの大きさの範囲で、尺度ごとに選び直すことになります。三次元の Bałaban の定理は、ブロックごとの軸ゲージを Faddeev–Popov の方法で入れています(6-06 §05)典。四次元の論文での具体的な選び方は、本文で確かめていません(6-07 表 3)。
張り替えの境目。段 のゲージと段 のゲージは別のもので、張り替えは場に依るゲージ変換です。その Jacobian(Faddeev–Popov の行列式)と、隣り合うブロックの境目に出る項も有効作用に入り、15-00 の (3) の類の中で、§01 の意味で和の有限な損として評価しなければなりません 読(物理の見立て。要る評価の形を述べたもの)。連続の切断で構成した MRS も、大きな場の領域の軸ゲージと小さな場の領域の背景場に依るゲージを継いでいて、同じ型の継ぎ目を持ちます(6-07 §06)典。木のゲージでは張り替えの Jacobian が定数になり、費用が別の所(ゴースト行列式と境目の結合)に移る、という整理は 15-08 の行 4 にあります。
根と、ゲージの無い模型
三つの難しさを 11-07 表 3 の根の言葉に写すと表 1 になります。紫外だけを扱うこの部では、全ての段で結合が小さいので根 (R2) は現れません 読(物理の見立て)。
| 根 | 中身(一行) | 紫外の側での形 | この部の章 |
|---|---|---|---|
| (R1) | 結合が無次元 | の項がちょうど marginal で、 の損の和が で発散する(§01 の (3)(4))。損を結合の流れに吸収した類が要る | 15-03・15-04〜15-06 |
| (R2) | 紫外と赤外をつなぐ展開が無い | 現れない(全ての段で結合が小さい)。第 13 部の帯の課題 | — |
| (R3) | 大域のゲージ固定が無く、大きな場が凸性で制御できない | 一段の中に分けると、群値の場の性質 3(§02)・軌道の向きの凸性(§03 命題 O)・張り替えの境目(§03) | 15-07・15-08 |
ゲージの無い模型でも止まっている。二次元の σ 模型()は、ゲージが無く、結合が無次元で漸近自由な模型ですが、紫外の極限の構成は未解決問題に挙げられています 典(Rivasseau 2000 の総説の本文 §II.1.1。多くの専門家が試みて成功していない、と書かれる)。同じ所で、この模型の階層版の構成は済んでいるとされます(Gawędzki–Kupiainen, Comm. Math. Phys. 106 (1986) 533)典(総説の文献表)。有限体積に限っても構成が無いこと、漸近自由な に限ることは、原文の語ではなく本書の読みです 読。 の場合は場が に値をとる主カイラル模型です。Bałaban の方法の移植は、2024 年の時点で変分問題と背景場の段までです(Goswami、二次元の非線形 σ 模型の一族。Dybalski–Stottmeister–Tanimoto、二次元 :Lie 群上の変分法で臨界点の方程式を出し、縮小写像で解く)典(どちらも抄録)。一方、フェルミオンの二次元 Gross–Neveu(質量のある場合)は構成されています(11-07 表 3)典。この模型を試験台に使う案は 15-02 §05 にあります。
対比からの読み 読(物理の見立て):壁の核は「群(非線形の多様体)に値をとる場」「無次元の結合(根 (R1))」「大きな場」の組にあり、ゲージ不変性はその上に乗る層と読めます。ゲージ不変性が本質的な困難でないとは言いません。
言えないこと
(a) §01 の (1)〜(5) は一ループの流れ (1) を正確な式と見なした算術で、実際の有効結合の列についての定理ではありません。「損を流れに吸収した類が要る」は、損が一段ごとに掛け算で効く場合の要請です。
(b) §02 は重みの四性質のうち性質 3 が群で足りないことを述べるだけで、性質 3 の群版を示していません。
(c) 「壁の核は群値の場 × 無次元の結合 × 大きな場」は二次元の模型の既知の状況からの見立てで、ゲージ不変性が本質的な困難でないとは言いません。
(d) 張り替えの境目が和の有限な損として評価できるかは、示していません(要る評価の形を述べただけ)。
五分類の表と依存グラフ
| 行 | 言明(一行) | 分類 | 根拠 | 範囲 |
|---|---|---|---|---|
| [01] | 一ループの流れ (1) | 典 | §01・6-05 §06 | 一ループだけを残した式 |
| [02] | 結合の列の上下界 (2) と和の対数の増え方 (3) | 初 | §01 | 一ループの流れ (1) の下で |
| [03] | 損 の積は ((4))、損 の和は有限((5)) | 初 | §01 | (1) の下・・ |
| [04] | 三次元では が有限で、相殺項は定数一つ | 典 | §01・6-05 §06・6-06 §05 | 三次元 |
| [05] | 重みの四性質と一段の評価(補題 A.6.1) | 典 | §02・11-06 §07(付録 A.6.2 の本文) | 平らな場 |
| [06] | 群の遠い側で一リンクの Wilson の重みの曲率は負 | 初 | §02・11-06 §03(命題 3) | 一リンク |
| [07] | 命題 O:ゲージ不変な関数の最小点で軌道の向きの Hess は 0 | 初 | §03 | 軌道の接ベクトル |
| [08] | 連続な大域のゲージ固定は無い | 典 | §03(書誌のみ) | — |
| [09] | 尺度ごとの張り替えの境目の項も、和の有限な損として評価が要る | 読 | §03(物理の見立て) | — |
| [10] | 二次元 σ 模型の紫外の構成は未解決問題に挙げられ、階層版は構成済み。移植は背景場の段まで | 典 | §04(総説の本文 §II.1.1・文献表と抄録) | 探した範囲で |
| [11] | 壁の核は群値の場 × 無次元の結合 × 大きな場 | 読 | §04(物理の見立て) | — |
依存グラフ(前提の番号は結論の番号より小さい):
[01] 典 FLOW 一ループの流れ (1) [02] 初 RUN 結合の列 (2)・和の対数 (3) ⟸ [01] 一ループの流れ [03] 初 LOSS 積 → 0 (4)・和は有限 (5) ⟸ [02] cg² ≤ 1・δ > 0 [04] 典 3D 三次元では和が有限 [05] 典 BBS 重みの四性質 [06] 初 CURV 遠い側で曲率が負 一リンク [07] 初 ORB 命題 O [08] 典 GRIB 大域のゲージ固定は無い [09] 読 SEAM 張り替えの境目 ⟸ [03][07][08] [10] 典 SIGMA 二次元 O(N) は未構成 [11] 読 CORE 壁の核 ⟸ [03][04][06][10]
確かめ方は、全ての「⟸」の右の番号が左の番号より小さいことを目で見ることです。この章の節点に、① が示されたという節点はありません。
この章が言えている範囲
| 言えている | 言えていない |
|---|---|
| 初 一ループの流れの下で、一段の損 の和が で発散し、損 の和は有限であること((2)〜(5))。だから損を流れに吸収した類が要ること。命題 O | 実際の有効結合の列についての定理。吸収した類の構成 |
| 典 三次元の和の有限性・重みの四性質・大域のゲージ固定の不在・二次元 σ 模型の構成が未解決問題に挙げられていることと移植の段 | 性質 3 の群版。四次元の論文のゲージの選び方 |
| 読 張り替えの境目の評価の形、壁の核の読み | 境目の評価そのもの |
出典と再現
| もの | 種別 | 出典・道具 |
|---|---|---|
| 一ループの流れ (1)・三次元の結合の和 | 典 | 6-05 の出典表(J. Dimock, The renormalization group according to Balaban I・II・III, arXiv:1108.1335, 1212.5562, 1304.0705。T. Bałaban, Comm. Math. Phys. 102 (1985) 255–275) |
| 重みの四性質・補題 A.6.1 | 典(付録 A.6.2 と補題 A.6.1 の本文) | R. Bauerschmidt, D. C. Brydges, G. Slade, Introduction to a Renormalisation Group Method, Lecture Notes in Math. 2242 (2019), arXiv:1907.05474(11-06 の出典表) |
| 二次元 σ 模型の状況 | 典(総説の本文 §II.1・§II.1.1 と文献表、抄録) | V. Rivasseau, Constructive field theory and applications: perspectives and open problems, arXiv:math-ph/0006017(11-07 の出典表)。P. Goswami, arXiv:2204.08252, Ann. Henri Poincaré 25 (2024) 2065–2085。W. Dybalski, A. Stottmeister, Y. Tanimoto, arXiv:2403.09800。階層版:K. Gawędzki, A. Kupiainen, Comm. Math. Phys. 106 (1986) 533(総説の文献表による) |
| 大域のゲージ固定 | 典(書誌のみ) | I. M. Singer, Comm. Math. Phys. 60 (1978) 7–12(6-05 の出典表) |
| (2)〜(5)・命題 O | 初 | この章の本文の証明。数は と の算術だけ |
この章で使った語 — 無次元の結合・損の和・吸収・marginal・重みの四性質・性質 3・命題 O・張り替えの境目・根 (R1)(R2)(R3)。意味は A-02 用語集 にあります。
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